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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 選手権編
589/652

全国のライバル達が集う開会式

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「実物でけぇ〜……」



 何時もテレビで見てきた憧れの舞台を、勝也は立見専用の移動バス内から見ていた。



 高校サッカーの聖地と言われる国立競技場は今日、多くの人々が寒空の下にも関わらず集い、開会式と開幕戦を観に来ている。立見サッカー部は初戦を大観衆の中、戦うという事だ。



「うわ〜」



「ひえ〜」



 立見は選手権が今回初出場で、誰も国立のフィールドに立った経験は無い。



「(初戦の試合……皆硬くならないと良いけど)」



 京子は初出場で国立に立った経験が無い事を、立見の不安材料の一つと考えている。対戦校だけでなく、会場独特の雰囲気も圧となって選手達を襲う可能性はあった。



「み、皆〜。初出場で国立の大舞台だけど、緊張せずリラックスで楽しみましょう〜!」



「先生が1番緊張してますから」



 初めての大舞台で緊張している生徒達を、幸はなんとかリラックスさせようと声を掛ける。その生徒よりも顧問が1番緊張している事に、すかさず成海がツッコミを入れた。




「選手権の開会式ってどうするのー?」



「どうするのって、お前見た事無ぇのかよ?」



「いやー、あったかもしれないけど忘れちゃってさぁ」



「お前大丈夫か……今日開幕戦なんだから、そこは気を抜かず頼むぜ」



 弥一は数年間、日本にいなくてイタリアに留学中だったので、開会式について疎くなってるかもしれない。軽くため息をつきながらも、マイペースな弟分に勝也は説明する。



「開会式は出場校のチームごとに行進してくんだ。先頭は学校の校旗をキャプテンが掲げて入場してな、お前は皆に合わせて歩いて来りゃ良い。間違っても1人で勝手に走り回ったり途中でコケたりとかすんなよ?」



「流石にそれは起こらないから大丈夫だってー」



 何処か小さな子供に言い聞かせるように、勝也が弥一に注意をしていた。



「後は選手宣誓とか、偉い人が挨拶をするとか、俺らは行進が終わるまで聞いて見守るだけだ」



「退屈そう〜」



「お前その人の前でそれは言うなよ……?」



 勝也もあまり長いスピーチを聞くのは得意ではない。なので弥一が退屈だと言う気持ちも、理解は出来る。だが開会式は全国ネットで流れ、更に近年はネット配信も当たり前となってきて、日本のみならず世界に向けて流れていく。



 なので恥ずかしい姿をもし見せたら、全世界に晒される。それを避ける為にも、行進はしっかり果たさなければならない。



「じゃあ皆、バスから降りて向かいましょう」



 緊張している幸より、監督らしい冷静な京子は部員達へ告げれば、止まったバスから皆が降りて競技場内へと入る。





「うわぁ、凄いねこれ」



 立見の応援団の一員として、輝咲は一足先に国立のスタンドまで来ていた。会場が満員の観客で埋め尽くされ、開会式が始まる前から大きな盛り上がりを見せる。



「他の応援とか凄いですよ!」



「うわぁ、あそこ応援団の数が多っ!」



 輝咲の側に居るチア達も同じように周囲を見回し、応援の規模の大きさに驚かされていた。



「立見は今日、開幕戦もあるから僕達はしっかり彼らに応援を届けようね」



「はい、笹川先輩♪」



「精一杯応援しちゃうよ〜!」



 チア達は輝咲に微笑みかけられ、うっすら頬を赤らめながらも応援に向けて張り切る。彼女達は輝咲のファンで、身近に居てくれる事によって、モチベーションが爆上がりしたようだ。



 そうとは知らず、輝咲は弥一が出て来るであろう、フィールドの方へ目を向けていた。





「めっちゃ凄い数の選手〜」



 周囲がユニフォームを着た選手ばかりと、弥一は立見のダークブルーのユニフォーム身に纏いながら、辺りを眺める。



「そりゃそうだよ。予選を勝ち上がった48校が集まってるからね」



 立見は既に列を作っており、勝也は先頭で校旗を両手に持っていた。弥一は一番後ろの列で控え、近くに居た大門と会話を交わす。



「……気の所為か、俺達見られてないか?」



 同じく2人の近くで並ぶ優也が、自分達を見る視線に気付く。



「そりゃ予選で八重葉の記録を超える、トップの得点決めてるから注目は浴びるでしょー」



 弥一には視線を感じただけでなく、彼らの心の声も聞こえた。




「(立見絶対ダークホースだよな……)」



「(試合よく見とこ、当たるかもしれないし)」



「(当たりたくねぇ〜、海塚でコケてくんないかな?)」



「(また八重葉と立見で潰し合ってほしかったわ。トーナメント別かよ……)」



 多くが立見に注目し、彼らの心の声は人によって色々異なる。立見を警戒して観察を考える者がいれば、途中で敗退しろと望む者もいたりと、弥一は色々な声を聞けた。




「よお、神明寺」



「え?え!?」



 そこに声を掛ける者がいた。声は立見の者ではないと分かり、弥一は声の主へ振り返る。彼の前に立っていたのは、八重葉の列を離れて来た緑帽子をかぶる工藤龍尾だ。思わぬ人物が近づいて来た事に、大門は何で!?と八重葉の列や龍尾をそれぞれ見て驚く。



