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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 選手権編

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仕掛ける者達

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 ボール支配率は圧倒的に立見が高く、シュートも何本かこの前半に撃てている。



 それでもゴール前を大人数で固めた西久保寺イレブンが防ぎ続け、両サイドからの攻撃も大型の左SDF前田、右SDFに今回コンバートした辻を中心に止めていた。



 このまま前半終了の笛が鳴らされる。



『此処で前半終了の笛!攻撃力の高いチーム同士がぶつかったらどうなるのか、試合前はそんな予想でしたが西久保寺が超守備的な陣形で臨み、0ー0で前半を折り返しました』



『西久保寺の方はシュート数0のままですね。後半に反撃するのか、読めませんねこの試合……』




「お前ら攻撃サッカーだろー!?」



「急にカテナチオの真似事しても似合わないから攻めろよ!」



 西久保寺のシュート数0と、消極的なサッカーで前半を終えた彼らに、一部の観客からは野次が飛んで来る。




 立見 ロッカールーム



「あいつら引き過ぎじゃねぇか?」



「全然点を取る気無いっつーか、攻める気も無い感じっスよねあれ」



 ドリンク片手に豪山と田村が揃って、西久保寺のシステムに攻撃する気が無いという印象を持つ。



「リトリートは東京で言えば北村がよくやる手だけど、それ以上に西久保寺は引いてたな」



 守備的なチームで言えばと、成海はそのチームを思い浮かべる。今日の西久保寺はそれを超える程に守備的だったと、成海も豪山達と似た前半の印象を持つ。



「前半俺達を精神的に惑わせる為にああやって、後半に何時もの布陣に戻すとかじゃねぇか?」



「うーん、それか本当に点を取る気無くてPK戦狙いでこのままずっと貫くって可能性もあるよね」



 間宮と影山が西久保寺の作戦はこうじゃないかと、それぞれ予想する。



「翔馬ー、田村先輩ー、ちょっと良いですかー?」



「ん?」



「どうしたの弥一?」



 そこへ弥一が両サイドを守るDF2人に声を掛ける。



「多分後半は……で……2人は……」



「ふんふん……」



「そう来るのかな……」



 田村と翔馬に弥一は後半に向けて、色々と伝えていた。





 西久保寺 ロッカールーム



「よし、立見に前半無失点は上出来だ!皆よくやった!」



「危ない所あったけど小平よく守ったー!」



「痛いですって……!」



 ロッカールームに戻れば、栄田は立見の攻撃を凌いだイレブンを労う。土門は好セーブでチームのピンチを救った守護神、小平の頭を乱暴に撫でている。



「先輩達がDFに入ったからどうなるかと思いましたけど、案外守備行けますねー!」



「なめんな、攻撃しか能が無い訳あるか。今時のサッカーは守備出来なきゃ通じないし」



 前田が陽気に笑って栄田と辻に、良い守備だったと右手親指を立てた。その辻は出来て当然だと答え、スポーツドリンクを飲んで喉を潤す。



「皆、後半はちょっと覚悟した方が良い」



 真剣な顔つきの高坂は皆へ注意するように言うと、部員達は相手の攻撃が今以上に来るから、気を引き締めるように言うかと思った。だが彼の言葉は違う。



「本来の攻撃サッカーを捨てて一部の観客が僕達に不満を持ち、ブーイングを浴びせるかもしれない。守ってばかりじゃなく攻めろ!ってね」



 現に前半終了が近づく時間帯、自分達に対して野次が飛ぶようになってきた。このまま続ければ、後半はもっと酷い野次が飛んで来るかもしれない。



「そんな声は一切気にするな。これでブレてしまえば、それこそチームが総崩れになる恐れがある。勝つ為に最後まで作戦を貫くんだ」



「「はい!」」



 高坂の言葉に対して、西久保寺の選手達は声を揃えて返事する。



「後半立見が前に出て来た時、チャド。分かってるよな?」



「勿論ですよ!口酸っぱく言われましたし!」



 辻と前田が作戦の確認をし合い、互いに頷けば席を立つ。彼らはこのまま守りきって、PK戦に持ち込むつもりは無い。立見の隙を突いての1点を虎視眈々と狙っていた。




『両チームが戻り、後半戦のキックオフを迎えます。立見が後半にゴールを決められるのか?それとも西久保寺がこのまま守るのか?はたまた攻めに転じるか?後半はその辺りが注目される事でしょう!』



『守れてはいますが、向こうは得点どころかシュートがありませんからね。攻撃は最大の防御と言いますし、攻めても良いと思います』



「西久保寺ー!後半はゴール引っ込まずに前出ろよー!」



「攻撃しろー!」



 消極的なサッカーに不満を持つ観客から、攻めろという声がフィールドの選手達へ向けられた。



 異様な雰囲気のまま、決勝の後半戦キックオフの笛が鳴り響く。



 ピィーーー




 後半が始まり、相変わらずボールを持つのは立見。西久保寺の方は相変わらず、超守備的な陣形のままだ。



「(後半に歳児君の出場は考えたけど……今回は彼の足を活かすのが難しい)」



 京子は後半の頭から優也を出す事を、西久保寺のフォーメーションを知る前は決めていたが、今の彼らのサッカーを見て彼は出さずに右SHの岡本に代わり、武蔵を投入して後半戦を迎える。



