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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 選手権編
567/652

サッカーVSバレー2

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「止めたぁー!?大川さんのサンダースパイクを神明寺君が足で止めてみせた!」



 マリーが驚きながら実況すると、場内の者達も凄いと驚いていた。「スパイク速っ!?」「何であれ止められるんだよ!?」と、人によって様々な反応だ。



「(密かに特訓してるのが効いたみたいだな弥一君)」



 コート上の弥一を見ながら輝咲は頭の中で、文化祭を迎えるまでの日を振り返る。





「部外者の僕の頼みをわざわざ聞いてくれてありがとう」



「いえ!笹川先輩の為ならお安い御用です!」



「退部しても私達の憧れは変わりませんから!」



 誰も使用していない時間帯での体育館にて、弥一と輝咲は1年の女子バレー部員2人に来てもらっていた。熱意ある2人に対して輝咲は王子様スマイルで礼を言えば、後輩女子2人はうっとりした表情を浮かべる。



「弥一君、僕は彼女程のスパイクは打てないけどまずはバレーのスパイクがどういう感じか体感してほしい」



「分かった。皆協力ありがとうございます♪」



 弥一は協力してくれる輝咲達に、笑顔で感謝した。



 輝咲は後輩達にトスを上げてもらって、弥一のコートへスパイクを打ち込む。



「はっや!」



 いきなり飛び込まず、スパイクの速さを見る事に弥一は集中していた。普段サッカーマシンで味わうスピードとは違う、下へ向かう落下速度。輝咲の打ち込んだボールに弥一は驚く。



 こうして輝咲からスパイクを何本か打ってもらい、密かに弥一は練習したのだ。




「せぇっ!!」



 2本目、先程と同じようにトスを上げてもらえば、雷子はタイミングを合わせて飛び上がる。今度は左手前を狙って、再びスパイクを叩きつけていく。



 だが心を読んで打ち込むコースを前もって把握した上、事前に輝咲達と密かに練習していた弥一。下に向かって加速する球に対し、地面へ落ちる前に右足を伸ばして弾く。



 飛んで行ったボールを助っ人部員が拾って、輝咲が雷子側へ返せば再び弥一がスパイクを止めた事に、会場から驚きの声が上がると共に拍手が沸き起こる。



「なんと神明寺君2連続でスパイクを阻止!これは凄いー!」



 マリーもテンションを上げて実況を続けていた。




「ビッグマウスを叩いて目立ったかと思えば、あいつマジで止めてやがる……」



 観客の中に勝也と京子の姿もあって、密かに弟分の活躍を見守っている。



「けど足でバレーボール蹴って良いのか?反則で失点とか」



「バレーはサーブ以外なら、レシーブとかでスパイクを止める為に足を使っても良いみたい。足を扱ってバレーみたいな事をするセパタクローっていう球技もあるから」



 バレーボールに疎い勝也へ、京子はルール上で問題無い事を伝えていた。その間にも勝負は続き、コート上では弥一が雷子の3本目となるスパイクを、左足で蹴り飛ばしていた。





「(何で……!?私のスパイクをいきなりこんな止めるなんて、今までのリベロとか誰も出来ていなかったのに、どうして球技の違うサッカー部の子にこんな……!)」



 3本連続で止められ、雷子は内心焦って来ている。



 このまま力強く打っても、決まる確率はおそらく低い。そう考えると、雷子はチームメイトにサインでやり取りを行う。



 雷子のサインを見れば、トス役の女子は小さく頷いた。



「3本連続ストップで勢いに乗る神明寺君!このまま2本止めてまさかの有言実行か!?それとも大川さんが意地を見せて終わらせるか!?」



 マリーの実況の後、4本目が行われようとしている。



「(クイック!?)」



 元バレー部の輝咲は雷子の動きを見て気付いた。今までのスパイクを打つ前と比べ、助走の距離が短い事を。



 狙っているのは速攻のクイック。セッターが低めのトスを上げて、スパイカーが短い助走から素早くスパイクを打つ戦術だ。



 これで反応が速いであろう、弥一の動きを狂わせて決めようと雷子は狙う。



 短く速いトスからボールがネットを越えた瞬間、雷子は左手のスパイクで弥一の左サイドに打ち込んだ。




「っと!」



「!?」



 先程と違うタイミングで放たれたスパイクに、弥一はそこへ来ると分かって飛び込んでいた。右足で蹴り返せば、今度は輝咲達の手助け無しで相手側のコートに、ボールが返って行く。



「これも止めてみせたぁー!!神明寺弥一驚異の4連続ストップ!こんな事出来んの!?」



 凄い場面を目の当たりにして、思わずマリーは素の驚きと言葉が出てしまう。弥一のスーパープレーを目の当たりにして、興奮する観客達。会場のボルテージは高まっていた。



「嘘……凄い事は知ってたけど、此処までなんて……!?」



「何かどうやっても決まる気しないんだけど……!?」



 雷子側の女子部員達に動揺が生まれる。バレーをやってきて長いが、こんなにも止め続ける者は同じバレー選手でも滅多にいない。それも違う球技の選手となれば、見たことがなかった。



「まだ最後あるでしょ!ラスト1本さえ決めれば勝利なんだから……!」



 もう弥一に恥をかかせるというのは不可能。たとえ彼が最後の1本を決められたとしても、凄さは充分伝わっているはずだ。雷子も分かっているが、此処まで来たら負けたくない。その思いが強く出て、勝負をまだ捨てていなかった。



