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天才以外を軽視の結果

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『ショートコーナーから日本先制ー!!完全に押されていた状況から神明寺、技ありのアシスト!これを同じ立見の先輩影山が右足ミドルで一閃!』



『影山君素晴らしい右のミドルシュートでした!神明寺君のヒールでのパスも凄かったですし、立見の先輩後輩ホットライン決まりましたね!』




 前半から防戦一方が続いた日本の先制ゴール。スペインのスタジアムはどよめきも混じった歓声が飛び交う。



「影山先輩ナイスゴールー!」



「わっと!?」



 弥一がゴールを決めた影山へと抱き着きに行くと、影山は体の小さい弥一をしっかりと抱き止める。


 そこに日本のチームメイト達も駆け寄って行き、ゴールを喜んだ。


 ベンチの方も飛び出しそうな勢いで喜びを見せている。



「僕のジェスチャーやっぱ見てくれましたね♪」



「そこはね、付き合い長いから!」



 弥一が蹴る前に手で仰いでいた仕草。影山からそれは見えていて、あれは上がって来いという合図だった。



 大学へと行って離れた今もジェスチャーは覚えており、こういったやり取りが無ければ影山のゴールは生まれていなかったかもしれない。





「マジかおい!マサの奴オランダ相手にやりやがったぞ!」



「凄ぇあいつ!目立ちまくりじゃねーか!」



 大学の寮にて、テレビで日本対オランダを観戦している間宮と田村。


 選ばれなかった自分達の分も活躍してるみたいで、影山の決めたゴールに友人2人もテンションが上がっていた。



「行け行けマサー!日本このまま勝っちまえー!!」







「(くそっ!何時の間にあいつ居たんだ!?分からなかった……!この俺が!!)」



 ミランでも数々のピンチを救って来たグレンメル。その自分が弥一と同じ立見に居た選手、よりによって自分と同じポジションの者に決められて、煮え滾る怒りにも似た悔しさが湧き上がる。



