表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
447/657

情熱の国を揺らす超絶キック

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『前半日本攻め込むが、徹底して守るドミニカのゴールを中々割る事が出来ない!照皇へのクロスも跳ね返す!』



 白羽が右サイドから突破し、右足で低いクロスを送るもゴール前を固める、ドミニカDFに弾かれてしまう。



 ボールの支配率としては日本が上。パワーの面で劣っているとはいえ、実力なら勝っている。


 それでゴールを奪えるとは限らないのがサッカー。大舞台独特の雰囲気もあって、前半のスコアは動いていない。



「向こうのカウンター来るでー!」



 ドミニカのボールになると、想真がすぐに声を上げて周囲の味方へと伝え、直後にDMFハンブロスの低い縦パスが、司令塔のガラッドに渡る。



 だが政宗、想真のダブルボランチが2人がかりでガラッドへプレス。


 相手に前を向かせず、ガラッドはキープするので精一杯という感じだ。



 そのガラッドからボールを奪取した想真。此処で再び攻撃に行こうとするが、前半終了の笛がこのタイミングで鳴り響く。




『あーっと、此処で前半終了!日本対ドミニカ、前半は0ー0のスコアレスで折り返しです!』



『うーん、日本攻めていたんですけどね……決定的なチャンスはあまり作れませんでしたね』




 ドミニカの方は何人か笑みを見せて引き上げている。格上の日本相手に0ー0で折り返しは、上出来だと思ってるのだろう。



 彼らの場合は無理に勝ち点3は狙わない。絶対失点はせず、確実に勝ち点1を取りに行くスタイルだ。


 なので攻撃的に行くリスクは避けていた。





「あいつら徹底して守ってるよ、ごっついのがあんなうじゃうじゃと……」



 ある程度守って来る事は勿論想定していたが、こんな徹底してくるとは思ってなかったと、室はロッカールームの椅子に腰掛けて水を飲み、体力を回復させていく。



「何か思うように点が取れないんだよな……これが、ワールドカップの重圧ってやつか?」



 日本の猛暑の時の試合と比べたら、暑さの和らいだスペインでの試合まだ楽な方だ。ただ感じる大舞台の雰囲気と重圧は国内の時の比ではない。



 国を背負って期待されつつ戦う代表のプレッシャーもあってか、攻撃の歯車がそれで微妙に狂ってきたのかもしれない。今までドミニカのように守備を固めるチームとは散々戦って慣れてるはずだ。



 ペースは今守れているドミニカにあるのかもしれない。




「相手のサイドはそんな大した事無いから、中央は避けて左右からクロス入れまくるか。高い低い関係無しで」



「今の布陣なら前に高さあるな、うん。賛成」



 左と右のサイドプレーヤー月城と白羽。話し合って相手のサイドは抜けると、互いに確認する。




「相手はカウンターを狙ってますが、恐れず攻撃に出ましょう。勝ち点3と1では大違いです、この先を思えば勝利は欲しい」



 マッテオはドミニカが徹底し、守って隙あらばカウンターと相手の狙いを分かっている。


 それを承知の上で攻撃的に行こうと選手達へ伝えれば、彼らもそのつもりで頷く。




 日本が後半に向けての話し合いをハーフタイムの間に進める中、弥一は照皇へと声をかける。



「照さん、後半は日本ボールのキックオフだよね?」



「ああ、それがどうかしたか?」



「あのさ……」




「……上手く行くのかそれは?」



「やるタイミングがそこしか無い一発限りだから、保証は出来ないけどー……何もせず普通に進めるより流れを変える意味でもいいかな?って」



 難しい顔をする照皇に対して、弥一はこれで行こうと頼んでいる。




「分かった、室。後半開始についてだが……」



「え?はい……」



 やがて照皇が弥一のと話し合いで頷くと室を呼び、彼とも打ち合わせを進めた。



 向こうの思惑通りの形となっている初戦。これを打開しようと各自が話し考え、勝ち点3を狙うという気持ちがより強くなっていく。




『前半は日本、ドミニカの守備に押し気味で試合を進めていたのですが得点は0。このまま行くと勝ち点1が互いに入るドローも見えて来ます。勝ち点3を掴めるのか!?』



『ドミニカも当然勝ち点3は欲しい所ですが、最悪1でも構わないと今の守備的な姿勢から動かない可能性もありそうですね。1位、2位だけでなく3位の成績上位4カ国が決勝トーナメント進出ですから』




 Uー20ワールドカップはAからFまであるグループリーグ。全試合を終えて1位、2位となった国が先へ進む事が出来るが、3位となってしまったチームにも希望がある。



 各グループ3位の中で成績上位の4チーム。これを含めて決勝トーナメントは16チームで争うのだ。



 当然確実に決勝トーナメント進出を狙うなら1位、2位突破が確実。だが試合が終了へと迫るにつれて、確実に1を積み上げれば良いとプランを変える事も珍しくない。グループリーグの戦いだと普段と違って、そういった考えや戦い方もある。




