全国ベスト4の猛者が揃う
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
立見は準々決勝で名古屋の強豪校、鳥井第一高校と対戦。全国ベスト8まで来て、既に立見としては充分な快挙だが彼らは此処で止まる気は無い。
それがフィールドで表現される事となる。
『立見ゴール正面でFKのチャンス!さぁ神明寺が上がって来て、歓声は一段と増したぞ!』
『これはもう皆さん彼のキックに期待寄せてますね。どんなキックが飛び出すのかを』
「(まずいって、これ決められたら……!)」
「(絶対に止めないと!)」
鳥井の選手達はボールをセットして、勝也と話す弥一を警戒。彼が鋭いカーブのキックを放つ事は分かっており、彼が蹴ってくると思っている。
「(蹴らないんだけどね)」
弥一はボールの前に立ったまま動かず、左側に立つ勝也が右足を振り抜く。鳥井の選手達は弥一が蹴ると思い込み過ぎて、勝也のキックにタイミングが狂って上手くジャンプで防げなかった。
蹴られた球は弧を描き、弥一よりもパワーとスピードの出たボールが鳥井のゴールを捉え、ゴール右のネットに突き刺さる。
『神山のキック炸裂ー!これで3ー0!立見のキッカーは神明寺だけではない、俺を忘れるなとばかりに神山勝也決めてきたー!!』
『素晴らしいキックでしたね、神明寺君のキックが目立ちますが神山君も負けてないんじゃないですか?』
「そうだった、立見って元々神山勝也が厄介な高校だったんだよな……」
「今はあれ、全員厄介じゃねぇか……!こんなコロコロとスタイル変えられてやり辛い!」
前半早くも3失点と、鳥井はもう頭を抱えたくなってしまう。彼らの目の前には勝也を中心に得点ではしゃぐ、立見の姿があった。
「相手の腰引けてるぞー!畳み掛けろー!」
点差が開いても勝也は攻撃の手を緩めず、積極的に声を掛けて味方への鼓舞を欠かさない。勝也の大声がよく通り、後押しされるように立見のパスはどんどん繋がる。
『影山から田村、逆サイドの水島へパス!鳥井第一が揺さぶられる!水島から川田、左足ー!豪快なミドルが炸裂したー!!』
立見の速いパスにサイドチェンジ、振り回されて川田のマークが外れてしまい、翔馬から川田に渡り、フリーで左足のミドルを撃てば鳥井ゴールを豪快に揺らしてみせた。
ベスト8まで勝ち上がった、鳥井を相手に立見は完勝。開幕戦以来の国立へ向かう事が確定する。
立見5ー0鳥井
豪山
成海
神山
川田
歳児
マン・オブ・ザ・マッチ
川田保
「次の対戦校は牙裏に決まったみたいだな」
「え、そなの?」
「結果出てる、ほら」
立見専用のバスがスタジアムから出て、走行する車内にて勝也はスマホで次の相手となる学校をチェック。隣の席に座る弥一が気になっていると、兄貴分からスマホを見せてもらう。
牙裏3ー0琴峯
酒井3
マン・オブ・ザ・マッチ
酒井狼騎
「エースの酒井がハットトリック達成で目立って、そっちに目が行きがちだけど……」
「大会最長身ストライカーの室が1点も取れなかった程の、牙裏の守備力だよね?」
「やっぱお前もそっちに気づくよな」
勝也も弥一も狼騎のハットトリックよりも、更に重要な部分に目が行った。大会得点王を争う室の琴峯相手に、完封で試合を終わらせた方が気になる。
「牙裏は岐阜予選も失点1で突破して、今回は無失点だ。2年の2人でDFの但馬にGKの加納と優秀なのが2人いて、何より要となるのは3年のキャプテン矢島だ」
「その人が牙裏の守備の要って事かなー?」
勝也がスマホを操作すると、そこに矢島が室と空中戦で競り合い、頭でクリアしてる動画が流れていた。
「こいつは中学時代に石立中学で2連覇を経験してるDFでな。エースキラーで知られてて厄介な奴だよ」
「えーと、石立って確か工藤龍尾も居たよね?つまり一緒に無失点記録を作ったんだなぁ」
「そうそう、工藤が3年になるまで一緒にゴール守ってた。そん時のDFが次に俺達の前へ立ち塞がって来る訳だ」
中学時代に龍尾と共に無失点記録を作った。矢島が卒業した後も龍尾はゴールを許さず、不滅の中学3年間無失点という不滅の大記録を達成。彼と共に守り、全国制覇を2度経験。
相当な名DFと勝也から聞かされ、弥一は矢島についての情報を理解する。
「分かってるだろうけど、あの春樹も居るからな。あいつが柳FCで凄ぇ俺らを支えたのはお前も知ってるだろ?」
「勿論、陰でよく動いてくれて攻守で大きく貢献してくれたからねー」
牙裏には弥一と勝也のかつてのチームメイト、春樹も居る。彼と共に柳FCで全国制覇を達成、その貢献度を2人とも忘れてはいなかった。
「あ、噂をすれば……」
その時、勝也のスマホにメッセージが届く。送ってきたのは春樹本人だ。
「総体じゃ戦い損ねたけどやっと戦えますね勝也さん!僕すっごい楽しみにしてますから!もう全身全霊で臨みますのでよろしくお願いします!」
勝也に向けた長文の熱いメッセージが、スタンプ込みで送られて来た。これを見て勝也は熱い奴だなぁ、と送られた内容を読んでいる。
「(昔から全然変わってないなぁ〜、勝兄貴を誰よりも崇拝してる所とか)」
春樹が昔から勝也を強く尊敬する気持ちがある事。心が読める弥一には、当時から分かっていた。
「あ〜、やっと会える勝也先輩に!」
「(うぜ……)」
牙裏専用バスにて、春樹はスマホで勝也に今日の勝利を報告してから、試合に向けての気持ちを送ったばかりだった。
浮かれている様子の春樹をチラ見して、狼騎は鬱陶しいと思い、中々一眠りにつけない。
「(ホンマに春樹といい龍尾といい、皆神山やないか。ある意味あいつ大モテやな)」
矢島がスマホで音楽を聴きながらも、テンションの上がった春樹の声が聞こえてきて、余程嬉しいのだと理解していた。
「(ま、俺としては例のちっさいDFの方がめっちゃ興味深いけど)」
頭の中に浮かんできたのは室と正反対で、今大会最少の選手と言われる弥一。矢島の興味は彼の方へ向いていた。
何処か自分と同じ匂いを感じさせる、陽気な顔の裏に何かありそうだと。
準決勝ベスト4に勝ち残った4校。
国立で行われる第1試合は立見VS牙裏。第2試合は八重葉VS星崎。
高校サッカー選手権も終盤となってきて、注目度は例年よりも増してきている。
弥一「話の中じゃ春樹さんのメッセージあの量だったけど、ホントはもっとがっつりあるからねー?」
勝也「長ぇわ!こんな量をよく打って送って来れるよなぁ……」
弥一「試合終わってそんな時間経ってないのに、長文を打ち込む元気あるんだー?」
勝也「貴方のフェイントはまさに幻影、走り出せば疾風。勇猛果敢にぶつかり合う貴方のプレーが日々磨きがかかり、僕も負けてられないとなりました!……これでもまだ一部だからな?」
弥一「うっわぁ……(口説いてないよねこれ?)」




