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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 闘将VSサイキッカーDF編
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それぞれの胸の内

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 部室で今回の件について全て話す。



 勝也は自分のスマホでサッカー部の部員達にそう伝え、直接自分の口から事実を言うつもりだ。



 次の日、夏休みにも関わらず立見の部室には部員達が集結していた。そこには幸も居て、彼女も見守る為に来ている。



「勝也、なあ……弥一との喧嘩とか、退部とか……どうなってんだよ?」



「……」



「ほあ〜」



 豪山はじっと無言のまま、待ち続ける勝也へと尋ねる。これまでの事について聞こうとするが、彼は口を開かない。勝也の隣には京子も居て、更にフォルナもついて来た。



「まだ、弥一が来ていない」



 立見部員は揃っているが、まだ弥一だけこの場にいなかった。



「来ねぇっスよ、あのチビ勝手に退部届出して辞めたんスから!」



 弥一は来ないと、間宮は怒りの表情を見せながら言う。彼と会って退部届を出した事を聞いて、サッカー部とはもう無関係になったから、わざわざ呼び出しに応える義務も無くなったと考える。



「だとしたらそれは……俺の愚かさが招いた事だ」



「え……」



 勝也の言葉に間宮の怒りが引っ込み、困惑の表情となる。弥一が悪いのではなく、全てにおいて自分が悪い。勝也はそう思っていた。






 一方、弥一は立見の部室前まで来ていたが、何時も通っていて慣れ親しんだ場所は、今の弥一にとって入りづらい所となっている。



 既に退部届を出してサッカー部とはもう無関係。ただ勝也と本当にこのままでいいのかと輝咲に言われ、弥一は再びこの場所に足を運んだ。



「大丈夫かい、弥一君?」



「うん」



 結局輝咲は自ら進んで弥一に付き添い、共にこの場所へと来ていた。



 試合の時にも感じなかった妙な緊張はあるが、これを避けては通れない。此処で避けてしまえば、取り返しがつかなくなるかもしれない。まだ間に合う内に弥一は再び立見サッカー部、その部室の扉に手をかける。



