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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 総体編
537/651

夏の決戦 立見VS八重葉

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「はぁ〜……」



 何時ものようにユニフォームを纏い、キーパーグローブを両腕に着けた。何試合もGKとして経験を重ね、慣れたはずだが今日の試合に関して大門は緊張している。



 今まで日の目を見なかった自分が、高校サッカー最強の軍団と戦う。立見に入って1年目でこうなる事など想像していなかった。



 はたして自分の力が王者に通じるのかと。



「おいおい、なんて顔してんだよ大門」



「あ……神山先輩」



 気付けば大門の目の前に勝也の姿があった。不安そうなスタメンGKの顔を見て、彼は声をかけて来たのだ。



「お前のポジションは何処だ?」



「え?」



「何処だ?答えてみろ」



「……GKです」



 いきなり自分のポジションを改めて勝也から問われ、戸惑いながらも大門は答える。



「今日守るんだったら、俺こそが工藤を超える高校最強の守護神。そう思っとけ。憎らしいぐらいに堂々と、ふてぶてしく構えていた方が仲間は安心するもんだ」



「……!」



 大門の今欠けている物について勝也は伝える。実力とかではなく自信、それが無くては持ってる力も充分発揮しきれない。



「今回ばかりはお前の仕事も多分多くなって来る。立見のゴールを頼んだぜ」



「……はい!」



 大門は立ち上がると勝也に一礼してロッカールームを後にする。声に力が宿って大丈夫そうだなと、勝也は彼の背中を見送る。



「(先越されちゃったなぁ、勝兄貴ならしょうがないか〜)」



 大門が緊張していた事。弥一は心で見抜いており、声をかけようとするが勝也によって解決。それを見た弥一も大門を追って、戦いの場へと向かう。





『総体もベスト8の戦いとなり、絶対王者と新鋭が北海道の地で激突!東京代表の立見高校と静岡代表の八重葉学園。夏の猛暑でも会場は満員となっています!』



 両チームの選手達がそれぞれ一列となって、フィールドに現れた時。アップの時よりも一際大きな歓声が、試合会場を包み込む。



 夏の猛暑にも関わらず、人々は声を発していた。



「(結局出て来ないのかよ)」



 列を歩く中で龍尾は横目で立見側の列を見る。勝也の姿は無く、2回戦や3回戦と同じベンチスタートだ。



 やっと勝也の居るチームと戦えるかと思えば、その相手はいない。龍尾にとってはガッカリさせる現実だった。




「(勝兄貴がスタメンじゃないから、やる気無さそうだなぁ)」



 弥一から見れば勝也がいなくて、望んだ展開にならず失望してる龍尾の心は丸見え。



「(だったらやる気無いまま、今の内に1点と行こっかな♪)」



 理由がどうであれ、相手のやる気が無いなら好都合。その間に1点を取って、八重葉を混乱に陥れる。弥一は頭の中で今日のプランを、静かに組み立てていた。




「(やっぱり……デカいな大城)」



 目の前に小山のように聳え立つ人物。170cm程ある成海は対峙し、彼を見上げている。



 八重葉のキャプテンで190cmの大型DF大城。ただ体が大きいだけでなく、数々の戦いを潜り抜けて栄光を手にした、強者だけが持つ独特のオーラが感じられる。



「よろしく、良い試合にしよう」



「ああ、こちらこそ」



 成海と大城は握手を交わす。





「うちが先攻で決まった。なのでプラン通り行くぞ」



 立見の円陣に加わった成海。皆へと先攻である事を伝え、試合前に立てていた作戦の実行も告げる。



 先攻や後攻によって、やるべき事は決めてきた。後はそれが何処まで通じるかだ。



 皆が成海の言葉に頷けば、立見は何時もの儀式に入る。



「立見GO!!」



「「イエー!!」」



 声を揃えて発した後、立見イレブンはポジションにそれぞれが向かう。




「特別な事は特に無い。俺達は何時も通り八重葉のサッカーを貫くだけだ」



 一方、八重葉が円陣を組んで大城が皆へと伝える。何処が相手だろうと、絶対王者として勝利するのみ。



 それが無敵の常勝軍団に課せられた使命だ。



「常勝八重葉!勝つのは俺達!」



「「常勝八重葉!勝つのは俺達!!」」



 大城の言葉に続き、全員がその言葉を口にして揃えた。立見と同じく皆が散って、ポジションにつくと両チームがフィールドで相対する。




 立見のユニフォームはダークブルー、GKは紫。



 八重葉のユニフォームは白、GKは赤。




 立見高等学校  フォーメーション 4-5-1




          豪山


           9



          川田


    鈴木     16      岡本


    8             7



      影山     成海


       14      10



 水島   神明寺    間宮   田村


  21     24      3     2



          大門 


           22




 八重葉学園 フォーメーション 4-4-2




      照皇   坂上 


      10     9



  品川     村山     高知


  11      7      8



         仙道(政)


