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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 総体編
531/654

欠場の兄へ弟の静かな誓い

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『室高いー!195cmのヘディング炸裂!!誰もこの巨人を止められない!』



 高いクロスが上がると、1年の長身ストライカーが空を舞う。



 競り合っていくDFも彼の高さに歯が立たない。誰よりも高い位置からボールは叩きつけられていた。



 これが今日3度目のゴール、室が今大会ハットトリックの第一号に輝く。



 岡山代表の原安(はらやす)高校を4ー0で下し、琴峯が勝利を手にする。





『酒井なんと今日4点目ー!初日単独1位となるゴールを重ねて行く!!』



 狼騎の豪快なシュートでゴールネットを揺らし、相手を突き放す。



 かなりの大差で突き放され、新潟代表の米岡(よねおか)工業の面々はがっくりと肩を落とす。反撃の気力はもはや残っていない。



 最終的なスコアは7ー0。初戦で最も大差をつけた牙裏が、今大会のダークホースとして注目を浴びる。



 1日目は琴峯の室、牙裏の狼騎と両ストライカーがハットトリックを達成。彼らの活躍が目立つ1回戦となった。



 八重葉や最神といった強豪校はシード校として、次の2回戦から登場する。夏に連日厳しい試合が行われる総体において、1試合少ないのは負担がかなり減って有利だ。




 立見は初戦を突破出来たが、翌日に試合がすぐにまたある為、そこに備えなければならない。



 その上チームにとって大きな痛手が起きてしまう。勝也の左膝の負傷だ。




「軽い打撲だけど、少し安静にした方が良いね」



 試合後に勝也は京子や幸に付き添ってもらって、病院で左膝の状態を伝えられた。



 軽度の打撲という事だが、大事を取って数日は様子を見た方が良い。それが医師の判断だった。



「え……あの、明日の試合とか駄目ですか?」



「それは無理だ。痛みがある内に無理をしたら悪化して完治が余計遠のく。きちんと安静にして回復に専念すれば数日ぐらいで痛みは引くだろう」



 明日にすぐ2回戦が始まる。いくら軽度とはいえ、膝の状態が翌日劇的に良くなるとは考えづらい。



 2回戦は勝也無しで臨むしかない上に、3回戦もそうなってしまうかもしれない。



 勝也は医者に礼を言うと、2人と共にチームの宿泊するホテルへ戻って行った。





「マジかよ……」



「勝也、しょうがない。今は膝を治す事に専念しないと」



「そうそう、無理は駄目」



 明日どころか立見が勝利しても、明後日や先の試合に出場が出来ないかもしれない。



 勝也は帰りのタクシーで落胆を隠せない。共に後部座席に座る京子が励まし、助手席の幸もそれに続く。




「(よりによって大事な大会の1回戦で負傷なんて、何やってんだよ俺は……)」



 キャプテンとして、立見を引っ張っていかなければならない。過酷な大会ともなれば尚更だ。



 早く治ってほしい。勝也は落ち込みながらも、自らの左膝に願っていた。




「立見サッカー部が出来てから勝也って全試合フル出場だった」



「え?あ〜……途中で引っ込んだ覚えは無ぇな」



 京子が見る限り立見において、勝也は常にスタメンでフル出場。キャプテンを務める上に、1番サッカーが上手い実力者でチームに欠かせない存在。



 層の薄い立見には、勝也の代わりが務められる選手はいない。チームが勝つ為、彼は常に出場し続けていた。欠場するのは部が出来てから初めての事だ。



「代理のキャプテンは蹴一か智春に任せるとして、空いた中盤をどう埋めるか……」



「あ、それなんだけど。ずっと考えてたのが……」



「……お、それ行けそうじゃね?」




「(なんだかんだで……サッカーバカップルって言うのかなぁ、こういうの)」



 切り替えたのか次の試合について話し合い、自然と話に熱が入る勝也と京子がミラー越しで見える。幸は内心思いながら小さく笑うと、目的地に到着するまで2人を見守っていた。






「そういう訳で、悪い。次の試合は出場無理だ」



 ホテルへ戻った勝也達。大部屋に集まった部員達へ、明日の試合は出られない事を伝える。



「左膝の状態によっては明後日も駄目で、3回戦が終われば1日空くから、それでどうなるかだな」



 次の試合から勝也が出られない。この事実を告げられると、部員達の間に動揺が走っていた。



 それが場に残りながらも、京子から明日のスタメンを告げられる。



 GK 大門



 DF 間宮 神明寺 田村 水島



 MF 成海 鈴木 岡本 川田 影山 



 FW 豪山



「明日のキャプテンは蹴一、お前に任せる」



「分かった」



 勝也から代理のキャプテンを指名され、成海は頷く。



「システムは変わらないけど中盤のポジションは少し変えるぞ。鈴木が左で岡本が右、蹴一が影山とタブルを組む」



 成海が影山とダブルボランチを組む。勝也がまさかの起用を考えた事に、部員達はざわざわと騒ぐ。



「あれ、て事は……俺の位置って?」



「お前が司令塔だ」



「ええ!?やった事無いですよ、そんな花形のポジションなんて……!」



 自分がボランチをクビにされたかと思えば、急に勝也に代わって司令塔の位置を指名される。



 川田がやってきたポジションはDFやDMF。主に後ろの方を務めて来たが、司令塔を任された事は無い。



「あんなキャノンシュート行けて後ろに引っ込むのは勿体無ぇだろ。もっと前行ってロングだけじゃなく、ミドルもガンガン狙った方が良い」



 今日の泉神戦のゴールを振り返り、勝也と京子は話し合って川田が司令塔も面白いという案が出た。あのシュート力は前で使った方が良い。



 体が大きく力もあって、前線の競り合いにも対抗出来るだろう。




「今日の試合みたいに自信を持て川田。お前ならやれる」



「は、はい……!」



 勝也に真っ直ぐな目で託され、川田はこれに頷いて応えた。



「勝也先輩のお墨付きだ!行けるってお前!」



「あんたが大将〜、もっちゃん頼んだよー♪」



 勝也に続き、弥一と間宮からも背中を押される形となる。





 明日に向けてのミーティングも終わり、夕飯まで各自ホテルでゆっくり休むように伝えてから解散。



 ホテルの廊下を歩く弥一は先程の勝也の顔を思い浮かべていた。



「(本当は怪我を押してでも出たかったんだろうなぁ)」



 自分の怪我を受け入れ、チームに後の事を託したと彼らには思えた。



 だが勝也の本心が弥一には見えている。



 怪我で欠場する自分が情けない。出られなくて悔しい。彼の強い気持ちが心に強く表れ、弥一に伝わって来た。



「(勝兄貴がまた試合に戻って来る時まで勝ち進まないと)」



 勝也が戻るまで自分が立見を勝利に導き、負けさせない。



 弥一は静かに決意して、明日の試合に備える。

弥一「軽度の怪我でもちゃんと休んで治療に専念。これすっごい大事だよね」


勝也「無理したら治りが遅くなったり、悪化する恐れがあるからな。だから安静が1番って訳だ」


弥一「怪我したら痩せ我慢せず、すぐ病院!だねー」

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