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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 選手権編
575/656

サイキッカーDFは敵味方問わず惑わせる

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『神明寺インターセプト!西久保寺の不意打ちを阻止してカウンター返しだ!』



 弥一の蹴り出したボールは左サイドの成海へ、一直線に速い球が向かっていた。



 成海が左足でトラップして前を向くと、ドリブルで左サイドを進む。辻が上がっている分、やや守りが薄い今がチャンスだ。



『成海が左サイドを切り裂く!立見チャンスに、おっと倒された成海!これはファールだ!』



 単独での突破に対して、飛坂が成海を後ろから倒してしまう。これには主審もファールの判定を取れば、飛坂を呼んで注意する。カードまでは出ないらしい。




「(防いだのは良いが、セットプレー……これを凌いだとしてもこの後の攻撃をどう繋げるか?あのカウンターを一度見せた後の立見に同じ手が通じるとは思えない……)」



 ベンチに戻らないまま、高坂はフィールドに近い位置から戦況を見守っていた。



 本当だったら先程のカウンターが最大のチャンス。それを弥一に潰され、点を取るのがより難しいと感じる。彼の読みが優れている事は知っていたが、想像以上に鋭い。



 改めて立見の守備が堅いと知れば、その要となってる弥一がボールの所まで歩いて行く。



『おっと?後半FKのチャンスに神明寺がついに上がって来た!しかし位置は正面ではなく左サイドから、流石に神明寺といえど直接は厳しいか?』



『いやー、でも彼なら狙って来るかも分かりませんけどね。何しろ彼はマジシャンですから、何が飛んで来るのか想像つきませんよ』




「流石に角度を思うと直接は狙い難いか?」



「いや、あいつなら曲げて狙えるだろ。直接は無いと思うのは危険だ」



 キッカーの位置に立つ弥一をゴール前から見ながら、栄田と辻がどう蹴って来るのか話し合う。PKとはいえ、龍尾からもゴールを決めている弥一のキック精度を思えば、曲げて直接狙って来る事は可能だろうと。



「曲げて来るとしたら壁を越えて右の方かな」



「じゃあそのコースは俺が潰そう」



 直接狙うと想定し、弥一は自分達から見てゴール右隅辺りを狙って来ると考えた。飛んで来るコースには辻が立って、ブロックするという事で決まる。



「高いボール来るとしたら豪山とかだよな?そこは俺に任せろ」



 弥一がハイボールで来た時は豪山で来るだろうと、土門は彼のマークに張り切っている様子。



「川田は俺が抑える。けど高いのが来るとは限らないからな?低い方にも備えるぞ」



 必ずしも高く蹴って来るとは限らない。低いボールを蹴って欺いて来るかもしれないと、栄田が警戒するよう声を掛けていた。




「(そう来るんだ?じゃあこっちでやっちゃおうかな)」



 心の中で彼らの考えを読み、弥一の方はこう行ってやろうと悪巧みが始まっている。



「こらー!武蔵何やってんの!」



「え!?」



 急に弥一はエリアの外側で構えていた武蔵へ、怒ったような声で注意する。言われた武蔵の方は何かやらかしたのかと、困惑した表情を浮かべていた。彼だけでなく弥一の前に立つ、西久保寺の壁2人も呆気にとられる。



