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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 選手権編
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決勝へ向けた悪巧み

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 決勝進出を果たした立見。サッカー部が創立して、僅か数年で選手権初出場を決めただけでなく、決勝進出を決めた快挙に高校サッカー界を大きく揺るがす。



「初出場で初の決勝進出!?」



「しかも無失点で、このまま勝てば漫画超え達成じゃん!?」



 と、SNSではその日の内に祭り状態となって、トレンドも立見高校が出て来る程だった。




「達郎ー!お前とんでもない事やったな!?聖地国立でゴールを決めて勝つとは、ワシゃ心臓が止まるかと思ったぞ!」



「いやいやいや、じいちゃんシャレにならないから体調には気をつけて!」



「喜ぶ気持ちは分かりますけど血圧上がり過ぎないように気を付けなさい、じいさん」



 実家の中華料理店、飛翔龍にて大門の祖父、重三は孫の活躍に興奮して祖母の立江が落ち着かせていた。そうさせてしまった大門も、少し責任を感じる。



「(中学時代は一度も勝てなかったのが、高校では1年でもう全国決勝……これも弥一や神山先輩、皆のおかげだな)」



 中学の時はかなり苦しんで来た。公式戦で一度も勝てず、全国の舞台などまるで縁がなかったが、立見でGKとして今高校サッカー最高峰の舞台、選手権で戦っている。



 皆のおかげで此処まで来れたと、大門は内心で仲間達に感謝していた。



「うーむ、何度見てもガチガチに緊張しているな」



「ちょ!?じいちゃん恥ずかしいって!」



 重三がスマホで見ていたのは、牙裏戦でゴールを決めた大門がヒーローインタビューに呼ばれて答える姿。マイクやカメラを向けられ、彼は試合より緊張していた。



「いかんぞ達郎!お前はこれから日本一のGKになるかもしれんし、インタビューはこの先山程来たりテレビ出演もあるだろう!これで緊張していては女子にモテんぞ!?」



「そう言われても何か上手く喋れなかったんだよ……」



 この時の大門は言葉を噛みまくり、何度も言い直している。相当テンパってしまい、その姿を全国に晒してしまったのだ。



 ちなみにこう言いながらも、重三は孫の人生初のヒーローインタビューを既に2桁を軽く越えていく程、何度も繰り返し見ていた。余程嬉しかったのだろう。




「大門のおじいさん相当喜んでるみたいだねー♪」



「うちも親父や母さんがすっげぇ喜んでたわ。勝気も機嫌良さそうだったし」



 午後のティータイムの時間帯。弥一は勝也と共に立見にある喫茶店に来ていて、スマホで大門がグルチャにて呟いてるのを見ていた。



 今日の弥一達は休養の日。一緒にゲーセンで遊んでは、好きなレーシングゲームを楽しむ。勝也の方は格ゲーをして、ラスボスで躓き頭を抱える。




「勝気の奴、フォルナの事がすっかりお気に入りになってなぁ。一緒に遊ぶ姿がまた……激写もんだった」



「親バカしてるね〜」



 我が子が猫と無邪気に楽しく遊ぶ姿を思い出せば、勝也の顔はニヤけてしまう。弥一は兄貴分から可愛い息子について、色々話を聞いてあげた。




「その勝気君の為にも、負けられないよね決勝」



「……ああ」



 選手権の決勝。その事が弥一の口から出れば、勝也の表情は険しくなっていく。



「もしかしたら番狂わせで当たらないかもしれないとか思ったけど、やっぱ絶対王者は伊達じゃねぇか」



「準決勝、圧巻だったからね〜……」



 2人の頭の中で再生される準決勝、もう一つの試合。



 静岡代表の八重葉学園、埼玉代表の星崎高校との一戦。それは予想もしない展開となった。



 前半からエースの照皇、中盤の村山、左サイドのスペシャリスト月城を中心に星崎ゴールへと迫り、怒涛のゴールラッシュとなる。



 照皇が右足の2発と頭の1発を決めて、前半で早くもハットトリック達成。更に村山のミドル、抜け出した月城がGKとの一対一を制したりと、前半で既に5ー0のスコアを叩き出す。



 更にこれだけでは終わらず、後半も照皇が止まる事なく左足で得点を重ね、月城からの左アーリークロスを、頭で合わせたりと1人で5得点。会場からはもう1点が求められていく。



