Uー20ワールドカップ 決勝トーナメント1回戦 日本VSパラグアイ
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
「我々は辛くも3位でかろうじて生き残った、失う物は何も無い。今日の日本戦に勝ってベスト8へと行く!」
開始前のロッカールーム。パラグアイの監督は選手達に、力強い言葉をかけて送り出す。
強豪ひしめく南米予選でも、彼らは今回の決勝トーナメント同様、最後の最後に出場権を勝ち取っていた。
此処まで決して楽な道のりではない、むしろ困難ばかりだ。
今日の日本も彼らにとっては強敵であり、南米のカテナチオと言われる程に鉄壁の守備力を持つ自分達ですら、完封し続けるのは難しいのに日本はフランス国際大会、アジアカップと連続無失点を続けている。
そんな彼らはアジアのカテナチオと言われるようになって、今大会も3戦失点0で勝ち上がって来た。
だが守備力でパラグアイは自分達が劣っていると思っていない。自慢の守備で何度も修羅場を潜り抜けて来た自信がある。
『決勝トーナメント1回戦、日本とパラグアイの組み合わせ。日本がアジアのカテナチオと呼ばれ、パラグアイは南米のカテナチオと呼ばれています!』
『カテナチオ対決ですね。パラグアイは何度も土壇場で勝利を収めてますし今回も突破が厳しい中、見事にベスト16来てますからね。これは手強いと思いますよ』
パラグアイのキャプテンマークを巻くのはGKのベルツ。
190cmを超える長身。シュートストップや一対一の強さに加えて、大きく声を上げてのコーチングが持ち味で、チームの精神的な柱だ。
日本のGK藤堂とほぼ同じ目線の高さで向かい合い、コイントスを行った結果は日本の先攻。
「作戦通りゴール前は10番徹底マークだ。奴をフリーにしたら一番不味い」
円陣を組んだパラグアイ、ベルツは向こうで厄介なのは照皇だと見ている。
「勝ってベスト8だ!!」
「「おう!!」」
最後にベルツの掛け声で皆が声を揃えれば、円陣は解かれて各自がポジションにつく。
日本の方も戦いの準備は万全。センターサークルの照皇と室がボールの前に立って、開始の時を待っている。
ダークネイビーのユニフォームの日本、GKは黄色。
白と赤のストライプ柄ユニフォームのパラグアイ、GKは水色。
Uー20日本代表 フォーメーション 3ー5ー2
照皇 室
10 9
月城 三津谷 白羽
2 8 7
仙道(政)八神
14 5
青山 神明寺 仙道(佐)
3 6 4
藤堂
1
Uー20パラグアイ代表 フォーメーション 4ー4ー2
ドライド ドガンタ
9 11
ケイル ゴッツマイヤー
10 8
カラッテ パッツ
6 7
ダナム ゾイ アンドレッド ワカラ
2 5 3 4
ベルツ
1
ピィーーー
『日本対パラグアイの試合が今キックオフ!まずは後ろへと戻して三津谷がボールを持つ』
「ん?」
ボールを持った光輝、その時に彼は気付く。
自分以上に右サイドの白羽へマークが集中していく事に。
奪いに来たパラグアイの選手からボールをキープすると、光輝は右が厳しいと判断して左にパス。
光輝の右足のパスが来て彼のスピードを警戒してか、サイドを守るワカラが正面に立ち、走るコースを塞ぐ。
そこにパスを出した光輝が近くまで走っており、月城はワカラに背を向けた状態で再び光輝へとボールを預けた後、反転して前を向くとワカラの左脇を抜けて走り出す。
月城からのパスを受けた光輝はダイレクトで、彼の走る左サイドに折り返す。
『月城と三津谷のワンツー!左を抜けた月城走る!!』
「マーク見失うな!」
抜かれたワカラに代わり、アンカーのパッツが月城と対峙。
ドリブルで中への侵入は意地でも許さんと、月城のドリブルを警戒する。
中は照皇と室が居て、照皇には2人付いていた。
「ってぇ!」
パッツと左ライン際で争いながら、月城は右足でゴール前にクロスを上げる。
高く舞うボールは室の方へと向かい、これに室が飛ぶとその前にボールへ拳が突き出された。
パラグアイの守護神ベルツが前に出て、両腕のパンチングで月城のクロスを弾き出したのだ。
セカンドを拾ったのはパラグアイ。カラッテがクリアせずに繋いで左サイドのケイルへパス。
主に両サイドから攻撃を組み立て。ドライドとドガンタの長身ストライカー2人に合わせるのが、パラグアイの攻め。
それを始めようという所に、1人の日本選手がパスをカットする。
想真だ。
『八神良い読み!ケイルへ渡ろうかというパスをインターセプト!』
『危なかったですね、これ通ってたらカウンターになってましたよ。八神君ナイスプレーです』
