Uー20ワールドカップ 決勝トーナメント準々決勝 日本VSドイツ
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
『Uー20ワールドカップ、準々決勝までやってきました!日本対ドイツ、総合力が高いヨーロッパの強豪に対して日本はどう挑むのか!?』
『日本もグループステージ全勝してパラグアイに競り勝ってますからね、ただフィジカルの強いドイツ相手だと苦戦は免れないかもしれないです』
スペインの正午を回った時間帯、準々決勝のスタジアムもかなりの数の観客が入っている。
その中にはこの後に試合をするベルギー、ブラジルの両代表選手達の姿もあった。
ベスト4に上がったらこの試合の勝者と試合をする、当然の観察だ。
フィールドに選手達の姿が見えれば歓声が上がり、流れる両チームの国歌斉唱。
それが終われば、互いのチームがすれ違いながら軽く相手とタッチを交わし、フィールド中央に向かう両キャプテン。
藤堂と今回向き合うのは、185cmぐらいあるドイツの大型ボランチ。背番号6のランドルフだ。
「(中盤も高いな、俺や向こうのGKがキックで飛ばした時の空中戦とか不利になりそうだ)」
自分の方が身長は高いものの然程差はない。ランドルフの姿を見て、藤堂はコイントスの中で思考を巡らせていた。
ゴール前の高さだけでなく中盤の空中戦も高い。自分がボールを捕った時やゴールキックは、多用し過ぎないぐらいに近くの選手に渡すのが良いのかもしれない。
読まれたらゲーゲンプレスの餌食になる事は目に見えている。
「先攻はドイツからだ」
藤堂が戻って来ると円陣に加わり、ドイツの先攻で試合が始まる事を伝えた。
「中央、サイドと両方からの攻撃も向こうは強いから……立ち上がりどう来るんだ向こう?」
「ドイツは堅実だから立ち上がりはゆっくりじゃないかな?そこから急に上げて攻めてくる場合もあるし、気をつけないといけないけど」
立ち上がりのドイツの動きが気になる辰羅川に、春樹はこう来るのでは、と考えていた。
「どっちにしても向こうからのボールだ、まずは立ち上がり集中して守備をしよう」
藤堂の言葉に皆が頷けば、掛け声で士気を高めて皆が一斉にポジションへと向かう。
ダークネイビーのユニフォームの日本、GKは黄色。
白を基調としたユニフォームのドイツ、GKは黄緑。
Uー20日本代表 フォーメーション 3ー5ー2
照皇 室
10 9
月城 緑山 辰羅川
2 19 16
仙道(政) 天宮
14 17
青山 神明寺 仙道(佐)
3 6 4
藤堂
1
Uー20ドイツ代表 フォーメーション 4ー5ー1
ザリッド
9
ソニーザ シンビオス カイルハルト
7 10 20
ズィーガン ランドルフ
8 6
ワッツ アイゼル シュテルン クレイラ
2 5 3 11
モートン
1
ピィーーー
ドイツからのキックオフ。ザリッドが軽く蹴り出した所から始まると、シンビオスがDFのアイゼルに戻す。
立ち上がりはゆっくり攻めて来る、そう思った時。
「右来るよタツさんー!」
弥一が叫ぶと共にアイゼルが縦パス。高く上がったボールはドイツの左サイド、ソニーザの頭上まで来ていた。
「ぐおっ!」
勢いよく辰羅川がジャンプ。空中戦で競り合うも、180cm以上のソニーザが高さで有利。
頭で中央へ折り返すと、ドイツの司令塔シンビオスがトラップ。
これに春樹が体を寄せ、前を向かせないように立ち塞がると、シンビオスはそのまま左にパスを返していた。
ソニーザが再び受けて辰羅川がマーク。するとソニーザは一旦此処で足を止めた。
「っ!?」
かと思えば次の瞬間、ボールと共に急なダッシュを開始。
これに辰羅川も追いかけるが、一瞬出遅れてしまう。
速いスピードだけでなく緩急をつけたドリブル。左からソニーザが切り裂きに行く。
「9番だ!」
「違う!11番!」
「え!?」
クロスに備えて9番の長身ストライカー、ザリッドに注意だと佐助が伝えるが、弥一はそうじゃないと叫ぶ。
「(グラウンダーじゃ取られそうだから!)」
ソニーザは弥一が居るならと、グラウンダーを避けて左足で高いクロスをファーへと放り込む。
これが速いスピードで行って、藤堂に飛び出す事を許さなかった。
奥の方で何時の間にか上がっていたクレイラ。超攻撃的な長身右サイドバックがこれに合わせようと飛ぶ。
「(通すか!!)」
そうはさせんと、番も飛ぶとクレイラより高い位置からヘディングでクリア。
このセカンドを春樹が拾って、ドイツの立ち上がりの攻めを凌いだ。
かに思われたが、その春樹にシンビオスとランドルフの2人が迫って来る。
