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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 総体編
538/661

王者の反撃、奮闘するサイキッカーDF

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 最初のシュートは意表を突いた弥一のボレーだったが、龍尾によって防がれる。そこから八重葉はすぐに反撃へと出た。



『工藤のスローイングから八重葉、ほぼワンタッチで素早く繋ぐ!これが高校サッカー界頂点のボール回しだ!』



 プレーヤー1人1人が全国レベル。最強のエリート集団による速いパスが次々と繰り出され、前線から迫る豪山や川田のプレスを躱す。



「(速ぇってくそ!)」



 事前に八重葉のプレーは無論チェックしてきた。だが実際に感じるプレーの速さは、動画で見た時よりも更に速く感じる。



 八重葉のスピードに豪山は内心で叫んでしまう。




 左サイドの月城にボールが行くと、彼はトラップせず左足で、立見ゴール前にいきなりアーリークロスを放り込んで来た。



『一気に立見ゴール前!照皇が迫る!』



 照皇が月城のダイレクトクロスに反応し、地を蹴ってジャンプ。照皇を徹底マークする間宮も飛ぶ。



「ぐぅ!?」



 競り合った瞬間、間宮の体に硬い物と思い切り激突するような衝撃が伝わる。



 空中戦となって2人がぶつかり合った時、照皇の強靭な上半身の筋肉が間宮を弾き飛ばしていた。力負けした間宮はバランスを崩し、地面に倒れる。



 照皇は頭でゴール右の坂上へ繋ぐポストプレー。坂上はそこに走り込んでおり、八重葉のチャンスだ。



「っ!」



 坂上の前に影山が右足を出して、照皇から出たボールを弾く。だがセカンドに詰めるのは八重葉の選手。



『ゴール前、村山が詰めているー!』



「(シュート!)」



 そこに成海が村山のシュートを読み、ブロックに行こうと立ち塞がる。



 ただ、強烈なシュートの衝撃を覚悟していた成海を、嘲笑うかのように村山は右足で成海の頭上を越す、ふわりと柔らかなパスを蹴っていた。



 ゴール前の照皇が再びこのボールに向かうと、左足でトラップした刹那、反転して右足のシュートに行く。



 トラップから反転までがスピーディーで、相手にブロックの余地を与えない。



 かと思われたが。



「いったぁ!」



「!?」



 照皇の振り向きざまに反転してのシュートに、ただ1人弥一が飛び込み背中で受け止めていた。



 これには冷静沈着な照皇も驚き、ボールは弥一のシュートブロックで弾かれて、左のタッチラインを割る。



『八重葉の波状攻撃が此処でストップ!村山から照皇のトラップから反転しての右足でしたが、神明寺ブロックに入っていた!』




「いったた〜間宮先輩、吹っ飛ばされてましたけど大丈夫ですかー?」



「ああ、けど……あいつかってぇ。まるで岩とぶつかったような感じだ」



「岩と当たった事あるんですかー?」



「例えだ例え!そこ細かく来んな!」



 それぐらい強靭だった照皇の筋肉。間宮もパワーあるファイタータイプのDFだが、照皇は上回って来た。



 照皇のシュートを受けた背中をさすりながら、茶化すように言う弥一に注意する元気はあるものの、そこに間宮は驚かされてしまう。これでは競り合いで自分が不利だ。



「あの天才ストライカーさんは僕がマークしますから」