 両チームの選手が観客の歓声を浴びながら、再びフィールドへと戻る。両チームに交代は無い。



 センターサークルに置かれたボールの前に照皇と室が立ち、開始の笛を待っている。




 ピィーーー




『後半キックオフ!日本ドミニカの硬い守りを打ち崩せるか……あっと!?照皇蹴ったー!』



 照皇が何時も通り軽くキックオフのボールを蹴り出し、室がそれを戻せば照皇はトン、と左足で球を浮かせると地面に落ちる前に利き足の右で、思い切りドミニカゴールへ飛ばす。



 先程自分達がやったキックオフシュート、ドミニカは皆が驚く。その中でDMFのハンブロスへと当たれば、大きく後方へとボールは跳ねて、空中でドミニカのゴールラインを割っていた。



「やった、上手く行ったー♪」



 主審が日本の右からのCKを指示。弥一は上手く行ったと小さく笑えば、小走りで相手ゴールへと向かう。



 先程照皇に頼んだのはこれだ。前半にドミニカがやったのと同じ、キックオフシュートをやってほしいと。


 相手にボールを渡してしまうも同然のリスクあるプレーだが、そう来るとまず予測していない相手を驚かせるなら効果がある。



 ゴールは取れると思っていない。ワールドカップまで勝ち進んだ程のチーム相手に、決まる確率は0に等しい。


 狙いとしてはCK、それを取りたいと考えていた。




『さあ日本、両チーム通じてこの試合初めてのCK。大事なセットプレーだがゴール前は高さが揃っているドミニカの山がずらりと並ぶ!』



『これは狙いとしては室君の頭でしょうかね、しかしマークがきついですからショートコーナーで揺さぶったり低く速いボールを放り込む……それが高さあるチームに効果的ではないでしょうか』




「光輝ー、僕に蹴らせてー」



「え?……まあええか」



 何時ものようにCKを蹴ろうと位置についていた光輝に、弥一がキッカー変わってと言いに来た。


 光輝は弥一の顔を見ると何か考えがありそうと見てキッカーの位置から離れ、セカンドボールに備えてドミニカのペナルティエリア外、その中央付近へ向かう。



『おっと?三津谷蹴りません。此処は神明寺に任せるようです』



『此処で神明寺君ですか。彼が蹴ると何か起こりそうでちょっと胸が高鳴りますね』




 右コーナーにセットされたボール。その前に弥一が立つと、敵味方が大勢居るドミニカのゴール前を見据える。



 蹴って来るかとドミニカ、日本の両者が身構えると。




「月城ー!何でそんな所居るのさー!?」



「は、はぁ!?」



 いきなり弥一は反対サイドの遠い位置に居る月城へと大声を出す。



 突然呼ばれた月城は何言ってんだというリアクションだ。



「もっと中入って来てくんなきゃ困るよー!こっち来て来て!」



「お前中の状況分かって言ってんのかー!?人多過ぎるっての!」



 月城に中入って来いと手でジェスチャーする弥一。それに月城は無理だと言い返して言い合いが発生。



 何なんだとエリア内に居る両選手が思ったら、直後に動きはあった。



 弥一は月城と言い合いする中で右足の外側、アウトサイドでボールを蹴ってゴール前へと上げる。



 ゴール近くに居た昭皇へ向かうボール。取れると判断してドミニカGKアーマードが飛び出して、照皇の前に取ろうとしていた。





「(え……!?)」



 アーマードが手を伸ばした時にボールが逃げるように変化し、ドミニカゴールへ向かい曲がっていた。



 右のアウトサイドで蹴った弥一。味方に合わせたボールかと思えばカーブがかけられており、直接狙うのが困難と言われているCKから狙う。



 そのまま蹴ればまず入る確率は0に等しい。だが蹴る前に弥一と月城の言い合いで集中が乱れたか、あるいは月城に意識が向いたか、どちらにしてもドミニカDFに隙は出来た。




 アーマードが飛び出してガラ空きとなったゴール。DFがカバーに行くも間に合わず、弥一の蹴ったボールは超絶なカーブとなって、直接ドミニカゴールに叩き込まれる。




 昨年の総体予選、西久保寺戦以来のゴル・オリンピコ。



 月城にわざといちゃもんをつけて惑わせ、その間に右のアウトサイドカーブキックが炸裂。



 弥一の直接ゴールでネットが揺れた瞬間、大観衆が歓声を上げると同時に総立ちとなる。


 本人には仲間が集まって初ゴールの喜びが爆発、共に喜び合う。



 スペインの地で起こったスーパーゴラッソ。神明寺弥一の名がサッカーの本場、情熱の国に深く刻み込まれた瞬間だった。

弥一「ああー、西久保寺かぁ。めっちゃ攻撃攻撃だったよねー」


優也「1年目の時はあいつら守備捨てて失点以上に得点滅茶苦茶取ってたな、それも2年目で改善されていたが」


大門「元プロの高坂さんが監督務めてて強かったよな」


冬夜「東京であいつら程破壊的な攻撃姿勢で来るのはそういねぇや、ああいうのは一番波に乗らせたくない」


弥一「うーん、最終章だから思い出話になりがちだねー。この先の試合もお楽しみにー♪」


宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。


サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