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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 選手権編
598/656

それぞれの大晦日

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 立見が東豪を2ー0で下し、3回戦進出を決めた頃。他会場でも続々と勝ち上がるチームが出てくる。



『3ー0!最神、シード校として盤石の強さで3回戦へと駒を進めます!』



 前回準優勝の大阪代表、最神第一高校。中盤の三津谷光輝を中心とした攻めで得点を重ね、DFの八神想真率いる守備陣が相手を完封。1年が要となる攻守で、相手にペースを渡さなかった。



「とりあえずこれで今日良ぇ蕎麦食えるわぁ〜。オカンの蕎麦ガチ美味いし」



「天ぷらは控えとくんやぞー、3回戦すぐやからな?」



「わぁっとるわ!ほんでお前が食うってのは無しやぞ」



 大晦日に食べる蕎麦を想真は楽しみにしており、次に影響するかもしれない揚げ物は、想真も光輝も食べないと約束を交わす。




『琴峯4ー1!室が2戦連続ハットトリックと勢いが止まらない!!』



 琴峯は室正明の高さが炸裂。頭だけで3点を叩き出し、初戦に続いてのハットトリックを達成。1年で既に195cmある彼の高さを、誰も止められなかった。



「良いぞ室ー!ヘディングは天下一品だ!」



「ヘディングはって何か引っかかりますよマキさんー!」



 2年の先輩、巻鷹新太から多少のからかいが混じったエールが飛び、室は気にしつつも観客の声援に応える。




『牙裏5ー0!酒井狼騎2得点と、2戦連続とは行かなかったが得点ランキングは首位と並ぶ!』



 牙裏は不動のエース酒井狼騎が2得点を決め、天宮春樹も同じく2点と守備だけでなく、攻撃でも大きく貢献していた。



「ちっ……!」



 春樹達が勝利に喜ぶ一方で、狼騎はハットトリックを決められなかった悔いが残り、1人だけ苛立った顔を浮かべている。




 選手権開催前から注目されていた優勝候補、ダークホースがいずれも勝ち上がり、派手な活躍を見せる者も居たが今日の注目を掻っ攫ったのは、絶対王者と呼ばれる高校だった。



「はぁっ……はぁっ……!」



 夏に立見と激闘を繰り広げた、泉神のキャプテン泉谷康介。彼は力の限り走ったが、目の前の相手チームは泉神を圧倒する。



 ボールを持つ八重葉の洗練されたパス回しとスピード。プレスに行く泉神の包囲網を掻い潜り、ボールを持った3年の村山悟から、ゴール前へのスルーパスが出る。



 それに合わせてDFの裏へ飛び出した、2年のエースにして天才ストライカーの照皇誠。タイミング、スピード共に申し分無くDFは必死に彼を止めようと食い下がる。



 相手の最後の抵抗を物ともせず、右足が振り抜かれると、右上隅に決まってゴールネットが大きく揺れ動いた。



『圧巻!泉神を相手に10点目のゴール!照皇誠1人で5ゴールと大爆発だ!!』



 八重葉はこれで2桁得点を達成。開幕戦の立見に続く快挙で、王者としての圧倒的サッカーを初戦で見せつける。



「(折れたな)」



 王者のゴールマウスを守る工藤龍尾。諦めずに攻めてきた泉神の意地が折れたと、彼らの姿を見て確信。



 試合終了の笛が吹けば、自身と八重葉の持つ無失点記録をまた一つ更新した。




「よおマコ、立見のおチビちゃんの活躍に燃えちまったのかい?」



「普段通りに試合をした。それだけだ」



 龍尾は今日5得点と、文句無しのMOMに輝くであろう照皇へ声を掛ける。それでも彼は浮かれる様子もなく、幼馴染へ言葉を返していく。



「(分かりやすいっつの)」



 ヒーローインタビューに向かう照皇の背中を見送り、心の中で龍尾は呟いた。周囲から見れば冷静沈着で、何時も通りプレーをしたように見える。



 だが付き合いの長い龍尾から見れば、照皇が弥一の活躍に刺激されたんだと分かった。



 インタビューで照皇は淡々と、自らの仕事をした結果、初戦をしっかり戦って勝てた事が大きい等、落ち着いて応えている。





「今年最後となる高校サッカー選手権の試合。強豪校が勝ち上がる中で、やはり八重葉学園のサッカーは圧巻でしたね」



「去年も照皇君は1年で活躍していましたが、今年は一段と逞しく成長しましたね。ゴール前の競り合いで負けていませんし、フィジカル面が特に上がっている事でこの活躍を可能としたのでしょう」



