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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 総体編
529/652

俺達が最強!

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『前半、立見がボールを支配しているが思うように攻められない!』



 ボールを持つ成海、だが足を止めてキープするのみだ。



『中盤で神山君を泉谷君が徹底マークがしてるのが効いてますね。』



 立見にとって攻守の要の勝也。それを泉神の同じ攻守の要、泉谷が抑えていた。



 これが影響しているのか、立見は支配率を上げているが、決定的なチャンスは中々来ない。




「やっぱり全国って舞台だから硬さがあるんですかね?立見のメンバーの中には初めての大舞台っていうのも居ますから……」



「確かにそれもあると思う。水島君とかトラップミスをしていたし」



 立見のベンチから試合を見守る京子と摩央。幸や彩夏達は選手達の飲み物やタオルの用意をしている。



 フィールドの外から見て、全国を経験している選手の動きは良く、普段通りのプレーが出来ている。対して川田や翔馬、大舞台の経験が浅い選手達は若干の緊張があるのか、普段はしないミスをしていた。



 全国に潜む魔物がそうさせてしまうのか、泉神だけでなく見えない重圧との戦いにもなりそうだ。



 ただ、それは泉神も同じだった。




「っ!?」



『これはトラップミスか!?泉神期待の2年、若松の足元に収まらず!』



 通ればチャンスに繋がるボールだが、コントロールしきれず弾いてしまう。



「気にするな。落ち着いてまずはリラックスだぞ」



 ミスをしたチームメイトに、泉谷はすぐ駆け寄って声をかける。それを弥一は遠くから観察していた。



「(そりゃそうなるよね。向こうも初出場だし、何人か緊張してるの実際居るから)」



 彼らの心の動揺、弥一にはしっかりと伝わる。何でもないように装っているが、実際は緊張したり不安でいっぱいになっていた。



 それを抱えているのは立見で翔馬、川田の2人だ。



「(このままずっとは流石に不味いし先の試合もあるから、どうにかしないとなぁ)」



 今や1年の2人も立見に欠かせない大事な選手。彼らの働き無しでは、この試合だけではない。その先の試合にまで、影響が及んでしまう。



 勝也には泉谷との攻防戦に専念してもらう為、弥一が解決しようと動き始める。




 泉谷のマークに勝也が苦戦。成海や豪山を中心に泉神ゴールへ迫るが、徳島予選を失点1で乗り越えた守備は伊達ではない。



 泉神の選手達は互いに近い距離を保ち、自軍ゴール前でブロックを形成していた。



『田村の右からのクロスを泉神が跳ね返す!セカンドを拾って影山シュート!DF体を張ってブロックした!』



 立見の得意な攻撃パターン。ようやく出来てくるが、泉神の必死の守備が粘り勝つ。



「良いぞ良いぞー!自信持って守ってけ!」



「何度でも行け!跳ね返されても諦めんな!」



 勝也、泉谷の両キャプテンが声を張り上げて、チームを鼓舞する。



 立見が優勢で試合を進めるが、スコアは動かないまま、0ー0で前半終了の笛が鳴った。





「生き返る〜」



 ロッカールームに戻った立見。それぞれに飲み物や冷やしたタオルが配られ、猛暑の中で試合を行った、選手達の疲れを癒す。



「翔馬、もっちゃん。ちょいちょい」



「ん?」



 川田と翔馬が休んでいる所へ、弥一が近づいて声をかける。



「2人とも何をそんな怖がってんのさ?」



「え?いや、怖がってなんかいないけど……なあ?」



「うん……」



 怖がっていないと、弥一の言葉に川田も翔馬も否定する。だが心の読める弥一に嘘は通じない。



 周りの凄い先輩や同級生と比べ、自分は全国に出ていない。そんな自分が本当に通じるのか不安に思っている。



 だが通じなければ、チームの足を引っ張ってしまう。なんとしても頑張らなければと、2人は不安と共に力を入れ過ぎていた。



 それがプレーを狂わせ、ミスが生まれてしまったのだろう。





「この世に俺達を越えるチームなんかいない」



「「え?」」



 突然の弥一の言葉に、川田と翔馬の声が偶然揃う。



「俺が、立見こそが世界最強。何者も俺は止められない。そう思っときなよ♪」