「早くキックオフだ!行くぞ!」



 何故今のを防げなかったのか、悔いる前にまずは同点に追いつく事が先決。



 オランダは急いでセンターサークルにボールを戻す。




 再び始まるトータルフットボールの怒涛の攻撃。オレンジ軍団の大波が日本ゴールへ次々と迫ろうとしている。




 そのはずだった。




『オランダ上がって行くが……フォローが追いついていない!』



『足が止まって来てますね』



 交代したフレッシュな選手は当然体力に余裕はあるが、前半から出続けている選手の体力は猛攻を仕掛けた影響で、随分と消耗していた。



 そうなれば体力がある者と無い者、連携にも支障が出てしまう。



『あっと!ガンタートラップミス!この隙に代わって入った歳児が奪取だ!』



 日本は前半から攻守で走り回った辰羅川に代わって優也が右SHに入り、左の冬夜と共に走ってオランダを掻き回す。



「カウンター!!」



 足が止まって来た相手に対して優也がボールを奪うと、弥一は今なら速攻行けると叫んだ。




 優也は右サイドから右足で左サイドに蹴り出した。



 左の空いているスペースへ浮かせたパスではなく、低空飛行のシュート並に飛ぶスピードで送ると、冬夜は懸命にボールを追って左サイドを激走していた。



「(バカ優也ー!そんなサイドチェンジがあるか!!)」



 内心で幼馴染への文句は飛ぶが、しっかりとボールを追いかける冬夜。


 高く浮かせたボールと違って、グラウンダーでは途中でカットされる恐れはある。それを知りながら優也は蹴って来たのだ。



 彼の足なら追いつけるだろうと、この辺りは何処かのリベロに影響されたのかもしれない。




「くおっ!」



 優也の期待に応えるように冬夜はボールへ追いつき、左のインサイドでトラップすれば前に大きく行ってしまう。



 足元に収めるつもりがトラップミス、やらかしたとなったが先には誰もいない。


 オランダの守備はトルネイがこぼれた球へ走り、冬夜もそこに迫る。



 先に取ったのはスピードで勝る冬夜だった。



『広西に通ったがトラップ大きい!トルネイ迫る、広西取った!トルネイを抜いた!』




「アドス!21!」



 グレンメルが短くアドスへと光明のマークを頼めば、自らは冬夜に向かう。



「っ!」



 冬夜が左から侵入しに行くと、獣のような迫力を持って迫るグレンメル。迫って来る気配を感じた冬夜は、左足で軽く蹴って狼騎にパス。



 これを狼騎は左足のダイレクトシュートに行こうとすると、グレンメルは瞬時に反転して狼騎に向かう。



 狼騎の左足がボールを捉え、オランダゴールに向かってシュート。



 冬夜に向かっていたグレンメルが素早く狼騎に狙いを切り替え、飛び込んで行けば左肩にシュートは当たってボールが弾かれる。



『広西から酒井ダイレクトー!グレンメルなんという反応だ!?これをブロックしてしまった!』



 ボールはアドスの頭上へと向かい、頭でクリアしようとしていた。



 そこに光明が更に高い位置から頭で当ててヘディングシュート。よく見ればアドスの肩に手をかけている。



 狡賢さの混じった光明のシュートがゴール右へ飛ぶが、フォルツは反応してダイブ。


 両手で弾き、このシュートをセーブしていた。




「(しつっけぇんだよ!!)」



 再び転がったボール、このセカンドに狼騎が反応して抜群の瞬発力を見せる。


 その狼騎に劣らぬセカンドへの反応に優れたグレンメルも迫る。



 速かったのはスライディングで滑り込み、右足で押し込む狼騎だった。


 フォルツが倒れながらも手を伸ばすがボールには触れず、オランダのゴールマウスに再びボールが入った瞬間、スタンドは歓声に湧いた。




『日本2点目ー!!オランダの執念の守備を日本の意地の攻撃が上回った!連続シュートから最後に酒井が決めてくれたぁー!』



『おっと!?アドスがファールだとアピールしてますね』



 日本がゴールを決めて喜ぶ横で、アドスが光明に肩に手をかけてのしかかられたとアピール。だが主審は首を横に振り、彼の主張を認めなかった。




「おい光明、てめぇ随分狡賢い手使いやがるな。一歩間違えればカード物だろ」



「あれ主審見てやってるから、今日のジャッジ具合なら行けるかなって」



 色々なタイプの選手がいれば主審も色々居る。光明は主審を観察こっそり観察して、行けると判断すれば実行したのだ。



 それを光明は狼騎へと抱き着き、ゴールを祝福しながら耳元で教える。


 彼の観察眼が見えない所で発揮していた。





 攻めていたはずのオランダが2失点。突きつけられた現実がオレンジ軍団に重くのしかかって来る。



「行ける行けるー!オランダのトータルフットボール完封するよー!」



 2点リード、日本が益々優位に立っても弥一は変わらず声を出していく。


 彼にとっては何点差で勝とうが重要ではない、失点0での勝利が最優先だ。



「そうそう!此処まで来たら無失点で行くぞー!」



「当然スよ!」



 同じDFの佐助、番も弥一と同じく無失点を狙っている。



「その意気だお前ら!集中切らすなよ!」



 最後尾の藤堂も同じように声を上げ、日本の守備陣は迫りくるオレンジの波を再び迎える。





「(日本はこんな強かったのか!?弥一が居るとはいえこんな……!)」



 厄介なのはかつて、ジョヴァニッシミで共にサッカーをした弥一1人だけ。そう思っていたグレンメルは信じられない気持ちでいっぱいだ。



 セリエA、プロの舞台と比べれば日本の高校サッカーは遊びの領域、ぬるま湯と思っていたはずがオランダは未だ点を取れず、逆に2点のビハインドを背負ってしまう。



「(このまま終われるか!1点取ってなんとか反撃を!)」



 前半から出続けているにも関わらず、グレンメルは果敢に上がって行く。


 驚異的なスタミナを誇る男が終盤攻撃参加に出て、弥一の守備から得点しようと狙っていた。



「っ!?」



 またも気配を感じさせず忍び寄って来た日本の選手。先制ゴールを決めた影山がグレンメルの動きを察知して、マークに付いている。



 同じDMF同士の争い。ボールを持つガンターがグレンメルに預けようとするも、影山が邪魔で出せない。



「(隙あり!)」



 すかさず春樹が立ち止まっていたガンターに気付かれないよう、キープが甘くなった所を見逃さず奪い取る。




「狼騎!!」



「!」



 ボールを取った位置は自軍の右寄り、その位置から春樹は右足で強く前へと蹴り出した。



 低空飛行で弾丸の如く向かうロングスルーパス。狼騎はオランダ最終ラインのアドスとトルネイを追い越し、DFの裏へ飛び出す。



 こうなったら狼はもう止まらない。裏を取られた2人のDFが追いかけに行くが、一瞬でトップスピードに乗った狼騎には届かなかった。



 狼騎の前にはGKフォルツのみ、一対一の強さを持つ彼は近距離で蹴られたシュートを体で止めてみせる。それでも狼騎はセカンドボールに対して、素早く詰めれば再度右足で押し込みに行く。



 2度目を止める事は出来ず、フォルツの右手を掠めながらゴール左のネットへと突き刺さったシュート。




 決定的な3点目。今日でオランダ相手に2ゴールを決めた狼騎はスタンドの歓声に応えるように右拳を突き上げ、そこに春樹やチームメイト達が駆けつけて後ろからのしかかる。




「あ……!」



 オランダの致命的な3失点目にグレンメルはガクッと右膝をついてしまう。



 他のオランダ選手もこれで集中の糸は途切れてしまい、肩を落とす者が多数。




 何故なら時間はもうアディショナルタイム、その終了間際の失点だからだ。




 そして再びキックオフが再開して間もなく笛は鳴らされた。



 この瞬間日本のグループリーグ2勝目が確定。強豪オランダとの試合が終われば日本ベンチの選手達も飛び出し、皆で歓喜の輪を作る日本の姿があった。




 日本3ー0オランダ



 酒井2


 影山1

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