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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 闘将VSサイキッカーDF編
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サイキッカーVSデータマン

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「くっ!?」



 目の前の素早く巧みなフェイントに翻弄されて、勝也はサイドの突破を許してしまう。



 青髪を揺らしながら、彼は左サイドをドリブルで突き進む。勝也とマッチアップしていたのは日本A代表経験を持つ、風岡亘(かざおか わたる)だ。



 日本屈指のサイドアタッカーが左を切り裂き、チャンスを作り出す。



「(あ、これヤバイかも)」



 弥一の嫌な感じは当たり、風岡の左からのクロスをFWがダイレクトボレーで合わせる。GKは飛びつくが届かず、ゴール左にシュートが突き刺されば、ネットが大きく揺れた。



 勝也のサイドが突破されてから風岡が一気に左から崩し、ゴール前の守備が万全となる前にクロスを放り込んで、1点をもぎ取る。



「くっ……!(抜かれた、くそ!)」



 ゴールを決められて、勝也は悔しそうな表情を浮かべた。



 今まで戦ってきたフィールドより、周囲のレベルが高い。勝也はなんとか喰らいつこうと奮闘。





「どうも彼、気迫とやる気はあるのですが空回りしてますね。今まで戦っていた高校の舞台から、急にプロの舞台に来た影響か……」



 弥一の隣でブツブツと呟くのは、赤い髪の短髪で眼鏡をかけた男。タブレットで勝也のデータを見ていた。



 彼が誰なのが気になり、弥一はその顔を見上げる。



「お兄さんも東京アウラの選手ですかー?僕まだ全員覚えきれてなくてー」



「……君のような少年に知られていない、僕の知名度はまだまだ無名寄りと参考にさせていただきました」



 誰なのか知らない弥一に怒る事なく、淡々とした口調で彼は喋り続ける。



「その通り僕は東京アウラの選手ですが、レギュラーではなく主に控えです。名は源田賢人(げんだ けんと)、ポジションは中盤でサイドを主に任されてます。歳は20でユースから上がって来ました」



 弥一より高い身長だが、彼は170cmぐらいでプロとしてそこまで体格は大きくない。察するにどうやら彼はサイドプレーヤーのようだ。



「源田さんですかぁ、僕イタリアから帰国して間もないから日本の高校サッカーとかプロサッカー事情をそこまで深く知らなくてー」



「存じてます。神明寺弥一君、君がミラン所属であのサルバトーレ・ディーンを中心とした天才集団と共に無敵のチームを作り上げた事を」



 タブレットを左手に持ったまま、右手でクイッと眼鏡を上げる仕草を見せれば賢人は弥一の経歴を語る。



「元々は柳FCに所属し、チームの3連覇及び連続無失点記録に大きく貢献。小学校を卒業後にイタリアへ3年程の留学。経験を経て帰国後に立見高校へ入学。八重葉学園にPK戦で敗退するまでチームの連勝に貢献、こんな所ですか」



