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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 総体編
539/654

自らの身を盾に

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『八重葉の猛攻が続きますが、此処まで0ー0!立見が守り続けています!』



『かなり粘りますね、八重葉が此処まで攻めて点を取れないというのは、昨年の最神第一以来でしょうか?』



 立見の陣地へ白き軍団が攻め込む。この時間帯が長く続き、立見は最初に撃った弥一のシュートから攻撃出来ずにいた。



「あー!また危ない!危ないって!」



「お……落ち着いてせんせ……!」



 立見が八重葉に攻め込まれて、幸によって隣の摩央は体をガクガク揺らされ、目を回してしまう。



「大門君がキャッチして防いだから大丈夫ですよ〜」



 八重葉の月城による、左サイドからの高く上がったクロスを大門がキャッチ。彩夏はこれを見て幸に安心させようと伝える。





「くっそ、このままじゃサンドバッグ状態だろ……!なんとか反撃しねぇと!」



 猛暑の中、王者の猛攻を凌ぎ続けて間宮はプレーが途切れたタイミングで、水筒の水をグビグビと飲む。



「でも、その勢い弱まって来たかもしれませんよー。少し攻めが単調になって来てますからー」



 同じように弥一が水を飲むと、横目で八重葉の状態を見てみる。流石の王者といえど、夏の猛暑で走り回って攻撃を続ければ、スタミナを消耗しないはずが無かった。



「バテて……くれないかな?」



 むしろ疲れて攻める手が弱まってくれないかと、水分補給する影山は願望を込めて八重葉を見る。





「あっぢぃ……!立見しつけぇ……!」



 八重葉も同じように給水し、暑さに苦しむ月城が勢い良く水を飲むと、食らいつく立見をしぶといと思うようになっていた。



「攻撃は出来てるけど、エリア内じゃシュート出来てないな。ロングやミドルを何本か蹴れてるぐらいか……」



 休憩しながら村山は、これまでの八重葉の攻めを振り返る。外からシュートは撃ててるが、枠外、または大門が正面でキャッチしていた。1番惜しいのは序盤に放った大城のロングだ。



 とにかく八重葉としては、攻撃出来ている内に1点が欲しい。ただ新鋭チームが築き上げる守備の要塞を、未だ突破出来ていなかった。



 八重葉ベンチにいる監督が、右の腕時計に視線を落とす。気付けば前半そろそろ終了の時間が迫っている。出来る事なら前半で1点、または突破出来る切っ掛けでも欲しい所だ。




 中盤で立見がボールを持つと、八重葉のプレスが襲いかかる。川田に対して村山と政宗が取り囲み、進ませない。



「あ……!」



 足元からボールが離れ、川田の口から声が思わず漏れてしまう。やってしまったと。



 だがセカンドとなった球は影山がすかさずフォロー。音も無く忍び寄ってた彼に、流石の八重葉も気付ききれなかった。



「(走って川田!)」



 影山はすぐに中盤とDFラインの、僅かに空いてる中央のスペースを狙って、左足でパスを出す。その願いが届いたのか、中央へ川田が走って行く。



 素早く政宗が反転して川田の後を追って、阻止しようとするが先に追いついたのは川田。



 政宗に右からショルダーチャージを受けながらも、左足でミドルシュートを放っていた。



 威力ある川田の弾丸ミドルは、八重葉ゴールを目指して飛んでいる。かなり速い球を蹴ったが、これを龍尾が真正面でボールをキャッチ。



 川田のパワーシュートに対して球を零さず、立見の攻撃を完全にストップさせる。



『立見2本目のシュートも工藤の正面!ゴールならず!』



「亨走れー!」



 龍尾はすぐに右足でパントキックを蹴る。低弾道のボールが左サイドの月城に届けられ、左足でトラップ。



「カウンター!戻れ!」



 フィールドに響く成海の大声。月城に対して岡本が向かうと、すぐに左足で右に横パス。これを受け取った政宗が、左サイドの空いてるスペースを狙って、右足でボールを蹴る。



 そこへ左サイドを一直線に走る月城。八重葉の韋駄天に対して、岡本は置き去りにされてしまう。普通なら追いつかないであろう長いパスも、50mを5秒台で走る月城なら、追いつく事を可能としていた。



「(進ませるか!これ以上!)」



 調子に乗せられないと、田村がボールをトラップした月城に素早く詰め寄る。



 月城は再び左足で右へ横パス、その先には中央から走って来ていた村山。田村は自分の後ろにスペースが空いている事に気付き、先程とまた同じプレーをしてくると反転して、空いているスペースに走る。