 照皇を抑えるなら自分が行くべきと、弥一は間宮に代わって相手エースのマークを務める。




 八重葉の攻撃はまだ続き、佐助のスローイン。



『おーっと!仙道佐助ゴール前にロングスローだ!』



 川田とまでは行かないが、思い切りぶん投げてのロングスローを佐助が実行。両手から放たれた球は高く舞い上がる。



 そこに走り込んでいるのは弟の政宗、しかしゴール前に戻っていた川田が頭で弾き返す。ボールが零れると素早く詰めている八重葉最速の1年、月城。



「大門ミドルー!」



 弥一の声が飛ぶと共に、月城の左足のシュートが撃たれる。



 ゴール左に向かうボール。これを大門はしっかり、両腕でキャッチしてみせた。



『大門月城のミドルをキャッチ!っと!?すぐに大きく出した!』



 キャッチの直後、大門は右足のパントキックで前線の豪山へ送っていく。空高く舞う球は豪山の居る八重葉陣内へ、距離がグングン伸びていた。



「(っし!)」



 得意な高い球。豪山は落下地点に向かうとヘディングに備える。そして落下するタイミングに合わせて、ジャンプすると豪山をマークする大男も共に飛ぶ。



「ぐえっ!」



 先程照皇が間宮を弾き飛ばしたように、今度は大城が豪山を空中戦で弾き飛ばす。



 豪山より更に空中戦で絶対的な強さを誇る大城。彼の頭が大門のパントキックを跳ね返し、立見の速攻を許さなかった。



『強い大城!豪山を弾き飛ばしてボールも頭で返す!』




「うわぁ、前も後ろもパワーある……!」



 立見で競り合いに強いはずの間宮、豪山の2人が相手に吹き飛ばされたのを見て、摩央はベンチで驚いてしまう。



「凄くマッスルになるぐらい鍛えてたんでしょうか〜?2人が吹き飛ぶなんて相当ですよ〜」



「技術面だけじゃなく、フィジカルも彼らは優れている。3冠を手にした八重葉ならそれぐらい不思議じゃない」



 同じように彩夏も驚く中、京子は想定内だったのか特に驚きはしなかった。それは隣で試合を見守る勝也も同じだ。



 全てにおいて八重葉は高校トップレベル。王者の攻撃はまだ続く。



「ディレイ!!」



 いても立ってもいられなくなってきたのか、ベンチから飛び出すと勝也は指示を飛ばす。



 左からボールを持って攻め上がる、八重葉の品川に岡本と成海が囲む。



「こっちー!」



 彼らを追い越して左を上がるのは月城。高校で1、2を争う八重葉の韋駄天がボールを要求する。だが品川は2人がかりのマークに手間取って、パスが出せなかった。



「(ちっ、しょうがねぇなぁ)」



 世話のかかる先輩だと内心毒づきながら、月城は立見の2人に忍び寄る。



「う!?」



 岡本は突然後ろからユニフォームを、思いっきりグイッと引っ張られた感じがした。月城が背後から背番号の辺りを掴み、引っ張っていたのだ。



 それに気を取られてる隙に、品川が左を突破する事に成功。



「ファール!ファールだ!今引っ張ったぞ!?」



 岡本がアピールするが、主審の笛が鳴る気配は無い。してやったりと月城がほくそ笑む。



『八重葉、左から抜けた!』



 独走を許さんと田村が向かえば、その横を抜けて左を走る月城の姿があった。品川が左にスルーパスを送り、月城は持ち前の快速を発揮すれば難なくボールへ追いつく。



 田村の追走が来る前に、左足で立見ゴール前へクロスを上げた。



「(此処はパンチング!)」



 高く上がったボールに大門が飛び出すと、照皇の姿が見えた。このまま彼と空中での競り合いになると判断すれば、無理にキャッチには行かず、両腕のパンチングでボールを外に弾き出す。