          6  



 月城   大城   仙道(佐) 錦


  2     5     4     3



         工藤


          1




「よりによってこの試合ベストメンバーかよ。何人か休ませて来るのかと思ったら……」



 八重葉のスタメンを見て、摩央はベンチに腰掛けながら呟く。



 シードとはいえ八重葉も2連戦をこなしている。厳しい日程で何人か主力が休む、という事は今回無かった。八重葉のプラン通りなのか、立見を警戒してるのか分からないが、どちらにしても本気のメンバーなのは間違い無い。



「キャプテンが出るまで凌げると良いんですけど〜」



「やってくれるだろ」



 大丈夫かなと、フィールドを眺める彩夏の声は勝也の耳に入る。彼は腕を組んで静観していた。



「あいつらも伊達に全国の2回戦、3回戦を勝ち上がっちゃいないんだ。王者相手でもやれる」



 本当は一刻も早く試合に出て、彼らと共に戦いたい。沸き上がる気持ちを抑え込み、勝也は信じて待つだけだ。



 やがて決戦の笛が鳴り響く。




 ピィーーー



『立見対八重葉の試合が今キックオフ!高校最強チームに彗星のごとく現れた新鋭チームはどう挑むのか!?』



『立見は1回戦でキャプテンの神山君が負傷で2戦欠場しましたが、彼の穴をカバーして勝ち上がりましたからね。八重葉を相手にどんな試合をするのか楽しみです』



 自陣でボールを回す立見。そこに八重葉は喰らいつかず、最初は静観の構えを取っていた。



 夏の猛暑での試合だ。序盤から走り回って、飛ばすのは避けているのだろう。



「(水島、上がれ!)」



 成海が翔馬に前へ行くよう、声は出さずに左手で上がれとサインを出す。それを見た翔馬は左サイドから上がって行く。



 成海から影山へショートパスで繋ぎ、影山が右足で左に居る鈴木に速いパスを送る。



 これを鈴木はスルー。受け取ると思っていた、八重葉の右を守る高知は一瞬騙されてしまう。



 流れて行くかと思われたが、鈴木を追い越して左から上がっていた翔馬が左足でトラップ。不意を突くトリックプレーで八重葉の陣内を突き進む。



『影山からのパスを水島が受け取り、八重葉ゴールへ迫る!』



 ただ八重葉は慌てる事なく、豪山や川田をピタリとマークしている。更に右サイドの田村も上がっていたが、月城のマークに遭う。



 翔馬には右を守る錦が向かい、早くも距離を詰めて来ている。翔馬にパスのターゲットを探す猶予など与えない。



 そこに小さな影が八重葉のゴール前へ走る姿。彼の姿が見えると、翔馬は咄嗟に左足でパスを送っていた。



「!中、24来てる!」



 豪山をマークする大城が、ゴールに迫る弥一へ気付いてコーチング。混戦の最中、自らの小さな体を隠して王者の意表を突く。



 ただ翔馬からのパスが弥一に届く前に、バウンドして浮き上がる。こんな時に予期せぬイレギュラーバウンドだ。



「(間に合う!)」



 弥一に猛然と向かう政宗。向こうが予想外の球を足元に収めてる間、詰められると判断すれば、迷わず突進する。



「!?」



 次の瞬間、政宗の顔は驚愕に染まる。



 バウンドして浮き上がったボールに、弥一は左足で合わせるとゴールへ向けてシュート。



 予期せぬボールにも関わらず、浮き球に対してミドルレンジから、左足のボレーを撃っていた。コースは八重葉DFをすり抜けて、ゴール左上隅に矢のような速さで向かう。



 会心とも言える左足のボレー。ただそれを驚異的な反応と跳躍力で、ボールに向かって飛ぶと両腕を伸ばす。



 GKにとって嫌なコースを狙われたにも関わらず、龍尾は弥一のシュートを完璧にキャッチしてみせた。



「……!」



 自分でも今のは良いシュートと思っていただけに、弥一もこれには驚いてしまう。



『これはスーパーシュートにスーパーセーブ!!立見の1年神明寺が左足で素晴らしいボールを放ちましたが、八重葉GK工藤がなんとキャッチしてみせた!』



『神明寺君のバウンドに対する対応や合わせる技術に驚かされましたが、そのシュートを止めるだけでなく取ってしまう工藤君もとんでもないですね……!』




「(何だ……神山いなくて物足りないと思ったら、面白いもん撃ってくるじゃないかチビちゃんよ?)」



 シュートを撃って来た弥一の顔を見れば、ボールを手に持ったまま龍尾はニヤリと笑っていた。



 気を抜いている隙を狙う弥一だったが、不意を突いた一撃は龍尾によって防がれ、企みは失敗する。

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