「ほぼ全部存じてますねそれー」



 タブレットを見ながら弥一の経歴を語る賢人に、段々データマンのような印象が強くなってきた。すると賢人はフィールドで必死に動き回る、勝也へと視線が向く。



「君や神山勝也は滅多に無いであろう経歴ですから、興味惹かれました」



「まー、無いですよねぇ。サッカー部を作っちゃって数年で全国出場決めたっていう経歴は」



 フィールドの勝也は懸命に動き回るが、プロに混じってのサッカーに苦戦している様子だ。彼にこの場はまだ早かったかと、賢人は折れて終わると考えていた。



「面白い経歴ですが、残念ながらプロに通じる力までは持ってないようです」



「……」



 弥一は勝也の走る姿をじっと見ている。





「勝也、交代だ」



「はぁっ……」



 太一から言われて勝也はその足を止めた。



「あまり力を入れ過ぎるな。周囲の状況をもっと落ち着いて見て、素早く判断するんだ」



「ああ……」



 力が入り過ぎて何時ものプレーが出来ていない。太一にはそのように映り、弟へアドバイスを送る。



「まだ1本目だ、しっかりな」



 太一から背中を押されると、勝也はベンチに戻って水分補給を行う。




「神明寺、君はボランチに入ってくれ」



「僕DFじゃないんですかー?」



「色んなポジションを経験するのも勉強の1つだ」



 弥一の出番が来ると、彼は本来のリベロを任されず中盤の底を担当するよう、康友から告げられる。




「太一さんよろしくお願いしますー♪」



「ああ、弥一君。君の思うようにやって構わないぞ。ある程度は俺がカバーするからな」



 太一とダブルボランチを組む形となり、弥一は頭を下げた。プロとして太一はリードしようと、彼に自由なプレーを許可する。




 それを遠くで見ていたのは眼鏡を外し、相手チームの左SHとして出場する賢人。



「(見た感じ緊張は感じられない。リラックスした様子……その分、神山勝也より良いサッカーが出来る……いや、彼の場合は体格の不安がある。プロのボディコンタクトにあの小さな体が耐え切れるのか……)」



 頭の中で弥一を分析していく。



 経歴と同時に彼のプレーも見てきた。源田賢人という男はサッカーをする時、入念な下調べや準備をしてから行う。彼の頭の中には弥一や勝也だけでなく、数多くの優秀な選手のデータが入っている。



 東京のデータマン、それが賢人だ。



「(グラウンダーのロングパスは読まれて取られる確率が極めて高い。だとするなら彼が関与出来ない上……または彼の守備範囲外でのショートパス)」



 彼の頭脳から弥一に対して、有効な手を導き出す。高校生相手だが加減はしない。プロとして日々戦う為に、彼も此処でアピールしなければならないのだ。




 2本目がスタートして、賢人は左を走る。



 これを見た賢人と同じサイドの相手選手も、独走を許さずマークに付く。



「(まずはデコイ、1人引きつけたので中央が多少空いてくるはず)」



 囮として走っていた賢人。相手を引きつけている間、味方は中央からパスを回してゴール前へと迫る。




「(此処だね!)」



「!?」



 ショートパスからのワンツーに行った時、走り込んでいた選手にボールが行く前に弥一が飛び込む。プロを相手にインターセプト成功だ。



「カウンター!」



 弥一が叫ぶと共に左足でボールを蹴り出す。一瞬フリーになっていた選手を見つけ、パスを送っていた。



 カウンターのチャンスになって、スルーパスからDFラインを抜け出すも、相手GKが飛び出してボールを大きく蹴り出す。



 これがカウンター返しになってしまう。




 左サイドの賢人に渡り、前に1人居た選手を上半身のフェイントで惑わし、突破して左を独走する。



「マーク見逃すな!」



 太一は慌てずゴール前の相手にしっかり付けと、大きく声を上げてコーチング。相手の2トップにはマークが付いている事を確認すれば、太一自身は賢人を止めようとサイドに向かう。



 だが賢人の狙いは違う。自身の突破でもFWへのクロスでもない。



 混戦に紛れて上がって来た、ゴール前のボランチへのパスだ。



 パスのコースも邪魔する者はいない上、弥一の姿も無い。通ると確信して、賢人は左サイドからゴール前に、左足で矢のようなグラウンダーのボールを送る。




「はいナイスパスー♪」



 そこに大柄な選手の陰から弥一の姿が現れ、ボランチが受け取るはずだった賢人のパスを、左足でインターセプトしていた。



 混戦を抜け出す為に弥一はクリアして、一旦ゲームを止める。



「(姿は見えなかったはず……小柄な体のおかげで身を潜められた……?)」



 今のパスを防がれた事に、賢人は思考を巡らせた。弥一の実力を過小評価していたり、データに誤りがあったのかと。



 だがいくら彼が考えようとも、絶対辿り着かないだろう。




「(データマンは色々考えてくれるから、やりやすいね♪)」



 弥一は心が読めるサイキッカー、色々考えるデータマンにとっては相性最悪な相手だという事に。

弥一「相当頭良さそうだから学校じゃ首席とかですかー?」


賢人「君はアレですね、眼鏡をかけている者は皆頭の良いインテリキャラと思っているのでしょう」


弥一「え、じゃあ意外と勉強出来ないとかー……」


賢人「全国模試1位を取った事はあります」


弥一「しっかり勉強出来る人だったよー!」

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