サイキッカーDFと天才集団の過去4
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
ミラン、ジョヴァニッシミの試合。
背番号10を背負うディーンが奏でる攻撃は止まらない。前半からゲームを支配すると、全員がほぼワンタッチで繋ぎ、相手のプレスを物ともせず躱していた。
「(本当に同じ人間かこいつら!?)」
相手チームが信じられないという心情に陥ってるのは、ベンチから試合を観察している弥一のみがお見通しだ。
皆が巧いプレーを見せる中、やはりディーンは別次元。
彼はダイレクトでボールを捌いたり、トラップしたかと思えば寄せて来ていたDFに対して、ボールを大きく弾いて頭上を越えさせたりと、彼には集中マークで止めるしかなかった。
ただディーン無しでも強いのが天才集団。右サイドの矢と化したトニーがフィールドの誰よりも、速いスピードで駆け上がる。
クロスと見せかけてエリア内へとドリブルに行き、トニーにDFが行った所に左のアウトサイドで左に流すと、マークを外していたランドが右足でダイレクトシュート。
イタリアの若き天才ストライカーが豪快にゴールネットを揺らし、得点を重ねればアシストしたトニーに抱きつきゴールを喜んだ。
「(やっぱ巧くて速いや)」
日本とは違うプレースピードやテクニックの高さ。イタリアに来て弥一は彼らの速さに慣れてきたが、それでも速いと感じていた。
俺達と試合に出るならこれくらいのスピードと技を身に付けてみろ、サッカーで弥一にそう語っているようだ。
「アドルフ、次の練習で僕のシュート見てもらっていい?」
「シュート?ああ、まあ良いけど」
DFの弥一からシュートを見てほしいと言われ、少し驚きつつも同じベンチに座るアドルフはOKの返事を出す。
「あー、違う違う。中途半端に当てず、ズドン!とぶち込むつもりで足を振り切って当てるんだ」
「ズドン!かぁ、難しいなぁシュートってー」
あまり説明上手ではないアドルフ。彼は感覚派のようで、実際シュートを撃って弥一に見せていた。
ボールの芯を正確に射抜くと真っすぐゴールに浮く事なく飛び、ゴールネットを大きく揺らす。
「おおー」
「ざっとこんなもんよ」
弥一から拍手が起こると、アドルフはドヤ顔を決めていた。
レベルの高いFWはこんな感じで正確にシュートを決められる。間近でじっくり見て弥一はそれを知ると、マッテオの言葉を思い出す。
相手を止めるには相手を知る事も大事。
「あ、アドルフごめん!付き合ってくれてありがとねー♪」
「え?もう良いのかっておーい?」
思い立った弥一はシュートを教えてくれたアドルフに礼を言うと、その場から走り出して行った。
「急に来てまた1on1かと思えば、見に来たのか」
ディーンのボールを蹴る動作を一つ一つ、見逃さないように見つめる弥一。
「駄目だったー?」
「いや、多くの観客に見られたりするんだ。お前1人に見られた所で何も問題は起こらない。それに普段から人に見られながらボールを蹴るのは練習効率が上がる」
ディーンにとって弥一に見られる事はメリットだと、乱れる事なくリフティングを続けながら説明していた。
彼は弥一が来る前からずっとこれを続けている。相当長い時間ボールを落としていない。
弥一に見られようが乱れは全く無かった。
「ディーンはさ、何時からサッカーやってるの?」
「正確な歳は覚えてない、物心ついた頃からボールは蹴っていた」
弥一は小学校低学年で勝也に誘われ、クラブに入り本格的にサッカーを始めたが、ディーンは更に早い時期からやっていたようだ。
天賦の才に加えて、幼少時代から積み重ねて来た努力。それがイタリアの神童を作ったのかもしれない。
「漫画のような秘密の特訓でもしてると期待したか?」
「ううん、やっぱ積み重ね大事だなぁって」
何度も繰り返し、リフティングを続けるディーンを見てる弥一。
結局帰る時間になるまで、ディーンは一度たりともボールを落とす事は無かった。
ミランで練習を重ねる日々、ある日に弥一は紅白戦にDFとして出場。
「あっ!」
トニーから出た、ランドへの右からの低いクロスを弥一がカット。それを素早くクリアすれば弥一は即座に走る。
前線で体を張ってポストで繋ぐアドルフ。そこから上がって来た弥一がパスを受け取ると、立ち塞がるのはチーム不動のアンカーを務めるグレンメルだ。
「(不用意に上がり過ぎだジャッポネーゼ!)」
DFである弥一からボールを奪えば、カウンター返しのチャンス。グレンメルが奪おうとした時。
「!」
グレンメルの顔は驚愕へと変わり、ベンチに座り見守るディーンも目を見開く。
一瞬姿が重なった、かと思えばグレンメルの股下をボールが通過。
それは前を走るアドルフへのスルーパスとなっていた。
これを受け取り、アドルフはDFとゴール前で競り合いながらも右足でシュート。
ゴールネットを揺らして弥一は初アシストに成功する。
「ナイスパスだったぞヤイチー!」
「そっちもナイスゴールアドルフー♪」
互いにタッチを交わし、喜び合う2人をグレンメルは遠くから見ていた。
「(なんだ今の、何であいつが……一瞬ディーンに見えたんだ?)」
何かの見間違いじゃないかと、信じられないという感じのグレンメル。
一方ディーンは、その弥一を興味深そうに見ていた。
弥一「漫画のような秘密の特訓って言ったけど、ディーンそういうの見てるんだねー」
ディーン「漫画ぐらい普通に見るだろ、山に籠もって炎を纏ったシュートが撃てるとかあり得ない設定だったが……不思議と魅入った」
弥一「イタリアでも日本のアニメ、漫画文化は人気だねー♪」
ディーン「その聖地、アキハバラも行きたい」
弥一「それで全身オタクグッズのディーン、またネットニュースなりそうじゃないかなー」
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