決勝トーナメント進出確定、天才集団の力
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
『グループBの大一番を制した日本!3ー0とオランダのトータルフットボールを相手に完封勝利!2連勝でグループ首位に立ちました!!』
『カメルーンとドミニカの試合がまだですが、結果次第では決勝トーナメント進出が3戦目を待たずに確定ですからこの1勝は非常に大きいですよ!前半どうなるかと思いましたがよく勝てましたよね!』
日本の歓喜が冷めぬまま、影山が勝利者インタビューに呼ばれて答えていた。
「ええと、何か凄く良いボールがスローモーションで来たような感じがしまして……なんていうかふんわり来たような、上手く言えないですが……」
国際舞台でインタビューに応じる影山は試合より緊張。初々しい感じで向けられたマイクに向けて話している。
「インタビュー下手くそかてめー!こんな事ならその練習もしときゃよかったな!」
「流石に時間の無駄だっての」
田村から見て下手なインタビューの答え方に見え、これに怒る田村を軽く流すと間宮は影山のスマホへとメッセージを送り、幼馴染の活躍を祝った。
俺もお前に続くからな、と最後に伝えて間宮はさらなる飛躍を誓う。
幼馴染の活躍で刺激を受けた事は確実だ。
「弥一!」
日本が勝利した試合が落ち着きを迎えて来る時、弥一へと近づき話しかけるグレンメルの姿があった。
「や、お疲れ♪ジョヴァニッシミ随一のスタミナお化けっぷりは相変わらずだねー」
試合が終わったグレンメルに対して弥一は明るく笑って話す。後半オレンジ軍団が多数足が重かった中、彼だけは体力が落ちないまま最後まで攻守で走り抜いていた。
「……敗因はお前以外の日本を甘く見た俺のミス、ぬるま湯と思い込んだ俺の甘さだ。悪かったよ……」
「別に気にしてないから、そんな重ーく考えなくていいよー♪こっちも煽っちゃったからねー」
日本を侮った事。それが自分の甘さであり敗因だと認めたグレンメルは謝るが、弥一はお互い様だからと陽気に笑う。
「なあ、弥一!」
「へぇ!?」
急にグレンメルは弥一の両肩を両手に置いて迫り、これに弥一も変な声が出て驚いてしまう。
「日本のあの15番は何者だ!?」
「え、えー……影山先輩の事?」
「カゲヤマ……それがあいつの名前か。何処のチーム所属だ!?あいつのプレーはただ者じゃない!あんな気配を消すプレー、俺には真似出来ない!あれこそニンジャボランチだろ!」
グレンメルにとって気配を消す影山は衝撃であり、同じポジションとしては嫉妬してしまうが、それ以上に凄いと感じたようだ。
「えっと〜、大学生だからプロとかの所属はしてないねー」
「何!?……おい、影山!」
「え!?」
すると弥一から離れたグレンメルはインタビューを終えた、影山へと近づく。
「お前絶対プロになった方が良いぞ!お前の存在感を消すプレーはプロでもそうはいない、なんだったらミラン来い!」
「え、えええ!?」
まさかのグレンメルから熱心なラブコールを受けて影山は戸惑う。
この時英語だったが影山には通じている、だからこその驚きだ。
「影山先輩、ミラン行きおめでとうございます♪イタリア語の家庭教師必要なら教えますよー」
「いやいや!そんなあっさり選手の間で決まるもんじゃないでしょ!?色々問題山積みだから!」
からかってるのか本気なのか定かではないまま、弥一は影山に祝福の言葉を笑顔でかけていた。
言われた方は色々混乱状態、グレンメルはプロへと影山を誘う為に口説いている。
結局この場は、グレンメルと影山の連絡先を交換するという事で落ち着いた。
影山にとっては思わぬ形でセリエAのプロ選手と交流を持って、オランダに勝利した喜びよりも戸惑いの方が大きくなってしまう。
