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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 選手権編
569/652

想像以上の成長

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 電光石火の先制点で、本橋は早くも1点のビハインドを背負う事になってしまう。



 立見に勝つには、彼らの無失点記録を破る事が最低条件。この時点で既に相当高いハードルだった。



「焦るなよ!マイペースにじっくり攻めるんだ!」



 早すぎる失点にチームがバタつかないようにと、本橋の監督が前へと出て来て選手達に大声で声を掛ける。此処で崩れて2、3点を失う事はサッカーでよくあると理解しての事だ。



 彼らも伊達に1次予選から此処まで勝ち上がってはいない。改めて前を向けば、本橋のキックオフで試合が再開される。



「敵さん焦ってるよー!前からガンガンプレスかけちゃってー!」



 平静を装っているが、弥一から見れば心の動揺は見えていた。彼らも開始15秒で点を取られる事は経験した事がなく、ショックはまだ残ったままだ。



「っ!?」



 前線から豪山と川田の巨漢2人が挟み撃ちにして、2人の圧に負けた本橋選手の足元からボールが零れていく。セカンドを素早く影山が拾えば、勝也がすかさず叫ぶ。



「カウンター!!」



 その声と共に影山は左サイドへ右足で送り、成海が前に上がっていた。



「切れ!」



 成海からパスが来ると思い、コースを切るようにとGKからコーチングが飛ぶ。だが成海はパスを出す気配が無かった。



「(単独で来る気かよ!?)」



 ドリブルで突き進む成海に、このまま1人で来ると思って本橋の選手2人がかりで止めに向かう。



 そこへすかさず、成海は左足で中央にグラウンダーのパスを出す。同じサイドの選手だけでなく真ん中から1人向かってしまい、本橋の中央は空いていた。



 成海のパスを豪山はミドルレンジから、右足でダイレクトシュート。部内No.1のキック力を誇る彼が蹴ったボールは、加速して本橋ゴールに向かって伸びていく。



 ゴール左を捉え、GKが飛びつくも彼の伸ばした手は届かず、豪快にゴールネットは揺らされていた。開始4分ぐらいで早くも立見は2得点を決める。



 立見が豪山を中心に喜ぶ横で、何故だとショックを受ける本橋の選手達が多く見られた。これで最低でも2点取って同点にしなければならず、難易度は益々跳ね上がるばかりだ。




「じっくり守ってけー!取れる時は攻めるぞー!」



 フィールドに轟く勝也の声。2点リードでも気を緩めず、更に追加点を隙あらば狙おうという姿勢。



「左来る……」



 弥一が相手の攻撃がそこから来ると察知し、左サイドの味方達に指示を出そうとした時。それよりも早く彼らは動いていた。



 川田と前に上がっていた翔馬が2人がかりで、相手のSHからボール奪取に成功。そのまま再び速攻に出る。翔馬がドリブルで来ると見て、近くに居た本橋の選手達が迫る。



 その前に彼は左足で大きく、右サイドへと蹴っていた。来ると見ていたのか右から田村が駆け上がって行く。



「田村ぁ!」



「!」



 ボールを右足でトラップした直後、勝也の声が飛んで田村は声のした方を見る。勝也は本橋ゴールを指差し、彼を見て田村の右足からアーリークロスの球が蹴られた。



 ゴール前の豪山にボールが行く、と本橋DFは読んで豪山に2人がかりでマークする。だが球の行く先はそこではなく、それより後ろに居た川田がジャンプ。



 豪山と同じ180cmを超える長身を活かし、頭で落とせばその位置には成海が来ていた。これをトラップせず得意の左足で合わせ、ダイレクトシュートが放たれる。



 GKのダイブも及ばず立見が3点目を決めていた。これで勝也、豪山、成海と立見の3年の要が全員得点だ。




「(何か動きとか判断速くなったなぁ〜、僕が言う前にもう気付いて動いてたし)」



 3点目を決めて喜び合うチームを後方から見ながら、弥一はこのチームが成長しているのを感じた。



 間違いなく総合力が増していると。




「どうなってんだよ立見!?」



「知るか!とにかく1点返さないと何も始まらないだろ!」



 本橋の方は総体の時と違う立見に戸惑ってばかりだ。パスの1つ1つがあまりに速く、プレスが間に合わず体力を消耗してしまう。



 前半が終わるまでに立見は6点を奪い、6ー0と前半の時点で試合が既にほぼ決定していた。




「えーと、立見が強い事は知ってたんだけど……こんな無双するようなチームだったっけ?」



「正直僕も今驚いてるよ。相手の本橋高校も1次予選から勝ち上がって来て弱いはずが無いんだけどな……」



 スタンドで観戦する輝咲、雷子の2人も前半から相手を圧倒する立見のサッカーに驚いていた。



「特に神山先輩が攻撃や守備で走り回ってゴールやアシスト決めてるし、相当夏に練習重ねたのかな?」



「うん、重ねてたね。かなり」



 弥一に勝つまで延々と続けて来た1on1の勝負。あの成果が出ているのだと輝咲は思う。あれが彼の力を伸ばし、更に吹っ切れたような感じに見える。



 今回その弥一は目立つ事なく、後方から主に声を出すぐらいだ。




「(本当に凄いな皆。夏の自主トレの効果なのか……それとも合気道?どっちにしてもめちゃくちゃ点を取ってくれるなぁ)」



 最後尾から立見の選手達を見ていた大門。シュートは飛んで来なくて、今日は後ろから声を出したり流れて来た球を処理する仕事が主だ。



「大門、立見めっちゃ強くなったよねー」



 プレーが途切れたタイミングで、弥一が大門に駆け寄って話しかける。



「だとしたらそれは多分弥一のせいじゃないか?ああいう事あったから」



 夏に起こった出来事。あの時弥一が起こした行動でそうなったんだと、大門は思っている。



「(うーん、僕も此処まで効果抜群とは思ってなかったんだけどなぁ)」



 これには弥一も内心想定外だと驚いていた。勝也を中心に立見は間違いなく強くなっている。



 大門だけでなく、弥一の出番も今日はあまり無いかもしれない。






「(神明寺弥一が1番要注意かと思ったら、何なんだよこれ……!?)」



 後半再びゴールを割られ、本橋の選手は信じられないという顔で、得点を喜ぶ立見の選手達を見る。



 肝心の弥一が攻撃参加する気配は無い。他の立見選手達が彼の分まで働くかのように、それぞれが躍動していた。



 川田が豪快なシュートを決めれば、両サイドの田村や翔馬もそれぞれ1点取ったりと、後半もゴールラッシュが続く。



 気づけば立見の得点は2桁を記録。日は浅いが立見サッカー部の歴史の中で、最も多く得点を重ねる試合となった。




 立見14ー0本橋



 豪山3


 神山2


 歳児2


 川田2


 成海1


 田村1


 水島1


 岡本1


 鈴木1



 マン・オブ・ザ・マッチ



 豪山智春

弥一「点取り過ぎ〜」


勝也「隙があったらゴール狙えとは言ったけどな。流石にこれは……出来過ぎだな」


弥一「相手の本橋さん放心状態だったし、多分メンタル折れてるよー(まあ多分じゃなく確実に折れてたけど)」


勝也「だからって大きな大会の真剣勝負で加減はあり得ねぇだろ」


弥一「それは勿論。互いに本気で戦ってこうなったからねー」

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