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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 選手権編
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決勝を争う若獅子達

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 高校サッカー選手権の決勝戦当日を迎え、聖地である国立競技場は早くも超満員。今日の試合への関心の高さが、分かりやすく出ていた。



「立見ー!頑張れよー!」



「初出場!初優勝をやってくれー!」



 立見の専用バスが見えた時、人々の声援がそこに向けて送られる。窓から弥一が「ありがとうー♪」と手を振れば、大きな盛り上がりを見せた。まるで人気アイドル気分を味わうかのようだ。



 そこから僅か1分後ぐらいに今度は八重葉の専用バスが見えて来る。



「八重葉ー!今年も頼むぞー!」



「2連覇絶対行けるって!」



 絶対王者への期待は大きく、皆が王者の圧倒的なサッカーを期待している。八重葉のバスも会場にはいれば、これで両チームが国立に揃う。





「よーし!最後だから皆張り切って行こうかー!」



 学ランを着て応援団の一員となる輝咲。彼女の掛け声に、まるで応援団長へ応えるように皆が声を揃えた。



「ああ〜、学ラン姿の笹川先輩凛々しくて良い♡」



「後で2ショット……♡」



 学ランを着る輝咲の姿に、チア達はうっとりと見つめて応援の事を忘れそうになってしまう。



「(弥一君、後1勝!頼んだよ!)」



 チアを夢中にさせてる輝咲が、1番に考えているのは弥一の事。立見と彼の勝利を願って決勝もひたすら応援するだけだ。




「はぁ〜、このカステラを味わえるのも最後なんだ……」



 弥一は用意されたカステラを前に、残念そうな溜息をついていた。今日が決勝戦、これが終われば美味しいカステラとおさらばになってしまう。



「カステラと永久のお別れじゃねぇだろ」



「お取り寄せ出来ますからね〜♪」



 何処名残惜しくなってんだと、摩央は呆れた目で弥一を見ており、カステラを用意した彩夏は取り寄せられると詳しく話す。



「これから日本一強ぇ高校とガチで戦うっつーのに、緊張感の無ぇ奴だな」



「でも何時も通りのマイペースっぷりで頼もしいよね」



 カステラをさっと一口で平らげる間宮と、少しずつ食べていく影山。2人も弥一と同じく今日も不動のスタメンで、共に絶対王者と戦う。




「八重葉は今大会、照皇がキレ良くて好調だ。勝つならこいつを止めなきゃ始まらねぇ」



 最後のミーティングが行われると、勝也は八重葉の要注意人物として、照皇の名を口にする。彼は今大会絶好調と言われ、準決勝では星崎を相手に、ダブルハットトリックを達成している。



