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世界一を争うラストデュエル

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『ゴ……ゴール!ゴール!!ゴールだ!!日本試合終了間際に神明寺弥一!難攻不落の要塞、イタリアのカテナチオから得点ー!!彼は神の子か!?』



『クリアボールをカウンターでシュートなんて、また……ディーンだけでなく彼も異次元の天才じゃないですか!?こんなの他のプロにも出来ませんよ!』




「やったーー!!」



 スタジアムに地鳴りのような大歓声が発生し、一部では狂喜乱舞が巻き起こる。


 弥一はその中で飛び上がり、喜びを爆発させていた。




「うおおお!弥一!!」



「お前……お前ー!!」



 あまりの出来事に語彙力を失ってしまう冬夜と室。それぞれ弥一に抱きつくぐらいしか出来なかった。




「決めた……あいつホンマに決めたー!!」



「やりやがった!すげえぇ!!」



 ベンチで政宗と共に喜ぶ想真、既に彼の涙腺は限界寸前まで来ている。





「やったやったやったー!日本先制したー!!」



「神明寺先輩マジ半端ないー!!」



「おおお!弥一!あいつが決めたのか!?」



「そうよ!あの子が決めてくれたのよ!私達の子が!!」



 立見体育館ではそれぞれ喜びが爆発。詩音と玲音が互いに抱き合って喜んだり、我が子のゴールに両親のテンションが一気に高まったりと、歓喜の輪の広がりが止まらない。



「よし……!!」



 弥一が決めたゴールをしっかり見届けた輝咲。両拳を握り締めてガッツポーズで喜ぶ。




「ありえない!我らのアズーリが!?」



「なんてこったぁ!!」



「どうなってるんだ日本!?」



 一方のカンプノウ現地のイタリアサポーター。信じられないという気持ちと共に、頭を抱えて落胆の色を隠せない。



 優勝候補筆頭と言われ、ディーンがこの大会に出場し、世界一を勝ち取り彼の為のUー20ワールドカップとなるはずだった。



 しかしそれを日本に、弥一によって狂わされようとしている。


 予選から此処まで無失点。難攻不落のカテナチオを破られ、残り時間はもう僅かしか無い。




 今大会初失点を喫したイタリア、彼らの落胆の色も隠せなかった。



「(何で今のシュートに飛びつけなかったんだ俺は……!!)」



「(一瞬の気の緩みが……畜生!!)」



 蹲ったまま立ち上がれず、悔しさで大きな体を震わせるリカルド。


 何故今のが守れなかったんだと、ゴールポストに拳を叩きつけて後悔するクライス。




「何時まで悔しがっているつもりだ!早くボール寄越せ!!」



 そこにディーンの怒号が響く。



 イタリアのカテナチオがこの時間帯に破られ、多くの心がへし折れて行く中、ディーンはまだ試合を捨てていない。



 残り時間で日本のゴールを奪う事は充分に可能。同点ゴールさえ奪えばPK戦に持ち込めて、イタリアに優勝のチャンスが再び巡ってくるはずだと。



 イタリアはすぐにキックオフ準備を進めるが、日本の方はベンチメンバーと共に未だゴールを決めた事を喜び続け、中々ポジションに向かおうとしなかった。




 こんな時でもわざと長く喜び、イタリアを焦らす事は忘れない。



 早く戻って来いよ、と大半のイタリア選手がイライラする中、ディーンは1人静かにキックオフの時を待ち続ける。



 彼だけはペースを乱されていなかった。




『残り時間あと僅か!日本このまま守りきってくれ!』



『最後まで気を抜いたら駄目ですよ!数々の悲劇が日本にはありますからね!』




 ようやく日本が戻り、キックオフを迎えてイタリアはディーンにボールを託す。



 そこに照皇、室がハイプレスをかけてくる。



 ディーンは相変わらずボールと共に踊るようなドリブル。衰えない機敏な動きでFW2人のハイプレスをものともせず、あっという間に躱してしまう。



 そこに優也、明も迫るがディーンは触れさせもせず、素早いフェイントでこの2人も突破。



 瞬く間に4人抜きのドリブル、会場からは驚きの声が上がって来た。



 だがディーンの足は此処で立ち止まる。



 目の前には弥一の姿があった。




「(弥一……!!)」



 終了間際、最後となるであろうデュエル。互いに汗が滴り落ちながらも動き回る。



 ディーンがボールを取らせなければ、弥一も突破をさせず、両者譲らない攻防戦が続く。



「っ!!」



