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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 再会編
508/653

他校から見た闘将のサッカー

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 東京の総体予選は1次トーナメントへ突入。立見は1回戦で強豪校の岩城高校との試合になる。



「今年の立見はかなり調子良いらしいからしっかり見ないとな」



「そうだなぁ、あのスタイルは良いもん持ってるねぇ」



 スタンドから真島高校のジャージを着て、観戦しているのは真島の3年鳥羽と峰山。


 峰山と会話しながらも、鳥羽は双眼鏡で熱心に見ていた。



「豪山、成海、神山のトリオには去年手を焼いたもんだ。気を付けないと今年は足元をすくわれるかもしれないし」



「ああ、あの腰は良いねぇー」



「ん……?」



 去年対戦した立見について振り返りながら話すと、峰山は鳥羽の言葉に違和感を覚える。


 ちゃんと見てるのかと振り返ると、彼はフィールドのプレーヤーではなく、スタンドの応援するチアリーダー達の方に双眼鏡を向けていた。



「何処見てんだお前は!」



 これに峰山は鳥羽から双眼鏡を取り上げ、キャプテンとして叱る。



「分かってるって、立見だろ?神山勝也でお馴染みの」



 双眼鏡を没収された鳥羽は肩を竦め、ようやくフィールドに目を向けた。



 視線の先にはダークブルーのユニフォーム、右腕にキャプテンマークを身に着け、背番号6を背負う勝也の姿。



「良いボディバランスしてるよありゃ。相手さんからあんなぶつかられても倒れやしない」



 ボールを持つ勝也に、左から岩城の選手がショルダーチャージでぶつかって来る。


 だが勝也は当たり負けず、ドリブルで中央を突破していく。



「テクニック高かったりシュートも良いのが撃てるんだよな、何よりキャプテンとしての能力が高い」



「去年もチームを纏め上げてあの快進撃、伊達に闘将とは呼ばれてないって訳だ」



 去年の試合、真島は立見に勝利しているがかなり接戦だった。


 当時2年で試合に出ていた鳥羽も峰山も、鮮明に覚えている。



 立見で一番注意するべきなのは成海や豪山ではなく、勝也だと。





「田村!右気を付けろ!」



「川田10番!!」



 勝也は大きく声を出しながら、フィールドを縦横無尽に駆け回る。



 都内では強豪校で知られる岩城相手に互角の展開、むしろ立見の方がペースを握りつつあった。



 再び勝也にボールが渡ると、前を向く。




「(水島上がれ!)」



 勝也は左サイドの翔馬へ、上がれと左手でジェスチャーを送る。


 それを見た翔馬は一気に駆け上がっていた。



 岩城DFは上がって来た翔馬を見て、そこにパスが行くと読んでマークに行く。




 だがそれは囮だ。



 左に意識が向いた隙に、勝也がドリブルで中央から仕掛ける。



「うお!?」



 これに思わず勝也のユニフォームを後ろから掴み、引っ張ってしまう岩城の選手。


 勝也はバランスを崩し転倒した。




「大丈夫スか勝也先輩!?」



「んなヤワじゃねぇよ、いちいち慌てんな啓二」



 心配になって駆け寄って来た間宮に、立ち上がった勝也は大丈夫と彼の右肩に軽くポンと叩く。



 立見は勝也が大黒柱、彼の代わりになれる選手はいない。



 怪我でもあったら一大事、そう思うのは間宮だけではないはずだ。



「(ふ〜、怪我は無さそうっと……)」



 後方から勝也の心を覗けば彼が痩せ我慢したり、痛みを堪えている様子は無い。



 何より一安心してるのは弥一だった。




 ゴール前のFK、距離は25m前後と正面で充分狙える位置。



 ボールの前には左に勝也、右に成海が立っている。




「どっちが蹴って来ると思う?」



「あの位置なら成海だろ、去年に何本かFKを決めている実績もある」



 俺には届かないけどな、と峰山と会話を交わす中で予想しつつも、鳥羽は自分が一番FKでゴールしてると不敵に笑う。



「その情報は当然岩城さんの方も知っているはずだし、さあどうなるかね?」



 東京随一と言っても過言ではない、FKのスペシャリストが注目。




「……で、やってみる」



「分かった」



 勝也と成海がセットされたボールの前で、ヒソヒソと打ち合わせをする。



