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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
最終章 これがサイコフットボール

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一瞬の輝きを見せる影

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『日本対オランダ、前半はほぼオランダの一方的な展開でしたが後半は日本反撃なるか?それとも再びトータルフットボールが圧倒するのか!?』



『両チーム交代は特に無しですか。スタミナの方は大丈夫ですかね?』




 ピィーーー




 オランダのボールからでキックオフの笛は吹かれ、後半戦が始まると早くも素早いボール回しから、日本ゴールへと迫る。



「左から来るよ月城ー!」



「おおっし!」



 右サイドからの攻撃。中央から行くと見せかけての展開で、日本を翻弄しようとするオランダ。


 その作戦が弥一には筒抜けである事も知らずに、右サイドを走るシールマンに対して月城が後ろから迫り追いつく。



 シールマンにボールが入った瞬間激しく肩からぶつかり、電光石火の攻撃を遅らせていた。




「おい!焦るな!戻せ!」



 グレンメルが後ろから声を出し、深追いし過ぎるなと注意するが開始前に弥一から受けた煽りのせいか、前へ前へと引かずにどんどん攻撃をオランダは仕掛ける。





「む……!」



 オランダのベンチで腕を組んで、試合をこれまで静観していた監督。初めて険しい表情を見せて彼は気付く。



 ボールを支配していて攻め込めているが、攻撃の方が前半と比べてやや単調になってしまっていた。


 ワンタッチ、ツータッチでの早いパスワークから個人技で強引に行く、といったプレーが多くなってきている。



 雑な攻撃ではいくらボールを支配し、攻撃出来てもスタミナが消費されるだけ。


 控え選手へとアップを命じて、オランダの方から動き出す。





「(流れ、変わって来たかな)」



 前線に残っていた光明。攻め込んでいるオランダの姿を観察していると、前半よりも攻撃が少し雑な感じに見えた。



 日本の守備は前半よりも余裕を持って防げており、オランダの左サイド、マーガのシンプルに上げたクロスを佐助が弾き返し、セカンドを春樹が制してキープする。



 やはり気の所為ではなく、前半と比べて風向きは変わって来た。これはチャンスだなと感じて光明はその時を待つ。





『おっと、オランダの方が先に動きます。両サイドDFのマーガとデアを此処で下げますね』



 体力切れを警戒してか、オランダが先に2枚の交代カードを切って来る。


 共に前半からよく動き回っていたので、消耗具合を思えば悪くない交代だろう。




「(ヤバいな……何か悪い予感がする)」



 こういう悪い予感は大抵当たってしまう。グレンメルは自分の感じた勘が外れて欲しいと内心祈るが、多分当たるだろうと思った。



 チームの攻撃が悪い方に転びつつあり、それを変えようと交代の采配。


 普通なら良いはずだが彼の嫌な予感は拭えない。



 最悪を想定して備える必要がある。オランダの攻勢が続く中でグレンメルは密かに考えていた。




 ある異変に気づいたのは後半15分を過ぎた辺り、月城から冬夜へと交代の時にプレーが止まっている時だ。



「おい、オランダの方……何人か足止まってないか?」



 途切れた合間に水を飲む佐助が横目でオランダを見ると、交代した選手を除きガンターやシールマンといった、スタメンから出てる者達の足が重そうだった。




「あは、やっとツケが回って来ましたねー♪」



 数人のオランダ選手が前半に猛攻を仕掛け、縦横無尽に走り回った負担が今になってのしかかって来たと、弥一は気付けば楽しげに笑みを浮かべ、その光景を両手に水筒を持った状態で見ている。