「工藤さん、あの……勝手に列を離れてしまうのは不味いんじゃあ?八重葉は確か最初に出て来るはずですから……」



 前回覇者の八重葉は、最初に登場する事が確定している。立見より早めの出番なので、戻った方がいいのではと大門が彼に伝える。



「かてぇ事言うなって。始まる前にこっそり戻るし、どうせまだ時間はあるんだ。試合でもねぇのにただ待つのは暇でさぁ」



 どうやらこの天才GKは暇潰しで、立見の元に訪れたらしい。多くの選手達が待機してる中、今の所バレていないようだ。



「……」



 龍尾が余裕そうな笑みを見せてるのに対し、弥一は何時もの笑みを消して彼を見上げる。彼のいる八重葉によって、弥一と立見は今年唯一の敗北を夏に味わっていた。



 その時の事を弥一は忘れていない。



「立見は初戦からきっつい相手になったなぁ」



「海塚でしょ?八重葉も苦戦した程で強いって聞いてるよ」



「おいおい、去年の事を言ってんのか?」



 海塚は八重葉も手を焼く程の相手。弥一がその事を言うと、龍尾はクックッと笑う。



「んな古い情報をアテにしてんなら、海塚の情報とか対策もたかが知れてそうだな」



 1年前と今じゃ全く違う。そう言う龍尾の表情は、絶対的な自信に満ちていた。



「見ろよ。海塚のあの姿、見た目すげぇ筋肉だろ?」



「うん、着てても分かるぐらいに凄い」



 弥一と龍尾の視線は、列に並ぶ屈強な集団へと向けられる。周囲と比べて、ユニフォームの上からでも分かる程の強靭な筋肉だ。



 彼らが鹿児島代表の海塚高校で、立見と初戦を戦う相手となる。



「あれでテクニックも疎かにせず、磨きをかけたりとチーム力は増してる。勿論鍛え上げたパワーは健在のままな?ホント、ストイックな高校でマコ向けだよなぁ……俺はマジ無理」



「僕も蕎麦ばっかは無理だから同感」



「それも味気ねぇトッピング何も無しなヤツで、菓子も全く食わねぇ。しかも男女交際禁止とかまであるみたいだし、娯楽はなんだよ?って感じだ」



 その部活の為に様々な食べ物や娯楽を断ち切って、ひたすら練習や試合を積み重ねる。ひたすらストイックで、弥一や龍尾には到底真似が出来ない。



「ま、けど立見は見た所体格ある奴が限られて全体的に小柄だったり細い奴が目立つから相性悪いだろうよ」



 体格に不安ある立見が海塚とぶつかり合えば、高確率で海塚が競り勝つ。立見にとって不利な試合だろうと、龍尾は見ていた。



「あの、工藤さん。そろそろ時間になりそうですよ……?」



「分かってるって、そんじゃグッドラック。初の国立の舞台を楽しんどきな」



 もう先頭の行進が始まりそうな雰囲気に、大門はそわそわしながらも龍尾へ伝えれば、彼は一言伝えてから背を向けて八重葉の列に向かう。




「立見が決勝まで行って、八重葉が途中で負けるとか無しにしてくださいねー」



 その時、弥一が龍尾に向けて言い放った言葉。それは歩く彼の足を止めさせた。振り向けば、弥一は不敵に笑っている。



「1回戦を勝ってから言えよ、ビッグマウスの小僧」



 互いの視線が合えば火花が散る。やがて龍尾から視線を外せば、今度は振り返らず八重葉の列に戻って行った。




「さ、決勝まで負けられないから1回戦勝とうねー。あ、決勝でも負けないけど♪」



「あ、ああ。とりあえずまずは開会式だからね?」



 大門や優也に向けた顔は何時もの弥一。陽気な笑顔があって、龍尾に向けた顔はもう何処にも無い。



「(聖地に飲まれてる場合じゃない、か)」



 優也から見て、弥一は初の国立で全然緊張してる様子が無かった。大門の緊張を解す余裕もあるぐらいだ。



 彼が決勝に行くつもりなら、自分もそこを目指して迷わず突っ走る。優也は静かに闘志を燃やしていた。





 開会式は始まり、入場ゲートを潜り最初に登場したのは、前回覇者の八重葉学園。絶対王者の登場に、満員のスタンドから大歓声が上がる。



『夏の総体では2連覇を果たした八重葉学園。高校の3大タイトル全てを獲得し、3冠王者となった白き軍団はさらなる記録をこの冬の選手権で狙います』



『圧倒的な攻撃力に加えて、守備でも去年からずっと無失点が続いてますからね。高校サッカーを長く見てきましたが、歴代最強の高校と言っていいかもしれません』



 キャプテンの大城が校旗を持って先頭を歩き、村山が優勝旗を持つ。それに照皇達が続いて、堂々とした行進を見せる。歩いているだけでも、王者としての貫禄が漂う程だった。





「そろそろ俺らの出番だ、行くぞー」



 校旗を持った勝也が後ろを振り返り、出番が近い事を伝える。その後に立見の出番が来て、勝也は入場ゲートを通ると校旗を掲げて歩く。



 その瞬間、立見に向けた声援が飛んで来て彼らは歓声に包まれながら行進。



 冬の高校サッカー選手権が始まる。

弥一「食べ物に厳しい縛りあっただけじゃなく恋愛も駄目なんだー」


田村「それは地獄!健全な男なら絶対そういうの考えるもんだろ!?」


弥一「あー、女の子大好きな田村先輩には超絶辛いですねー」


田村「おいおい、今は彼女一筋だぜー?俺に言わせりゃ、可愛い女の子と過ごす癒しこそが男を強くさせるもんだ!」


弥一「そういうもんですよねー(心の中がめっちゃエッチな事考えてるけど)」


田村「ん!?あそこのチア今見えた!確実に見えただろ!」


間宮「立見の恥を晒す前に早く歩けやー!」

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