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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 闘将VSサイキッカーDF編
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これからの方針と突然の出会い

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「まずは北海道での戦い、皆よく戦ってくれた」



 東京へ戻って来た立見サッカー部。高校の部室に皆が集い、勝也が部員達に労いの言葉を送る。



「とりあえずサッカー部は……しばらく休みだ。学校も夏休みだし、各自思いっきり休んで夏を満喫しとけ」



 八重葉との戦いで負け、それぞれの思う所はあるが勝也は皆へと休みを言い渡す。



 このチームに今必要なのは休み。夏の練習試合や強化合宿などもあえて組まない。サッカー部の夏休みとなれば、チームや個々のレベルアップに励む時期だが、その時期を全て体を休める事に使う。



 それだけ言うと、勝也の話は終わって解散となる。





「これから合宿とか練習とか、やるのかと思ったけどいいのか?何もしないでしばらく休みって」



「うーん……でもまあ、折角の長期の夏休みだし。ゆっくり休むのも良いんじゃないかな?」



 帰り道を歩く間宮と影山。夏休みとなれば、強化合宿を受けるつもりでいた間宮には休みを言い渡され、拍子抜けな所があった。



「キャプテンが休めって言ってんだから、遠慮なく休もうや。これで俺は堂々とデート楽しめるしよ♪」



「それはホント驚いたし。リア充爆発しろっつってたお前が何時の間に作ったんだよ?」



「フハハハ!すまんなぁ諸君!お先に春を楽しむ事にするぜー!今夏だけどなー!」



 テンション高い田村が同級生2人の肩をそれぞれ叩き、一足先に帰宅していった。



 最近田村に彼女が出来たようで、分かりやすいぐらいに浮かれている。毎年バレンタインでブツブツ文句を言っていた彼に相手が出来て、それを知った時は2人だけでなく此処にいない安藤も驚かされたものだ。



