覚醒した軍団の快進撃
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
2次予選の初戦で本橋を相手に、14ー0という記録的な大差で下した立見。2回戦は壁代高校との対戦で、壁代の堅守相手なら流石にそこまで点は動かないだろうと、大方の予想はそれだった。
「どらぁぁーーー!!」
川田の気合の雄叫びから、ゴール前に放り込む超ロングスロー。40m先まで向かうボールに、豪山が飛び込んで頭で合わせる。
ヘディングがDFに当たってボールが零れた所へ、勝也がいち早く拾って即座に右足を振り抜く。DFの伸ばした足やGKの伸ばした手を躱し、ボールはゴール右下に突き刺さってネットを揺らした。
「すげっ!この試合もゴールラッシュだ!」
「壁代相手にこんな取れんのかよ!?」
スタンドの観客達がまさかの展開に驚き、興奮している。堅守で知られる壁代が、前半の時点で既に4点も取られていたのだ。
豪山が1点を決めて川田も2ゴール。そして勝也がこのゴールで4ー0と壁代を大きく突き放す。
「はっ……はぁ……立見こんな強かったっけか……!?」
「総体の時と……全然違うじゃねぇか……!」
シュート並の速いパスに翻弄され、壁代の方は対応が追いつかない状況だった。なんとか後半守備を立て直そうとするが、後半から登場の優也が疲労したDFの隙を突き、ライン裏へ飛び出せばGKとの一対一をきっちり決めていた。
「取れ取れー!相手に隙あって取れそうと思ったらガンガン行って良いぞー!」
隙があれば行けと勝也が声を掛ける。それに合わせて立見はボールを奪取すれば、再び速攻を狙う。
前半で4点だったのが後半は6得点、結局この試合も2桁と2戦連続で記録していた。
立見10ー0壁代
歳児3
豪山2
神山2
川田1
成海1
影山1
マン・オブ・ザ・マッチ
歳児優也
立見の3回戦は東京の名門校、水川学園。立見の怒涛の勢いを、名門校の名にかけて止めようと試合に臨む。
「5番5番ー!」
中盤で混戦となり、弥一が上がって来る選手に気づけば、その近くに居た成海へコーチングで伝えて阻止。水川得意の速攻を決めさせず、逆に立見が仕掛けて攻め込む展開となっていた。
「うおっ!?」
右サイドから田村がゴール前へ走る勝也に地を這うパスを送り、それを撃つと見せかけて軽くジャンプで飛び越えれば、奥に居た川田が左足のインステップで蹴る。エリア外からの弾丸シュートに、勝也が蹴ると思っていたGKは反応が遅れ、水川のゴールネットが大きく揺らされていく。
「(選手一人一人がレベルアップしてる……個人技も、組織も全部!)」
立見の全てが向上していると、戦っている水川は身を持って感じた。それに気付いた時には既に5ー0とされた後だ。
「DFも負けずに完封行くぞー!(神山先輩達取ってんだ、ならぜってぇ守る!)」
「(間宮先輩めっちゃ燃えてる〜)」
間宮が闘志を前面に押し出し、DFを鼓舞する。内なる心では勝也達の取ったゴールを絶対守ると、燃え滾る彼が弥一によく伝わっていた。
名門校と言われた水川にまで2桁得点と、予選から立見への注目度は一気に増すばかりだ。
立見11ー0水川
豪山2
歳児2
川田2
成海1
田村1
神山1
上村1
鈴木1
マン・オブ・ザ・マッチ
川田保
かつてない快進撃が何処まで続くか注目される中、立見の準々決勝の相手は亀岩高校。東京予選のダークホースと呼ばれ、此処まで勝ち上がって来た。
FKのチャンスを得た立見。ゴールまでは30m程あって、狙えると思われた時に弥一がキッカーの位置に近づく。
弥一がキッカーとしてかなり危険である事は、東京中の高校が知っている。彼がキッカーとなれば、警戒心は高まってきた。隣には勝也が立って2人はヒソヒソと打ち合わせを行う。
「(神山か?最近乗りまくってるし……いや、神明寺がここぞという所で蹴るパターンも……)」
「(どっちだよこれ!?)」
どちらのタイミングで飛ぼうか迷う亀岩。立見のFKが開始された時、勝也が得意の右足で蹴る。球が壁の右側の頭上を越えれば、ボールは右のゴールポスト横へ外れそうなコースから、左に曲がってゴール左を捉えた。
GKのダイブから懸命に伸ばす腕も及ばず、勝也がFKでゴールを奪う。
「勝兄貴FK上手くなったねー!コースちょっと甘めだけど♪」
「ゴール祝福かと思ったらそうじゃねぇのかよお前ー!」
勝也が得点を決めて弥一が抱き着き祝福。そこに蹴るコースが甘いと指摘もして、勝也は弥一の頭をくしゃくしゃと撫でた。
この1点から立見の攻撃が加速し、再びゴールラッシュが始まる。立見の速さについて行けず、亀岩は更に失点を重ねてしまう。
