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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 総体編
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極限状態の中で

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 外した瞬間に試合が、敗北が決まる。練習では決して再現出来ない、極限のプレッシャー。



 一歩一歩が何時もより重く感じた。足が、体が行きたくないと拒否しているかのようだ。それでも自分がキッカーを任されているので、行かなければならない。



 立見と八重葉のPK戦で4人目のキッカーとして、弥一は登場する。現在2ー0と八重葉がリードしていた。



 八重葉は4人目まで終わって残りは1人。立見は4人目の弥一を含めて残り2人。立見は4人目と5人目が決めて、更に大門が八重葉よ5人目を止めれば、2−2でサドンドスに持ち込む事ご出来る。



 相当か細い勝ち筋だが、立見の勝つ可能性はまだ残されていた。



『さあ立見は4人目、魔法の足を持つ1年。神明寺弥一の登場となります!』



『彼のキックは楽しみですね。工藤君のゴールを破るようなキックが飛び出すのか、それとも弾き返すのか……』




「(神山は最後か。直接あの時のリベンジは無理になっちまったが……まあ良い、これで終わりだ!)」



 ゴールマウスに立つ龍尾は小学生時代の借りを、直接返せないのは少し心残りだった。かと言ってわざとゴールを許す訳が無い。



 今までと同じように龍尾は弥一も止めようと、彼の顔を見据えた。




「(あっつぃ……)」



 体に伝わる暑さ。絶対に外せない状況で、弥一は夏の猛暑が今日1番暑く感じる。



 セットされたボールを蹴る事なら、今まで数え切れない程にやってきた。今回のキックはチームの勝敗が直接左右される。



「(サッカーやってて初めてかも、蹴るの嫌だなって思ったの……)」



 PK戦の順番は人が決めた訳でなく、自分が蹴ると自ら申し出る事で順番を決めていた。次々とキッカーが決まっていく中、4人目の立候補が中々出て来ない。



 蹴りたくない。怖い。



 弥一から見れば皆が心の中で、PKを拒否していた。冷静な優也も決められる自信が無いのか、蹴ると中々言い出さなかった程だ。



 その優也が意を決して言い出す前に、弥一が4人目をやると言い出して、PK戦のメンバーが決まる。この時、弥一は自分が選んだ順番で、極限のプレッシャーに襲われる事になるとは思っていなかった。



 心身共に追い込まれ、逃げ場の無い場所に弥一は立っている。



「弥一!!」



 弥一の耳に声が届く。振り返れば後方で順番を待つ、勝也が居た。彼は弥一に向かって右手の親指を立てる。



 大丈夫だ、何も怖くない。そう言われてるような気がした。



 不思議と心が軽くなれば、弥一は改めて目の前のゴールを見る。




 助走を少し取ると弥一が走り出して、左足でボールを捉えた。コースはゴール右隅へ一直線。



 龍尾はこれに対しても驚異的な反射神経を発揮。同じ方向へ地を蹴って飛べば、左腕を伸ばしていく。



 左掌が届く、そう思った時だった。



「!?」



 龍尾の顔が驚愕に染まる。



 伸ばした左手を避けるように、ボールが浮き上がっていたのだ。



 龍尾の腕から逃れたボールはゴールの上段へ飛ぶと、クロスバーに激突。そのまま下へ勢いよくバウンドすれば、ゴールマウス内のラインを越えていて、主審はゴールの判定を下す。



 弥一の1本が決まった瞬間だった。



『決めた神明寺ー!!クロスバーに当たりながらもボールは八重葉のゴールに入っていた!』



『当たったのが内側のバーでしたよねおそらく、外側だったらああなってはいないと思いますから、これ以上無いぐらいにギリギリでしたね』



『2ー1!これは立見分からなくなってきました!』




「(馬鹿な……!?届いたと思ったら……!)」



 何時も通り反応して、弾くつもりだった。しかしボールは自分から逃げるように、ホップして上隅に決められてしまった。



「ちっきしょう!!」



 うつ伏せに倒れたまま、龍尾は悔しさのあまり、左拳をフィールドに叩きつける。




「へへ……やった……」



 1本が決まり、極限状態から解放された弥一。その場に立っていられなくなったのか、芝生の上にへたり込む。



 今までの中で1番プレッシャーのかかるキックだった。しかし弥一はそれを跳ね除けて、強大な壁を破る事に成功。立見の勝利へ僅かな希望を繋げてみせる。



 蹴る前に勝也から声をかけてもらったおかげだ。



 これで追い上げて後は任せられる。仲間の居る方へ振り返れば、勝也と立見の皆が追い上げで喜ぶ姿が見えた。



「(後……よろしく、勝兄貴……)」



 その光景を見た後、弥一の目の前は暗くなって、そのままフィールドで倒れる。




「ん……?弥一!」



 立見の皆と喜ぶ中、弥一が戻って来ない事に気付いて、勝也が視線を向けると、倒れている弟分の姿が見えた。



『おっとどうした神明寺!?ゴールを決めた直後に倒れて動けません!』



『熱中症ですか!?これちょっと心配ですよ!』




「弥一!おい!?」



 立見の選手達が彼の元へ駆けつける中、勝也が弥一に呼びかけるも、それに応える気配は全く無い。完全に気を失っている状態だ。



「早く担架呼んで運ばせないと……!」



「んなもん待ってられるか!!」



 影山がベンチへ担架を要請しようとした時、勝也が弥一の背中と膝裏を両手で持ち上げ、担架を待たず自ら抱き上げて運んでいく。



 弥一は思ったよりもずっと軽く、勝也1人で難なく運べる。こんな小さく軽い体で戦い続けた弟分を、勝也は改めて凄い奴と思った。




 そのまま医務室まで勝也自ら運び、弥一はベッドの上で目を閉じた状態が続く。



「(弥一……ゆっくり休んどけよ、後俺が決めるからな)」



 龍尾から1本決めた弥一を心の中で労っていた時だった。




 スタンドの声援が一際大きくなる。



 これを聞いた勝也は医務室を飛び出し、再びフィールドへ戻ろうと急いで走る。





「……!」



 フィールドでの光景が見えて、勝也はそれが何を意味するのか理解してしまう。



 照皇を中心に喜び合う八重葉。



 呆然と座り込み、落胆する立見とゴール前で大の字となったままの大門。




 八重葉の5人目、照皇が決めて勝也の出番を迎える事なく、立見の準々決勝敗退が決まってしまう……。

想真「何で俺らにバトンが此処でくんねん!?」


室「いや、そりゃ……あっち喋るどころじゃないだろ?」


光輝「牙裏の奴とかは呼ばんの?」


想真「片方特定の奴の贔屓が過ぎてアカンやろ、狼はフリートーク不向きやし」


室「うーん、目に浮かぶなぁ」


光輝「つか俺らも暇ちゃうやろ、普通に試合あるし」


想真「ホンマや!トークで笑いを起こす暇もあらへん!」

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