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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 選手権編
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秋の活動から突然の誘い

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「あれ、サッカー部?」



「どうした?」



 立見の校内にて、野球部が早朝のランニングをしていた時。道場にサッカー部がぞろぞろと入って行くのが見えた。



 総体出場を決めて、サッカー部も校内で注目される部となり、自分達野球部と同じく主に外で活動する彼らが、道場へ何の用があるのか興味が湧いてくる。



 彼らがそっと道場の中の様子を見ると、そこには目を閉じて正座する部員達が居た。



「サッカー部は新たに武道でも始める気か?」



「さあ……?」



 一体何をしようとしてるのか、野球部は首を傾げながらも自分達の練習に戻って行った。




 道場内では、合気道で着用する袴姿となった輝咲が合気道の指導をする。



「正座は一分くらいで無理無く正しい姿勢でね」



 正座に不慣れな部員を見て、悪い姿勢だと輝咲は指摘していた。その指摘された者は勝也だ。



「(何か思い出して来た……昔弥一と合気道の道場行ってすぐに音を上げてたんだったか……)」



 元々体格に不安あってどうしようと悩んでいた弥一に、合気道はどうだと勧めた覚えはあった。その後に勝也も道場へ誘われ、合わないとギブアップした経験を持つ。



 隣の弥一は小学生の時から、合気道の道場へ通い続けたので正座は慣れている。



 目を閉じて正座と、体幹だけでなくメンタル面も鍛えていく。更にそれが終われば呼吸法を教わったりと、普段の練習ではやらない事をサッカー部は経験していた。



「はい今日は此処まで!」



「もう終わりか、合気道だから投げ合いとかそういうのやるのかと思ったけど」



 正座と呼吸法だけで終わり。これでトレーニングになるのかと思いながら、勝也は合気道のイメージを思い浮かべる。



「弥一君以外まだ受け身も出来ない、初心者の人にはとても危険ですから。いきなりそんなのやらせませんよ」



 合気道二段の段位持ちである輝咲。今の彼らにとって危険な事は決してやらせない。この中で合気道の経験者は、輝咲を除けば弥一だけ。なので全体的に初歩の練習からする必要があった。



「僕もいきなりああいうの出来た訳じゃないからねー。何事も積み重ねだよ♪」



 基礎の積み重ねが大事と、弥一は勝也と部員達に伝えながらマイペースに笑う。この日から立見サッカー部に、新たなトレーニングメニューが追加される。



 校内では輝咲のファン(主に女子)が、突然彼女のバレー部を退部した事を聞いて衝撃を受けていた。輝咲はどちらも中途半端に関わるのは失礼だと考え、迷惑がかかる前にバレー部の方をすっぱりと辞めたのだ。





 立見サッカー部は新たにフィジカルコーチを得て、選手権に向けた練習を重ねる。幸い立見は総体の東京大会を制して、全国でも上位まで勝ち上がった功績だけでなく、去年の予選の好成績もあって、1次予選は免除されて2次予選のトーナメントから登場。



 シード校となった事で、公式戦までの時間は空いている。



「此処で右にダッシュー!」



「うぉーす!」



 勝也の声で決まった方向にダッシュし、間宮を筆頭に後輩達が声を出してついて行く。



 ダッシュとジョグを繰り返し行う、インターバルトレーニングにも熱が入って、各自がさらなるスタミナ向上を目指す。




「わっ!?」



 川田のキープするボールを、弥一が目にも止まらぬ速さで奪い取り、そのまま彼の居るゴールネットを揺らしていた。



「もっちゃん、もうちょっとボールキープ良くしようか?甘い所あるしー」



 体の強い川田だが、弥一はキープが甘めだと指摘。その後にこうした方が上手く行くとテクニックを教える。



 本気の弥一を見てから、彼と1on1の練習を行う者が増えていた。実際どれくらい速いのか体感を試す者、本気の彼に勝ってやろうと挑む者等、人によって思いは異なる。それも彼には関係なく、挑んで来た者全員を弥一は返り討ちにしていた。




「はぁっ……!勝也よく1回勝てたな」



「どうやって勝ったのか、その時を見たかったよ」



 挑む者の中には成海や豪山も居て、今日は豪山が弥一と1on1を行ったが、夏にジムで鍛えた自慢のフィジカルも受け流されてしまい、完敗だった。



 何度も戦った中で一度だけ弥一に勝利した勝也が、改めて凄いと思える。




「(練習試合とかは特に無しか。ま……こんな時期じゃ受けてる暇なんざある訳ねぇか)」



 皆の練習風景を見てから、勝也はスマホでサッカー部の予定表をチェックする。主務の摩央が9月のスケジュールを組み立てて作った物だ。



 9月は主に学校と部活動。土日は完全休養と、体を休める事も忘れない。練習試合を一度やった方が良いかと思ったが、選手権が近い時期に練習試合を受ける高校は早々いないだろう。