 扉を開けた瞬間、多くの視線が弥一に向けられた。



 馴染みあるメンバーが揃っていて、何時もの部室。何も変わらないはずだが、弥一からすれば様々な心が見える。



 何があったのか心配する者、勝手に退部して何しに来たと思う者と、皆それぞれが思っていた。



「あ、僕の事は気にしないでくれ。彼のただの付き添いだ」



 弥一の側に居る輝咲へ、何故居るんだという視線に気付けば、輝咲は弥一の付き添いで来ただけと伝えておく。



「分かった、これで全員揃ったな」



 弥一の姿を見た後、勝也は部員達の姿を改めて確認する。皆が揃った事でようやく話が始まる。




 かと思えば勝也は皆へと向かって、深く頭を下げた。キャプテンである彼の姿に部員が戸惑っていると、その状態のまま勝也は口を開く。



「皆ごめん!今回の事は全部俺が悪い!弥一が悪いというのは一切無い!」



 この件については自分が元凶だと、騒がせて迷惑をかけた全員に向かって謝罪。



「勝也、まず顔を上げて説明してくれ。その姿のまま言われたら頭に入って来ないからさ……」



 成海は勝也に頭を上げるように言う。頭を下げた状態で今回の事について説明されても、その姿に戸惑って話が頭に入りそうに無い。



「ああ……始まりとなったのは……」



 そこから勝也は最初に京子へ伝えた話を、部員達にも嘘偽りなく全て話す。



 北海道であったスカウトの事、太一からプロチームの練習に誘われた事、その練習で上手く行かず、弥一に強い嫉妬を抱いて爆発してしまった事など、全部を伝えた。




「そういう訳で、俺の年下への嫉妬……妬みが生み出した事なんだよ。今回の件は」



 心に抱えていた事、全てを打ち明けられて部員達は勝也の胸の内を初めて知る。



 キャプテンとして部を引っ張っていた彼が、1年の溢れんばかりの才能に対して強く嫉妬。そう思っていたんだと、驚く者も少なくない。



「別にそんな……みっともなくて恥ずかしい事じゃないっスよそれは!」



 そこに間宮が勝也へと口を開く。



「嫉妬していたんなら俺だって、弥一の野郎には嫉妬してましたよ!俺より年下で小さいのに同じDFで沢山活躍して、沢山チームを救ったりと!」



「悔しかったり……羨ましいってなってましたよ……!」



 勝也が胸の内を明かしたように、間宮も思っていた事を明かす。彼もまた弥一の才能に嫉妬して、対抗心を持ったり、羨ましいと思っていた。



 だからこそ弥一を許せないと思ったのだろう。あれ程才能ある彼が勝手に退部した事を。



「えっと、俺は弥一にじゃないけどさ……大門には嫉妬してたよ。年下で俺より身長も手も大きくて、身体能力にも恵まれたりで……悔しいなって」



「そうだったんですか!?」



 この機会に安藤も、実は大門に対して嫉妬があった事を打ち明ける。同じGKで何もかも自分を上回っている彼に、密かに思っていた事を伝えれば、大門はそういう思いを持たれていた事に驚く。



「それ言うんだったら俺も優也に嫉妬してるからな!俺より足速かったり、女子に大モテなのがもう悔しくて悔しくてしょうがなかったし!」



「……後半サッカーと大分関係無い嫉妬が入ってませんか?」



 流れで田村も優也に対して、思っていた事を打ち明ける。彼の場合はサッカーと無関係な嫉妬も含まれ、優也としては向けられても困る田村の胸の内だった。




「嫉妬するってのは誰にでもあるもんだろ。別にお前が弥一に対して嫉妬しても格好悪いって事は無いし」



「つか溜め込んでねぇでまずは相談しろ!この意地っ張りめ!」



 それぞれが打ち明ける姿を見ながら成海は勝也と話し、豪山は水臭いと言って勝也の背中を叩く。



 心底何やってんだ俺は、と勝也は改めて自らに対して責める。



「これで今回の件で責任取ってキャプテンを辞める、なんていうのは無しだから勝也。その責任の取り方は違うからね?」



「……分かってたのか?」



「勝也ならやりかねないと思っただけ」



 ただ謝罪するだけでは足りず、今回の事でキャプテンを降りようと考えていた。それを京子は見抜いており、責任を取る方法が違うと指摘。



「本当に悪いと思うなら辛くても最後まで責任持ってキャプテンやれ。嫌だぞ?お前が降りて俺が代理じゃない正規のキャプテンやらなきゃならなくなるのは」



 仮に勝也がキャプテンの座を降りたら、おそらく次に選ばれるのは成海だ。その重荷を押し付けられるのは、それこそ迷惑だと、彼はキャプテンの座を望まず拒む。



「そうそう、皆勝手に勝也がキャプテン辞めるってどうなんだ?良いと思うか?」



「絶対駄目だと思うっス」



「倉石先輩じゃないけど、責任の取り方ずれてないか?って思います」



「率いてた人がいきなり変わっちゃったら色々戸惑いそうですし……」



 豪山から他の部員達へ、勝也が辞めるべきか問われれば、辞めるのは違うだろうと、それぞれが声を上げていた。



 勝也がキャプテンを続けるべきだと。




「あの、弥一?もうこれ仲直り出来そうで、このまま戻って来ないか?神山先輩の嫉妬してたって本音も聞けたし、弥一は悪くないとか言ってくれたしさ……」



 摩央が弥一に近づくと、今の雰囲気なら弥一も退部せず、サッカー部に残ってくれる期待を持って話しかける。



 その弥一は勝也の方を見ていた。彼から一切目を逸らさず、弥一は発言する。




「戻る気は無いよ」

川田「仲直りで元通りかと思ったら、弥一が怒ってて許さない!?」


翔馬「彼からすると、勝手に嫉妬されて振り回されたから、それで許せないとか……?」


武蔵「まさか、土下座して詫びろとかそういう事言う気か!?」


川田「させたらそれこそ間宮先輩が弥一に対して怒り狂って暴走しそうで怖いって!そもそも今のご時世的にそれも不味いと思うし!」


武蔵「この件どうなっちゃうんだよ……」


翔馬「え、えーと……次の話をお待ちください〜!」

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