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王国の焦り

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 前半の時間は経過し、ブラジルが優勢で試合を進めている。



 立ち上がりこそ素早くショートパスで繋ぎ、攻め込んでいたがペースは少し落としていく。



 なんとしてもエリア内でのシュートはやらせんと、佐助や番が放り込んで来る高いクロスを跳ね返し、セカンドを影山が拾って難を逃れる。




「むう……」



 腕を組むブラジルベンチに座る監督。その腕を組む指もトントンと叩くようになり、表情も時間が経過するにつれて険しさが増していた。



 日本のアクシデントがあって、予期せぬ交代で崩れるかと思われたが、彼らは立て直してブラジルと渡り合っている。



 出来る事なら速い内に先制点が欲しい。ただ焦って攻め急ぎはしない。




 守りの固い相手にも前半で得点はしてきた、現に今のペースはブラジルにある。


 今動く必要は無いだろう。




「おい、ミドルやロングで行けるって話だったろ。これ……違うんじゃないか?」



「まだ10本も撃ってないだろ、続けるんだ!」



 レシがこの狙いはあまり効果無いのでは、と思ったがファルグは作戦を続行する。



「(くそ、もうすぐ30分だぞ?それで0ー0だと?日本相手に何やってんだ……!)」



 前半から攻めているにも関わらず、まだ1点も入っていない。


 電光掲示板の時計をちらっと見たファルグの小さな苛つきは、次第に大きくなっていく。




『サンウール、華麗な切り返し!スルーパスにファルグ!』



 ブラジルが左から攻め、サイドを守る白羽とのデュエルになると、独特のリズムでゆらゆらとボールを動かしキープ。


 白羽はボールを奪えずにいた。



 そこから右から左への素早い切り返し、左サイドの空いているスペースにスルーパスを送れば、ファルグが反応して動く。



 左から来る、佐助はファルグが左から日本エリア内に侵入した直後に立ち塞がる。



「(こいつは此処で止めないと!)」



 ブラジルで最も要注意の選手。得点ランキング首位に立つ男に、さらなる得点を重ねさせはしない。気迫溢れる勢いで佐助はボール奪取に動く。



「(そんなタックルで奪えるかよ!)」



 佐助の出して来た左足。それをファルグはボールを右から左へ転がしながら躱し、そこからボールと共にターン。



 鮮やかなテクニックで佐助を突破していた。



 これで後はシュート、目の前に見えるゴールと大門を見据えるファルグ。



 だが躱した直後だった。




「(いただきー♪)」



「!?」



 大柄な佐助の陰に隠れてのブラインドディフェンス。小柄で細身の弥一ならではの守備が、ブラジルのエース相手に炸裂。



 そこからボールを蹴り出して日本ゴールから大きく遠ざける。



 死角となって見えなかったファルグ。弥一にボールを奪われて目を見開く。



『仙道が抜かれた!いや、神明寺奪った!クリアー!』



『危ない所でしたね。ファルグに行かれてたら1点の大ピンチを神明寺君よく守ってくれました!』



「くっ!」



 自分が止められた事に益々苛立ちが増していた。顔を見ればファルグがイライラしている事は、分かりやすく伝わる程だ。




「こっちも点が入りそうにないなぁ、これPK戦も考えないといけないかもー?」



「!」



 独り言のように言う弥一の声は側のファルグに聞こえていた。


 それも彼が発していたのは、ブラジルで慣れ親しんだポルトガル語。当然ブラジル人のファルグは言葉を理解する。



 日本も今の所攻撃が難しい、点が入らずPK戦。



 つまり遠回しにブラジルが、このまま0点で終るという挑発とファルグは受け取った。




「(0ー0でPK戦だ?決勝も控えてるのにそこまで付き合えるか!大体俺やブラジル相手に無失点で済む訳無いだろ……!)」



 意地でも弥一や日本から点を取る。ファルグの目が鋭くなり、前半なんとしてもリードで折り返すとゴールを見据えた。




『広西、左からドリブル、右にサイドチェンジ!アロー読んでいた、通さないブラジル!』



 左から右へと、守備を揺さぶろうとした冬夜だが白羽へ渡る前に、ブラジルの左SDFアローが頭でカット。



「こっち!寄越せ!」



 想真のマークを外したファルグ。手を上げてボールを要求する。


 サンウールからのパスを受ければ、ファルグが今度は中央突破に行く。



 その先には弥一が居た。



「(今度は見えてるぜチビ!)」



 先程の不意討ちとは違う。何のブラインドも無い真っ向勝負のデュエルだ。



