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ゴール前の攻防で密かな悪巧み

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『攻め続けた日本!巡ってきたFKのチャンスで八神の左足炸裂ー!!ベスト8へ向けて幸先良く先制ゴール!!』



『完全に神明寺君ばかりに意識行ってましたねパラグアイは!日本には八神君と他にも優れたキッカー居るんですよ!』



 両チームのサポーターによる、歓喜と落胆の声が交差するスタジアム。その中心に居た想真はゴールを決めて、スペインの青空に向かい喜びを爆発させていた。



「変なスコーピオン以来のゴールになったねー!」



「褒めとんのかいそれは!?」



 以前想真が決めた珍しい形のゴールを弥一が引っ張り出し、その事をスルー出来ず想真は反応する。




 一方重く1点がのしかかるのはパラグアイ。このまま0ー0で最悪PKまでもつれ込んで良いから守り切るプランだったが、それも変更するしか無かった。




「こっから相手必死で来るよー!白羽、月城、特にサイド注意ねー!」



「おう、皆集中なー!」



 パラグアイの反撃に備えて弥一は声をかけ、政宗も続けて周囲へと集中するよう伝える。




「(くそ!神明寺を警戒するあまり、あの5番に……!あんなキック出来たのか!)」



 今のキックを止められなかった事を悔やむGKベルツ。想真は日本の高校サッカーで蹴った事はあるのだが、弥一に目が行っていた上にデータが無かったので、想真に関してノーマークだった。



 こうなると後はパラグアイの攻撃陣、彼らが同点ゴールを取ってくれるのを祈るしかない。




「(此処まで良い所あまり無いから、守備で活躍しないとな!)」



 パラグアイに要注意だと集中マークされ、仕事をさせてもらえなかった白羽。体を寄せて相手の突破を阻止して、攻撃で活躍出来てなかった分を、守備で今回は貢献していた。



「任せたぁ」



「お疲れさん」



 攻守で走って消耗した月城が何時も通り冬夜と途中交代。代わって入った冬夜が左のゾーンを守り、パラグアイ得意のサイド攻撃に備える。




『おっとパラグアイGKベルツ、前へ上がって来てこのFKを蹴ります。一気にゴール前!青山弾いて、外に居たドガンタがミドル!政宗体を張ってブロック!』



『結構怖いキック持ってますねベルツ。やはりパラグアイはそういったGKが出て来るんでしょうかねぇ』



 右サイドのほぼ真ん中、パラグアイ陣地からベルツは右足でロングキックを放り込む。


 藤堂も飛び出すのが難しいゴール前。エリアの外まで伸び、番がドライドとの空中戦を制して頭でクリア。



 セカンドを狙っていたか、中に入らず外で張っていたドガンタがミドルを撃つ。


 これは政宗がブロックしてボールは弾かれ、再びこぼれた球を想真がキープする。




「(昔はパラグアイにFKやPKを蹴って得点する名GKが居たけど、ひょっとして蹴って来るのかな?)」



 かつて活躍していた伝説のGK。同じパラグアイのベルツもやってくるのだろうかと、弥一は走ってゴールマウスに戻る姿を見ていた。




 此処でパラグアイは動き出す。疲労した選手に代わり高さある、長身選手を次々と投入していく。



 地上戦での争いはパラグアイが不利。なら全体的に高さを上げようと監督は判断し、空中戦で試合を優位に進める気だ。




「(今更180クラス程度の相手に怯むかい!)」



 自分達より高さやパワーある相手とは、此処まで沢山戦って来た。これぐらいの相手には引かないと、想真は高さある相手と中盤の空中戦、相手より先に飛んで肩に乗れば、飛んだ推進力を利用して競り勝つ。



 日本は凌いでばかりではない。隙あらばパラグアイから2点目を取ろうと攻めに出て行く。



 光輝から代わった明がDFの間を通すパスを照皇に送れば、照皇は素早く反転して振り向き左足でシュート。



『照皇撃ったー!あー、ポストだ!ポストに嫌われてしまう!!』



 利き足ではない左足で撃ったせいか、DFもベルツも意表を突かれて反応が送れるも、シュートはゴールポスト左を叩いてしまい、弾かれたボールをゾイがクリアしてゴールならず。