 間宮と影山は田村が走り去った方向を共に見ていた。



「ま……バレてるし」



「……だな、あいつとの付き合いも長くなってきたんだ」



 2人は弥一のように心を読む力は無い。ただ付き合いが長くなってきて、彼については分かる。



 無理して明るく振る舞っている事ぐらいお見通しだ。




「(畜生……!畜生……!!)」



 走りながら田村は彼らの前で見せなかった、悔し涙を流している。



 人前では心配かけないよう、明るいキャラを演じて敗退のショックを隠していた。本当は八重葉に負けて心底悔しく思う。平気でいられる訳がない。



 普段は電車で一駅乗るが、この日は乗らずに家まで走って帰る。





「だからお前が悪いとかねーだろ!」



「でも俺が後1本止めてれば……いや、その前に最初の2本を止めていたら……」



 駅までの道を歩く中、大門は自分が止められなくて負けたと、強く責任を感じていた。摩央が悪くないと伝えても、彼が納得する様子は無い。



「八重葉を相手に2本止めてGKのせい、は流石に言われないと思うぞ。あれは相手の工藤が化け物過ぎた」



 2人より前を歩く優也。頭の中で龍尾のセーブを振り返っていた。



 天才の名に恥じない実力。彼のゴールを最後まで割れず、PKで弥一が決めた1本が唯一、彼の守るゴールマウスをこじ開けたぐらいだ。



「(本当なら俺が……)」



 PK戦で自分が蹴ると言い出せなかった事、優也はそれを悔やんでいる。何故あの時、自分が蹴ると言い出せなかったのか。



 結果として弥一に大きな負担を押し付けてしまう。自分はあのPK戦に参加出来ず、恐れて逃げたのだと後悔が残っていた。



 顔に出ていない優也だが、心はかなりやられてしまっている。



「夏休みだけど……休んで回復したら、自主トレするよ。もっと強くならないと……」



「だったらその時は呼べ。GK居てくれた方が良いシュート練習になるしな」



「分かった、その時は遠慮なく連絡するよ」



 大門と優也は共に夏は自主トレしようと決意。今より上手く、強くなろうとしている。



「(……差し入れぐらい持ってこうかな、見に行くついでに)」



 プレーヤーではない摩央では、彼らのトレーニングについて行くのは厳しい。ただせめて差し入れは持って行こうかと、密かに考えていた。



 彼らは悩み、悔やんだりしながらも次の一歩を踏み出す。





「……」



 グラウンドに1人、勝也は残っていた。



 見つめる先は誰も立っていない空っぽのゴールマウス。彼の立っている位置は、丁度PK戦の時に皆が蹴っていた位置とほぼ変わらない。



「勝兄貴、帰らないのー?」



 そこに帰り支度を済ませた弥一が、勝也の元へと駆けつけて来た。



「ん?ああ、ちょっとな」



 声をかけて来た弥一に勝也は振り返る。



「夏は何もせず思う存分休む。僕はすっごく良いと思うよー」



「他の強豪サッカー部とかはまずやらねぇだろうけどな。少なくとも俺の中学じゃあり得ない事だ」



 勝也が中学時代に在籍していた、柳石中学のサッカー部では長期の休みは無い。夏休みの期間中は練習を継続したり、合宿を行ったりするのが一般的。



 そこの型にはまらない方法に、弥一は賛成だとマイペースに笑って伝える。



「イタリアだと3ヶ月完全オフとかあったからさー♪」



「それ休み過ぎて体鈍ったりしないのかよ、スペインやアルゼンチンも2ヶ月しっかり休むって聞くし」



 長期の休みは選択したが、海外のようにそこまで休むつもりは無い。あくまで暑い夏休みの間だけだ。



 イタリアで数年過ごした弥一にとって、今回のような長期のオフの方が普通だった。



「他の強豪校を見習わず、夏頑張らないのはホント正解だと思う。皆今は休んだ方がいい時だから」



 弥一は部員達の心を読んでいた。



 皆が今回の敗戦で落ち込み、責任を感じたりと思い悩む者が続出してしまう。そんな中で今の酷暑に近い炎天下、練習を重ねても体を壊すリスクが増えるだけだ。



 心身共に長く休ませてリラックスさせる。今の立見にとって、これが1番の練習方法だろう。



「そうだな……?」



 勝也がそろそろ引き上げようとした時、フィールドに居る影に気づく。



「どしたの?って……」



 何かに気づいた勝也に弥一はどうしたのかと、彼の視線の先へ振り返れば、ある存在が見えた。




「ほあ〜」



 鳴き声を上げる白い猫、青い宝石のような瞳が印象的だ。何時の間にか猫はサッカー部のフィールドに、何処からか入り込んでセンターサークル付近に居る。



「なんだ、迷い猫か?」



 勝也が猫に近づくと、見覚えの無い猫だと思った。



 知る限り周囲の人間で、こういう猫を飼っているというのは聞いた事がない。飼っていたとしても、学校に連れ込んで来るというのはあり得ないだろう。



「ほあ〜」



「可愛いな〜♪結構人に慣れてる?近寄っても逃げないよー」



 弥一と勝也が猫に至近距離まで迫ったが、猫は警戒する様子も無く、2人を見ていた。



「うーん、野良猫なのか飼い猫なのか知らねぇけど……まあ猫は気まぐれって聞くし、腹減ったらまたどっか行くだろ」



「そういえば僕もお腹減った〜」



 勝也はそのうち自分で帰るだろうと思い、そのままにしておく事にする。隣では勝也の言葉を聞いて、自分が空腹である事を弥一は思い出す。



「じゃ、早く自分の住処に帰れよー」



「またねー♪」



 弥一と勝也は白い猫に別れを告げて、それぞれ帰宅していった。



 一度きりの出会いと思っていたが、再会の時は早くも巡って来る事を、2人はこの時まだ知らない……。

彩夏「猫ちゃんは良いですよ〜♪とっても可愛いですから〜♪」


大門「ああー、そういえば黛さんの家で猫飼ってるって聞いたっけ」


摩央「すげぇゴージャスな暮らしをしてそうな猫だなそれ……」


彩夏「皆も猫ちゃんと触れ合いましょう〜♪」


優也「今日は猫を流行らせる場になったのか?」

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