今回は特に優也が大爆発。後半の頭から出場してゴールを量産すれば、後1点でダブルハットトリックという驚異の5ゴールを決めてみせた。
「惜しいなー、あの外した1本が入ってればそうなってたかもしれないよなぁ」
「……」
武蔵と話す中、優也は外した1本を悔やむ。密かに6点を狙っていた事は、弥一にしか分からなかった。
立見12ー0亀岩
歳児5
豪山2
川田1
成海1
神山1
影山1
鈴木1
マン・オブ・ザ・マッチ
歳児優也
準決勝まで来た立見の相手は空川学園。黒髪ドレッドヘアのエース、三船新吉を中心に安定した戦いで、優勝候補の一角と言われる。
「(秋の立見はどうなってんだぁ?全部2桁での勝利って普通じゃねぇし)」
開始前、三船は立見のアップ等を観察してきた。特別な事はしておらず自分達とあまり変わらないという印象だ。
「(はやっ!?何であのスピードで蹴れて味方受け取れんだよ!?)」
試合が始まると、三船の前を速いボールが過ぎ去るのが見えた。シュートを自陣で蹴ってるんじゃないかと疑う程、立見の蹴るパスはスピードがある。それをトラップ出来る方にも驚かされるが。
パスだけではない。勝也がボールを持てば、目の前に立つ相手選手をターンで躱し、更に成海とワンツーで繋げば敵陣深くへと突き進む。DFは此処まで多く得点を重ねてる豪山、川田にマークが集中。なので勝也へのマークは甘かった。
「(来ねぇなら遠慮なく行ってやらぁ!)」
これをチャンスと見て、勝也はこのままドリブルを続行。空川ゴール前を目指し、進めばDFが止めに走る。すかさず勝也が左足で右に転がし、上がって来た田村がボールを受けた。
ゴール前の豪山へ田村の視線が向く。そこに来るぞと、空川DFが豪山へ注意が向いたが、田村の狙いは違う。
中央へ折り返せば勝也がその位置に居て、空川の選手は勝也のミドルレンジからのシュートが来ると思い、目の前に立ってシュートコースを切る。
ただ勝也はボールを受け取らずスルー。左に流れれば成海へ渡っていた。フリーとなっている状態で、得意の左足を振り抜く時間は充分。遠慮なく左斜め45度からのシュートが放たれ、ゴール左下隅に決まる。
「ナイススルー勝也ー!」
「お前もエグいシュート撃つなぁ蹴一!」
上手く空川DFを翻弄して、ゴールを決めた3年2人が喜び合
う。
「(立見の弱点は全体的にあまり体格が良くない事!こいつとか強い当たりでバランス崩すだろ!)」
なんとか反撃しようと三船はボールを持った弥一に、右からショルダーチャージでぶつかりに行く。凄い選手だからと言っても、体格差によるパワーならどうにもならないはずだと。
「うおお!?」
だが彼の考えは不正解と言わんばかりに、弥一は三船が肩からぶつかって来た瞬間、バックステップで突進をギリギリで躱していた。
三船の方はショルダーチャージが不発に終わり、バランスを崩して派手に転倒。主審の方は自分から倒れたと判断し、ノーホイッスルで流される。弥一はその間、左サイドへパスを出す。
そして彼は転倒して立ち上がろうとする、三船の方へ近付き耳元で囁く。
「立見の弱点って本当にそれで合ってるのかな?」
「!?」
「ま、そう信じてるならいくらでもどうぞ〜♪」
今の出来事があった直後に言われた弥一の言葉。自分の考えが間違ってるのか、それ以前にこっちの考えがバレてないか!?と三船の頭が混乱に陥ってしまう。
弥一の方は彼から離れ、見えない所でニヤリと笑っていた。
そこから三船のプレーは精彩を欠いてしまい、間宮が三船を封じ込める。表で目立つ貢献はしていないが、弥一は見えない陰で相手エースを潰したのだ。
空川はエースが崩れると一気に崩壊を迎え、攻撃が噛み合わないまま、立見の猛攻を受けてしまう。今回ハットトリックは無かったが、多くの選手達によるゴールが生まれて得点力の高さを見せつけた。
立見10ー0空川
歳児2
豪山1
川田1
成海1
神山1
影山1
田村1
鈴木1
岡本1
マン・オブ・ザ・マッチ
田村草太
この結果、東京Aブロック決勝戦は立見高校、西久保寺高校の組み合わせとなる。
大門「決勝戦まであっという間に流れちゃったなぁ……」
弥一「本編でがっつりやったし、展開が多分似てきちゃうからこんな感じとなりました〜。大幅にカットだねー」
摩央「馴染みある壁代とか空川の試合もこういう感じか」
弥一「というか優也めっちゃ点取ってくれるじゃんー?研ぎ澄まされて絶好調になっちゃったのー?」
優也「調子良くて相性が良かった、自己分析じゃそんな所だ」
弥一「結局絶好調って事で、さあ一気に予選決勝行くよー♪」