 これには日本ベンチも惜しいと頭を抱える者が多数。パラグアイベンチは肝を冷やしていた。




 中々スコアは動かず、1ー0で日本の1点リードは変わらないまま、後半の45分まで迫って来ている。


 パラグアイの方は焦るばかりだ。



 その時、中盤で政宗が相手と空中戦になって球が弾かれると主審の笛が鳴る。



 政宗のファール、パラグアイのFKが与えられる。



「なんで!こっちファールとかしてない……!」



「止めとけ政宗!」



 主審の判定に納得出来ず、食い下がろうとする政宗に兄の佐助が止める。



 想真が決めた時の距離よりは遠く、30mぐらいはあるがゴール正面と狙いやすい位置だ。



『日本嫌な位置でパラグアイにFKを与えてしまった。後半終了間際に試練が訪れる!』



『今のがファールなのは少し納得出来ない判定ですが、仕方ないですね。これを守る事を考えましょう……お?パラグアイはベルツ出て来ましたね』



 ゴール前でFKのチャンス。試合終了間際のセットプレーで、負けているチームのGKが上がって来るのは見かけるが、彼のようにキッカーの位置に立つGKは滅多に見ない。



 彼は蹴る気だと、弥一はベルツの心を見て分かった。




「もっと寄って!冬夜しっかりくっつけ!」



 此処で失点は出来ないと、大きく声を上げて壁の人間に藤堂が指示を送る。


 チーム最長身の室も右端の方に居て、高き壁として備えてもらう。



「想真、想真」



「なんや今大事な時に……!」



「大事だからこそだよ、あのね……」



 壁に含まれていない弥一と想真。2人のリベロが先制ゴールの時に続き、再び打ち合わせが始まる。




 ベルツの他にケイルがセットされたボールの側に居て、2人は作戦を立てていた。


 パラグアイとしても外せない大事な1本、同点ゴールのチャンスだ。



 攻撃、守備共に後半終了間際となって、互いに大きなプレッシャーが襲い、スタンドの観客達も試合を左右する場面で、歓声がより大きくなる。




 そして始まる運命のFK。



 距離をとって走るケイルがセットされたボールに、勢いをつけて蹴ると見せかけて飛び越えた。



 日本の壁は騙されず動かない。



 ベルツが右足を振り上げる。それを見て壁の選手達は一斉にジャンプ。




 ベルツが右足で蹴ると、ボールは低い弾道で飛んでいた室の下を通過。先程ゴールを決めた想真と同じ、地を這う弾丸キックだ。



 室を超えた瞬間ベルツは行ったと確信。




 次の瞬間、グラウンダーのボールが弾かれると、右のタッチラインに飛んでパラグアイのスローインになる。



 ベルツは一瞬何が起こったのか理解出来ず、ゴールに戻る事も忘れていた。



『防いだ日本!ベルツのキックが弾かれてピンチを凌いだ!』



『壁を一瞬超えたかと思いましたが、リプレイはまだ届きませんか?』




「くおお……!思いっきり脇腹にズドン来たわ……!」



 想真は痛そうに右脇腹を押さえている。ベルツが放ったボールは想真に当たって、跳ね返っていたのだ。


 その際、脇腹にクリーンヒットしていた。



 これが弥一と想真が打ち合わせていた事。下から来るかもしれないと話し、体の大きい室が壁の中に入ると彼をブラインドにして、想真はすぐ後ろに控えていた。



 そしてキックが始まったタイミングを見て素早く壁の後ろに寝そべる。脇腹の痛みが代償となったが防ぐ事に成功。




「(あれ痛いんだよなぁ)」



 想真が今感じている痛みを理解していたのは、かつて立見と最神の試合で同じように寝そべり、脇腹付近に当たりながらもFKを防いだ、日本ベンチに座る影山ぐらいだった。




 奇策でこのピンチを防いだ日本。パラグアイは終盤の猛攻に出る。




『パラグアイ、サイドからではなく正面から来た!ゴール前にボール……!』




「ナイスパスっと♪」



 サイド攻撃を得意とするパラグアイが裏をかいて正面からの攻め。その策も弥一の前では筒抜けで、ドライドに出されたパスをインターセプト。



 弥一がボールを高く蹴り上げてクリア。スペインの空をボールが舞った時に主審の笛は鳴り響く。



『試合終了ー!!日本1ー0でパラグアイを下し世界のベスト8入りを決めましたー!!』



 歓喜の日本と崩れ落ちるパラグアイ。日本は更に上へと向かい、世界一に続く道を進み続ける。




 この結果、日本と準々決勝で争う相手はウルグアイを2ー0で下して、ベスト8入りを決めているドイツとなった。




 日本1ー0パラグアイ



 八神1

想真「思いついたのお前やろー!体張れやー!」


弥一「僕じゃ体小さ過ぎてボール抜けてっちゃうからー」


想真「それもそやな……で納得するかい!」


弥一「あー、それなら東京の美味しいパン屋でパン奢ってあげるからー」


想真「なら良し」


影山「(パンで済んじゃった!?)」


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