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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 総体編

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思い出と共に再会

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 夏の猛暑対策は毎年行われ、今年の総体の開会式は北海道が舞台。



 その大型体育館に52の高校が集う。




「ふあ〜」



 開会式が行われている体育館の壇上にて、スピーチが行われている最中に弥一は眠そうに欠伸をする。



 周囲の高校生が真剣に話を聞く。表面上はそう見えるが心の見える弥一からすれば、話が長いと思っている者が何人か居た。




「(話長ぇー)」



「(眠いわぁ、ホテル帰って眠りてぇ〜)」



「(まだ終わんないのかな?腹減ったー)」



 これがもし炎天下の外で聞かされていたら、もっと酷い心の声が聞こえたかもしれない。




 彼らと同じように弥一も、長いスピーチを全て真面目に聞く気は無かった。聞いたとしても、全てを覚えられる自信は無い。



「(今日の夕飯は何が出て来るかなぁ〜……)」



 弥一の関心は今日北海道で食べる夕飯、そちらに向けられていた。





「終わったぁ〜!」



 長い話が続いた開会式からようやく解放され、弥一は思いっきり腕を伸ばして解放感に浸る。立見のメンバーは先にホテルへ戻り、会場の体育館の前にて、弥一と勝也の2人だけになっていた。



「今年は屋内でやってくれて良かったな、外だったら暑すぎて出席だけで体力消耗してたぞこれ」



 この日はカンカン照りで、長時間外に居るのは良しとされない程に猛暑だ。



 開会式を屋内でやってくれたり、今日が試合じゃなくて勝也は心底ラッキーと感じた。



「1回戦は確かえー、いずみ……がみ……泉神だ!勝兄貴、1回戦の泉神ってどんなチームー?」



 総体で立見の初戦となる相手は既に確定している。立見と同じく総体初出場、徳島代表の泉神高校だ。



 うろ覚えだった弥一だが、対戦校の名前をハッキリ思い出すと、勝也の顔を見上げて尋ねた。



「泉神は堅実なプレースタイルのチームだな。得点は少ないけど、徳島予選を失点1で勝ち上がってる」



「いかにも守りのチームって感じだねー」



「泉谷康介って3年のキャプテンを中心に纏まってるし、そいつ自身も全国レベルで相当な実力者だ。足が速い上に読みも鋭くてFKも得意、オマケに体格が良いと来るから手強いぜ」



