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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 闘将VSサイキッカーDF編
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兄弟達の争いと変化する者達

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 その場に居た者達は今、何が起きたのか理解が追いつかなかった。



 弥一と勝也の1on1。勝也のボールから始まったはずが、あっという間に弥一がボールを掻っ攫って、早々にこの勝負を決めてしまう。



「っ……!」



 負けた。



 彼が優れている事は分かっていたが、それよりも想像を超える弥一の動き。全く歯が立たず、何もさせてもらえなかった事に勝也は拳を握り締め、悔しさを見せる。



「ほら、心折れてないからもっかいやるよー。それとも止める?」



「……やるに決まってんだろ……!」



 かつてサッカーを教えた弟分に完敗し、実力差を見せつけられたが勝也は再び弥一に挑む事を決意する。




「(これがガチの神明寺!?)」



「(神山先輩が全く何も出来ないって、マジかよ!?)」



 声には出さないが、部員達の心は大きく驚いていた。



 彼らは今、かつて最強の天才集団と言われたイタリア、ミランのジョヴァニッシミで、大きく実力を伸ばした弥一の力を見せつけられている。



 目の前では勝也が弥一からボールを奪おうと、デュエルが繰り広げられていた。



「らぁっ!」



 勝也はパワーで弥一を崩そうと、左肩からぶつかりに行くショルダーチャージを仕掛ける。だが手応えは無く、弥一にいなされてしまう。



 達人レベルまで磨き上げた合気道が力を封じ、逆に勝也のバランスを崩させた。そこから弥一は勝也を突破して、再びゴールネットを揺らす。



 短時間で勝也は弥一に連敗を許してしまう。



「弥一がデュエルで強い事は知ってるけど、改めて見ると……こんな凄かったのか!?」



 実際の試合では常に動いてる為、呑気に弥一のプレーを見てる暇は無かった。豪山は間近で見る弥一の本気の姿に、驚きを隠しきれない。衝撃を受けているのは隣の成海も同じだ。



「っ!」



 再びボールを持った勝也に、弥一は正面から向かう。勝也にはその動きが今度は見えた、かと思えば次の瞬間には視界から弥一が消えてしまう。



 身を低くして死角を作り、右足が勝也の持つボールを捉え、弾いていた。セカンドに対して弥一がいち早く向かい、取ってそのままゴールへ走れば、追いかける勝也の足は一歩及ばす再びネットを揺らされる。



「嘘だろ……あの野郎……!」



 勝也を応援していた間宮は弥一のプレーに注目。完全に本気な弥一の姿を見て、レベルの高さをそれだけで分かってしまう。自分より上の領域にいる事を。



「これがミランで鍛えた力……」



 冷静な京子も弥一の圧倒的なサッカーの前に、驚愕していた。彼女だけではない。全員がそうだ。



 あまりにも速く、巧い。小さなその姿に、その場に居る皆の目が釘付けとなってしまう。




「くっ!はっ……!」



 もう何回突破されたのか、何回止められたのか、もはや数え切れない。それ程までに勝也は1on1で、弥一に負け続けている。



 どんなに闘志を剥き出しにしても、諦めず何度も立ち向かっても、目の前の強大な壁に弾き返されてばかりだ。



「(これが……凡人と天才の差かよ……!)」



 両手を膝に当て、肩で息をするようになると、勝也は弥一との大きな差を体感していた。同時に彼は思う。



 これが才能の差なのかと。




「僕もイタリアでそんなだったんだよ」



「!?」



 次が始まる前、弥一は勝也へと静かに伝える。今こうして実力を身に付けた弥一も、最初からこうではないと。



「1人ずば抜けてとんでもない化け物が居てね、彼を僕は1度も抜けなかったし止められなかったんだ。それでそいつを絶対止めて勝ってやろうと、繰り返し何度も何度も挑んだよ」