寸前の所で政宗に渡してプレスを躱す。
「(ふー、油断も隙もない)」
春樹としては少しヒヤリとなった。此処で取られていたら間違いなく日本のピンチだ。
「やりづらい試合だなぁ、守る側としては」
試合観戦するアキレス、ドイツの動きを見てそんな感想が出て来る。
「あいつらこの先の事考えてねぇのかな?負担かかる戦術多用し過ぎだろ」
「向こうも馬鹿じゃない、試合中常にそれをやる訳無いだろ。来るかもしれないっていう圧をかける為に最初かましたんだと思うぞ」
すぐ動けなくなりそうと言うアドルフに、ルイがドイツはこんな狙いがあると見て話していた。
最初にゲーゲンプレスをかけ、今回の試合も自分達はそれをするんだぞ、と日本にアピールして守備を縮こませようとしているのだと。
「そうなると、ペースはドイツにあるかもしれない」
「おいおい、そりゃ困る!ヤイチに勝ってもらってフランスの時のリベンジしなきゃならねーのに!」
アドルフとしては弥一達日本に勝ってもらいたい。そうなれば準決勝でフランスの時以来の対決が実現する。
反対側の観客席で試合観戦するブラジルに、ベルギーが勝てばの話だが。
『ドイツ、右から長いパスが出た!しかし仙道政宗これを読んでインターセプト!』
「(よし、あ!プレス来るから!)」
ボールを取った政宗だが、ドイツがすぐに迫るかもしれないと、すぐに強くボールを蹴ってクリア。
実際には誰も政宗に向かっていなかった。
タッチラインを割ってドイツボール。結果として日本は奪ったボールを相手に渡す形となってしまう。
「あまり流れがよくありませんね」
「ふむ……」
日本ベンチにて、富山が試合の状況を見てマッテオに話すと彼は腕を組んだまま座っている。
「源田にアップするよう伝えてください」
前半から交代を考えているのか、マッテオは早めのアップを伝えた。
「っ!」
中盤でボールを持つ明。そこに体を寄せて来るのは、共にサッカーをやっていた旧友ソニーザ。
昔よりも彼の体は大きく逞しく成長している。強化されたフィジカルが明の全身にズシリと伝わって来た。
「どうしたアキラ!遠慮するなよ!」
「してない……!!」
繰り広げられるデュエル。最中に明はパスの出し所を探るも、ドイツの選手がしっかりとコースを塞いでいる。
振り切ろうとするがソニーザは明を逃してくれない。
すると一瞬、左が空いて隙が出来たと見て、明はソニーザの左脇を抜ける。
気付けば抜けた先にランドルフが待ち伏せしていて、明は彼と激しく正面衝突。
体格差で明の方が倒れるも、笛が鳴って日本の反則を取られてしまう。
明から強くぶつかったと主審が判断したようだ。
「アキラ、大丈夫か?」
「なんとか……」
明を引っ張り起こしたのは、ソニーザと同じく明と同じチームだったクレイラ。
彼も当時より強いフィジカルを身に付けているのは、体つきで明らかだ。
「(強いだけでなく連携も優れてる……わざと抜かせたんだ今のは……)」
ソニーザが隙をわざと作り、明に右脇を抜かせてランドルフが仕留める。
ドイツの連携守備、その網に明はかかってしまう。
「来るよー!ドイツの反撃ー!」
再び弥一の注意する声が飛ぶと、ドイツGKのモートンが上がって来て、セットされたボールを思い切り蹴る。
一気にゴール前へと運ばれるが、佐助が前へと出て来て頭で前へと弾き返す。
「藤堂さん来るよー!」
「!」
このセカンドを今度はドイツ、ズィーガンが右足でロングシュート。
力強いキックから繰り出されたシュートは勢いよく、日本ゴールに向かって飛んでいた。
これを藤堂がしっかり正面でキャッチ。事前に弥一からの声が聞こえたせいか、慌てる事なく対応する。
「良いコーチングだ、助かった!」
「声はいくら出してもタダですからねー♪」
藤堂が弥一に礼を言うと時間ギリギリまでボールを持ち、弥一へと軽く投げ渡す。
「(今は来ない、と。僕は読めるけど皆にとって何時来るか分からないプレスは厄介だなぁ)」
持ち前のフィジカルに加えて、見えないゲーゲンプレスの圧。先にシュートも撃たれて流れの悪さを感じつつ、弥一はボールを運ぶ。
アドルフ「しかしまあ、ドイツの連中は皆体格良くて良い筋肉だよなぁ。どれだけフィジカル重視なんだよ」
ルイ「実際あいつらがぶつかって来た時は吹っ飛ばされたりした……忌々しい……!」
アドルフ「興奮すんな、お前の悪い癖だぞルイ」
ルイ「ゴール決めて興奮してユニフォーム脱ぐ奴に言われたくない、お前ブラジル戦とか絶対脱ぐんじゃねーぞ……!!」
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