「あ、この日は文化祭あるのか」



「そうみたい。一昨年も去年も練習とか試合でそれどころじゃなかったけどね」



 近くに来た京子と話す中、日程で立見高校にて文化祭が行われる日があるんだと勝也は気付く。



 一昨年は出来たばかりの部を強くしようと必死で、去年も似たような感じで2年とも文化祭は不参加だった。



「練習続きの部員達にとって良い息抜きにもなりそうだし、今年最後だから文化祭を楽しむのも悪くないと思うよ?」



「だな。流石にそういうの参加せず高校を終えるのも何か味気無いし、そうするか」



 高校生活最後の年ぐらい、文化祭を楽しむのも悪くない。京子の言葉に頷けば勝也は再び練習に戻り、全体練習を行う。





「一緒に帰れる機会が増えて嬉しいな〜♪」



「自由時間が増えたからね。僕も部の関係者になったし」



 部活が終わり、弥一は輝咲と共に下校。輝咲がバレー部所属の時は中々一緒に帰る機会は無かったが、今はこうして一緒に帰るのが日常となりつつある。



 弥一が鼻歌交じりに道を歩いていた時、その足を止める出来子が起きた。



「ちょっと良い?神明寺君」



 弥一と輝咲の前に立ち塞がるように現れた数人の女子生徒。いずれも背が高く170cm以上はある長身揃いだ。



「君達……」



 彼女達の姿を見て、輝咲は申し訳なさそうな顔を浮かべる。



「えーと、ひょっとしてバレー部の人ですかー?」



「あら、よく分かったわね?今練習着やユニフォームじゃなくて制服姿なのに」



「お姉さん達背が高いからそうなのかなーっていう勘です♪」



 勿論嘘だった。



 輝咲の反応、心を見れば彼女達が何者なのか弥一にはすぐ分かる。女子バレー部員だという事は。



「君達には突然の退部で迷惑かけてすまないと思っている。ただ、今のまま中途半端では皆にむしろ迷惑がかかると思ったから……」



 突然の退部で文句があるのかと、輝咲は思って彼女達に謝罪の言葉を口にする。そこに1人の女子が前へと進み出た。



「輝咲、別にそれでネチネチ嫌らしく言うつもり無いよ?部の退部なんて珍しい事でもないでしょ」



 集団のリーダー格であろう、輝咲と同じ180cmぐらいの長身。茶髪のストレートロングの女子だ。彼女は輝咲から弥一に視線を移す。



「突然失礼、私は女子バレー部2年の大川雷子(おおかわ らいこ)。今日は神明寺君へ今度の文化祭について、お願いがあって来たの」



「文化祭?」



 彼女達は元バレー部の輝咲に用がある訳でなく、弥一へ文化祭について頼み事の為に来たという。雷子は話を続ける。



「そこでバレーのエキシビションをやろうと思うんだけど、ただ私達がバレーを披露してもインパクト薄いかなって。だから貴方の力を借りようと思った訳」



「僕バレーやった事ないから手助けにならないと思いますよー?」



 女子バレーのエキシビションの助っ人と言われるが、弥一はバレーの競技を知っていても実際やった事は無い。バレー素人の自分がどうやって力になるんだと思っていると。



「君のサッカー見てたけど、相手のパスをバシバシ取っちゃうよね?あり得ないぐらいに鋭い読みで」



「そうそう、強烈なシュートも弾き返してたし」



 そこに雷子の後ろに居た女子バレー部員達が口を開く。彼女達もサッカーとして弥一がいかに凄いか、知っているようだ。



「何もバレーの試合をやる訳じゃないの。君と私のエキシビションで、私のスパイクを5本中何本止められるのか。そういう内容で考えてるの」



 再び雷子が口を開けば、どういう内容か説明される。雷子の繰り出すスパイクを弥一が止められるかどうか、そういったエキシビションらしい。



「私達はバレー部のPRになるし、止めたら神明寺君やサッカー凄いってなって、サッカー部の良いアピールに繋がって来年の新入部員が入る事に繋がるかもしれない。お互いに得があると思わないかな?」



 サッカー部にとっても、バレー部にとってもメリットがある。口でそう説明する雷子だが、本音は違う。



「(この子の注目度なら結構見に来る人多そうだし、利用して赤っ恥かかせてあげる。私のスパイクはいくらサッカー凄くても止められる訳無いし!)」



 雷子は弥一を客寄せのピエロに利用する上で完勝し、恥をかかせようと企んでいる。



 心の中でそういった企みがある事は、弥一に筒抜けとも知らずに。



「雷子、それは……」



 輝咲は無茶だと弥一に変わって断わろうとしたが、その前に弥一が口を開く。




「良いですよ♪」



「弥一君!?」



「本当?ありがとう!助かるわー!あ、顧問の先生にも話通しておくね!」



 全てを知った上で弥一は頼みを引き受け、雷子は顔をパアっと明るくさせて、輝咲の方は何の迷いもなく引き受けた弥一に驚く。



「ちょ、バレーのスパイクを止めるのは想像より大変だよ!?」



「大丈夫♪面白そうだしさー」



 いくら弥一でもバレーのスパイクは危ないのでは、と輝咲は心配になるが弥一は大丈夫と、陽気に笑って伝える。




「(何本と言わず全部止めれば本当に良いアピールになりそうだし、良い練習や遊びにも繋がりそうだからね)」



 雷子の企みを知って、弥一はあえて乗っかり逆利用しようとしていた。



 文化祭が例年通り行われる陰で、サッカーとバレーの本来ぶつかる事のないスポーツ同士が争う。

大門「夏祭り終わったばかりなんだけど、また祭り楽しむの良いのかな?」


摩央「良いのか悪いのかは知らねぇよ、まだ選手権まで日があるし……多分良いだろ別に」


優也「オーバートレーニングは体に悪い。そういった息抜きは大事だ」


フォルナ「ほあ〜」

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