 弥一の頭の中で思い浮かぶ過去の出来事。今の勝也みたいに当時、異次元の才能を持つ彼の前に何度も敗れ続けて来た。



 その積み重ね無しでは今の弥一はいない。彼の言葉を聞いて、勝也は理解する。目の前の相手は自分以上に血の滲むような努力を重ねたのだと。



「(は……どこまで俺は愚かで浅はかなんだよ)」



 何も見ないで海外の超一流クラブに居る、というだけで苦労知らずの天才と当たってしまった。あの時の自分に対して反吐が出る。



「で、もっかいやる?」



「当たり前だ!俺ぁまだ折れちゃいねぇ!!」



 再び闘志を燃やせば、勝也はボールを持って弥一を突破しに向かう。これに弥一も迎え撃つ。



 彼らの攻防が繰り返し行われ続ける。





「はあ……はあ……はあ……」



 勝也は倒れて体育館の天井を見上げていた。



 もう何時間も弥一と勝也の1on1は続き、勝也は未だに弥一の壁を破れていない。心折れずに挑み続けたが、勝也の疲労の色は濃く、既に限界だ。



 弥一の方も倒れず立っているが、彼も息を切らして体力を消耗している。外はもう夕焼けとなって、空が暗く染まる時は近い。



「此処まで!お互いもう疲れてるし、無理して体壊すの絶対駄目!終わりです!皆も暗くなる前に早く帰りなさーい!」



 幸が間に入り、今日は終わりだと両者に告げる。教師として教え子達を、これ以上無理させる事は許さなかった。その後に手をパンパンと叩き、皆へと帰るように促す。




「はあ……はあ……畜生……!」



「勝也……!」



 結局1度も弥一に勝てなかった。悔しい表情をしながらも立ち上がろうとする勝也へ、京子が近づいて彼を支える。



「2人とフォルナは私が送るから、車の用意出来るまで休んでて」



 幸は勝也と京子に伝えれば体育館を後にした。そこに弥一が勝也へ歩み寄って来る。



「心折れてないなら……何時でも連絡して来てよ。明日でも受けるからさ」



 今日で勝負は終わりじゃない、勝也が諦めるまで続くという約束だ。まだ折れていないなら何時でも、何度でも受けて立つ。



 それだけ伝えれば、弥一も体育館の出口へ向かって歩く。



「ほあ〜」



 弥一の前にフォルナが居て、彼を見上げれば鳴き声を上げる。



「僕は良いから、勝兄貴についてあげて……ね?」



 しゃがんでフォルナの頭を優しく撫でれば、微笑みかけながら弥一は兄貴分の側に居るよう伝えた。





「なあ……俺達、このままで良いのか?」



 部員達の誰もが口を開かない中、成海が喋り始めた。



「このままで良いのかって、何がだよ蹴一?」



「仮に勝也が粘ってやっと弥一に勝って、それで元通りサッカー部に戻って……それで良いのかと思ってさ……」



「つまり、成海先輩は弥一がサッカー部に戻るの反対派ですか?」



「そうじゃない」



 豪山や摩央と話し、皆が望む結末で終わって解決。成海はそれは違うのではないかと感じた。




「俺達は知らない間に弥一や勝也に、サッカーで依存しているような気がするんだ」



「いや、まさか!?勝也先輩はともかく、あのチビ野郎に頼り切りなんて無いっスよ!」



 弥一と勝也、2人の存在に自分達は頼ってばかりで甘えている。成海の言葉に、自分はそんなつもり無いと激しく間宮は反論した。



「本当にそうか?八重葉戦、弥一無しでお前はあの照皇を止められたのか?試合終了までずっと」



「っ……それは……」



 成海に問われると、間宮はそこから先の言葉が口に出せない。



 弥一がいなければ照皇を止めるのは自分の役目だ。その時弥一と同じように点を許さなかったのか、今の自分ではそこまで出来る自信が正直無かった。




「正直俺は勝也が、弥一が居れば大丈夫。今度の退部についても弥一が居なかったら選手権で勝ち抜くのが厳しい、何とか考え直してほしい……そう思ってたんだ」



 間宮が言葉に詰まらせた後、成海は思っていた胸の内を打ち明ける。自分は勝也と弥一、2人の存在に依存していたのだと。



「(そういえば俺も、ミドルとかロングが飛んで来た時は弥一に声をかけてもらっていた。もし無かったら?俺の前にあいつが守っていなかったら……?)」



 成海の言葉を受けて大門はこれまでの試合を振り返る。



 自分はシュートを止めていたが弥一のおかげで気付けたり、声をかけてもらってから冷静にボールを処理したりと、GKとしてかなり助かっていた。



 彼が居なかったら今までと同じように出来るのか、考えさせられてしまう。



「(僕も全国で緊張していた時、弥一に大分助けられた……自分を最強と思えって言ってくれたりとか)」



「(神山先輩に弥一が居なかったら、俺が全国でトップ下で猛者とやり合うなんて無かったよな……)」



 川田と翔馬の2人も頼りになって、助けられた事を共に振り返っていた。



「ストップ、暗くなるからもう帰りましょう。考えるのは家に帰ってからでも出来る」



 皆が考え込んでいるのを見て、京子は早めに帰ってそれから考えるべきだと、皆に休むよう伝えていた。今は夏休み中、皆が体を休めている時期だ。



「お先に……失礼します」



 そこに優也が一番先に体育館を出て、彼は走り始める。



 目の当たりにした弥一のレベルに一歩でも近づこうと。





「今お父さんに連絡した。少し待てば車で迎えに来てくれるから」



 弥一は校内のベンチに座り、タオルを頭に被っていた。彼が休んでいる間、輝咲は父親に連絡して迎えに来てもらうよう頼む。



「ごめん、巻き込んだ上にお世話になっちゃった〜……」



 勝也より疲労は少なかった弥一だが、無理はさせられないと輝咲が休ませたのだ。大丈夫そうに見えるが念の為、何かあってからでは遅い。



「此処まで来たら僕もどうなっていくのか、見届けたいからさ。大丈夫なのかって思うけどね……」



 今日見た限りでは、サッカー部が大丈夫、とは言えない感じだった。あれがこの先どうなっていくのか、輝咲は彼の居る場所を見届けたいと思い、自ら付き添っていた。



 そのサッカー部を色々今日振り回した、弥一はタオルを顔から外すと、呟くように言う。




「僕としてもちょっとした賭けかな……獣に化けるか化けないかの」

田村「あ、確かにこれ暗いわ!黛とか今日来なくて良かったなぁ。女子1人帰らせる訳にいかないし!」


川田「そういえば彼女はどうしたんでしょう?」


摩央「夏休みを利用して黛家で旅行行ったんだとさ、イタリアに」


田村「居ないと思ったら……流石お嬢様だなぁ、夏休みに海外旅行か」


大門「イタリアかぁ、弥一の留学聞いて行きたくなったんでしょうか?」

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