 そして後半アディショナルタイム。星崎はエリア内でファールしてしまい、八重葉にPKを献上。



 これを照皇は冷静に右足で、ゴール左隅に決めれば驚異のダブルハットトリックを達成。この試合で大会の得点王をほぼ手中に収める。



 終わってみれば試合は10ー0と、八重葉が強豪の星崎を相手に一方的な試合で下し、決勝戦で立見と戦う事が決まった。




「総体の時と比べて、また仕上がってたなぁ」



 勝也は彼らと戦った総体の時を思い出す。あの時も他を寄せ付けない強さを八重葉は持っていたが、それよりも更に強さが増してると感じられた。



「セカンドを拾う速さが特に上がってたよね。そこを徹底して練習したのかな?」



 弥一から見て、零れ球に対する対応が全体的に良くなっている。夏の時はセカンドを狙ってチャンスを作っていたが、八重葉はその対策を積み重ねて来たと思われる。



「夏の時の戦いが通じないとなれば、また考えなきゃ駄目か」



 何時の間にか休養の時が、ミーティングのような感じになってきて勝也は考え込む。



 夏に続いてまた八重葉に負けたくない。優勝まであと一つ、泣いても笑っても高校サッカー最後の試合となる勝也。今までの試合で、最も勝ちたいという思いが強くなっていた。




「導くよ。立見を絶対頂点に」



 そこに弥一の声が聞こえると、勝也が弥一に目を向けた。



 弟分は以前、自分と1on1をやった時の獲物を狙うような目をしている。勝也よりも八重葉へのリベンジを果たしたい、強い思いが伝わって来る。



「お待たせしました、ケーキセットです」



「あ、どうも〜♪」



 その顔も店員の女性がケーキを運んで来た時には終わり、一瞬見せた弥一の顔は無邪気に、スイーツを楽しむ子供となっていた。



「(天才ってのは色んな顔を持ってるもんなのか……?)」



 勝也はオレンジジュースを飲みながら、幸せそうにケーキを食す弥一を観察。その顔は此処まで立見の無失点記録を支える要のDFとは、到底見えなかった。





「立見戦も近い。総体で我々は唯一、このチームから点を取れずPKにまで持ち込まれた。夏と比べて得点力が格段に増して、地力はグンと上がっているだろう」



 八重葉の宿泊するホテルの一室にて、選手達を集めて監督はミーティングを行っている。立見との試合に向けて、作戦が立てられる。



「神山が攻守で動き回ってプレー範囲が広い事に加え、デュエルがかなり強くなっています。川田も夏の時はまだ未熟な所がありましたが、パスの制度も上がって来て強烈なシュートも健在ですからね。神出鬼没の影山も良い仕事をしたりと厄介です」



 そこにキャプテンの大城が発言。立見の中盤について、勝也を中心にかなり良くなっていると高評価。



「加えて両サイドの田村、水島も良い所で上がったりとかなり厄介ですよね。特に水島の成長がエグいですよ」



「立見の守備も相当堅いですよね。間宮とか身長以上の高さあったり、大門も跳躍力あって反応も素早く、キャッチ技術もかなり優れてます」



 八重葉の面々から、立見について色々語られる中、対策については少々難航していた。夏の立見とは全く違い、チームとしての能力が全体的に向上しているせいだろう。




「照皇、お前はどう見る?」



 監督から名指しを受けると照皇は席から立ち上がる。



「神山勝也を中心にチームが回っていると見えますが、立見の心臓は神明寺弥一と考えられます」



 立見で最も厄介なのは弥一。照皇は彼がチームの心臓だと、迷いの無い目で言い切っていた。



「先程の影山のように彼も攻守で神出鬼没。技術はもはや高校の域を遥かに越えて、世界のプロレベルでもおかしくありません」



「うむ……彼がキッカーを務めるセットプレー等、特に立見には大きな武器だろう。牙裏戦でも曲げない速いクロスを見せて来た事を思えば、曲げて来るという思い込みを捨てなければならない」



 弥一の存在は厄介。照皇や監督が彼を語れば、それだけ無視出来ない奴だとなってくる。



 信じられない程に曲げて来るボールだけでなく、レーザービームのような超正確無比の直線パスもある。守備でも彼を前にすると、思うような攻撃がほぼ何も決まらなくなってしまう。



 八重葉からすれば化物のようなリベロだ。




「あー、ちょっといいスか?そいつについて思いついたんスけど」



「何だ工藤」



 そこに手が上がったのは龍尾。監督が彼へと視線を向けて、言葉を持つ。





「……リュウ、良いのかそれで」



 照皇は龍尾の策に対して、難色を示す。他のメンバーもそんな作戦でいいのかと、似たような反応を見せていた。



「こっちがゴールを許さなきゃ何も問題無ぇ。これで八重葉が無事に連覇を達成して、めでたしめでたしって奴だ」



 笑みを見せる龍尾からは、絶対的な自信に溢れている。



 立見と八重葉の高校サッカー、日本一を懸けた戦いはもうすぐだ。

弥一「ショコラケーキは美味しいね〜♡」


勝也「あんまスイーツばっか食ったら太るぞ」


弥一「大丈夫だよー、エネルギー補給だから♪すぐ消費されるからねー。当日はカステラも食べられるから楽しみ〜♪」


勝也「……俺もやっぱ一口食っていい?」


弥一「勝兄貴の一口大きいから駄目〜、自分で頼んでねー」

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