 テレビで流れるニュースのスポーツコーナー。そこで男性アナウンサーと専門家が、本日行われた試合について語っていた。



「立見高校も初戦を2桁得点で勝ち抜き、今回も東豪大学附属高校を相手に安定した試合運びで勝利してますし。琴峯高校や牙裏学園の躍進も加わって、今大会は例年より更に面白くなりそうですよ」



「特に立見高校と八重葉学園は無失点記録もありますからね。まだまだ選手権は始まったばかりですが、その行方もどうなるのか気になる所ですね」





「5点も取ったら僕浮かれるよー」



「初戦のハットトリックでお前インタビューの時分かりやすく浮かれてたもんな」



 神山家にて、弥一と勝也は年越し蕎麦を一緒にズルズルの啜り、共にテレビのスポーツニュースで流れる八重葉戦を見ていた。



 弥一は涼香と共に神山家へ来て、大晦日を満喫している。ご馳走をあらかた食べ終え、締めの年越し蕎麦で1年を締め括る。



「ポジション的に達成困難だからさ〜、もう1杯行けそう〜♡」



「1杯しかねぇから」



 神山家の蕎麦は鴨肉を使って、旨味の効いた物となっている。あまり蕎麦を食べない弥一だが、これは美味しいと気に入ったようだ。




「来年か……どうなってるかな、春とか」



 もうすぐ今年は終わる。蕎麦を早々に食べ終えた勝也は、来年の自分がどうなっているか気になってしまう。



 3年間世話になった立見を卒業、その後は家族を養う為に働きながらサッカーを続ける。それは勝也の中で決まっていた。



「不安?」



 弥一は勝也の方を見て一言尋ねる。



「そりゃあな。こうなりたいと思ってるけど、その通りに行くとは限らねぇし」



 将来への不安。それは誰もが付き纏う物であり、勝也も例外ではない。特に間近まで迫って来れば、不安はより大きくなってしまう。




「勝兄貴、予想してあげよっか?」



「予想?占いでもするつもりかよ」



 何時もの笑顔を弥一は見せて、勝也の将来について宣言する。




「僕と一緒に日本のトップリーグに行く」



「……!」



 自信に満ちた笑みで言い切る弥一に、勝也は体に電気が走るような衝撃が伝わった感じがした。日本サッカーのトップリーグ、つまりJ1の舞台に行く事だ。



「選手権で活躍して優勝すれば夢物語じゃないと思うからさ」



 勝也が弥一の目を見ると、彼が本気でそう思っている事が何となく分かる。根拠は何も無い、ただその言葉には力が感じられた。



「言霊か、良い効果生まれそうだし言っておくか。俺はJ1に来年行く!」



「そうそう、そんで稼いで億万長者になって豪邸を建てるとかねー♪」



 来年に向けて希望や夢を膨らませていたら、テレビでは既にカウントダウン始まっている。



 そして0時、新たな年を迎えた。



「「新年あけましておめで……」」



 弥一と勝也が互いに新年の挨拶を交わそうとした時、2人のスマホの通知が鳴りまくって止まらない。



「絶対0時のタイミング狙って送信したよねこれー」



「うっかり59秒で送ってんのも居そうだ、って間宮がそうだわ」



 それぞれのスマホからはチームメイトに友人からと、多くの新年の挨拶が来て、中には今年になる前に送ってしまった者までいる。これを見た弥一と勝也はやらかしたな、と笑い合った。



 新たな1年の始まりだ。

京子「豪邸は色々お金がかかるから駄目」


勝也「だよなぁ……華やかなイメージだけど、維持費とか凄そうだしな」


弥一「プール付きの豪邸とかまさに成功者のイメージだよー」


京子「あれも維持費かかったりするから、夏ぐらいしか入らない事を思えば市民プールを利用するのが良いと思う」


弥一「しっかりお金の事考えるお嫁さん居て良かったね勝兄貴〜?」


勝也「うっせ、からかうな……!」

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