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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 選手権編
572/656

秋の東京予選決勝、立見VS西久保寺

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「全試合2桁って何だこれ!?」



「夏に秘密特訓とかしたのかよ立見」



 部室にてスマホで立見の試合を動画再生し、毎試合信じられないぐらいにゴールを量産している立見に、西久保寺の2年でキャプテンを務める栄田雅史は驚きを隠せない。



 隣で見ていた守備の要の土門源一が、立見は密かに凄まじい特訓をしていたのでは?と読んでいた。



「総体の時と比較してもプレースピードが明らかに増してます。特にキャプテンの神山勝也は見違える程ですよね」



 ノートPCで一通り立見の動画は見終わり、かけていた眼鏡を外す1年生GKの小平勝。



「多く点を取ってるけど、俺らだって得点は結構取ってんだからな。攻撃力ならこっちが上だ」



 自分達のサッカーの方が高い攻撃力があると、チーム随一のスピードを誇る辻道也は強気の姿勢を崩さない。



「けど立見はそれ以上に守備凄ぇ堅いからなぁ……今までみたいに攻めて上手く点を取れるかどうか」



「あ〜、わかんねぇ!いっその事よぉ……」



「ええ〜?」



 難しい顔で腕を組む栄田に、土門は何か思いついたようで皆にそれを伝えていく。彼の考えた作戦に小平は上手くいくのかと、疑っている様子だ。



「いや、面白いかもしれないな」



 そこに今まで見守っていた、監督の高坂学が口を開く。部員達が監督に注目すると、彼は立見戦についての作戦を伝える。



「という事で皆はどう思う?」



 西久保寺サッカー部は生徒が中心のサッカー部。高坂はこれで行くと強制はせず、部員達へ今の作戦についての意見を求めた。



「立見の意表を突けるかもしれないですね。向こうは俺達の事をそう思ってる可能性高いと思いますから」



「相手はあの八重葉も完封してるし、勢い任せで行くよりそっちをやってみるかってなりました」



 栄田、辻と西久保寺の攻撃の要2人が揃って賛成。他の部員達も反対は特に無く、立見との決勝戦はこれで行こうと決まる。



「おおっし!立見との決勝戦、絶対勝つぞー!」



「おおー!」



 栄田の言葉に皆が声を上げ、士気を高めてから練習に向かう。破竹の勢いで勝ち進む立見に対して恐れは無く、決勝戦を西久保寺は勝利で飾って全国初出場を狙う。





「決勝の西久保寺は超攻撃サッカーを得意としたチームだ」



 立見サッカー部は決勝戦に向けて、部室でミーティングを行う。勝也から西久保寺について聞かされると、その後に京子がパソコンを操作しながら話す。



「向こうも何試合か2桁得点をしていて、攻撃力の高さは都内随一。その一点だけは桜王、真島を上回ってる」



 モニターには西久保寺の試合が映し出され、準決勝で音村学院を相手に大量得点。6ー0で勝利して決勝進出を決めた試合だ。



「FWの栄田や辻を中心にあいつらはリスク覚悟でどんどん攻めて来る。去年は目立ってなかったけど、今年は総体予選でも上位まで勝ち上がったりと急成長してるチームだな」



「そうさせているのは監督の高坂学」



 勝也と京子が話す中、モニターには腕を組んで試合を静観する高坂の姿が映し出される。



「確かこの人元プロですよねー?J1の東京アウラで高速サイドアタッカーで活躍してリニアって呼ばれてたの聞いた事ありますからー」



 高校サッカーに疎い弥一だが、高坂の事は知っていた。彼は元プロでJ1リーグの東京アウラで、SHとして活躍していた名選手だ。



「ああ、兄貴と同じチームの先輩繋がりで俺も会ってる。間近で試合も見たけど、凄ぇ速かった」



 答えたのは勝也の方で、彼は太一を通して高坂と知り合っている。当時の事を思い返せば、高坂が現役の時に試合でサイドから高速で攻め上がったり、素早く戻って守備にも参加と攻守において彼は優れたプレーヤーだった。



「あの人、試合で怪我が無かったら30歳の今も現役で続けていたはずですよね……」



「……そうだな」



 影山の言葉を聞いて勝也はその時の事を思い出す。試合中に相手選手のスライディングを右足に受けて、高坂は大怪我を負ってしまう。彼はそれで全盛期の走りが二度と出来なくなり、24歳という若さで早過ぎる引退をしていた。