 相手は立見のキッカーと言えば成海、というイメージはあったが、此処まで2ゴールを記録している勝也にも警戒していた。



 すると勝也はボールから離れ、後ろに下がって距離を取る。




 そこから闘将が猛然とボールに向かって走り出す。



「(蹴るのか!?)」



 走って来る勝也の姿、岩城の選手達は成海ではなくこっちかと迷いが生じて来た。



 その時、成海が左足を振り上げてキックのモーションに入る。



 だが成海の左足は空振り、それに釣られて真ん中の壁がジャンプしてしまう。



「(かかった!)」



 釣られてジャンプした壁の選手の姿が見えた勝也、ニヤリと笑えば勢い良く、右足で思いきり蹴り出す。



 ジャンプした選手の下をボールは地を這うように、低い弾道で真っ直ぐ、岩城のゴール左下へ飛んでいた。



 GKは一歩も動けず、ボールは派手にゴールネットを揺らす。




「っしゃあ!!」



 直接ゴールを決めた勝也は派手にガッツポーズ、成海や豪山が真っ先に駆け寄って手荒い祝福を与えた。




「おいおい、色々出来るってのにFKまで出来るって、何でも屋かよ今年の神山は」



「GKの不意を突いたのもあるけど、あのグラウンダー凄くないか?」



 勝也のキックを見届けた後、鳥羽は軽く息をついて、峰山の方は驚いている様子だ。





「さあさあ神山先輩が大事な1点決めてくれたから完封するよDF陣ー!」



「分かってるっての!」



 弥一はすかさずDF陣へ声をかけ、間宮が言われなくてもそのつもりだと返す。



 岩城が点を取り返そうと攻め込むも、間宮、影山、田村の2年3人を中心とした守備が通さない。




「(くそ!だったら此処から!)」



 点を取れない時間帯が続き、思い切ったロングに踏み切ろうと岩城の選手が来たボールに対してシュートに行く。




 だが、そこに弥一のスライディングが飛んで来た。



「うわ!?」



 スライディングの足はボールを捉えて蹴り出され、セカンドとなったボールは影山がキープする。



「ナイスプレーだ弥一!もう1点行くぞー!!」



 勝也は弥一を褒めた後、再び相手ゴールへと走り出す。



 彼の闘志に応えるように全員がフィールドで躍動。



 完全に勢いに乗った立見は止まらず、豪山、成海、影山と立て続けにゴールを奪い突き放す。



 最後は後半出場の優也が、ダメ押しの5点目を決めて勝負ありだった。




「凄まじいな、岩城を此処まで圧倒するのは正直想定外だ……」



 試合終了を迎え、喜び合う立見を見て、峰山は彼らの力を脅威だと感じた。



「こいつは去年以上に勢い乗らせちゃ駄目だろ。勝つなら神山勝也を徹底的に封じ込めないとな」



 もしも立見と当たるとしたら、鳥羽は勝也が要注意と見ている。


 立見の調子は良くも悪くも彼次第だろうと。




 ただ立見は彼だけではない。勝也が目立っていたせいで偵察側はその事に気付かないまま、席を立っていた。






「お疲れー、連続ゴール記録継続だねー♪」



「相手がバテていた所に上手く決められただけだ」



 支部予選の全てでゴールを決めて来た優也。その彼に弥一は明るく笑顔で労って、優也の方はクールに答えていた。




「(思ったより良いサッカー出来たなぁ、守備に安定感があると全然違う……)」



 去年は失点を重ね、あまり完封が無かった。



 サッカー部が出来てまだ1年ぐらいの上に大人の監督やコーチもいない状態。



 勝也は攻撃サッカーで、相手より多く点を取る事に拘った。


 失点の多さはその代償だ。



 だが今年はまだ無失点、その原動力は間違いなく小さなDFだ。




「よーく休んでおけよ、お前の代わりはいねぇし」



「人の事言えないでしょー」



 弥一の頭をくしゃっと撫でて労う勝也、内心で彼に深く感謝する。



 そう思う彼の心はしっかり弥一に届いていた。




 立見5ー0岩城



 神山1


 豪山1


 成海1


 影山1


 歳児1

弥一「勝兄貴大活躍だねー♪」


勝也「しかし俺含めて苗字に山が多いな!?」


弥一「これ対戦校によっては山だらけになっちゃいそうで、実況の人とか大変そうだよー」


勝也「そこん所の苗字のバランスを作者考えなかったな間違いなく」


弥一「後、代表に山の付く人多く選ばれて苗字が山だらけの日本代表とか出来そうかもねー?」


勝也「それでマウンテンジャパンとか呼ばれたり……いや、まさかなぁ……?」

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