 雷子はチームメイトと最後に打ち合わせし、再び弥一と向き合う。



「バレー部頑張れー!意地を見せろー!」



「神明寺ー!此処まで来たら全部止めてパーフェクト見せてくれー!」



 ラスト5本目が迫る中、両者に向けて観客から声援が飛んで来る。弥一が全部止め切るのか、それとも雷子がバレーの意地を見せて決めるのか、コート上の2人に注目が集まる。



「さあ勝負の行方はどうなるのかぁ!?運命のラスト5本目ー!」



 マリーの実況と共に始まる5本目。今回は1本目や2本目の時と同じ動きを見せれば、トスが上がって雷子が高々とジャンプ。狙いは弥一の前方にあるコート部分、雷子の視線を見れば弥一は前に出て行く。



 だが罠だった。



 弥一が前に出た時、雷子は右手で軽く球を打てば、ふわりと浮かんで弥一の頭上を越える。ボールはそのまま後方にある奥のコートへ向かっていた。



 それすら彼がお見通しだった事に、この時会場の誰もが気付いていない。



 頭上をボールが越えた時に弥一は反転。落ちていく球を追いかけて迫ると、その場で飛び上がって後方へ体を倒す。上げた右足がボールを捉えれば、それを思い切り蹴り返す。




「……!!」



 ネット越しから弥一の姿を見た雷子は衝撃を受ける。彼は頭上を超えて来た球に対して反転し、オーバーヘッドで蹴り返してみせたのだ。



 華麗なスーパープレーを前に、観客達から驚きの声が上がる。



「と、止めたぁぁーー!!神明寺弥一が全部止めて完勝だー!!」



 目の前で見た衝撃と共に、マリーが興奮しながらも弥一の勝利を告げた。




「弥一君、凄いじゃないか!本当に全部止めるなんて!」



 これには輝咲も驚き、弥一の元へ駆け寄ると彼の手を引っ張って起こす。その弥一は視線を相手コートの方に向けていた。



「輝咲ちゃん、最後のボールってどうなったのー?」



「え?それなら勢い良く雷子達の後ろのコート外まで飛んでったけど……まあバレーだったら相手の得点になってたね。でも充分凄い事したから」



「あ〜、バレーボールでも完封しようとしてたのに〜!」



 最後のオーバーヘッドがアウトになって、本来の試合なら失点だと知らされ、弥一は悔しそうな顔を見せる。今回のバレーで止めるだけでなく、バレーのルールでの完封も狙っていたようだ。



 彼の無失点に拘る所は知ってるが、此処でも拘るんだなと輝咲は悔しがる弥一の姿を見ていた。



「弥一君。君……想像以上だった、私の負けね」



 そこに雷子が弥一へ近付き、何処かスッキリしたような顔を浮かべている。



「でもバレーじゃあれ僕失点ですよー?」



「これバレーの試合じゃないから、私のスパイクを君が止められるかどうかの勝負だし。フェイントも入れたのに拾われたらお手上げよ」



 降参だと雷子は軽く両手を上げて笑う。



「総体で負けて正直ムシャクシャしてたけど……うん、何かスッキリした。君のような凄い子と戦って経験して、次こそバレー部が全国行けると思えたわ」



 女子バレー部は総体で早々と負けて、全国の舞台から去っていた。力を出しきれず敗退した事に、雷子は苛ついてしまう。そこに輝咲が弥一と仲が良くて、彼女が退部すればサッカー部に居る事を知れば、弥一に矛先が向く。



 輝咲を取ってバレー部を揺るがせた事が許せないと感じ、彼を踏み台にしようと思った。だが、対決をしている内に弥一に勝つ事だけを考え、全力で戦ってる内に邪な考えは何時の間にか消える。



「本当に大事な時に退部をしてしまってゴメン……」



 バレー部が大変なのは自分に責任があると思い、輝咲は改めて雷子達へ謝罪の言葉を口にする。



「その事はいいから!言っておくけど、悪いと思って戻ろうとしても輝咲の席はもうないからね?」



 バレー部の事はもう気にせず、輝咲の思う通りにやれば良い。遠回しな雷子達の想いは弥一にだけハッキリ見えていた。




「神明寺!凄いぞー!」



「おい神明寺!お前男子バレー来ないか!?リベロとして是非!」



「おっとっと?えー、バレー部への移籍はちょっとごめんなさいー!」



「神明寺君、レベルアゲアゲチャンネルにも出てよー!」



 弥一への声援に部への勧誘や、どさくさに紛れてマリーからのチャンネル出演を求める声が飛び出したりと、勧誘を断りながらも弥一は声援に応えていく。




「ああ、そうそう輝咲」



「ん?」



 雷子は輝咲に近づいて耳元で囁く。



「弥一君好きなのは良いけど、あまりグズグズしてたら私が誘惑して取っちゃうわよ?」



「!?」



 悪戯っぽく微笑む雷子に、輝咲は動揺した表情を見せる。



「ちょ、雷子それはどういう意味だ!?」



「さてねー♪」



 最後の弥一のオーバーヘッドに魅せられ、輝咲に思わぬライバルが出来た日となった。

弥一「今回の話で登場したセパタクローっていうのは足のバレーボールと呼ばれるスポーツで、主にタイやマレーシアにベトナムと、東南アジアを中心に人気あるスポーツだよー♪」


輝咲「足で操るから、今回弥一君がやったのはそれに近いね」


弥一「ちなみにボールはサッカーやバレーのと比べて小さめなんだよー。それを使って3対3で行うのがセパタクローだから♪」


輝咲「セパタクローの紹介みたいになったかな今回」


弥一「僕的には久々な弥一のワンポイント講座な気分だったね〜♪」

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