「え、ええ?」



「何だその自己暗示みたいなのは……!?」



 不安や緊張の2人に弥一がかけた言葉。リラックスをするようにとか、落ち着いて行こう、とも言わない。



 自分やチームを最強だと思え。何者も自分を阻めないと思え。



 戸惑いがある中、不思議と弥一の言葉は2人の心を揺さぶっていた。




「(弥一に先を越されちまったかぁ……)」



 1年3人のやり取りを密かに見守る勝也。川田と翔馬に気付いていたが、自分よりも早く弥一の方が気付く。



 先を越された分、後半はなんとかしようと、勝也は席を立ってフィールドに戻る。




 後半のキックオフを迎え、今度は泉神の方が立見ゴールに向かい、積極的な攻撃姿勢を見せていく。



『泉神、前半の守備的なサッカーから一転!立見ゴールへ迫る!』



「(だったらお返しだ!)」



 勝也が泉谷をピタリとマーク。前半とは立場が逆転していた。



「っ!」



 泉谷がマークを振り切ろうと走り回るが、勝也は逃さない。何処までも付き合ってやる。そう言わんばかりのしつこいマークだ。




「右行け右!」



 泉神の監督が立ち上がって前に出ると、右から行けと選手達に伝える。立見の守備は堅いが、1年の翔馬が守るサイドは甘いと見ていた。



 堅守の穴。そこを狙おうと、中盤から右サイドにパスが出る。




「(僕こそが、世界最強!)」



 弥一に言われた言葉を心で繰り返す。不思議にも体は軽く感じ、出されたパスがよく見えていた。



 思うと共に翔馬は走り出し、サイドへのパスを左足でカット。



「(影山先輩!)」



 近くの右に居た影山へ左足でパス、その直後に翔馬は左サイドを駆け上がる。



 ダイレクトで影山から翔馬へパスが返り、ワンツーが決まっていた。



『水島インターセプト!立見カウンターだ!』




「(1年坊主が!)」



 泉神の右SDFが立ち塞がる。相手の方が体は大きく、小柄な翔馬にとって大きな壁だ。



 これに翔馬は左足、スパイクの裏でボールを後ろに引かせていく。



「(何者も、僕を止められない!)」



「!?」



 強い思いと共に、翔馬が一気にターン。それはVの文字を体で描くように、相手の隙を突いて突破していた。



 そこに抜かれた相手が何としても止めようと、翔馬のユニフォームへ右手を伸ばす。反則覚悟で止める気だ。



 だがボールは既に翔馬の足元から離れていた。掴まれる前に左足で中央へ送って、川田が走り込む。



「(この世に俺達を越えるチームなんか、いない!!)」



 ボールがこの時、スローモーションのようにゆっくりに見えた。根拠は無いが、これは行けると川田の感覚が教えてくれる。



 強い思いと共に、翔馬からのボールを左足で合わせた。



 川田の左足から放たれた球。弾丸のような勢いで、泉神に向かって加速する。



 ゴール左に飛ぶ豪砲は泉神GKのダイブも及ばず、大きく豪快にネットを揺らしていた。



「あ……!」



 自分のシュートが決まると共に、主審の立見のゴールを認める笛が鳴った瞬間、会場からは歓声が沸き起こる。



「やった!川田ー!」



「うおおーー!!」



 アシストを決めた翔馬が川田へ駆け寄ろうとしていたら、川田が雄叫びを上げて、応援する立見スタンドへ向かって走る。



 テンションが上がったのか、彼はユニフォームを脱ぎ捨てていた。




「「あ」」



 これに弥一、勝也が声を揃えて発する。



 初の全国の舞台で豪快なゴールを決めたが、その後の川田の行動は主審からイエローカードを1枚貰ってしまう。




「……川田君、上村君と交代」



 ため息をつきたくなるのを堪え、京子は交代の指示を出す。




「(効果抜群過ぎたかなぁ〜)」



 想像以上に出た効果。これには流石の弥一も読めなかったようだ。カードの代償はあったが、立見が1点をようやく先制。



 2回戦進出に向けて大きく前進する。

勝也「最後脱がなきゃ言う事無しだったんだけどな」


弥一「アドレナリンが出たのかなぁ〜」


川田「ホントすみません……!」


弥一「もうー、そういうのはアドルフだけでお腹いっぱいなんだからねー」


川田「あいつと違って俺はシャツ着てるから!」


勝也「んな問題じゃねぇ」



アドルフ「ぶぇっくし!」


ルイ「お前脱ぎ過ぎて風邪引いたんじゃないだろうな?」

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