再会を果たす2人
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
今回は勝也が居るバージョンとなります。
「とうとう今年がラストかぁ……」
満開の桜が咲く季節を迎え、通い慣れた通学路を歩く神山勝也は自然とそんな呟きが出て来た。
サッカー部の無かった立見高校で、仲間を集めて0から始め、様々な困難がありながらも彼はキャプテンとしてチームを引っ張って来た。
早いもので今年もそれが最後だ。
「去年は選手権……惜しい所まで行ったよね」
勝也の左に並んで共に歩く倉石京子、勝也と同じ3年でマネージャーとして初期の頃から立見サッカー部を支え続けている。
「ああ、今でもあれはすっげぇ悔しかった」
勝也の脳裏に蘇る去年の試合。
東京Aブロックで全国行きを賭けた決勝戦、真島との戦いは1点のビハインドを背負ってしまうも立見が同点に追いつく。
そのまま勢いで逆転と勝也達が奮闘するも、彼らの勢いを断ち切ったのは当時2年エースだった鳥羽。
彼の世界レベルと言われるFKを決められ、立見の全国行きは叶わず悔し涙を流してしまう。
「今年で最後だから、優勝でやっぱ終わりたい」
3年となった勝也は今年が高校サッカー最後の年、最後は優勝したいと歩きながら目標を掲げていた。
それが東京予選の優勝ではない、全国大会の方の優勝だと京子には伝わっている。
すると京子は勝也の方を見てクスリと笑う。
「どうした?」
「勝也、頭に花びら結構ついてるから」
京子に言われれば、勝也は自分の銀髪に桜の花びらがいくつか落ちていた事に気付く。
「格好良く決めたつもりが……締まらねぇなぁ」
漫画の主人公みたいに目標を掲げて決めたつもりが、気まぐれな桜の悪戯で思うようには決まらずだった。
勝也は頭に付いた花びらを軽く右手で払い落とす。
0から作り上げた立見サッカー部の創立者として、キャプテンとして、これから入って来るであろう新入生の前にみっともない所は見せられない。
「っし、最後の年よろしくな」
正門を京子と通る際、勝也は立見高校に向かって声をかけた後に校舎へ向かった。
「入部希望者は?おお、去年より上がってるな」
「そりゃそうだろ?去年惜しい所まで行ったんだし」
サッカー部の部室にて、勝也と同じサッカー部で同級生の成海、豪山の2人が入部届に目を通していた。
去年と比べて入部の数が上がっていて、やはり創立から僅か1年程で東京予選の決勝まで勝ち上がったのは、インパクトが大きかったのだろう。
「お、こいつ良いな。大門達郎……GK希望で186cm、この年でもうこんなあるって相当な大型キーパーになりそうじゃね?この川田保ってのも結構デカいなー」
勝也も入部届に目を通していき、良さそうな新入生が居るなと嬉しそうな顔を浮かべる。
「186って俺よりデカいじゃねーか。今時の中学生はそんなあるのかよ」
「智春、発言が年寄りになってきてるぞ」
「うっせ」
豪山が勝也も見た新入生の情報に目を通し、成海とやり取りする中で勝也の目が1つの紙を捉えていた。
「え?」
「勝也?どうかしたか?」
何やら驚いている様子の勝也に成海は声をかける。
「あ……いや、なんでもない」
特に何も無いと、勝也は誤魔化して他の入部届に目を通していく。
勝也の様子が気になって、成海は先程勝也が見ていた紙を手に取る、それに隣の豪山も覗き込んでいた。
当然ながら他と同じように1人の入部希望者について、簡単なプロフィールや希望のポジションが書かれている。
「神明寺弥一、身長149cm体重42kgって小さくね?」
「俺も思った。これは中学生どころか小学生だろ」
どんなに小さくても160cm台で、実際それぐらい小さくても世界で活躍する一流のプロは存在する。
だがこれはあまりにも小さ過ぎだ。
「勝也も驚いたよな?こいつの小ささに」
「あ〜……」
豪山の言葉に勝也は適当に答えていた。
2人は知らないが、勝也は知っている。
その小柄な新入生が何者なのかを。
「皆、ちょっと良い?」
部室に京子が入って来て3人へと声をかけ、皆が京子を見た。
「どうした京子?」