『中盤で立見、繋いで後半から入った右に上村へ!高いクロスが上がって、土門弾く!』



 右サイドから武蔵が精度の高い右足から、アーリークロスが蹴られて川田をターゲットにする。これを土門が頭で弾き返し、セカンドを勝也が拾えば西久保寺の飛坂が前に立ち塞がった。



「(撃たねぇって!)」



「!?」



 勝也が右足でシュートに行くと見せかけ、キックフェイントで切り返して躱す。飛坂を抜けたのは良いが、その先のゴール前は多くの西久保寺選手によって、後半もがっちりと守っていた。



 豪山や川田のマークは厳しく、成海の方もマークされている。パスが出せないと見れば、一瞬の判断から勝也はそのままドリブル。固めている中央に向かって進む。



『これは神山、個人技で中央突破を狙う!』



「(後ろから飛坂追ってる!このまま挟み撃ちだ!)」



 勝也の前に立ち塞がる栄田。彼の視線は飛坂が後ろから、勝也を追いかける姿を捉えていた。自分が此処で足止めすれば、2対1の状況になって有利だ。



「っ!?」



 だが勝也は足を止めないまま、クルッと右回りのターンで栄田を躱す。



「(チャンス!!)」



 これでシュートコースは出来た。栄田が再び前に立つよりも先に、勝也は右足でシュートを放つ。



「(やべ!?)」



 右足でボールを蹴った瞬間、彼は確信してしまう。このシュートは失敗だと。複数の西久保寺がすぐ迫って来る状況下で、勝也は急ぎ過ぎた。



 ボールは力無く西久保寺ゴールへ飛ぶ。力が上手く伝わらなかった球を、小平が正面で難なくキャッチ。



「(勝!)」



「!」



 小平が左サイドへ目を向けた時、彼はその方向へ右手で思いっきりスローイング。キャッチしてから僅か1秒程の出来事だった。



『小平キャッチ!すぐに投げ、っと!?前田何時の間にか上がっている!』



『反対サイドの辻君も上がってますよ!これカウンターのチャンスですね!』



 左サイドを守っていた前田が自陣での混戦の最中、前線へ上がって小平からのボールを受け取っていた。右サイドからも辻の上がる姿が見える。



 西久保寺は前半ではなく後半、立見が攻撃に出て守備が手薄な時を待ち続けた。ハーフタイムで対策される事を避ける為、ずっと守備に集中していたのも攻撃する気が無く、失点の心配が無いと思わせる為。全てはこの不意打ちへと繋げる布石だ。



「(本当に来たし!)」



 このカウンターを阻止しようと、田村が前田と並走してショルダーチャージを仕掛ける。



「っ!?(かってぇ!!)」



 肩からぶつかりに行った時、田村は強靭な筋肉に阻まれていた。前田はアメリカと日本のハーフで、日本人離れしたフィジカルを誇る大型SDFだ。



「げっ!?」



 ボールを持つ前田が逆に体をぶつければ、田村は弾き飛ばされる。これでフリーになったと思ったら、田村が競り合っている間に間宮が迫って来た。



 反対サイドには辻が上がって、翔馬が追いかけている。これを見た前田は左足で強めのボールを蹴った。右サイドの空いてるスペースへ、地面スレスレを行くシュート並の速さのグラウンダーパスだ。



「(速い!?)」



 パスが出された直後、辻が更にギアを上げて翔馬を追い越す。弥一に言われてマークしていたが、翔馬のスピードは辻に追いつけていない。



「(作戦成功だ!!)」



 前田からのパスを受け取れば、自分の前はGK以外誰もいない。奇襲は成功だと辻は確信する。





「ナイスパース♪」



「な!?」



 その辻を、パスを出した前田を驚愕させるような事が起きた。



 弥一がコースに飛び込み、前田の強烈なパスを右足で完璧にインターセプトしていたのだ。



「止まるな!奪いに行け辻!前田!」



 足を止めていた両サイドへ、高坂はベンチから立ち上がって前に出れば、声を上げて弥一からボールを取れと伝える。



「っ!」



 辻、前田の西久保寺が誇るスピードある2人が迫るも、既に遅い。



 不意打ちも許さないサイキッカーDFが、右足で蹴り出して再び立見の攻撃が始まる。

弥一「あ〜、やっぱ安藤先輩お手製のハチミツレモンドリンク美味しい〜♡」


安藤「いや、今日は俺違うぞ」


彩夏「安藤先輩からレシピ教えてもらって私達マネージャーが作りました〜」


田村「良いねぇ、女子の手作りってやっぱ男としてはテンション上がるもんがあるよなぁ!」


安藤「あ、お前のだけは俺。数が合わなかったから急遽追加した」


田村「俺だけお前かい!」


弥一「田村先輩思いっきり男の手作り味わいましたねー」

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