 既に弥一の体力は限界。それでも1点を守りきって勝ってやろうという気持ち、完封への執念が弥一を突き動かしていた。



 ディーンもイタリア世界一への望みを捨てず、日本がカテナチオを破ったように、難攻不落の日本ゴールを割ってやろうと、必死の形相で弥一を抜きにかかる。






「また負けたぁ〜!もう何連敗なのこれ〜」



「覚えてる限りでは俺の9連勝だな」



 何時も通りの1on1を重ね、弥一とディーンは互いに競い合い、高め合っていた。



「なんかまたボール取りづらくなったしー」



「だとしたらお前にこの前取られたおかげだな。あの後に振り返り改善点を見つけられた」



「うわ〜、ただでさえ強いのにもっと強くしちゃってるんだ〜」



 弥一がディーンからボールを取れるようになってから、何故取られたのか己のプレーを振り返る。


 負けた時は何処が駄目だったのか、どうすれば良かったのか、自分を見つめ返すのがディーンの日課だ。



 カルチョに全てを捧げている。そう言っても過言ではない彼らしいと、弥一は芝生の上に倒れながら困ったように笑う。




「俺は欲深いかもしれない」



「ん?何が?」



「弥一と同じチームでいられ、こうして競い合う事は楽しいが……負ける事の許されない真剣勝負の場で俺達がぶつかり合ったらどうなるのか、そんな興味が湧いて来るんだ」



「ディーンが敵かぁ、やる立場としては凄い骨折れそうだね♪」



 これまで攻守の要として、このチームで戦い続け、不敗神話を築き上げて、最強の天才集団と恐れられるまでになっていた。



 要の2人、弥一とディーンが敵同士になればどうなるのか。



 敵として相対する時の弥一はまた違ってくるのかと、ディーンの興味は尽きない。



 一方の弥一は敵として戦うなら、ディーンの怖さを嫌と言うほど知らされている身としては、苦戦は間違い無いと思っている。



 敵として向かい合いたくない、とまでは言わない。



 そこまで言ってしまえば、ディーンにずっと勝てないと自分から認めてしまう。そこは弥一の意地があった。



「敵としてならさ、僕負ける気無いよ?」



「奇遇だな、俺もだ」



 戦う時は負ける気など無い、2人は互いの顔を見て小さく笑う。



「よし、元気があるようだからもう一勝負するか」



「うぇ!?もうお腹空いてきたんだけど〜!」






 2人は最後の瞬間まで向かい合い、互いの譲れぬ意地をぶつけ合う。



 主審は時計の方をチラッと見た。




「吹け!吹け!もう笛吹いちまえ!」



「早く試合終了!」



 日本ベンチから早く試合終了してくれと、辰羅川や春樹が声を上げる。




「終了するな!もう少し引き延ばせ!」



 イタリアベンチからもトニーが、まだ終わるなと声を出していた。




「ディーン!ディーン!ディーン!!」



 なんとか決めてくれと、イタリアサポーターからはディーンコールが起きている。




「弥一!弥一!弥一!!」



 日本サポーターからも弥一コールが起きて、守りきってくれと後押し。




 もう何時主審の笛が吹かれてもおかしくない。このまま終わるのかと思った時にディーンが動く。




 弥一を左から抜くと見せかけ、左足で右へとボールを浮かせて蹴る。


 ボールの先には影山の姿。最後の最後に集中力が切れてパスミスが起きたのか、敵の方にパスをしてしまう。



 影山がボールをカットしようとした時。




「な!?」



 自分の前でボールがワンバウンドすると、それは後方へと跳ね返り、ディーンの元に戻って行く。


 影山はこれに騙され、目を見開いた。




 ボールは再び浮き上がり、ディーンが走り近づきながら、これを右足のボレーで合わせに行く。


 最後の最後にディーンの神業が光る。



 狙いは五郎の居るゴールマウス、右上隅だ。




 シュートに行った瞬間、弥一が飛び込み左足でブロックに行っていた。



 ボールは宙を舞いながら、日本ゴールに向かって行く。




 力無く飛んで来たボールを五郎は両手で掴み取る。




 そこに主審の長いホイッスルが吹き鳴らされた。



 日本サッカーに新たな歴史が刻まれる。

辰羅川「終わった!?終わったのか!?終わったんだな!」


光輝「吹き違いちゃうやろな!?ぬか喜びは許さへんで!」


安藤「聞き間違いじゃないって!ちゃんと試合終了の笛だろあれは!」


政宗「じゃあ喜んで良いって事でー!!」


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