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それぞれの抱える物

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 Uー20ワールドカップもベスト4が出揃い、4強は日本、イタリア、ブラジル、スペインと決まった。



 日本対ブラジル、イタリア対スペインと、それぞれ同時刻に準決勝の試合が行われる予定。決勝でなるべく両者に疲労の差を与えない為のスケジュールだ。



 あのブラジルと世代別とはいえ、ワールドカップの舞台で闘うのは大きな意味を持つと、日本では報道されており対ブラジルとの試合で、日本がこれまで圧倒的に負け越している事も改めて紹介されていた。



 一方ブラジルの方では準決勝はただの通過点。日本には勿論勝つつもりであり、早くも決勝のイタリアかスペインを見据えて、カンプノウに行こうとサポーターが陽気に歌い上げる姿が、テレビで映される。




 ブラジルが有利という世間の声。それに関係なくUー20日本代表はベスト4を決めた翌日、オフの一時を過ごしていた。



 ビリヤード、ダーツ、ゲームとそれぞれが楽しむ中で弥一は1人豪華なホテルのロビーにて、スマホで電話をしていた。



「父さん何時日本に戻って来てたのさー?こっち入れ替わりでスペイン行っちゃったしー」



「ああ、もう少し帰りが早かったら弥一にも会えたんだがなぁ」



 電話の相手は長くイタリアに海外出張していた弥一の父親。弥一のイタリア行きがスムーズに決まったのも、これが影響したのが大きい。



「しかし準決勝か。それも次がブラジル……いや、これはもう彼らと真剣勝負出来るだけでも凄い事だぞ」



「そうだねー、でも決勝行きたいから王国に勝つ気満々だよー」



 国際舞台の最大規模、ワールドカップという舞台でブラジルとの勝負。それがどれだけ凄い事か父の方も理解していた。だが弥一の方は試合するだけで満足する気は無い。



 サッカー王国相手だろうが勝ちは狙っている。



「ま、父さんの方は久々の日本と夫婦水入らずの一時を楽しんでおいてよ♪」



「お前……子供がそんな気遣わなくて良いから、それより怪我とかには気をつけるんだぞ?アスリートは体が資本なんだからな」



「うん、じゃあ父さん。日本帰って来たら美味しい店連れてってね♪」



 父親との親子による会話が終わり、弥一は通話を切った。



 すると自分の方を見てくる視線に気づき、弥一がそちらを向くと狼騎が立っていて弥一を見ていた。




「あれ、狼さん何時から居たのさー?」



「るせぇ、たまたま通っただけだ」



 ウソなのはすぐに分かる。狼騎が弥一の会話をずっと聞いていた事は、心の中でお見通しだ。



 スマホを代表ジャージの胸ポケットに仕舞うと、弥一は狼騎に歩み寄る。



「まあ別に秘密の会話とかしてた訳じゃないからねー、親から連絡あっただけだし」



「……てめぇの親父、海外に居んのか」



 弥一の父さん、久々の日本辺りを聞いていた狼騎。



 そこから彼の父親が普段海外に居る、という考えに辿り着くのは容易い。



「そうだよー、仕事で長期の海外出張しててさ。それまではずっと母親と2人暮らし、と言っても母も会社行ったりしてるから半分くらい一人暮らしのようなもんだねー」



「共働きか」



「おかげで小さい頃からやりたい事出来てるから感謝だよー♪」



 幼い頃からサッカークラブに入る事、合気道の道場に通う事を許してくれた。



 突然イタリアから日本に帰国して高校行きたいと告げた時も、母の涼香が共に付き添って帰国してくれて父は1人残った。


 弥一はやりたい事を自由にやらせてくれた両親2人に深く感謝している。




「海外出張に行ける程のエリートって事か、俺の親父とは大違いだな」



「狼騎先輩のお父さん?どんな人ー?」



「国内のプロサッカー選手だった」



 狼騎の口から父親がプロ選手である事を弥一へと話す。それに弥一は少し驚いていた。



「プロっつってもそんな偉いもんじゃねぇ、万年控えで目立った貢献も特に無い。そのうちチームから放出されて怪我も重なって、再起をかけた社会人チームに入っても活躍出来ず引退だ。給料泥棒とか叩かれながらな」



