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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 闘将VSサイキッカーDF編
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揺れる立見サッカー部

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「弥一が退部!?」



「え……どうなってんだこれ!?」



 スマホのグルチャにて、弥一が退部するかもしれない。優也の発言にスマホ越しで成海や豪山といった、立見サッカー部の面々が驚く。



 夏休み中の彼等にとっては衝撃過ぎるニュースだった。




「確か桜見の……このマンションだよな」



「うん、前に家へ遊びに行った事があるから間違い無いよ」



 摩央と大門は弥一に会おうと、彼の住むマンションに来ていた。何故彼が急に退部を言い出したのか、直接見た訳ではないが勝也と何かあったのか。



 とにかくいてもたってもいられず、2人は行動する。



「あれ、摩央に大門?」



「おわぁ!?」



「や、弥一!?」



 マンション内へ入ろうとしたら、会おうとしていた弥一が外に出ようとしていたのか、エントランス付近で顔を合わす形となった。



 急な出会いに摩央と大門は揃って驚く。特に摩央の驚くリアクションがかなり大きい。



「遊びに来てくれたなら悪いけどー、今から僕ちょっと出掛ける用事あるからさぁ。またにしてくれない?」



「あ、いや……」



 大門は何処かに向かおうとしていた弥一を、引き止めようとする。



「そうじゃなくて、お前が急にサッカー部を辞めるってなったからどうしたんだと思ったから!神山先輩と喧嘩したみたいな事も聞いたし!」



 それに摩央が言いかけた言葉を、繋げるように弥一へと伝えた。彼が何故急に退部届を出したのか。



「(……ああ、あの時桜王の彼に見られてたんだ)」



 弥一はこの時、摩央と大門の心を読んでいた。幸から伝えられたのかと考えていたが、冬夜があの場に居て自分達の事を見たからだと知る。



 彼に立見の皆より先に知ったからと言って、何も変わりはしないが。



「どうしたも何も、別に部活辞めたってだけだから。じゃっ」



 弥一は2人の間を通り抜けて、そのまま去ろうとしていた。



「おい、それだけで納得行く訳ねぇだろ……!」



 待て、と摩央は弥一の右肩を掴もうと左手を伸ばす。



「うわ!?」



 だが弥一はそれを左にスッと避けて、摩央はバランスを崩しかける。すると弥一は直後に走り出していた。



「弥一!?」



「っ!待て!」



 摩央と大門は弥一を追って同じく走る。



 だが、小さな彼の姿はすぐ見失ってしまう。彼らの前方には街中を歩く人々が沢山居て、この中から弥一を探し出すのは困難だ。



「見失った……」



「ぜぇ……ぜぇ……あの野郎逃げ足の速い……!優也連れてくれば良かったか……!?」



 現役のサッカー部員として鍛えている大門はともかく、体力の無い摩央にとって炎天下の走りは過酷だ。



 結局2人は弥一に振り切られ、彼にそれ以上の話を聞く事が出来ずに終わった。





 その弥一は人混みに紛れ、逃げ切る事に成功。小柄な体が此処でも活きて、上手く身を隠せたのだ。



「(もう戻れないよね……僕も結構勝兄貴に言っちゃったし)」



 勝也と知り合って、初めて口喧嘩をした。



 自分へ向けられた嫉妬、複雑な感情渦巻く彼に言われて弥一も思わずカッとなった。感情的になれば心を読む事も忘れ、怒りに身を任せたまま勝也に暴言を浴びせ、別れたままとなっている。



