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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
最終章 これがサイコフットボール

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オレンジ軍団の復活

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 日本がドミニカを5ー0で下し、完勝で初戦を終えた試合結果は国内にて速報で流れる。



 特に弥一の右コーナーから直接決めたゴル・オリンピコの先制点が大きく注目され、解説者や専門家も驚かされる程だ。



 まだ20になってない上にこんな小さな少年が、世界のトップレベルが蹴るような神業をやってのけるとは思っていなかっただろう。


 カウンターシュート以来の衝撃だった。



「俺現役の高校サッカー部員だけどあんなキック蹴れない」



「真似して蹴ってみたら全然アカン」



「神の子過ぎる」




 SNSでもトレンド入りし、神明寺弥一、アウトサイドカーブ、ゴル・オリンピコと2ゴールの照皇よりも弥一に注目が行っていた。




「めっちゃ注目されとるやん」



 日本が宿泊するホテルにて、スマホで日本のドミニカ戦の事を見ていた想真。


 弥一のゴールに関する事が多く、スペイン人による書き込みもかなりあって素晴らしいと称賛する内容だ。



 日本は今食事中、専属の栄養士が作るソースを使わないパスタがこの日のメニュー。更に豚汁、デザートに特製フルーツゼリーという組み合わせ。



「やっぱインパクト強すぎたからかな」



 既にパスタや豚汁を完食している大門。想真と話した後にフルーツゼリーを味わう。



「これで次のオランダとか日本のセットプレーで警戒してきそうだよな」



 豚汁を一口飲む番。猫舌の彼は一気に飲めないので、少しずつ飲み進めていた。




「オランダか……あれ、驚いたね」



「そう……ですね」



 食事を進める中で影山と明はオランダの話が出て来れば、彼らの頭にオランダ対カメルーンの初戦が脳内で再生される。




 下馬評ではアフリカ予選を1位突破し、レイモン・ボンバという絶対的エースがいるカメルーンが有利と思われた。



 しかし蓋を開けてみれば全く違う。



 オレンジ軍団のオランダ選手達が、フィールドをそれぞれ縦横無尽に動き回り、カメルーンゴールへとオレンジの波が飲み込む勢いで、襲いかかっていた。



 ほぼワンタッチ、ツータッチでパスを素早く回して繋ぎ、中央やサイドと偏りなく怒涛の攻撃を見せれば、粘っていたカメルーンからゴールをもぎ取る。



 決まったポジションは無い。FWが積極的に守備をすればDFがそれと入れ替わるように、前線へと上がり攻撃参加から、豪快なミドルシュートで得点してみせた。



 現代サッカーの原点であるオランダのトータルフットボール。その完全復活を象徴するゲームだ。



「トータルフットボールもどきなら立見の時に音村戦で見たけど、それとは全然違ったね。質も強度も何もかも」



「全員攻撃、全員守備は珍しくありませんけど。文字通り全員だった感じですねあれ……」



 もどきと本場では全く別物、影山と明は揃って同じ事を思っていた。



 FW、MF、DF、どのポジションも関係無くフリーランニングで動き回る。オランダはそれを実行しており、攻撃だけでなく守備でもカメルーンに付け入る隙を与えない。



 エースのボンバには仕事をさせず、苦し紛れの遠目からシュートを何本か撃たせる程度で終わっていた。


 それも全て入る事は無く相手を完封している。



 結果は5ー0、偶然にも日本がドミニカを下した時と同じスコアだ。


 よって日本とオランダは勝ち点だけでなく、得失点差も並んでいる形だった。




「オランダの14番、グレンメルとか予選やプレーオフでもいなかった気がしたけど」



「いなかったと思います、この大会で初めて出て来ましたね」



 オランダで栄光ある背番号14。今回の代表でそれを背負う選手が、フランツ・グレンメル。



 ディーンと同じミランに所属する18歳で、将来のオランダを背負うと言われる程の選手。ポジションはDMFだ。



