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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 闘将VSサイキッカーDF編
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サイキッカーDFからの挑戦状

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「戻らないって……え、それはもうサッカー部にどうやっても来ないって事かよ!?」



 勝也が皆へ自らの嫉妬を打ち明けて、それで謝罪したりと流れとしては元通りになると思った摩央だったが、事はそう単純ではない。




「戻らないよ。辞めたし、いらないって言われたから。悪口言われてまで付き合う義理も無いし」



「その悪口については勝也先輩が頭下げて謝っただろ!?全部本当の事を打ち明けて弥一は悪くないって言ったじゃねぇか!」



「それで全部チャラにしようって考えてたなら、都合良過ぎて甘いと思いますよ。何もかも今ので無かった事にする、流石に言われた側としては全然納得行ってないんですよね」



 勝也は事実を打ち明け、わざわざ皆の前で話して謝罪した。これ以上何を求めるんだと間宮が弥一に問い詰めようとすると、弥一の方は勝也に対して都合が良すぎて甘い。まるで冷たく突き放すように先程の事をそう言っていた。



「てめぇ……傷ついたからあれやれこれやれって脅す気か!?だとしたら許しちゃ……!」



「落ち着いてって……!」



「お前ヒートアップし過ぎだ!」



 影山と安藤が2人で間宮を抑え、弥一から遠ざけていく。流石に皆や教師の幸が見てる前で、堂々と脅迫をするとは思えない。ただ弥一は退部届を撤回せず、戻るつもりが無い事は確かに見える。