 これから先の学校生活はどうしようかと、弥一が考えながら歩いている時。



「おい、弥一?」



 聞き覚えある声が自分の名前を呼び、弥一は呼ばれた方向へ振り返る。



 そこに居たのは間宮、影山、安藤の2年達だ。何時も制服やユニフォームの姿を見ていたので、私服の彼らは新鮮に映った。



「あれ、先輩達?桜見で会うなんて珍しいですねー」



「何言ってんだ、此処は西桜だぞ」



「あー……そこまで来ちゃってたんですか僕」



 安藤に言われると弥一は自分が今、桜見の隣町に居る事に気付く。考え事をしている間に一駅分歩いて、西桜まで来てしまっていたようだ。



「弥一、お前……勝也先輩と喧嘩したってマジか?それでサッカー部を辞めるっつったのか?」



 その時、間宮が弥一を睨むような目つきで詰め寄る。



「落ち着いて啓二……!」



 不穏な感じがして、影山が間宮を止めようとしていた。弥一には今の間宮の心が見える。



 勝也を弥一が困らせ、苦しめたのかと思って怒りの感情が表れていた。勝也を崇拝するレベルで強く尊敬している、間宮らしい感情だ。



「しましたよ、退部届も先生に出したんで」



「え!?退部届も!?」



 辞めると言い出しただけでなく、本当に実行していた弥一に影山と安藤は驚きを隠せない。



「という訳で僕はもう立見サッカー部と無関係になっちゃったので、じゃ」



「弥一!てめぇふざけんな!勝也先輩と喧嘩したと思ったら勝手に退部だと!?何がという訳だ!納得出来るかコラァ!!」



「啓二!駄目だって!」



「もうちょっと冷静になれよ!弥一もちゃんと話してくれないか……?」



 今にも弥一へ殴りかかろうとしている間宮を、影山と安藤が2人がかりで押さえていた。安藤が弥一に何があったか、具体的な事を聞こうとすると、弥一は既に走り去って姿を消す。





「(はぁっ……何で今日に限って、こんなにサッカー部の皆と会うんだろ……?)」



 再び遠くまで走った弥一。間宮達が追って来ていない事を確認すれば、軽く一息つく。



 サッカーの試合でも練習でもないのに、結構走ってしまい体力を使った弥一は何処か喫茶店で涼もうかと、店を探す。



「……弥一君?」



「あ」



 そこで再び彼を知る者と会う。






「勝也、メッセージが凄い事になってる」



 神山家にて、京子がスマホをチェックすると、立見のグルチャは勝也と弥一に向けたメッセージばかりになっていた。




 弥一が退部届を出したってお前らマジでどうした!?



 勝也、弥一と何があったんだ?



 弥一サッカー部辞めるのか!?それは考え直せ!




 といった部員達の心配する声や理由を尋ねる声が、グルチャの方に溢れている。



「……」



 勝也はリビングの椅子に座ったまま、無言で自分のスマホからもそれを見ていた。



 元々は自分の弥一に言った言葉や嫉妬で蒔いた種だ。これを放置したままでは終われない。




「俺は……弥一に嫉妬していた。溢れるぐらいの才能を持つ天才に」



 まだ京子にこうなった原因について話していない。勝也は重い口を開き、彼女へ真っ先に話す。



「北海道でスカウト来た事あったよな?話が終わってジュース買おうとした時、そのスカウトが居て聞いちまったんだよ」




「神明寺弥一は今すぐプロに入っても通用する。身近で見た限りそう思いますよ」



 これが弥一に対して嫉妬を抱く切っ掛け。更にそこから増大する出来事が後にあった。



『いや、これはもう弥一君に感謝だな』



『クラブは本当は立見から弥一君だけを招待するつもりだったんだけど、そこに勝也を見てみるのも良いんじゃないか?となってな。彼も面白そうだからついでに見てみるかって事で今回の話が決まったんだ』



 太一からプロの練習への招待を受けた時、自分は弥一のただのついでだったと知らされる。



 そして弥一より自分がアピールして評価を得ようと、懸命にプレーしたが上手く行かず。弥一の方はプロの中でも動きについて行き、活躍をしていた。



「神明寺弥一は今すぐアウラに欲しい所だな」



 周囲も弥一に対して高い評価をした。これによって勝也の嫉妬が、抑えきれない所まで来てしまう。




「そこから喧嘩になっちまった……プロに行くなら高校サッカーで余計な負担かけない方が良いってつもりだったけど、何か上手く言葉を伝えられなくて……」



 強い嫉妬によって、勝也は感情をコントロール出来ず、結果として弥一と喧嘩別れする事となる。



「……」



 京子は黙って勝也の話を聞いていた。勝也の顔を見れば、相当落ち込んでいる事がすぐに分かる。



 もう一度互いに冷静になって話すのが良いとなるが、それだけでは足りない気がした。



「勝也、一度……弥一君との最初の頃を思い出して振り返るのはどう?」



「最初……?」



「ええ、弥一君がそこに至るまでになったのかがより詳しく見えて来るかもしれないし、この前のプロとの練習の反省にも繋がりそうと思って」



 京子は2人の原点について、改めて振り返ってもらう事を提案。そこで何か見えて来るかもしれない。これはクラブに入る前の弥一を知る、勝也にしか出来ない事だ。




「ほあ〜」



 そこにフォルナがリビングの机に飛び乗って、勝也の前に現れる。



「最初……か」



 今もハッキリ覚えている弥一との出会い。目を閉じれば、その光景が鮮明に浮かび上がり、不思議とより深く思い出せる。



 過去を振り返る旅が始まった。

冬夜「えーと……俺があの日見たの想像以上に大変な事になっちまった……!?」


優也「かもしれない。他校の部員は見た!という感じか」


冬夜「何だそのどっかのドラマのパロディっぽいヤツは!?って、お前もそういうのやるようになったんだなぁ」


優也「……昔なら絶対やっていなかった。よくふざける奴の影響を少し受けたかもしれない」

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