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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 選手権編
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守備の要とスピードスターの戦い

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『前半終了!0ー0、立見と牙裏の準決勝前半はスコアレスで折り返します!』



『思うように攻められませんでしたし、豪山君負傷のアクシデントもありましたから立見はこれ苦しいですね』



 豪山のまさかの負傷交代。これには立見の応援席も大丈夫かと、ざわつきが起こっている。



「立見は前線に豪山が居て、あいつがワントップで体を張ってたから4ー5ー1行けてたんだけど……負傷かぁ」



「残りの長身選手でFWが本職の奴、ほかにいないからきっついぞこれ」



 各々が豪山の負傷は大きく響いてしまうと話し、高さを使った攻撃はあまり出来ないとなっていた。



「歳児君160cm台でどう見てもポストとか出来ないよね?」



「それ以前に牙裏の方には190cm以上の大きなDF居るし、豪山君でも競り負けてたから……歳児君大丈夫かな?」



 後ろ向きな発言が多く聞かれ、そこに輝咲が立ち上がる。



「皆ネガティブになり過ぎだよ!まだスコアは0ー0、苦しい状況だけどまだ負けてないからね!?」



 輝咲は声を上げて、皆へ後ろ向きになるなと伝えていく。その姿に輝咲ファンのチアリーダー達から、素敵という声が出てくる。



「応援の僕らが折れたら終わりだよー!皆どんどん応援してー!」



「おおー!」



 立見の応援が再び熱を帯びていく。まるでフィールドで弥一が味方へ、積極的に声を掛けるのが移ったかのようだった。




「豪山君、ひとまず応急処置をしないと。後で病院にも行かないと駄目だから車を用意しとくね」



「それは私の方で用意します〜」



 右足の応急処置を施される豪山。幸は病院までの車を用意しようとしたが、彩夏がその役目を買って出れば電話をかける。



「……この試合見届けてからでも良いスか?」



 そう思いたくはない。だが下手をすれば、この試合が最後となる可能性はある。豪山は試合を見届けたいと、頭を下げてお願いする。



「何となくそう言うとは思った。絶対に安静でね?テンション上がって立ち上がったりしちゃ駄目よ」



 それは先生だろう、と思いながらも豪山は許可してくれた幸に感謝して、頭を下げるとフィールドから出て来る選手達を見守る。




「流石にもう点が欲しい頃や。PK戦はホンマしんどいし、そこまで行くのは嫌やろ?」



 矢島の問いに皆が揃って頷く。決勝前にそこまで心身共にすり減らす思いをするのは、出来る事なら避けたい。



「せやから、後半の牙裏は攻撃モード全開や。ガンガン行くで!」



 後半戦で勝負を決める。皆が矢島の掛け声に揃える中、狼騎は1人立見ゴールを見据えていた。




「絶対引くな。負傷退場出て勢い弱まったってなったら飲まれちまう」



 一方、立見も後半は引かずに攻撃的に行くと、勝也の口から伝えられる。こちらもPK戦は嫌で、この45分間の決着を望む。



「良いねー、攻撃は最大の防御ってね♪」



「ああ。ただやり方間違えたら防御どころか向こうの刃になっちまうけどな」



 弥一に対しても軽く受け答えつつ、勝也は牙裏のカウンターを警戒。向こうには精度の高いロングパスを持つ春樹と、カウンターに適した能力を兼ね備える狼騎がいる。



 迂闊な攻撃をすれば、その瞬間に相手のカウンターが待っているので、やるからには一撃で沈める勢い。攻撃はそうやって仕掛けて行きたい。




「優也ー」



「どうした?」



 それぞれポジションに向かう時、弥一は優也を呼び止めていた。



「向こうの関西弁のでっかい人、狙って来るよ。色々煽られるとかあるから気をつけて」



 豪山は矢島に心を乱され、思うようなサッカーをさせてもらえなかった。交代で入った優也は冷静だが、一応狙って来る事は伝えておく。



「そこはお前を見習ってマイペースにやらせてもらう」



 優也ばそれだけ言うとポジションに向かい、弥一も間宮から早く来い!と言われる前に小走りしていた。




 後半が始まると、牙裏は守備的な前半から一転して、積極的に前へと出る。



『牙裏、攻めに出る!天宮から若松、佐竹と繋ぎゴール前に酒井走る!』



 牙裏の攻撃の要は狼騎。だが佐竹はそんなワンパターンに、そちらばかりへパスは出さない。右足の速いパスはもう1人のFW、高柳に行った。



「るぁっ!」



 これは間宮が右足で蹴り出してクリア。宙を舞いながらも、風に乗って牙裏方面のゴールへ運ばれていく。



 センターサークル付近で球が落ちると、長身の川田が落下地点に来て飛び上がる。



「(させへんわ!)」



「わっ!?」



 そこに助走をつけて勢い良くジャンプしてきた矢島。192cmの長身と跳躍力が、川田の高さを超えてヘディングで立見ゴールに押し返す。



『クリアボールを上がって来た矢島が頭で前へ、天宮拾った!』




「大門!」