「そこじゃないでしょー!?もっと向こう行って向こう!」



「向こうって、あっちもう居るから良いだろー!?」



 中央じゃなく右サイド側に行けと、そういった仕草を見せる弥一に武蔵は納得出来ず必要ないと言い返す。



『おっと?立見は神明寺が何やらそこは違うというような事を言ってますか?』



『上村君も納得いかなそうな顔してますね。こんな時に仲間割れが起きてしまったんでしょうか?お互い落ち着いてプレーしてほしいですけどね』




「おいおい、何やってんだあいつ?」



「武蔵のポジションが気に入らないのかな?あそこは別に中央へ張るの間違ってないと思うんだけど……」



 突然1年同士が言い合いになって、カウンターに備え、下がっている間宮と影山も訳が分からないという感じだ。



「流石に一旦落ち着かせた方が」



「待て蹴一」



 成海が弥一を落ち着かせに行こうとするが、勝也はそれを片手で制した。



 ひょっとしたら何かやる。何となく弥一を見てそう思った勝也が、彼らのやり取りを見守る。




「だからあっち田村先輩居るんだって言ってるだろ!?」



「そこも人居るから向こう行けって言ってるじゃんかー!」



 弥一が武蔵と言い合いをしていた時だった。



 彼は向こう行けと言いながら、ボールに向かって右足のインフロントで蹴っていたのだ。



「!始まってるぞ!」



 それに気付いて高坂が、西久保寺ゴール前へ向かって叫ぶ。



 ボールは高く浮き上がり、壁の2人の頭を越えて豪山の方に向かう。



「(やっぱりそっちか!)」



 豪山が飛ぶと共に、土門もハイボールに向かってジャンプ。2人が飛び上がって、ヘディングによる空中戦が繰り広げられようとしていた。



「(高っ!?)」



「(届かない!?)」



 ただ豪山と土門の頭はいずれも届かず。弥一の蹴ったボールが上がり過ぎてミスキックと、2人の頭が合わなかったのを見て、選手達はその考えが頭を過ぎる。



 球が流れて行く、と思われた時。命が宿って生きてるように、ボールが鋭く左下へ落ちていた。



「!?」



 これに小平が気付いた時には既に手遅れ。ダイブする事も出来ず、球は右上のゴールポスト内側に直撃しながらも、西久保寺ゴール内のラインを割って入る。



『は、入った!後半ついに試合が動きました!左サイドでのFKをなんと神明寺弥一が直接決めた!これは全国への道に大きく近づく先制点だ!!』



『手前じゃなく奥の方を狙いましたか!というか今の魔球ぐらい曲がってませんでした!?こんなの魔術師ですよ!』



「弥一!弥一!弥一!」



「待たせてゴメンー!やっと点取れたよー!」



 超満員のスタンドから大歓声が沸き、その中で弥一コールも聞こえて来た。その弥一は立見スタンドへ一直線に走り、喜びを爆発させている。



「弥一お前さっきの喧嘩はなんだったんだよー!?」



「えー!?向こう騙そうと思ってやった喧嘩のフリだよフリー!思ったより武蔵が食いついて来るからちょっとどうしよ?ってなったけどー!」



「僕のポジションおかしいのかと本気で思ったじゃないか紛らわしいー!」



 ゴールの喜びと共に、勝也が弥一へ先程の喧嘩について問えば、あれは相手を騙す為にやった芝居。言われた武蔵が予想外にヒートアップして、途中本気の口喧嘩になりかけていたが。



 巻き込まれた武蔵は弥一の頭を、思いっきりぐしゃぐしゃ撫でる事でおあいこにする事にした。




「くっ……!」



 何故あの時見破れず飛びつけなかったのか、反応出来ず棒立ちで弥一にゴールを許してしまった小平。情けない自分への怒りが込み上げ、頭に血が上ってゴールポストを右拳で思いっきり殴ろうとしていた。



「落ち着け馬鹿!」



「っ!?」



 振り上げた小平の右腕、その手首を栄田が掴んで止める。



「俺は利口な方じゃねぇがな。此処で勝手にその手を負傷して途中交代でいなくなったら、お前俺よりとんでもねぇ大馬鹿野郎になっちまうぞ」



「GKのせいとかじゃないだろ今の失点は。あのキックを見抜けなかったこっちも責任あるし」



 土門や辻がそれぞれ声を掛け、小平を落ち着かせようとしていた。失点して悔しいのは彼だけでなく、西久保寺全員が同じだ。



「点は取り返してみせるから、切り替えて立ち直れよ。それが今のお前の仕事だ」



「っ……はい……!」



 どうにか振り上げた拳を下ろした小平。栄田の言葉には、小さく頷いて応える。




 絶対取り返して追いつき逆転する。西久保寺イレブンに強い思いが宿るのは、弥一にだけよく伝わっていた。



「(逆転どころか同点も絶対嫌だよ。1点で終わりにさせてあげるね♪)」



 誰よりも無失点に拘り、失点を嫌う弥一。相手に1点たりとも許す気は無く、完封でこの決勝を終わらせる事を目指す。



 静かに笑みを浮かべれば、弥一は再び動き出す。

武蔵「演技するなら前もって言ってくれよ!」


弥一「敵を欺くにはまず味方からって言うじゃんー。知らないからこそリアリティあって向こう騙されてくれたと思うよー?」


武蔵「あ、確かに……」


川田「論破されるの速いなおい!」


翔馬「僕達もいずれ弥一と口喧嘩になっちゃうのかな……?」


弥一「さてねー。次は誰がターゲットかなぁ?」

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