 彼の引退会見を開いた時の顔は忘れられない。あの時の彼はこの世の終わりを思わせる絶望に満ちた顔で、最悪自殺もやりかねないと、ファンから心配される程だった。



「分かってるとは思うけど、高坂さんの指導受けた西久保寺は此処までの戦いみたいに行ける可能性は限りなく低い」



 此処まで立見は2桁得点での大差と無失点で勝っているが、勝也は高坂の居る西久保寺まで、すんなり行けるとは思っていない。



「いくら大差で勝っても此処で負けたら全部水の泡だ。決勝戦、全力で西久保寺をブッ潰すぞ!」



 絶対勝つという勝也の言葉に皆が応え、立見サッカー部は決勝戦に向けて準備を進める。






 東京予選Aブロック決勝戦当日。此処まで全試合2桁得点を叩き出した立見、超攻撃サッカーで大量得点を重ねる西久保寺、決勝の試合会場は異例の超満員となっていた。



「予選から凄い人来てるよ〜」



「総体の予選より多くねぇ……!?」



 立見専用の大型移動バスが会場に到着すれば、弥一が窓から会場前に居る人だかりを眺め、共に窓から見た川田は圧倒されそうになる。



 選手達がバスから降りて会場内へ向かい、カステラで最後のエネルギー補給を各自が済ませた。後はミーティングで最終確認を行った後、アップの為に決勝のフィールドへ足を踏み入れる。




「立見ー!」



「今日は何点入れてくれるんだー!?」



 立見イレブンが姿を見せると、彼らに向かって様々な声援が飛び交う。その中で立見の大量得点、この試合でも2桁得点が見たいという期待の込められた声が目立つ。



 決勝まで全試合2桁得点での勝利と、派手な勝ち方を立見はしてきた。それがSNSでも広がり、トレンドとなるぐらいに注目されている。




「凄い人だなぁ……」



「うん……」



 決勝戦とはいえ、予選で会場を埋め尽くす程の人が集まって盛り上がりを見せる光景に、先程の川田と同じように翔馬や武蔵もアップを忘れ、スタンドを眺めていた。



「国立はもっと多くの人が見るぞ」



 緊張してそうな1年2人に勝也が声を掛ける。彼はこれより更に先、高校サッカーの聖地と言われる、国立競技場を既に見据えているようだ。



「これくらいで飲まれんなよお前ら」



「「はい!」」



 1年2人は揃って勝也に返事すれば、アップの為に体を動かしに走る。



 そこへ西久保寺の選手達も入って、彼らもアップを開始していた。ベンチにはマネージャーやコーチと話す、高坂の姿も見える。



 両チームのアップが終わって、一度ロッカールームへ引き上げれば決勝戦開始の時は近い。





『まるで選手権の本戦を思わせる異様な熱気!東京最強の攻撃力を持つ者同士がそうさせるのか!?此処まで予選全て2桁得点の立見高校とそれに次ぐ得点を重ねた超攻撃サッカーの西久保寺の東京予選Aブロック決勝戦となります!』



『西久保寺の大量得点にも驚かされますが、立見の全試合2桁得点は異常ですね。しかも無失点と、高校サッカーも此処まで進化してしまったんだなぁと思わされますよ』



 入場ゲートを審判団が通って、フィールドに入ったのに続き両選手達も後に続く。決勝の会場は大歓声に包まれていた。



 立見のキャプテン勝也と、西久保寺のキャプテン栄田が審判団の前に来てコイントスが行われる。結果は立見ボールのキックオフが決まり、両キャプテンは握手を交わして互いの円陣へ向かう。




「立見GO!!」



「「イエー!!」」



 勝也の掛け声に他のメンバーが声を揃え、皆がそれぞれのポジションに向かう。




「……ん?」



「あれ〜?」



 その時、弥一と大門が後方から西久保寺の姿を見て、2人とも違和感を感じた。超攻撃な西久保寺にしては、全体的にポジションが皆下がり気味のように見えると。




『此処で両選手のフォーメーションが届きました。立見は何時も通りの4ー5ー1で、西久保寺が……え?』



『これは……どういう事でしょうか』



 西久保寺のフォーメーションに実況だけでなく、スタンドもざわついていた。



 超攻撃サッカーで知られる西久保寺は4ー2ー4と、4トップを組んで来たがこの試合に関してだけは違う。



『西久保寺の決勝戦のフォーメーションは5ー5ー0、ゼロトップです……!』



 中盤5人の5バックでFW無しのゼロトップ。西久保寺は今回今までと真逆のサッカーで臨む。



 キックオフの笛が鳴り響き、かつてない破竹の勢いで勝ち進む高校と、これまでのフォーメーションから変えて奇策に出る高校の戦いが始まる。

弥一「リニアとか異名って何時の間にか付けられるもんだねー、歳児タイムとか立見の人間発射台とかー」


勝也「そうだな、そういや兄貴も何か異名みたいなのあったかな?」


太一「いや、俺は特には……」


弥一「雑誌に太一さん中盤の頑張り屋って載ってますねー」


勝也「へぇー、ボランチだからそりゃ名誉な事じゃねぇの?」


太一「そうだろうけど、あまり連呼されるのも恥ずかしい……」

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