着火したイレブンは勢いに乗る
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
『日本待ちに待った先制点ー!後半開始早々、照皇の超ロングシュートで掴んだセットプレーのチャンスから神明寺が直接ゴール!なんとUー20ワールドカップ、国際大会でゴル・オリンピコをやってしまったぁー!!』
『右のアウトサイドでカーブかけてコーナーから直接ですか!?彼は何処まで我々を驚かせれば気が済むのか……!』
「Maravilloso!(素晴らしい!)」
「凄くないかあの子供!?」
普段からスペインで活躍するプロのプレーを、日々観戦してきたスペイン人も驚く程、今の弥一が決めたゴールにちょっとした騒ぎが起きていた。
まさか此処でゴル・オリンピコが見れるとは、全員思いもしてなかった事だろう。
「急に俺に突っかかって来たかと思えばてめーデコイかよ!」
「この中で一番言いやすい相手だったからねー♪」
月城が軽く弥一にヘッドロックをかける形で、ゴールを荒っぽく祝福。今の言い合いで打ち合わせなどしていない。全部弥一がその場で思いついて実行した事で、そうとは知らず月城は本当に弥一がいちゃもんつけてると思って、言い合いへと発展していたのだ。
それもあってドミニカは乱されたのかもしれない。
「これで相手さん守ってられないはず、攻撃よろしくねー♪」
弥一は照皇達へと明るく笑って言った後に、タタタっと小走りでDFへと戻って行った。
「室、神明寺に負けている場合じゃないぞ。DFが取れて俺達がノーゴールで終わる訳にはいかない」
「ですね、グループリーグだから得失点差も関係してますし。いっちょやってやりましょう!」
弥一のゴールに刺激されたか、照皇と室のFW2人はなんとしても点を取ってやろうと、共に闘志を燃え滾らせる。
守備を固めていたドミニカ。最悪引き分けでも良いと考えていたが、先制されたこの状況ではプランを変えざるを得ない。
勝ち点0で終わる気は無いと、守備的だった彼らは前へと出て行く。
「(俺も負けてる場合とちゃうわ!)」
キッカーの座を譲った光輝。ボールを持ってドリブルする相手へと、体を寄せて攻撃を遅らせようと務める。
ベイトが光輝のプレスを受けながらも、繋げようとパスを出すがコースには想真が飛び込んで来て、インターセプトに成功。
「反撃やー!カウンター!!」
最神の連携で止めた後に想真が叫び、すかさず右の白羽へパスを送る。
日本から見て今なら右サイドが薄め。白羽の前にトラットが立ち塞がり飛び込まず、ベイトの戻りを待とうとディレイに徹するが、白羽は後ろの空いているスペースが見えれば右足でボールを軽くふわっと浮かせ、自らはトラットの左から抜き去る。
反転して追いかけるトラットだが既に遅い。白羽は右足のクロスを高く上げていた。
「うお!!」
このハイボールに室がジャンプ、GKアーマードも手を伸ばして飛びつく。
それより先に触れたのは室の頭。
叩きつけずにループのように浮かせてアーマードの頭上を越えれば、ドミニカのゴールマウスへと導かれるように吸い込まれて行った。
『入った!日本追加点ー!チーム随一の長身ストライカー室が技ありのヘディングで決めてくれたー!』
『叩きつけずに浮かせてきましたか!あれは狙って中々出来ないですよ!』
ゴールが決まった瞬間、スタジアムは再び大観衆による歓声で揺れていた。
大事な追加点を決めた室は大舞台で決めた興奮からか、派手なガッツポーズをとる。
「どうしよ!凄ぇ嬉しい!」
「言われても知らんわ!とりあえず喜べばええやろ!」
後ろから室に飛びつく光輝、そこに白羽や月城と続いて行く。
日本に明るいムードが流れる中でドミニカは深刻そうだ。
「1点取ってガラリと変わりましたね、今の内に交代準備と行きましょう」
マッテオはベンチの選手達に視線を向ければ、すぐに動き出す。
後半14分。日本は白羽と月城の両サイドを一気に変えて、優也と冬夜を送り出した。
ドミニカも疲労した選手に変えてフレッシュな選手を投入したりと、流れを変えようとしている。
だがアメリカ、オーストラリアと体格あるチームとの試合経験を重ねている上、今の勢いある日本の流れはそう簡単には止まらない。
『今度は広西が左サイド突破だ!速い速い!』
「(相手の守備や圧が甘い、照皇さんフリーだ!)」
月城と同じくスピード自慢の冬夜。ドミニカの左を切り裂く勢いで駆け上がる。
寸前でDFが詰めてくる前に、冬夜は前線の照皇へとパス。
そこにDFのブルグがボールを取ろうと突っ込む。対して照皇は突っ込んで来た相手を左右のインサイドを使ってボールを転がし、躱すと共にボールを前へ蹴って、自身もそれに追いつこうとダッシュ。