 その彼が加わりオランダは予選、プレーオフまで追い込まれた時と違う姿を見せる。まさに覚醒したという感じだった。




「あー、グレンは強いよー」



 影山と明が話してると、そこにパスタを食べていた弥一も加わる。 



「弥一、ひょっとして……彼もミランのジョヴァニッシミの一員だったりする?」



「そうですよー?」



 ひょっとしてと影山が尋ねれば、弥一はあっさりグレンメルと元チームメイトである事を認めた。



「やっぱ……凄い人が知り合い居ますね先輩……」



「元々の知り合いが凄くなっただけだってー、けど彼も出世したもんだなぁ」



 昔を思い出すように弥一は明と会話を交わしつつ、しみじみとなって語る。



「グレンはジョヴァニッシミの時もDMFでね、その時はアンカー務めててセカンドをガンガン拾ってくれたもんだよー」



 ボランチと違って中盤の守備重視のアンカー。それが当時ディーン、弥一と共にジョヴァニッシミでプレーしていた、グレンメルのポジションだった。



 当時の事を振り返れば相手が攻め込んで来た時に攻撃をはね返し、そのセカンドボールをよく拾ってくれたのがグレンメル。


 弥一達DFにとっては非常に助かる存在として、共に守備を支えてきた。



「セカンドをガンガン拾うか……次の試合、その辺りが鍵になりそうだね」



 高確率でセカンドを拾えるのは攻守においてかなり大きい。影山は次のオランダ戦はそれを争う攻防が重要になると考えている。



「セカンド争いならうちも負けてませんから大丈夫ですよー♪」



 深刻に考える影山に対して、弥一は明るく笑った後に残りのパスタを食べ終え、楽しみにしているフルーツゼリーへと手を伸ばす。



 もうじき怒涛の攻撃を得意とするオランダのトータルフットボールを迎える。そんな時でも弥一のマイペースは変わらなかった。




 その日の午後の練習後、次のオランダ戦に向けて先発メンバーが発表される。



 GK 藤堂



 DF 神明寺 仙道(佐) 青山



 MF 緑山 月城 辰羅川 天宮 影山



 FW 酒井 源田



「(やった、オランダ戦に出場……!)」



 これに内心喜んだのはアジア予選のヨルダン戦、負傷によって戦線離脱していた辰羅川。彼にとって久々となる代表での試合だ。



「おおー、タツさん復帰戦っスね!」



「オランダ戦勝ちましょうー!」



 辰羅川の復帰に月城や番が駆け寄って声をかけ、共に次戦へ向けて意気込んだ。



「ああ、トータルフットボール弾き返すぞー!」



 本人も張り切っており、勝利に向けて意欲は増すばかり。






 同じ頃、オランダの宿泊するホテルの一室で、グレンメルはスマホで同じグループの日本とドミニカの試合を見ていた。



 スピーディーなパス回しと両サイドの素早い動きをしており、ドミニカを翻弄しまくっている。



「(日本もこんなパスやるようになったんだな。どっちにしろ関係無いけど)」



 思ったよりもレベルが高いと感じたグレンメルだが、オランダの勝利は揺らがない。


 日本のサッカーが進化している事は認めるが、世界を食うまでには至っていないなと。



 彼が見つめるスマホの画面にはコーチングする弥一の姿が映る。




「ディーン……恨むなよ、お前より先に俺が弥一を食ってやる」



 小さく呟けばグレンメルはニヤリと笑みを浮かべる。彼の目は獲物を見つめる獣のようだった。

弥一「全員攻撃、全員守備。トータルフットボールを意識した音村学院が前の立見には難敵なんでしたっけ?」


影山「弥一君達が来てからそんな印象無くなっちゃったけど、前は手を焼いたもんだよ」


優也「その本場オランダが今度の相手、こんな偶然もあるもんだな」


大門「カメルーン相手に大差とかなり手強いからドミニカ戦の時のようには行かなそうだね」


弥一「行ってほしいけどなぁ、まあ次回行ってみますかー♪」


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サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。

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