 そこへ上がって来ていた大城が迫る。



『ゴール前へクロス!大門パンチングで逃れた!大城撃ったー!!』



 相手のGKが飛び出していると見れば、大城は中央から右足を振り抜く。



 右足で蹴られたボールが剛球となって、グンと加速すれば立見ゴールへ、一直線に低空飛行で向かう。




「あっぶなーい!」



 いち早く大城のロングに反応し、追いついた弥一が左足で蹴り返してクリア。



『神明寺これを跳ね返す!ようやく八重葉の攻撃を断ち切りました立見』



『最初に神明寺君がファーストシュートを撃った事で、逆に八重葉の火をつけたのかもしれませんね』



 ボールは右のタッチラインへと大きく跳ね返って、ようやく八重葉の攻撃が一時的に止まる。



「(ふ〜、いきなりかましてくるなぁ八重葉って)」



 プレーが途切れたタイミングで、弥一は素早く水筒を取りに行って喉を潤す。




「くっそ〜、1年坊主の狡賢さといい大城の長距離砲といい厄介だな……!」



 勝也の位置から、月城が岡本のユニフォームを掴んだのは見えていた。快速な印象の他に、狡賢いというのが新たに追加される。



 大城の守備だけでなく、強烈な右足のシュートも脅威だ。弥一が防いでいなければ、やられていたかもしれない。



「勝也落ち着いて」



「わかってるけどよぉ〜」



 ベンチてそわそわしてて、落ち着かない様子の彼はずっとハラハラ見ている幸と変わらなかった。



 その時、スタンドの歓声が大きくなる。





『村山、鮮やかなターン!ゴール前に照皇が走る!』



 ボールを受けた村山。背後に川田のマークが付いているが、トラップからすぐに右回りでターン。上手く川田と体を入れ替えて前を向く事に成功する。



 影山がそこへスライディング。村山のボールを狙うも、影山の右足が捉える前に、村山は右足のつま先で球を浮かしていた。



「 っ!」



 ボールは放物線を描きながら、立見のDFラインとキーパーの間へ向かう。そこに照皇が反応して走るのが見えて、大門もゴールマウスから飛び出す。



 線審の旗は上がらない。通ればビッグチャンスの八重葉。




「通さないってー!」



「!!」



 照皇の目が見開く。



 照皇へ通る前に、弥一が相手を追いかける状態から体勢を後方に倒し、頭上の球めがけて右足で蹴り返していた。



 弥一のアクロバティックなプレーは、満員のスタンドの注目を集めて驚きの声が上がる。



『おーっと!神明寺、村山のスルーパスをオーバーヘッドでクリア!思わぬ大技が飛び出した!』



『よくタイミング合いましたね!?あの局面でそれをやるとは凄い度胸と言うかなんと言いますか……大胆ですよ』




「すげ!良いぞ弥一!!」



 弥一のスーパープレーを見た勝也は目を輝かせながら、声援を送っていた。




「何なんだあいつ……?イタリアのミラン帰りと聞いてるが、あんなDF初めて見るぞ」



 先程から弥一に何度か決定的チャンスを止められ、村山は弥一に対して不気味さを感じ始める。



「此処は中央を避けてサイドから行くべきか」



「いえ、このままお願いします」



 こうなると弥一の存在は無視出来ない。村山は厄介な彼を避けようとするが、照皇は構わず今の形を続けてほしいと頼む。



「おいおい、プライド許さなくて抜けなきゃ気が済まないってのは」



「此処で弱気に退いたら相手の守りの士気を高めさせ、思う壺となりかねません。あくまで強気に攻めの姿勢を変えない、それが八重葉のサッカーでしょう?」



 自分のプライドの為などではない。照皇はチーム全体の事を考え、攻めの形は変えない方が良いと意見していた。



 あくまで静かに冷静に、照皇は勝利を優先に考える。



 弥一に何度か阻止された、小さな悔しさが胸の中で芽生えながらも……。

勝也「で〜た〜い〜!俺の出番まだかー!?」


京子「後半から、まだ我慢して」


彩夏「カステラでも食べて落ち着いてください〜」


優也「ベンチだとあの人ああいう感じなのか」


摩央「2試合でもう試合に飢えまくってんなぁ……長期欠場だったらヤバかったんじゃね?」


優也「今以上に駄々っ子になるか、枯れ果てる感じになるか……多分そうなりそうだ」

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