ダブルタッチで躱した照皇の先にDFはいない、点を取ろうと前掛かりになっていて、ドミニカDFのカバーリングが追いついていなかった。
一気にゴール前へと照皇が迫り、アーマードは飛び出すのに躊躇してしまう。後ろのブルグが必死で追いかけるも、その前に照皇は右足を一閃。
振り抜かれた右足からのシュートはドミニカゴール左へ飛ぶ。加速していくボールにアーマードが触れる事は出来ず、ゴールネットが揺れる。
『照皇も決めたー!日本なんと後半だけで3得点!攻撃が爆発だー!』
『鮮やかに相手を抜き去っての右足!これぞ天才ストライカーというプレーを魅せましたね照皇君!』
「おおっし!」
「さっすがー!照さんと室頼りになるぅー♪」
後ろで3点目のゴールを見届けた弥一と藤堂。弥一は飛び跳ねて喜び、藤堂は拳を握りしめた。
「よーし!守りもしっかり0で締めるぞ!」
「うぉっス!」
此処で気を緩めて1失点があってはならない。そこからズルズル行ってしまう可能性も考え、佐助は気を引き締めようと周囲に声をかけ、番が威勢よく答えればまだまだ気迫充分といった感じだ。
その彼らより先に光輝が前の方でドミニカからボールを奪取。すると迫り来る選手を1人2人と、素早いフェイントを駆使して中央突破。
「(前線や両サイド活躍して中央活躍無しで終われるかい!)」
仲間の活躍に光輝も火が付いて、単独でドミニカのゴールへと迫る。
「いったれ光輝ー!関西の力見せつけるんやー!」
想真も後ろから声で後押し。それが力となったか光輝は視線を照皇へと向ければ、左足を振り上げる。
それをパスと読んでハンブロスがパスコースへ入り立ち塞がってきたが、この足は罠である事を彼は気付かず。
光輝はパスと見せかけて切り返し、右足でミドルシュートを撃った。
低い弾道のシュートでゴール右に飛ぶ。これをアーマードが反応して両手でキャッチ。
だがボールは零れてしまい、照皇がGKのファンブルを見逃さず詰めて押し込んでいた。
『4点目ー!三津谷の単独突破からシュート!こぼれ球に詰めていた照皇、この試合2ゴールー!!』
『三津谷君の切れ味あるドリブルからですね。日本の両サイドに意識行ってドミニカ中央の守備が若干甘くなってましたね!』
「(途中までスコアレスだったはずなのに……何だこの勢いは!?)」
予選合計でも4失点もしていなかったドミニカ。その自分達が此処まで失点を許している今が、信じられない気持ちだった。
ドミニカのメンタルが崩れた所に、容赦無いレーザービームは撃ち抜く。
「優也走ってー!」
「(来ると思った!!)」
ドミニカ右サイドの空いているスペースへと、弥一が左斜め後方から左足でシュートを思わせる弾丸ロングスルーパス。
弥一の無茶振りなスパルタパスに反応した優也。サッカーと陸上で鍛えた足で左スペースに猛ダッシュした結果、ラインを割ってしまう前に右足でトラップ。
DFの裏を抜け出して旗は上がらず大チャンス。一気にアーマードと一対一に持ち込めば冷静に動きを見て、突っ込んで来た所を軽くボールを浮かせて越えて行く。
そのまま転がって行けばゴールマウスへと入り、優也がダメ押しの5ゴール目を決めてみせた。
「優也!お前よく追いついたなー!」
「あいつなら蹴りかねないと思っただけだ」
5点目のゴールを決めて、幼馴染の冬夜が真っ先に優也のゴールを祝福。優也の目は弥一に向く。
その弥一は得意気に優也へと、右手親指を立ててナイスゴールと伝えていた。
アディショナルタイムも過ぎて試合はこのまま5ー0で終了。
日本が初戦を完勝と最高のスタート。派手なスコアを見せてスペインの観客からも、日本を称賛する声が飛ぶ。
『試合終了ー!日本なんと後半だけで怒涛の5ゴールと完勝!スペインの地で若きサムライ達が躍動しました!』
『これは良い流れで次のオランダ戦を迎える事が出来ますね、ナイスゲーム!』
この日一番の歓声を受ける弥一は、観客に明るく手を振って笑顔で応える。
日本5ー0ドミニカ
照皇2
室1
神明寺1
歳児1
弥一「昔は立見そんなに攻撃力爆発してる方じゃなかったよねぇ」
優也「点は取れてる方、と思ったが……氷神兄弟や明に石田とあいつらで感覚バグリ気味になって来てるかこれ」
大門「彼らは滅茶苦茶取ってたなぁ、でも弥一や優也も1年目の時とか大事な場面で結構決めてたよ。特に優也は途中まで後半100%の確率で決めたりしてたし」
弥一「そうそう、それからか歳児タイムとか言われるようになってさ?」
優也「……まあ、中二病っぽいの付けられるよりは良いか」
宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。
サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。