「今はどうしてるの?」



「小せぇ少年サッカークラブのコーチやってる。端くれでも元プロって肩書きが役立ったみてぇだ」



「……」



 狼騎と会話しながら弥一はその奥底を覗き込んでいた。




 元々はプロの父親にサッカーを教えてもらって、自らもその道を歩むようになったが、父親の転落で狼騎はサッカーで相手から馬鹿にされるようになる。


 お前の父親は駄目サッカー選手だ!と。



 それが才能溢れる少年を狼へと変えた。馬鹿にする連中を力で蹴散らして黙らせ、批判する連中には結果で黙らせる。



 同じ世代の選手には滅多にない、反則ギリギリのラフプレー、相手を殺さんとする程の殺気、彼のプレースタイルはそんな過去から出来上がった物だ。




「それが今じゃプロの一員だからお父さん喜んでそうだねー」



「フン、つか何でてめぇにこんな話わざわざすんだ」



「自分から話し始めたんでしょー」



 狼騎は牙裏を卒業後、J1の横浜グランツからスカウトを受けてプロの一員となった。


 彼は自分からプロになったと皆に言う方ではないが、ネットで知った家族や知り合いから祝福を受けている。その中には父親からのメッセージもあった。



 プロは甘くない、怪我だけには気をつけろと。



「そもそもてめぇはまだプロになるか決めてねぇのか」



「あー、まあこの大会終わるまでは置いといて良いかなぁって」



「マイペースな野郎だな、来るなら早く来い。高校で仕留め損ねたてめぇに借りが返せねぇだろ」



 立見と牙裏の選手権決勝、そこで弥一と狼騎はぶつかり狼騎は負けている。


 その時の事を忘れるはずもない。



「それについては大会終わってからで、今は準決勝のブラジルと、カンプノウの決勝しか考えられないよ」



 今の弥一は進路について一切考えていない。考えているのはこの大会の優勝だけだ。



「……いいだろ、てめぇがスッキリ考えられるようにブラジルやその先の相手を倒しといてやる」



「お、敵の時は面倒だったけど味方だと頼もしいねー♪」



 弥一と同じようにブラジルだろうと、決勝の相手が何処になろうと負けるつもりは無い狼騎。



 格上相手だろうが胸を借りるつもりはちっとも無く、2人とも蹴散らす気でいる。




 その後、次の試合に向けてのミーティングが行なわれて、マッテオからブラジル戦のスタメンが発表される。



「FW、酒井、源田」



 ブラジル戦、狼騎が先発で留学経験を持つ光明と2トップを組む形となった。




「今大会無失点。得点ランキング首位のエースも控えて攻守で厄介なのを抱えたブラジルですが、こちらも戦績では負けていません」



 アジアカップも含めた日本の此処までの戦い。ブラジルとの試合自体は圧倒的に負け越している歴史があるのは事実。ただそれは今の代表と関係無い。




 天才ファルグを中心とした多彩な攻撃を防ぎ切り、同じく天才GKジルバの牙城を崩して1点を取る。


 それが準決勝のブラジル戦で日本に課せられたミッションだ。





 一方ブラジルが宿泊するホテル、その一室でファルグはスマホを見ていた。



 そこに映るのはアメリカ戦でゴールを決めるディーンの姿。イタリア対アメリカの準々決勝がハイライトで流れている。



 この大会はディーンの為の大会。それを具現化するかのように彼は活躍を続けていた。



「(今の内に好きなだけ輝いてろディーン。どっちにしてもお前やイタリアは俺達ブラジルがいる限り優勝は無い)」



 動画で映るディーンに対して、敵意に満ちた目をファルグは向ける。



 ずっとディーンが一番と言われている中、ファルグはそれが気に入らなかった。


 直接戦ってもいないのにNo.1プレーヤーだと言われるディーンを。



「(最強のサッカープレーヤーはお前じゃない、俺だ……!)」



 ディーンへの強い対抗心を燃やし続けるファルグ。この大会で自分こそがディーンを上回る最強の選手だと証明する事。



 彼にとって日本はその為の踏み台程度にしか思っていなかった。

大門「お母さんが化粧品会社の社長で、お父さんが海外出張行ける程のエリート社員……?」


優也「お前、結構なお坊ちゃんだったのか」


弥一「やだなー、何も普段贅沢なの食べたりとか使用人雇ったりとか無いからねー?」


大門「確かに贅沢なの食べてたら近所のコロッケ屋で60円のコロッケ美味しそうに食べたりとか…してないよな」


弥一「あそこ美味しいんだよー、北海道産の良いジャガイモ使っててさぁー」


優也「美味い飯に高いも安いも無いようだ」


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