「影山さんセリエA行くんですか?」
「大出世やないか先輩!」
帰りのバスの中、影山とグレンメルと話していた事は弥一からチームの皆に知られて、影山がイタリアのプロに行くかもしれないと車内はその話題で盛り上がる。
「いや、だから行かないと思うよ……多分」
大学サッカーで間宮、田村の友人達とやっていくつもりだったが、思わぬ可能性が生まれたかもしれない。
その後ホテルでカメルーン対ドミニカの結果を知ると、スコアは1ー1。
カメルーンのエース、ボンバが今大会初ゴールを決めるも勝ちきれず、ドミニカと勝ち点1を分け合う結果に終わっていた。
日本は勝ち点6、オランダは3、カメルーンとドミニカが1。これで日本は2位以上が確定し、カメルーンとのグループ3戦目の前に決勝トーナメント出場を決める。
この結果は日本で速報として流れ、オランダを打ち破った試合はすぐにスポーツニュースで伝えられていた。
一方グループA、オーストラリアはアルゼンチン戦を1ー2で落として後が無い。
キャプテンのレヴィンを中心に2戦目をなんとしても勝とうと、チームは改めて一致団結していた。
その2戦目の相手は優勝候補筆頭のイタリア。初戦のコートジボワールを全く寄せ付けず勝利し、この試合も勝って2連勝を当然狙っている。
「巡って来た最強とのゲームだ、勝って世界を驚かせてやろう!」
「おお!もう後も無いしな!」
この試合も兄弟トリプルボランチで出場の3兄弟、長男のコバルトがイタリア相手に萎縮しないように皆へと声掛けを忘れなかった。
「(相手は神に愛された子供達を中心とした天才集団、上等だ……俺の守備、足で粉砕してやる!)行くぞ!!」
頂点へ挑む戦い。レヴィンは試合に向けて、集中力を高める中で闘志を漲らせていく。
破れたとはいえ南米の強豪相手に、悪魔の右足でのロングシュートで1点を取って調子は良い。イタリアを粉砕しようと、レヴィンは最後に円陣で掛け声を行いチームの士気を高めた。
『イタリア、右サイドからトニー上がる!速い!』
文字通りの韋駄天。そう思わせる程の速さで右サイドを駆け抜ける、イタリア右SHのトニー。
「コバルト!中!」
レヴィンは相手の絶対的存在であるディーンをゴール前でマーク。相手に付きながら指示を送って、混乱させないよう守備をしっかり固める。
『右サイドからトニー速いクロス!ジージョ、これを合わせ、いや、スルーだ!』
ゴール前で待つイタリア2トップの1人、長身のジージョにトニーがクロスを送れば頭上のボールをスルー。
奥に流れると、そこにはディーンが待っていた。だが彼の前にはレヴィン、しかもボールは彼の後ろへと行って、ディーンはボールに背を向けている。
このクロスは合わない、レヴィンがそう思った直後。
トンッ
「!?」
ディーンは右足の踵で触れて軽く蹴り上げ、レヴィンの頭上をボールが越えて行く。
そこにディーンはスッとレヴィンの左脇をすり抜けると、GKのアルベルが飛び込んで振れる前に、右足ボレーで浮き球に合わせてガラ空きのゴールへとシュート。
瞬きする間もなく飛び出してきたディーンの神業。直に見たスタンドの観客達からはこのスーパーゴールに、割れんばかりの大歓声が起こっていた。
『決まったイタリアー!またしてもディーン、この試合2ゴールとアシストだけでなくゴールまで重ねていく!これが異次元の魔術師だ!』
『後ろにも目がついているんですか彼!?あれに触るだけでなくコントロールしてマークしているDFの頭上を越すなんて……』
周囲が驚く中で、突破されたレヴィンはそれ以上に驚いて目を見開いたままだ。
「(あり得ない!こんなプレーが出来るなんて、これが神に愛された子供達の頂点に立つ男……!)」