 だが村山はパスを出さない。



 月城からのボールを右足でトラップして浮かせると、成海のブロックが来る前に右足のボレーシュートを、ミドルレンジから狙って放つ。



「大門!」



「!」



 その瞬間、弥一からの声が大門の耳に届く。



 矢のようなスピードで飛んで来るボール。立見のサッカーマシンによるシュートで、反射神経を磨いていた大門は素早く反応。



 ゴール左上に飛んで来たシュートを叩き落とす。大門の好セーブだが、両手で弾いたボールは転がって照皇が迫り来る。大門はなんとか抑えようと飛び込んで行く。




「!?」



 零れ球に追いつこうとする照皇に、突然左から強い衝撃が走る。弥一が下から突き上げるようなショルダーチャージで、体をぶつけて照皇の走る足を鈍らせていたのだ。



 この間に大門はボールを体で覆いかぶさり、キープしてみせる。



『村山のシュートを大門防いだ!照皇も詰めていたが押し込む事が出来ません!』



『これはナイスセーブですね。村山君も良いボレーでしたが防いだ直後に素早く対応する大門君、素晴らしいですよ』




「なんだよ、今のオブストだろ……!」



 側で弥一が照皇を妨害する姿が坂上の位置から見えていた。



 彼の言うオブストはオブストラクションという、ボールを持たない相手選手に対して、その進路を妨害する反則行為という意味だ。



 だが今回の弥一が反則にならず、流されたのが坂上には納得出来ていなかった。



「文句を言っても判定は覆らない、切り替えるぞ」



 不満そうな顔を見せる坂上に、妨害された照皇本人は彼に声をかけてから、ポジションに戻る。




「(あれぐらいなら簡単には取られないし、そもそも審判の位置から僕見えてないはずだからねー♪)」



 その弥一は計算していた。あの程度なら進路妨害の反則は、簡単には取られない事に加え、自分の小柄な体が主審の位置から、大柄な照皇の体がブラインドとなって見えないと。



 先程の月城が岡本に行った狡賢さ。彼に負けず劣らず、弥一もまた狡賢く守備を行っていた。




 前半の35分が近づく。



 立見がシュート2本に対して、八重葉はシュート9本。八重葉が多く放っているものの、まだ1本も決まってはいない。



「はぁっ……はぁっ……」



 慣れないポジションで走り続けて来た川田。夏の猛暑に連日の試合のせいか、肩で息をするようになって、他の選手達より体力を大きく消耗している。



「(中央は駄目か)」



 その様子に成海も気付き、川田の居る中央に預けず、左の鈴木に大きく右足で送った。



 だが佐助は成海のパスを読むと、鈴木に向かう高い浮き球を頭で跳ね返す。弾いたボールを政宗が取って、仙道兄弟が立見から奪取に成功する。



「カウンター!!」



 大城の声が飛ぶと共に、八重葉が速攻を仕掛けに行く。白い軍団が前に出て行くと、大城自身も上がって行く。



「(大城、ロング撃たせたら不味い……!)」



 疲労する中で大城の上る姿が見えて、川田はそれを追っていた。




『これは八重葉の速攻!前半終了間際に1点を狙いに来た!』



 正確かつ速いショートパス。八重葉の中盤で繰り出され、立見の選手達を躱して進む。



 村山から政宗に渡り、ゴール前へ右足でボールを上げるが、間宮の頭が弾き飛ばす。クリアされたボールに迫るのは大城だ。



「大門来るよー!」



 大城が狙って来る。弥一はシュートして来る事を心で読み、何時も通り大門に伝えた。



 再び放たれる強烈な右足のロング。剛球となって立見ゴールに襲いかかる。



 それを至近距離でブロックする者が居た。




「かっ……!」



 恐れず大城の前に立って、自らの身を盾にして剛球を受け止めたのは川田。腹に凄まじい衝撃を受けると、息ができなくて声も出せない。



 至近距離で大城のシュートをブロックした川田。そのまま崩れるように倒れてしまう。



 ブロックで転がったボールは影山が拾うと、蹴り出してクリアする。直後、前半終了の笛が鳴った。




「(へへ……やった、今日あんま活躍出来なかったけど……最後良い仕事出来たかな……?)」



 主審の長い笛をその耳で聞くと、川田は最後に守れてスコアレスで乗り越えた安心からか、意識を手放してしまう。




「川田!?大丈夫か!」



「こっち!担架早くー!」



 豪山や立見の皆が駆け寄り、成海が担架を要求したりと場が慌ただしくなってくる。



 王者を相手にスコアレスで乗り越えはしたが、代償はかなり大きかった。

弥一「もっちゃん倒れたー!!」


勝也「俺らじゃどうにもならないから後は医師に任せるしかねぇ……!」


弥一「ちゃんとしたお医者さんね!?出世欲とか病院大きくする事しか考えてないのとかじゃなくて患者第一の人で!」


勝也「ドラマ見すぎだろそれ!確か俺の時も言ってなかったか!?」


弥一「悪い大人の権力争いに巻き込まれるかと思うとー!」


勝也「飛躍し過ぎだっての!いいからサッカーに集中しとけ!」

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