「勝兄貴は僕の事もう不要みたいだし、だったら戻ってなんかやんない。どうせ退部届もう出しちゃったし、部外者になっちゃったでしょ?」



「あ、いえ……神明寺君の退部手続きについてはまだしてなくてそのままなの……」



 弥一の言葉に口を挟んだのは幸だった。



「急に来て持って来られて、その……私の一存でこれ進めて良いのかなと」



 立見サッカー部は生徒主導の部。顧問の自分が弥一の退部手続きを勝手に進めていいものなのかと、幸は退部届を預かったまま、何も進めていなかった。



 なので正確にはまだ退部しておらず、弥一は部員の1人という形のままだ。



「勢いで退部しちゃって戻れない、って心配も無いだろ今ので!振り回されてムカついてるなら……!」



「待て、杉原」



 なんとか弥一を引き止めようと、摩央が必死で説得を続けていた時。勝也が口を開く。



「どうしても俺が許せなくて……それで部にいたくないなら、無理に引き止めるのは駄目だろ」



 弥一にサッカー部へ残る事を無理強いするようで、それは駄目だと勝也は摩央に説得を止めさせる。



「ねえ勝兄貴」



 弥一が勝也の方を見据えると、彼に問いかけて来た。



「本音で言ってみてよ。立見のキャプテンとか事情とかそういうの無しで、僕は部に居ない方が良いのか居てほしいのかって」



 嘘は通じない。心が読める弥一の前で、嘘を言ってもすぐに見破れる。




「本音なら……お前と一緒にサッカーやりたいに決まってる。許されるなら、また一緒にやりたいよ勿論。ごめん!戻って来てくれ……!」



 勝也も弥一を真っ直ぐ見据え、心からの言葉をぶつけていた。心に嘘は無い、間違いなく今の言葉は本音だ。



 最後に勝也は改めて弥一に謝罪し、頭を下げればサッカー部に戻ってほしいと伝える。



「ラッキー先生、今日体育館とか使って良いですか?」



「え?体育館?何でそんな急に……?」



 急に幸へ体育館が使えるかどうかを確認する弥一に、部員達は彼の意図が分からないまま弥一へ視線を向けていた。





 夏休みで他の部活動をする者は今日、誰も体育館を使わない日で使用の許可も取れて、サッカー部はそこに集まっていた。



「流石に滅茶苦茶暑い外だとしんどいからさ、涼しくて広い建物の中に移動させてもらったよ。まだやるかどうか知らないけどさ」



「おい弥一。勿体つけてないで体育館にわざわざ来た理由を言えよ」



 何故この場に来たのか、マイペースに段取りを進める弥一に間宮は苛ついた様子で聞き出そうとする。



「ああ、そこの勝兄貴と1on1をする為ですよー」



「!?」



 勝也とサッカーで一対一の勝負。何故弥一が急にそんな事を言い出したのか、考える間もなく弥一は進めていく。



「勝兄貴が僕に勝ったら退部しない。サッカー部に残るよ」



「……負けたら、お前は去るって事か」



「そうなるね。でもまだこれやるかどうか何も決まってないし、勝兄貴が自信無かったり調子悪くてそんな気分じゃないなら……止めようか?」



 勝った時、負けた時について弥一と勝也は話して確認するが、まだ1on1をやると確定した訳ではない。



 だが勝也に迷いは無かった。



「やるに決まってるだろ。この一発勝負でまた一緒にサッカーやれるなら受ける」



 突然の弥一からの申し出にも勝也は受けて立つ。勝って弥一が戻ると言うなら、他の選択肢は無いだろう。



「やる気になってる所悪いけど、一発勝負じゃないよ」



「何?」



 この1on1は一発勝負ではない。だったら何本勝負なんだと、その場の者達が弥一の次の言葉を待つ。




「勝兄貴が諦めて折れるまでやるから」



「!?」



 勝也が諦めない限り何本でもやる。対して弥一の方は1度負けたら終わりと、これ以上無いぐらいに勝也が有利な勝負の条件だ。



「いやいやいや、流石にそれはお前……勝也先輩を舐め過ぎだろ!?そうじゃなくても一発勝負で、秒で勝也先輩が勝つかもしれないって考えてないのかよ!?」



 あまりに弥一が不利な1on1。勝也が折れるまで続けるなら、いくら負けても1度弥一に勝てれば良い。何故自分からそんな不利な事を持ち込むのか、田村は意味が分からないという感じだった。



「一発勝負じゃそれこそ秒で終わりますよ、僕の勝ちで」



「!」



 まるで勝也を煽って挑発するように、弥一はその条件じゃ勝負にならないと言い放つ。



「ちょ、あいつ場の空気壊しに来たのか!?あれじゃ戻っても険悪モードになっちまうって!」



「流石にこれ止めないと!」



 場が修羅場と化してしまうと思った川田と翔馬。2人で弥一に向かおうとした時、輝咲が片手を出して制する。



「見ていよう、彼には何か考えがあると思うから……」




「弥一、俺は加減なんかしねぇぞ」



「分かってるよ。僕も抜かれたら終わりだしさ」




「殺す気で……やらせてもらうよ?」



「!?」



 言葉を交わしていく内に弥一の雰囲気が変わる。普段の笑みを消して、獲物を狙う狩人のような目を勝也へと向けた。



 その目を向けられた瞬間、勝也の体は真夏にも関わらず寒気を感じてしまう。




 屋内の練習用のゴールマウスを互いの陣地に置いて用意し、2人の戦う準備は整った。



「勝也先輩ー!もう一発で決めて弥一の生意気な鼻っ柱をへし折ってください!!」



「行けー!神山先輩!」



 勝也へと間宮から大声で声援が飛ぶ。彼だけでなく、多くの部員が弥一の横暴な態度に腹が立ったのか、勝也の応援に回っている。



 だが勝也の耳には、その声を聞く余裕が無い。目の前から発せられる圧が許してくれない。



「(何だこの空気……これが、本気の弥一なのか……!?)」



 感じた事の無いプレッシャー。八重葉を相手にした時でさえ、此処までは強くなかったと記憶している。



「あ、じゃあ……始めまーす!」



 笛を吹く役は幸が引き受け、彼女の開始の笛が鳴らされた。



 ボールは勝也が持つ。相手は弥一でどう躱すか。



 その時だった。




「遅い」



「っ!?」



 フェイントをする暇が無かった。あまりに速い寄せからのボール奪取。



 見ている部員達が驚いてる間に、弥一は勝也側のゴールへ右足で蹴り込み、ネットを揺らしていた。




「だから言ったじゃん。一発勝負じゃ秒で終わるってさ」



 開始僅か数秒。弥一は勝也からボールを奪い、ドリブルで迫ってゴールまで、瞬く間に行われる。



 本気のサイキッカーDFが闘将へ牙を剥く……。

摩央「体育館結構涼しいなぁ」


京子「立見の体育館は熱中症対策の為に設備がしっかりしてるから」


川田「これが外でやるってなったら地獄でしたよ、やる方も見る方も」


田村「あー、これ結構涼しいからこのまま此処でも……」


間宮「言ってる場合か!」

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