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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 選手権編
595/653

要だけど不安定なDF

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 12月31日、世間は大晦日を迎えていた。



 1年を締め括る最後の日に、高校サッカーの2回戦は行われる。立見と東豪の試合が行われる会場は、開始前から早くも満員の観客で埋まった状態だ。



「いいか、もう一度確認するぞ。相手の豪山と成海……」



「?」



「おい、どうした」



 会場入りした立見が、ウォーミングアップ前にミーティングを行う。そこで勝也が相手の攻撃陣を言おうとして、立見の成海と豪山の顔をそれぞれ見てしまう。



「どうも今までのミーティングで一番やりづれぇ……特に智春、何でお前の同姓同名が居るんだよ?」



「知らねぇし!俺もこんな偶然あんのかって驚いてるからな!?」



「自分と同じ名字が相手チームに居るというのは、何か変な感じだ」



 友人である2人の名字が、相手チームの要注意選手に居て、勝也は調子が狂う。それ以上に成海や豪山本人が、自分達と同じ名字に対戦相手として遭遇する、ちょっとした奇跡に驚いていた。



「豪山君と成海君に気を付けてー、とか言ったら何か戸惑いそうだね……」



「相手の事は数字で呼ぶように徹底するから大丈夫っす」



 ベンチからそんな叫び出来ないなぁ、と幸が呟くと聞こえた間宮は混乱を避ける対策なら、万全だと胸を張る。



 相手の名前をフィールド上で、そのまま呼んでる暇は無い。コーチングは出来る限り分かりやすく簡潔に、が基本だ。



「それより守ってる青山番って子の方が大きな壁ですねー。彼1人なら海塚に負けないくらい強いフィジカル持ってますからー」



 弥一は相手の2年の豪山、成海よりも同じ1年でDFの要となる番が、最大の壁と考えていた。ポジショニングの甘さはあれど、それを補う身体能力を彼は兼ね備えている。



「天鳥との試合は俺もスマホで見ていたが、青山は自陣ゴール前の競り合い全てに勝っていたな。同じ1年とは思えない力強さを感じられた」



 優也から見ても番は只者ではないと映ったようだ。



「青山が何処に居るか、それも大事になってくるな。あいつを上手く避けてゴールに結びつけられるかどうか……まぁ、やんなきゃPK戦になっちまうし。東豪のゴールは何が何でも割らなきゃなんねぇ」



 この試合は番を躱しきって、ゴール出来るかどうか。勝也は今日の試合の最重要な部分だと考えていた。





『今年最後となる日、来年へと変わる前の大事な一戦となります選手権2回戦!笑って今年のラストゲームを終われるのはどちらか!?激戦の神奈川予選を勝ち上がった東豪と立見の一戦となります!』