 前半から人を追い越す動きをして、波状攻撃を仕掛けまくれば攻撃側が有利とはいえ、体力の消耗は避けられない。


 加えてあれだけ攻めて点を取れない焦り、精神的な負担も上乗せされてる事だろう。



 向こうは交代で補おうとしたが、成果は今の所出ていない。



 耐えに耐えた日本にとっては待ちくたびれる程に待ったチャンス。それがようやく巡って来た。



「じゃあ此処からは、僕らのターンって所かな?」



「けどそこまで時間に余裕は無い。モタモタしてたらドローだ」



 やっと猛攻が影を潜めてきた事に春樹が軽く一息つくと、辰羅川は電光掲示板に表示されている時間を確認。



 後半の20分になろうとしている所であまりゆとりは無い。だからと言って焦って攻めても、オランダの守備陣相手に大きな効果はないはずだ。



「とりあえず仕掛けないと始まりませんから、いっちょやりますか♪」



 給水を終えて弥一はマイペースに笑みを浮かべた後、ポジションへと戻る。




『オランダ、再び速攻…!おっと!?天宮インターセプト!緑山へと渡して日本カウンターだ!』



 オランダ得意のワンタッチパスで回して攻めると、春樹がコースを読んでインターセプトに成功。


 彼らの意識が守備へと切り替わる前に春樹は明へと繋ぐ。



 春樹からのパスは明の足元に送られ、明は正確なトラップから前を向く。


 オランダDFはすぐに意識を攻撃から守備に切り替えて、近くに居た1人が明に突進する勢いで寄せに行った。



 それを明はスルッと相手の突進を躱す。



 スペインの名物、牛を華麗に躱すマタドールを思わせるようで、一部のスタンドからは歓声が上がる。



 此処に来てようやく明のドリブルが炸裂すれば、オランダゴールを目指して中央から突き進む。




「ディレイ!FW2人のマークは外すなよ!」



 キャプテンのアドスが明を足止めするよう簡潔に伝えて、狼騎と光明のマークも怠らない。


 この辺りは弥一に煽られて頭に来た部分があったとはいえ、伊達にキャプテンを張っていなかった。




 すると明は正面を向いたまま右足インサイドで左へ送る。ノールックパスを受け取ったのは月城と交代して入った冬夜。



『緑山上手い!相手を引きつけて左の広西へパスだ!』



 今の冬夜はフリー、オランダがこれに寄せきれていなかった。


 チャンスだと冬夜は勢いよく右足を振り抜く。



 日本の1本目は冬夜から繰り出され、シュートは真っ直ぐオランダゴールに向かい飛ぶが、それを黙って見ているオランダではなかった。



 アドスが195cmを支える長い右足を伸ばし、冬夜のシュートをブロック。



「(足なっげ!?)」



 防がれた冬夜が内心で叫んでる間にボールはエリア内へとこぼれ、セカンドに対し狼騎とグレンメルが同時に反応していた。




「(何時までもてめぇごときに先越される訳ねぇだろ!!)」



「っ!?」



 グレンメルがクリアするより先に狼騎が右足をボールに当てる方が速く、再度オランダゴールに続けてシュートが放たれた。



 そこに立ちはだかるのはオランダの名手フォルツ。近距離のシュートを左手に当てて弾き、ボールを逸らせばゴールマウスから外れてラインを割る。




『後半日本のビックチャンスでしたが惜しい!広西のシュートのこぼれ球を酒井が再度狙ったのは良いが立ち塞がったヨーロッパの若手屈指のGKフォルツ!そのセービングで日本の反撃を阻止しています!』