「新入生がキャプテンに挨拶したいみたいなんだけど……」
「おいおい気が早いな、顔合わせは今日じゃねぇのに」
新入生が挨拶したいと尋ねて来ている。京子からそれを聞くと勝也は持っていた紙を机に置く。
「何かやる気ありそうだし、会ってみるか?」
「そうだな。通してくれ」
成海の言葉に頷くと勝也は許可を出した。
「入って」
京子が部室の扉を開くと、そこに1人の少年が入って来る。
「初めましてー、神明寺弥一です♪」
部室に入って来た黒髪の少年、彼は陽気な笑顔で物怖じせず挨拶をする。
「!!」
この姿に勝也は椅子から立ち上がって驚く。
「神明寺弥一って……!?」
「ガチで小さかった……!」
勝也だけでなく、成海や豪山も目の前の相手を見れば、揃って小さいという印象を受けた。
本当に小学生並の体格だ。
「あー……ようこそ、神明寺弥一君……サッカー部キャプテンの神山勝也だ……こっちは副キャプテンの成海蹴一に豪山智春……」
目の前の相手は知っているが、この場はサッカー部のキャプテンとして接し、勝也はなんとか平常心を保とうと自己紹介。
「とりあえずフィールドを案内しよう……俺がやるから後、任せたぞ」
勝也は弥一を連れて部室を後にしてフィールドへ向かう。
その間に会話は交わされず、無言のまま目的地に到着していた。
「弥一、お前こんな所で何してんだ!ミランはどうしたミランは!?」
フィールドにて2人きりとなったタイミングで、勝也は弥一に怒るように言葉を発する。
弥一は小学校を卒業後に中学へ進学ではなく、イタリアへ留学していた。
向こうの超一流サッカークラブのミランに入って、活躍していると兄を通して知ったり、弥一本人からの報告等で勝也も知っている。
それが何故今日本に居て自分の通う立見に居るのか、勝也は信じられない気持ちでいっぱいだった。
「ミラン?あ〜……」
何故来たのか、弥一は口を開いた。
「クラブ解雇されちゃった♪」
「はああ!?」
明るく笑う顔と言っている内容が噛み合ってない事に構わず、弥一が伝えると勝也は驚きのあまり叫ぶ。
「新しく入った監督が僕の体格じゃプロどころかプリマヴェーラも無理だ、てなって新しく入った有望株の選手と入れ替えで僕が追い出されたんだよー」
向こうの新監督が弥一を見て、彼が通じるのは今だけで上のレベルでは通じないと判断され、弥一はミランを去る事になったのだ。
今の現代サッカーはフィジカル重視で選手の大型化が進む、なので一際小さな弥一は外されたのかもしれない。
「だったら向こうで他のクラブ入ったりとかでも……」
弥一なら他のクラブで理解ある者の元で、やれるだろうと勝也は思った。
「勝兄貴が立見でサッカー部作ったって聞いた時から興味あったんだよー、他に行く所無いし日本のご飯も恋しくなっちゃったから行こう!って事で帰って来たんだ♪」
「……そういう所は昔と変わんねぇなお前」
思い立ったらすぐに行動する、勝也は弥一の行動力を昔から見てきた。
勝也の所属するクラブにすぐ入ったり、合気道が良いとなったらすぐに習い始め、イタリア行きも彼の決断と行動で実現している。
「そういう訳なんで神山先輩よろしくお願いしまーす♪」
弥一は勝也に先輩として接し、改めて頭を下げて挨拶。
「何か変な感じだなぁ、皆の前じゃなきゃ勝兄貴でいいから」
流石に他の部員達が居る前では先輩と後輩だが、それ以外は幼馴染の付き合いで行く。
弥一と勝也の高校生活が始まる。
弥一「やっと勝兄貴と学校生活〜♪」
勝也「つか待て!お前はいいのか!?ミランを解雇って!」
弥一「だって小説じゃ流行ってるでしょ?今日でお前はメンバーから抜けろっていう追放物とかさー」
勝也「しかしなぁ……まあこれに関しては他に何も浮かばなかった作者が悪いわ」
ディーン「それで行くなら俺も日本に行く」
アドルフ「興味あるから俺も行きたい」
グレンメル「俺も」
ファルグ「俺も」
デイブ「俺も」
勝也「ミラン勢がどんどん日本に来ようとしてるじゃねーか!?ブラジルの至宝に2m越えの化け物まで何か居るし!」
弥一「この場所も賑やかになってきたなぁ〜」