『立見は1回戦で圧巻の10ー0でしたからね。しかし東豪も安定した成績とサッカーで勝ち上がっていますから、これ立ち上がり大事ですね』



 今日のコイントスの結果は、東豪が先攻。勝也はこの結果を伝えに、円陣へ加わる。




「俺ら選手権は毎年家のコタツに入って、ミカン食いながら見てきた。けど、今回はその舞台に俺らが立っている。来年もこの舞台に立ち続ける為に絶対勝つ!!」



「立見GO!!」



「「イエー!!」」



 絶対勝利で来年を迎えると、勝也の力強い言葉と共に声を揃えて何時も通りの儀式は済ませた。





「(立見か……初戦を大勝して、2回戦はどう戦うのか)」



 スタンドにはサングラスをかけて変装している、小熊の姿があった。初戦に続いて今日も東豪の試合を、OBとして見守っているようだ。



 彼が見守る中で、2回戦の試合開始の笛が鳴らされる。




 ピィーーー



『立見と東豪の試合が今キックオフ!2年の豪山智春、成海薬都を中心に巧みなパスワークだ!』



 開始からボールを積極的に回していく東豪。そこに成海と豪山が、共に同じ名字の相手のマークに行く。



『この試合は立見、東豪の両チームとも成海君と豪山君がいますからね。実況も一苦労ですよね』



『えー、なので今回は2年の、3年のと呼ばせていただく事になります』




「(同じ豪山だけど、パワーなら俺のが上だな!)」



「ぐっ!」



 立見の豪山と比べれば、東豪の豪山は小柄。左から強く肩でぶつかられ、小柄な方は顔をしかめる。



 すると大柄な豪山に寄せられている彼は、右足の踵でバックパス。一旦後ろの番まで戻された。




「!ロングパス来るよー!」



 番にボールが渡ると、弥一は察知した。小柄なDFが叫ぶと同時に、番が右足で立見ゴールへ向かって、豪快に蹴り上げる。



『中盤のパス回しからバックパス、青山これは物凄いキック力!一気に立見ゴール前へ運ばれた!』



 空高く舞い上がる番のパス。滞空時間が長く、ボールが落下するまでの間に2年の成海が、立見ゴール前まで上がって来た。



「(こいつ高ぇ!)」



 3年の成海だけでなく、間宮も先輩と同じ名字の長身FWをマーク。近づけば彼がいかに高いか、改めて思い知らされてしまう。



 空中戦となって2人が飛ぶも、競り勝ったのは2年の成海。彼の頭でゴール正面の、良い位置に上がって来た2年の豪山にボールが行く。




「(ポストバレバレー!)」



「!?」



 東豪の必勝パターンの一つであるポストプレー。長身の成海が落とし、小柄な豪山がそれに合わせる狙いを弥一はあっさり見破り、落として来たボールを左足でカット。



『2年の成海落とした、っと神明寺インターセプト!神山に素早く渡した!』



 弥一は瞬時にフリーの勝也へパス。左足でトラップして、前を向くと左サイドから翔馬の駆け上がる姿が、勝也の目に映った。



「カウンター!!」



 怒号のような勝也の声がフィールドに響く。それと共に、右足から放たれた左サイドへのスルーパス。




「番!上がれよお前!!」



「え?あ!」



 後ろの東豪GKが番に対して怒りのコーチング。他のDFが前に出てトラップを仕掛けてるのに対し、番はその意図に気付いていなかった。彼だけ上がりが遅く、中途半端となったDFライン。勝也のスルーパスは左の翔馬に渡り、裏へ抜け出す事に成功する。



『神山からのスルーパス!オフサイド無い!水島抜け出してチャンスだ立見!』



「(よぉし!)」



 左から斜めにゴールへ向かって、翔馬はドリブルで侵入。目の前にはGKだけで、いきなり大チャンスだ。



 先制ゴールを狙って張り切る翔馬に、大柄な男が右から迫って来た。



「うぉぉぉ!!」



「うわぁ!?」



 勢い良く助走をつけた状態から、左肩でガツンとぶつかる番。小柄な翔馬の体が浮き上がり、吹っ飛ばされる程のパワーだった。



 こぼれた球を番が追いつき、大きく蹴り上げてクリア。



「ファール!」



 近くにいた立見の豪山は右手を上げて、ファールをアピールするが主審は首を横に振り、ノーファールとジャッジを下す。



『あーっと青山かなり激しいぶつかりを見せたが、ファールは取らない!



『凄まじいですね、水島君と体格差があるとはいえ人の体が浮くぐらいに強烈な当たりでしたが、あれがファールじゃないか……』




「おい翔馬大丈夫か!?」



「受け身は出来たからなんとか……」



 川田が駆け寄り、倒れた翔馬の様子を見れば彼は怪我なく立ち上がって、問題なくプレーに戻れそうだ。



 この辺りは合気道で、受け身の稽古を積み重ねた成果が出ている。




「番、お前頼むわぁ!毎回毎回ヒヤヒヤさせんなって!」



「すいません!どうもオフサイドトラップって苦手で……」



 先輩のGKから怒られ、番は謝罪。今のピンチは番が周囲の意図に気付かなかったせいだが、その後に自ら招いたピンチを止めて、失点を見事に防いでみせた。




「(DFでそういうのが下手なのは中々ヤバいけど、それを補う身体能力ねぇ……結構珍しいタイプかな)」



 自分とはタイプが全く正反対で、テクニックよりパワーで勝負するDF。ラインコントロールが苦手なDFはイタリアだとあり得ないので、弥一は番を珍しいなぁと思いながら、遠目で怒られている彼を眺めていた。



「(とりあえず弱点は勝兄貴や京子先輩がもう気づいたはずだし、動いてくれてるよね)」



 プレーが止まったタイミングで弥一が勝也の方を見れば、立見ベンチに向かう姿が見える。そこで京子と話し、勝也が戻った後に監督代理の彼女は動く。



 早い段階で優也に声を掛け、交代の準備を進めて早々に仕掛けようとしている。

勝也「オフサイドトラップ苦手で、身体能力でゴリ押ししてそれで全国出られるって凄くね?しかも1年」


弥一「あまり苦手なのも困るけどねー。とりあえず彼自身は良い人として♪」


勝也「しかし向こうの成海といい青山といい、海塚もそうだったけどデカい奴がまぁ多いわ」


弥一「180cm超えがもう当たり前のようにゴロゴロ居るから、日本の大型化も進んでるねー」


勝也「180なぁ……遠い世界だわ」


弥一「僕には遠すぎて異次元の世界だよ〜」

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