 オランダ側はフォルツの好セーブに救われ、彼へと集まり礼を言う選手達が続出。




「(よし、セットプレー)」



 右からのCKとなって弥一は右コーナーへと向かって行く、するとそれを見たスタンドの観客達は歓声を上げた。



『おっとこれは?神明寺が蹴るのか!?スタンドはあのゴル・オリンピコを知っているせいか大歓声!まさか2試合連続直接ゴールあるのか!?』



『いやー、流石にオランダ相手ですし守るGKもフォルツと優秀ですからね。そう思わせて蹴るかもしれませんが……』




 スペインのスタジアムは2度目のゴル・オリンピコを期待している。注目が注がれる弥一。


 小さな彼にはオランダも注目していた。



「2戦連続で直接は来ない。小競り合いでドミニカは惑わされていただろうし、俺らは何があっても集中切らさず騙されるなよ!」



 疲労が来ている今のチーム状態、それをアドスは声を上げて今一度引き締めさせる。



「(確かにそんな連続で狙って来ない。強烈な印象が残っている中で蹴るような奴じゃないはず、にも関わらず出てきたって事は……?)」



 グレンメルはこのタイミングでキッカーとして、出てきたという事は何か狙いがあるのか、考えを巡らせていく。



 シンプルに放り込んでは来ないだろう。オランダはハイボールとグラウンダー両方に対して強い、それは弥一も分かっているはずだ。



 なら可能性は、グレンメルは1人静かに判断するとこっそり動き出す。




 その弥一は密集地帯となってるオランダゴール前を見て、暑いのか左手で自分にパタパタ仰ぐ姿が見られる。



 するとセットされたボールを近くの辰羅川へと右足で蹴り渡す。今回は小競り合い無しで、いきなりショートコーナーを使って来た。



「戻して!」



「!」



 弥一は素早く動き出し、辰羅川の方へ向かっている。それを見て軽く弥一の方に蹴ってボールを戻す。


 彼のドリブルは密集地帯に侵入しようとしていた。




「(やっぱりショートで来たか!)」



 弥一の策をグレンメルが読んでその前に立つ。ジョヴァニッシミ時代のチームメイト同士の対決だ。



 しかし弥一からは読まれて戸惑っている様子は無い、そのまま右足を振り上げてパスに行く構え。



 グレンメルは飛びつかない、これがフェイントと分かって動かず。



「(な!?)」



 その時、分かっていたはずの彼の目は驚きで見開いていた。




 ボールを蹴る代わりに軸足の後ろを通し、体を90度回転させるフェイント。



 オランダの名選手の名が使われたクライフターン。それをグレンの前で弥一がやってきたのだ。




「(ふざけるな弥一!!俺がそれを通すと思ってんのか!?)」



 母国の英雄の名を使った技を知らない訳が無い。加速される前に走るコースを塞ぎ、心を熱くさせつつもグレンメルは弥一のクライフターンを阻止。



 光明、狼騎といったFWのマークはピッタリ付いたままで、外にいる春樹や冬夜もマークが付いている。


 これで弥一を止めれば日本の攻撃は詰みだと確信するグレンメル。




 その時、弥一はグレンメルからボールを見えないように隠していると、左足の踵を使ってボールを浮かせれば、その踵で蹴ってパスを送っていた。



 ふわりと蹴られた球は吸い寄せられるように、走り込んでいる選手の元へと向かう。


 右のペナルティエリアエリア内付近から正面の外、オランダの誰もがその存在に気づいていなかった。




 音も無く忍び寄っていたシャドウボランチ、影山の存在に。



 完全なフリーから影山は蹴りやすい、利き足の右に弥一からのボールが送られ、ダイレクトで思い切りシュートを撃った。



 ゴール右上隅へと向かう最高のコース。これにフォルツが反応して懸命にダイブし、左腕を伸ばすがスピードも乗っているボールに、流石のオランダの守護神も一歩及ばない。




 弥一や他の選手に意識が向いてる間、不意を突いた一撃。



 ゴールネットが揺れて四方八方から歓声のシャワーが降り注がれる。



 影に徹していた男は今華やかなスポットライトを浴びて、スペインの空へと両手を突き上げた。

豪山「蹴一!影山の奴やってくれたぞ!」


成海「見てたから!あいつミドルよく撃ってたけどオランダ相手に決めて来たか……凄いな!」


鳥羽「あの居るか居ないか分かんない奴が、凄い出世したもんだ」


峰山「神明寺のインターセプトとか目立ってたけど、何気にあいつにも攻撃結構止められてたんだよな……」


宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。


サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。

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