3ー0、ディーンが2ゴール、1アシストと全得点に絡んで力を見せつけていた。
当の本人は大きなリアクションは見せず、ゴールを喜ぶチームのムードメーカーであるランドから祝福を受けるのみ。
リードされているオーストラリアは前に出るしか無い。コバルト、ディセ、ダントの兄弟3人を中心としたボール回しで、イタリアゴールを目指す。
混戦の最中、レヴィンは動き出して上がっていた。ダントからの低いボールが右から迫ると目にも止まらぬ悪魔の右足、その振り足が正確に球を射抜き飛ばす。
イタリアに向けて放たれたレヴィン渾身の悪魔の右足。凄まじい勢いで砲弾と化したボールがゴールの枠を捉えていた。
それに対して驚異的な反射神経でレヴィンのシュートを、ほぼ正面から両手でキャッチする。
あれだけの速さとパワーがあるにも関わらず、ファンブルしてもおかしくないシュートを完璧にセーブしてみせた。
『レヴィンの悪魔の右足をイタリアの巨人、GKリカルドがキャッチ!カテナチオの後ろを守る番人がこれを通さない!』
2m3cm、2mを超える長身。GKにおいて必要な要素を兼ね備えた申し子で、大会No.1の呼び声高いリカルド。
悪魔の右足をキャッチした直後、右足から繰り出されるパントキックで正確にディーンの元へとフィード。
前を向いたディーンにディセ、ダントの兄弟2人が向かうも、それを無にするかのようにディーンは2人の間を狙って右足を蹴る。
モーションの全く無いトゥーキックに兄弟2人は反応出来ず、これがランドへ通れば、彼は残っていたDFの1人が突っ込んで来た所を鮮やかに抜き去り、左足で豪快にゴール左隅へと蹴り込む。
アルベルのダイブも届かず、ランドがイタリアに4点目をもたらした。
『イタリア4点目ー!!リカルドからディーンと繋ぎ、最後にエースのランドと電光石火のカウンター炸裂ー!これが天才の共演か!?』
「bravissimoー♪」
アシストしてくれたディーンへと陽気に伝えた後、歓声を上げる観客へとランドは投げキッスで応えていた。
オーストラリアにとっては致命傷となる4失点。イタリアの圧倒的な強さを彼らは体で感じている。
ディーンだけではない。他の選手もエースクラスであり、総合力がずば抜けて高い。
試合終了の笛が鳴ると、オーストラリアの選手達は倒れ込む者が続出。
2連敗で決勝トーナメント進出の道は絶望的な物となってしまう。
「(弥一や日本がオーストラリアに苦戦したと聞いたが、この程度か)」
一方のイタリアは決勝トーナメント進出が確定。途中でベンチへと退いたディーンは母国の勝利に拍手する中で、物足りない相手だと感じた。
ヨーロッパ予選を含めて今大会。異次元の魔術師を止められるチームは未だ現れていない。
ディーンの為のUー20、イタリア復活を象徴する大会としての実現へと近づいてきている。
イタリア4ー0オーストラリア
ディーン2
ランド1
ジージョ1
弥一「そういえば忘れてたー」
優也「何だ急に」
弥一「ドミニカやオランダのご当地グルメについて話してなかったよー」
大門「ああ、アジアカップの時とか結構言ってたっけか」
弥一「ドミニカは豆料理に鶏肉料理、それにプラタノって呼ばれる緑色のバナナだねー。ドミニカだと主食として食べられてるそうだよー」
優也「果物という感覚だったが、向こうでは主食か。そこも国によっては違うな」
弥一「オランダはジャガイモが主でフライドポテトとか日本以上に身近で、クロケットと呼ばれるクリームコロッケみたいなのが国民食だよー、美味しそう♪」
大門「この場はグルメ紹介みたいな感じになってきた?」
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