「そこは僕止めるから大丈夫ですー♪」



 照皇を封じる役目は弥一。そこは自分がやると、明るく笑っていた。高校No.1と言われる天才ストライカーを、そんな気軽な感じで止めると言うDFは中々いないだろう。



 勝也は「頼むな」と短く伝えれば、ミーティングを続ける。



「八重葉の攻撃を止めて工藤の守る難攻不落のゴールマウス、これを破るのはセオリーとかもうそんな次元じゃねぇ」



「それで行けてたら彼は既に失点してると思う」



 何年も公式戦無失点を続ける龍尾。彼や周囲の守備陣を前に、小手先の戦法は通じ難いと勝也、京子の2人は同じ事を思った。



 紛れなく高校No.1の天才GK。そんな相手に自分達の攻撃が通じるのか、そう感じる者が何人か弥一から見えている。



「とりあえずシュート撃たなきゃ始まらないからー。強烈なの撃ち込めばポロッとボール零して、そのまま転がってゴールとかあるかもよー♪」



「お、おお。そうだな」



 不安に思ってる1人の川田へ、弥一は明るく声を掛けて都合の良いアクシデントが起こるかもしれない。何が起こるか分からないからと、前向きにさせていた。



「じゃ、アップ行くか」



 ミーティングを終えて、ウォーミングアップの時間を迎えたので勝也達は大勢の観客が待つ、国立競技場のフィールドへと向かう。




 初日や準決勝と同じく今日の決勝戦も超満員。四方八方から、フィールドの選手達に目が向けられていた。キックオフの時が近づくにつれ、会場の熱気は高まるばかりだ。



「智春ー、足はどんな感じだ?」



「痛みは無いし違和感も特に無い。行ける」



 準決勝で右足を捻挫によって負傷した豪山へ、パス交換をする勝也から状態を聞かれると本人は力強く答える。



 今日の状態次第では、メンバーを直前で変える必要があったが、頭から何時も通り行けそうだった。




「良かったー、豪山先輩の先発崩れたら色々バタバタする所だったね♪」



「あの人に代わる長身ストライカーが居ないからな立見は」



 豪山がボールを蹴っている姿を見て、大丈夫そうだと安心しつつ弥一は優也とパスを出し合う。



「照皇を止めきれそうか?任せろと言ってたが」



「そりゃ止めなきゃ試合あっという間に終わっちゃうからねー」



「弱点があってそれで自信ある訳じゃなかったのか」



 照皇を止めると、弥一は自信がありそうで優也は秘策でもあるのか尋ねたが、特にそういった物はない。



「だってさ、あの天才GKさんがそんなポンポン点を何度も許す感じ無さそうじゃん?PKも出来ればそこまで行きたくないし、ウノゼロで勝つのが1番理想的だよ」



「1ー0か……」



 優也も八重葉から簡単に点が取れるとは考えていない。龍尾や大城といった守備を突破するのは、ハッキリ言って至難の業だろう。



 弥一の言うスコアが現実的かもしれないと、優也が思った時。




「ウノゼロで勝つ?そりゃこっちの台詞だぜチビちゃんよ」



 声のした方に、弥一と優也が一斉に向く。そこにはアップに登場した八重葉の面々、その中で龍尾が弥一達に近づき話しかけていた。



「や、ちゃんと決勝まで来たよー」



 弥一は龍尾に軽く右手を上げて、挨拶をしていた。



「はは、俺としちゃ立見が決勝の相手で嬉しいもんだよ」



 陽気に笑う弥一に対して、龍尾も嬉しそうに笑う。




「小学校から続いた借りや夏に受けた借りをやっと返せるんだからな」



「っ……!」



 笑みを浮かべながらも、龍尾の弥一を見る目は一切笑ってはいない。彼の目を見た優也の背筋が、ゾッとするような感覚を覚える。



 弥一と龍尾、2人の視線が真っ向からぶつかり合う。



「本当……あんた誰よりも執念深いよね」



 高校生になった今も、小学生時代に勝也と柳FCに敗れて以来、ずっと彼へのリベンジを狙う何年も続く執念。全国制覇を何度も経験してるにも関わらず、その火が消える事は無い。



 弥一から伝わる龍尾の心は、自分や勝也に絶対リベンジしてやるという思いが大きく膨らんでいた。



「俺はあの日からずっと、今日の時を待ってたんだよ。今度こそ、誰にもゴールはさせねぇから」



 それだけ言うと、龍尾は自分のアップへと戻る。




「……今までの中で1番とんでもない相手と改めて理解した」



「そんな化物を倒さないと、僕ら日本一になれないからねー。とりあえずしっかりアップはしとこっか♪」



 龍尾の発した圧に、優也は少しやられていたが弥一とパスを出し合い、再び冷静さを取り戻す。



 その弥一の心の中は、八重葉へのリベンジ。その気持ちが大きくなっている。龍尾がこの時を待っていたように、弥一も今日を待ち望んでいた。



 敗れた時を忘れた日など1日も無い。





『全国高校サッカーファンの皆様、お待たせしました。高校の頂点を決める選手権、その決勝が今始まろうとしています!』



 地鳴りのような大歓声に迎えられながら、立見と八重葉の両チームがフィールドに入って来る。



『立見と八重葉はどちらも無失点!そしてどちらも本大会で2桁得点を達成と、まさに攻守において驚異のチーム!このような決勝戦の組み合わせがいまだかつてあったでしょうか!?』



『しかも両者の無失点は今大会に限った事じゃないですからね。本当どちらも驚かせてくれます。互いに高校サッカーの域を超えてますよ、今日どちらの記録が崩れるのか、両方崩れるのか、決勝戦で凄い組み合わせが実現しましたね』




 フィールド中央では両チームのキャプテン、勝也と大城がコイントスで先攻後攻を決める。勝也が表で大城が裏と決まれば、出た結果は裏。八重葉の先攻でキックオフとなった。




「気負う事は何も無い。八重葉のサッカーを何時も通りに表現して、再び全国の頂点に輝く」



 八重葉の円陣に大城が加わり、言葉を静かに口にする。その中で必ず頂点に輝き、連覇を達成する強い思いが込められる。



「常勝八重葉!勝つのは俺達!」



「「常勝八重葉!勝つのは俺達!!」」



 王者の掛け声に皆が声を揃え、戦いに向けて己を高める儀式は完了した。




「最後の試合、相手は最強の相手……かと言って負けて大会終わるのは嫌だよな?」



 円陣に加わる勝也が、立見のチームメイト達へ語りかける。此処まで来たら勝ちたいと、皆が頷いて答えた。



「だったら今此処で!絶対王者をブッ潰すだけだ!」




「立見GO!!」



「「イエー!!」」



 今大会最後、高校サッカーで最後の掛け声を勝也が行えば皆が大きく声を揃える。



 互いがポジションに付けば、それぞれが開始の時に備えて集中力を高めていく。




 センターサークルに立つ照皇は立見ゴール、そこに居る弥一を見据えており、弥一の方は照皇、そして後方に立つ龍尾を見ていた。



 時計の針は刻一刻と進み、針がキックオフの時を迎えた瞬間。



 ピィーーー



 高校サッカー日本一を懸けた試合は今開始された。

弥一「うーん、やっぱりボス戦って感じだねー」


勝也「実質高校サッカー界の大ボスだからな八重葉って」


弥一「だから僕達はそれを倒す勇者って事で♪」


龍尾「いやいや、こっち悪い事してねぇし勝手に悪の魔王にすんな」


月城「最近の勇者は正義じゃなく悪ってパターン多いですから、向こうが悪役で俺らが正義の魔王ありますよ?」


勝也「あっちも俺らを悪の勇者にしてんな!」


照皇「(剣や魔法を使う訳ではないのに何故その表現になる……理解できん、これが今のノリというやつか?)」


弥一「とりあえず照さんはもうちょっとゆるーく考えましょうかー♪」

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