「ビビんなビビんなー!攻め攻めでやったれー!」
声を張り上げ、日本を活気付けに行く想真。
ペースを握っているのは日本。出来る事なら良い雰囲気の間、先制点は欲しい所だが、守りの堅いパラグアイから得点するのは容易ではない。
全体的に引いて守り、チャンスあれば攻めに出る。
今は徹底して守る時だと、パラグアイはチーム全体の共通認識がしっかり出来ていた。
なので日本の攻撃に上手く対応しているのだろう。
「あんま良くない流れですよねー」
「ああ、上手く守られている。守備から良いリズムを作り出すパラグアイらしいサッカーだ」
プレーが途切れたタイミングで、弥一は藤堂と話し合う。
日本がボールを持てているが、中々エリア内で決定的な仕事はさせてもらっていない。
向こうの4バックやダブルボランチ。更に最後尾のGKベルツと盤石の陣形で、日本の攻撃は跳ね返されていた。
「かといって焦って攻めれば、さっきは想真が上手く防いだが今度こそカウンターの餌食になりかねない」
負ければ終わり、一発勝負のトーナメント。
グループリーグの時よりも1点は重くのしかかり、藤堂でなくても慎重になってくる。
それは弥一も理解していた。
「(いきなり延長戦、最悪PKは嫌だなぁ……)」
1回戦から負担の大きいゲームになるのは、チームとして良くない。本気で決勝まで行って優勝を目指すなら、その前に決着をつけたい。
「皆焦らずじっくり行こうー!敵のペース嵌まらないようにー!」
後ろから弥一は何時も通りコーチング。狩人が息を潜めてチャンスを待つ。
すると日本の攻めが実ったか、月城からゴール前へクロスと見せかけて上がって来た想真が、難しいボールをワントラップ。ミドルレンジからシュートを狙おうとした時、カラッテのチャージを受けて倒される。
主審の笛が鳴って良い位置でFKのチャンスを獲得。
「お、チャンスー♪」
これを見た弥一はパラグアイのゴール目指し、小走りで向かっていた。
その姿をパラグアイが見逃すはずもなく、弥一に気付くと全員が警戒するような目を向ける。
グループリーグで見せたゴル・オリンピコ、ショートコーナーから絶妙なアシスト。
いずれも大事な先制点、それを生み出した弥一を無視は決して出来ない。
心を読まずとも警戒されているというのは明らかだ。
『日本ゴール正面、30mに満たない絶好の位置でFK!そして神明寺が上がって来る!!』
『パラグアイ見てますね。彼のキックは今日何が飛び出すんでしょうか?』
ベルツの指示で壁が作られる中、壁の選手達は密かに打ち合わせをしている。
「神明寺が蹴って来る、無回転でもカーブでもタイミングに合わせて飛べば防げるはずだ……」
「ああ、後は隙間を作らないよう……しっかり寄せるぞ」
弥一のキックを最大限警戒するパラグアイ。目の前でボールの前に立つ、弥一と想真のリベロコンビが打ち合わせをしていた。
「じゃあこれでいこっか」
「おう、頼むわ」
想真との打ち合わせが終わり、弥一がボールの左側、想真が右側に立つ。
「(右足か、ゴル・オリンピコの時も右足だったはず。という事は狙って来る確率は上がる)」
弥一の立ってる位置を見た壁の選手達、狙って来ると見て身構える。
「(僕への警戒、じゃあ……知りようが無いよね?)」
改めて彼らの心を覗けば、自分への警戒心に満ちている。
弥一は短いステップから右足を振り上げた。
それに合わせてパラグアイの選手達は一斉にジャンプするが、ボールは飛んで来ない。
右足で狙いに来ると思われたが弥一の右足は空振り。直後に助走を取って走り迫る想真が、思いっきり左足を勢いよく振り抜き、今度こそボールを捉えて飛ばす。
低空飛行で飛ぶ弾丸キックはジャンプしたパラグアイ選手の下を通り、ゴール右下隅へと一直線で向かう。
壁の下から現れ、ゴールに飛んで来た球にベルツはダイブし、左腕を伸ばすが届かず。
大きくゴールネットが揺れて日本の先制点が確定。
弥一と想真によるリベロ2人のトリックプレー。想真と弥一の元にチームメイト達が集まり、歓声を浴びる中で待望の先制点を皆で喜び合う。
大門「そういえば気になったけどさ」
弥一「ん?」
大門「スマホゲーやってただろ?ガチャで盛り上がってたけど、最近無いからどうしたのかなって」
弥一「ああ、あれ……実はサ終しちゃったんだよ〜、神引きした直後の発表はショックだった〜(泣)」
優也「それでか、摩央がこの世の終わりみたいな顔していたのは」
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