 キャプテンとして、泉神の情報は頭に叩き込んである。相手キャプテンの泉谷については、徳島予選の試合動画を拝見済み。



 ボランチを務める泉谷は文字通り攻守の要。立見で言えば勝也のような存在だろう。



「ま、全国に出て来るような猛者だ。そりゃ簡単な相手なんざ居る訳ねぇよ」



 全国出場を決めたチームは全員が強敵、簡単な試合は無い。それは小学校時代に、全国を経験した柳FCの時から知っている。



 隣に弥一が居て、本当にあの頃みたいだと、勝也は昔を振り返っていた。



「……ん?」



「勝兄貴?どうかした?」



 その時、過去を振り返っていた勝也は何かに気づく。どうしたんだと弥一が尋ねた直後、勝也は大きく声を出す。



「あああ!思い出した!泉谷、小学校時代に全国で対戦してたわ!」



「え、そうだったの!?僕その人とマッチアップしてるかな?」



 思い出した興奮からか、本人は気付いていない。周囲の人間の視線が叫んだ勝也へ一瞬集まっていた事に。



 勝也が思い出したのに対して、弥一は覚えていない。勝也と共に大会へ挑んだ時だろうかと、弥一も当時を振り返る。



「お前は出てねぇよ、当たったのは俺が5年生の時だったから」



「あー……その時って僕3年生で応援する方だったよね」



 対戦したのは勝也が5年の時、敗北を味わった年だった。その頃はまだ弥一が参戦する前だ。



「あの時は結構接戦だったんだよな。こっちが先制したけど、追いつかれて1ー1。そこから勝ち越して柳FCが勝ったんだ」



「勝兄貴すっごい覚えてるねー」



「泉谷とは結構激しくぶつかり合ったからよ。まさか泉神のあいつがそうだったとはなぁ〜……名前聞いて顔見た時ずっと引っかかってたわ」



 その時の記憶が蘇り、勝也は当時を振り返る。勝也も泉谷も共に中盤の位置で、2人は激しい攻防戦を繰り広げていた。



「ああ、そうそう!確か決勝点はあいつが決めたんだった。春樹の奴がな」



 記憶を辿って行けば当時の試合で、決勝ゴールを決めた者を思い出す。自分よりも一学年下の後輩だ。




「勝也先輩!」



「ん?」



 思い出に浸っていると自分の名が呼ばれ、勝也は声のした方へ振り返る。



 当時より身長は伸びてるが間違い無い。その決勝点を決めていた天宮春樹。彼は勝也の顔を見ると、嬉しそうな笑みを見せていた。



「おー、噂をすれば春樹!直接会うのは久しぶりだよな?」



「はい、お会い出来て嬉しいです!さっき聞き覚えある大きな声が聞こえましたから、やっぱり勝也先輩だったんですね!」



「あ……さっき叫んじまってたのか俺」



 思い出して声に出てしまった事、それを聞いた春樹は勝也の声だと分かり、駆け付けて来たのだ。



「すっごい久しぶりですね春樹さんー♪」



 同じ柳FCなので弥一もチームメイト。なので春樹へ明るく笑って声をかける。



「急にイタリアに旅立ったと思ったら戻って、立見に入っていたのは驚かされたよ……弥一」



 春樹は弥一と目が合えば、微笑んで答えていた。だが弥一には心の奥底が見える。




「(数年経っても勝也さんに付き纏ってんのか、ミランにそのまま残ってろよ……!)」



 勝也と共に居る事の多い弥一に対して、不満を抱えている所は昔と変わっていない。春樹は誰よりも勝也を崇拝する少年で、柳FCの時からずっとそうだ。



「(変わんないなぁこの人)」



 心の声は聞こえたが、弥一は何も言わず挨拶を済ませた。




「お前も大変だな、確か牙裏でテニスとサッカー掛け持ちしてんだろ?」



「これもサッカーに活かす為ですから、それに今回はその一本に集中してます!牙裏も総体出場出来ましたからね!」



 弥一の時と違い、勝也の前では目を煌めかせて話す春樹。




「おい春樹、戻らねぇのかよ」



 そこに別の人物の声が聞こえて来る。不良のような風貌で鋭い眼差し、近寄り難い雰囲気を纏う者が居た。



「ああー、最優先すべき事出来ちゃったから!折角だから狼騎もこっち来てよ、紹介するからさー!」



「は……?」



 恐れもせず春樹は彼の手を引っ張り、弥一と勝也の元まで連れて来る。



「彼がうちの牙裏学園を全国に導いたエース、酒井狼騎です!ほら、この人が神山勝也さんだぞ!」



「あ〜……ウゼェぐらい語り倒したあれか」



 春樹の前に連れて来られ、狼騎と勝也の目が合った。




「……酒井狼騎」



「ん?おう、神山勝也だ。よろしくな」



 素っ気ない感じだが、自己紹介してきた狼騎に勝也も名乗り返す。



 牙裏の狼に臆する事なく、立見の闘将は交流を深めようとしていた。

勝也「語り倒したってあいつ言ってたけど、何話してたんだよ?」


春樹「評判下げるような事なんか一切言ってませんから!勝也先輩の凄くて格好良い所を2、3時間ぐらい話しただけです!」


勝也「俺について語る事そこまであんのか!?」


春樹「むしろ足りないぐらいです!」




狼騎「知らねぇ大人のスピーチの方がまだ全然マシだったわ」


弥一「間宮先輩といい、勝兄貴は年下から慕われやすいな〜」

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