 春樹がボールを持った所に、弥一は大門へ叫ぶ。その直後、春樹の右足からミドルシュートが放たれる。立見ゴールの右上を強襲するシュートだ。



「おおっ!」



 大門の反応は素早く、力強く地面を蹴ると跳躍してボールに両腕を伸ばす。きっちりと掴み取り、倒れながらも手からは決して離さない。



「ちっ……!」



 零れた所を狙っていた狼騎だが、大門がキャッチした事によって詰める事は出来ず。



「(!優也……!)」



 倒れ込みながら、大門は左サイドを優也が走っている姿を確認。すぐに立ち上がると、右足のパントキックでボールを蹴り出した。



『大門キャッチからすぐに出した!左サイドの歳児が走っている!』



 大きく浮き上がったボールが左サイドに向かい、優也の頭上を越えていく。前に落ちて優也が追いつこうとしている。



「(通さへんって!)」



 それより先に矢島の長い右足が球を捉え、タッチラインに押し出してプレーを一旦途切れさせた。カウンターを狙った立見だが、失敗してしまう。



「残念やったなぁー、自分の足もうちょいあったら届いたかもしれんのに。160のチビやとまぁ無理難題やー」



 すかさず矢島は豪山に続き、優也も揺さぶろうと企む。煽っていくが、優也は無視しているのか一切反応が無かった。



「(無視かい。まぁ何処までそれも持つかやな」




 スローインでボールを持つのは川田だが、此処は思いっきり投げずに優也の前へ落とすイメージで軽く投げる。優也がそれに反応して走るが、矢島の足が弾いて阻む。



「足の速さが自慢みたいやけど、それしか取り柄無いやろ。その1本しかない選手なんぞたかが知れとるわぁー」



 しつこく矢島は煽るが、優也は少しの反応も見せない。



「(また無視かい。これだけ言って無反応な奴は初めて見るわ)」



 今までの相手は煽れば何らかの反応は見せていた。だが優也からは矢島の言葉に対して、一切何も無いのだ。




「あははは〜」



「てめぇ、何がおかしい?」



 狼騎がマークをしている相手、弥一が突然笑い始めた。



「ああ、ごめんー♪だってさぁ〜……」




「無駄な足掻きが見えたもんだから」



 弥一の視線の先には矢島と優也の姿。あの2人が何をしているか、矢島の企みを心で読んだ弥一にしか分からない事だ。





「(何で一切反応無しやねん!?こいつアンドロイドか!?)」



 攻防の中で優也に矢島は散々見下したり、煽ったりして乱そうと狙っていた。



 だが優也に何を言っても反応が返って来ない。むしろ矢島の方に苛立ちが生まれて、乱されてる感じまでする。




『立見、久々にボールを持って神山上がる!』



 勝也がドリブルで牙裏陣内に入り込み、ゴール前へ突き進む。そこに真っ向から春樹が迫り来る。



「(勝也さんなら、こう来て抜きに行くはず!)」



 ずっと慕い続けた春樹。勝也のプレーは知り尽くしており、前もってどう来るか予測する。



「(甘いぜ春樹!!)」



「(え!?)」



 勝也は春樹の予想を超える速さとテクニックで、キックフェイントからの素早いターンを見せれば、鮮やかに春樹を躱していた。



 春樹は知らない。夏に弥一と、秋にディーンとのデュエルを経験して、1対1の勝負でかなり強くなっている事を。



『抜けた神山ー!ゴール前、立見チャンスを迎える!』



 勝也なら遠めのシュートがある、となってDFがシュートを警戒する中で勝也は右足で優也へのスルーパス。それに合わせて優也がDFの裏を走ろうとしていた。



「っ!」



 矢島は咄嗟に優也のユニフォームを掴むと、優也は前のめりに倒れてしまう。その瞬間、笛は鳴った。



『あーっと倒れた歳児!主審が牙裏キャプテン矢島にイエローカードを出す!』



「すんまへんー(やってもうた……!)」



 笑って謝りながら、内心頭を抱えたくなる。動揺からか、優也の動きに反則をしなければ止められないと、つい掴んでしまった。



「大丈夫かー、ってこれも聞こえへんよなどうせ」



「聞こえてる。すまない」



「!?」



 優也を矢島が引っ張り起こしながら、声を掛けると何も反応していなかった優也が、起こしてくれた彼に礼を言う。



「無視され続けたと思ったら、やっと応えてくれたなぁー」



 此処で再び矢島が煽ろうかとした時。




「無視?あんた俺に何か言い続けてたのか?何も聞こえなかったぞ」



「へ……?」



 矢島はその言葉に呆気にとられた。優也は無視していた訳ではなく、集中していて敵の言葉が聞こえなかっただけだ。




「(煽る人はちゃんと選ぼうかー♪)」



 ボールへ向かう弥一は分かっていた。優也に揺さぶりが効かないという事を。



 常に冷静沈着、そんな相手を煽りまくって自滅する相手をよそに先制点を狙いに行く。

弥一「うーん、煽りが効かなくて足が速くて努力家……立見に居てくれてありがとう優也〜♪」


優也「急に礼を言われて何の話だ」


弥一「もし優也が立見にいなくて八重葉とか牙裏にいたらヤバかったなぁって思っただけー」


優也「どちらも自宅から離れ過ぎて無理だろう。一人暮らしとかをしてまで行きたい理由もない」


弥一「もしもな可能性も潰した真面目な答えでしたー♪」

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