 しっかりと弥一の姿を見据えれば、踊るようなステップでボールを操り惑わしに行く。


 速さも兼ね備えた、それは触れる事も中々叶わない。



 伊達にブラジルの若き至宝とは呼ばれていない。スピードやテクニック両方を兼ね備えているファルグは一対一で、数々のDFをプロの世界で抜き去ってきた。



 だが弥一を誘ったり飛び込ませようといくら動いても、それに弥一が飛びつく事は無い。



 どんなに素早く高度なフェイントをやってこようが、冷静にファルグを見て突破はさせなかった。



『ファルグ華麗な動きで魅せるも神明寺突破を許さない、抜かせない!』



「(何だコイツは!?全然躱せないぞ!)」



 通常であればとっくについて来れず、突破している頃のはずが未だに止まってしまっている。



「(パス……いや、こんなチビ相手に突破を諦めて逃げられるか!)」



 此処でもたついていたら他の選手に囲まれる。パスの選択肢が一瞬頭をよぎったが、自分よりも小さくひ弱な日本人相手に抜けなくて、逃げるのはプライドが許さない。



 その時ファルグはボールをピタッと左足で止めると、弥一から視線を外して他の選手を見るような仕草をした。



 チャンスと見たか弥一はすかさず、右足を出してボールを取りに行く。




「(かかったな!)」



 これはファルグの仕掛けた罠。弥一が右足を出して来た瞬間に、左足から右足へとボールを転がしてターンに入る。


 先程の佐助を躱した時と同じ、ファルグ得意のフェイントだ。



 今度こそ弥一を完璧に躱した、そう思った時。




「(そっちがね!)」



「うおお!?」



 左側から自分を躱しに来たファルグに対し、右足で取りに行ったフリをして弥一はバックステップ。



 そして真横から左足をボールに伸ばせば、つま先が捉えてファルグのボールを弾いてタッチラインへと出された。



 予期せぬ弥一のタックルにファルグは転倒し、うつ伏せの格好でフィールドへ倒れる。


 止められた事が信じられず、主審にファールだとアピールする事も忘れてしまう。




 驚いたままファルグは立ち上がり、弥一の方を見る。



 大門からナイスだと声をかけられて、弥一はそれに笑顔で応えていた。




「ファルグ、今はあいつの居るゾーンは駄目だ。両サイドからが良い」



 独断で中央突破を狙ったファルグに、ドミーはプレーが止まったタイミングで弥一は徹底して避けるべきだと伝える。



「っ……!ああ、そうだな。一旦中央は忘れてサイドから徹底して、仕掛けるなら忘れた頃だ……!」



 弥一から逃げているようで、ファルグとしてはあまり乗り気ではない。


 だがチームを率いるキャプテンとして効率的な作戦で行くべきと、煮えくり返る思いをなんとか抑え、ドミーにそれで行こうと決めてプレーに戻る。




「っ……!?」



「(何か、キレが少し鈍ってる?)」



 右サイドでレシと争う影山。その時さっきとの違いに気付いた。



 疲れからか動きが鈍くなってきている。ドリブルのキレが、最初の時と比べれば感じられない。


 これなら奪える。影山はレシからボールを奪う事に成功。



『お、影山奪った!三津谷へ繋ぎ日本カウンターだ!』




 すぐにパスを出した影山。光輝に渡れば光明と狼騎が走り、ブラジルは守備に追われる。



 光輝は右サイドの光明へとパス。これをトラップすると中央に切れ込んで来た、白羽に渡して繋ぐ。




 シュートに行くと見せかけて、白羽は得意のドリブルでブラジルエリア内に向かう。



『白羽入って行く!撃てるか!?ドミーが来た!倒された白羽!』



 ドミーが体を寄せて来て白羽の好きにさせず、エリア内で倒されてしまう。



 PKかと思ったが主審の笛は吹かれない、白羽に立つよう促していた。




 クリアされた時、主審の笛から前半終了が告げられる。




 サッカー王国ブラジルを相手に0ー0で凌ぎハーフタイム。日本としては理想的で、攻めていたブラジルにとっては良くない流れだ。




 ハーフタイムでロッカールームに引き上げるブラジル選手の中には、何人か疲労が見える者が居た。



「(始まってる始まってる……)」



 狙い通りだと、ブラジルの選手達を観察していた光明はそれを見た後、自らも引き上げて行く。

詩音「っはぁ〜、なんとか0-0かぁ」


玲音「こっちもハーフタイムー、今のうちにお手洗いとか行ってねー」


フォルナ「ほあ〜」


摩央「ああ、お前も今のうちに飯食っとけよフォルナ」


半蔵「(フォルナの居る所にあった古いノートらしきもの……そういえば何時の間にか消えていたな)」


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