世界一を狙う強豪達
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
日本とスペイン、その時差は8時間と日本の方が進んでいる。
海外の気候や時差と国によって違う環境、コンディションを調えると共に慣れなければならない。
なので日本のように早めにスペインへ来て、対応しようとする国は珍しくなかった。
ちなみに開催国スペイン以外で一番早く来た国はフランス。参加国の中で最も近い国という事もあって、一番乗りで大会に向けて調整へと入っている。
「おい、来たぞ!急げ!」
日本がスペインにやって来てから1日が経過し、スペインの時間で夕方近くの時間帯に空港のマスコミ達が騒ぐ。
今大会最も注目の存在。このUー20ワールドカップは彼の大会になるだろうと、既に言われ続けている優勝候補の国。
イタリア代表がこの日スペインに到着した。
この年代で多くの選手が既にプロとして活躍、中でも特に注目を浴びる存在が居る。
異次元の魔術師サルバトーレ・ディーンがスペイン空港に現れれば、焚かれていたフラッシュの数はより多くなっていた。
スペインでも彼のファンは多く、此処に現れると何処からか聞きつけて大勢の人々の姿がある。
「凄い騒ぎだよな、やっぱ優勝候補筆頭ってだけじゃなくディーンみたいなスターが居るせいか」
宿泊するホテルのテレビで、イタリアが空港に登場の映像が生中継で流れている。それを数人の男達が見ていた。
「フン……優勝候補筆頭、か」
その中の1人が鼻で笑う。
「今に言ってろ、ハッキリ分かるさ。どの国が一番強く誰が最強なのかがな」
笑みを見せる中で鋭く画面を睨みつける、褐色肌でドレッドヘアの男。
イタリアと同じく、今大会優勝でサッカー王国復活を狙うブラジル代表。ブラジルの天才プレーヤーと言われるロイド・ファルグ。
天才は天才の首を静かに狙う。
開催国のスペイン。地元の期待が大きく決戦の地カンプノウのピッチには絶対スペインが立つべきだと、熱狂的なサポーター達がインタビューで熱弁する程だ。
彼らは慣れ親しんだスペインの地で全体練習。取材陣NGと、練習に集中出来る環境を作っていた。
「パスが遅い!もっと速くだ!」
自慢のショートパスによる繋ぎを見て、一般人からすれば充分速いと思えたスピードも監督からすれば、駄目だと声を上げる。
「そんな程度じゃイタリアのカテナチオは破れんぞ!」
スペインを差し置いて優勝候補筆頭と言われるイタリアを強く意識し、彼らには負けられないと強くライバル視していた。
「ピリピリしてんな、監督」
「よっぽどイタリアの高評価に腹立ってるとか?」
練習の最中、パスを出しながらも普通に会話を交わす選手達。
スピーディーなパスワークを見せながらも話す余裕が彼らにはあった。
「ディーンの活躍がやっぱデカいよな、あいつ入ってから急激にイタリア強くなっちまったし」
「ホント、異次元の活躍だよな。バロンドールもう取るだろあれは」
「けど、今回は優勝渡す気は無いだろ?」
「当たり前、此処俺達のホームだし。負けないさ」
2人を中心に展開される華麗なパスサッカー。先程よりも速くショートパスは繋がれてゴールへと運び、ゴールネットを揺らしてみせた。
共に茶髪の短髪、身長と体重も全く同じ。揃ってスペイン代表となって攻撃の要を担うラウド・ブレッド、ダナム・ブレッド。
双子のブレッド兄弟は母国の誇り。スペインの優勝へと向けて静かに、内なる闘志を燃やす。
「んぐ、もぐ……スペインのトルティージャ美味いなぁ」
一足先にスペインへと入っていたアメリカ代表。宿泊ホテルでトレーニング後の食事を摂ると、チーム1どころか大会1の巨漢として注目されるデイブは、たっぷりのジャガイモ入りのスペイン風オムレツを美味しく味わう。
よく食べるアメリカ代表の中でもデイブの食事量はずば抜けており、2m10cmの巨体を誇る見た目通りの食べっぷりだ。
「デイブ、食いすぎて横に広がって動けなくなるのは無しだからな?」
「縦に伸びるなら良いぞ、バスケの連中超えるぐらいに大きくなっとけ」
「そこまで大きくなったら俺の着られる服がまた狭まるよ。これでも抑えてる方なんだ」
ジョークも飛びつつチームメイトと談笑するデイブ。
そこにスマホの振動が伝わり、デイブが画面を見るとメッセージが入っていた。
フランスの大会後に交際しているアメリカの彼女、ナターシャからのメッセージ。これから大会に挑むデイブへとエールを送り、最後に愛してると添えたものだ。
これにデイブは「俺も愛してるよナターシャ」とすぐにメッセージを返す。
フランスの時は同じDFの弥一、エースの照皇と日本の天才2人にやられてしまったが今回はそのリベンジも果たし、アメリカを優勝へと導く。
それがアメリカに居る彼女へとデイブが誓った事。巨神はその力を蓄え続けていた。
「なあ、折角スペイン来たから世界遺産見に行ったりとかしたら駄目かな?」
「フランスの時以上に許されるか、今回ワールドカップだぞ」
宿泊客ホテルにて暇を潰そうと、スマホを弄るアドルフ。壁にかかったダーツの的に矢を投げるルイ。
「予選の時の事、忘れた訳じゃないだろ」
「……忘れる訳ねぇだろうが」
無事に予選を突破し、本戦へと出場出来たベルギーだが、その前に忘れられない一戦があった。
その事をアドルフ、ルイの2人の頭に今も鮮明に記憶として残っている。
ディーン率いるイタリア代表との試合。ベルギーもアドルフやルイだけでなく、アキレス、ドンメルとベストメンバーを揃えて臨んでいた。
結果は5ー0の惨敗。
ディーン達の攻撃に対してアキレス達やドンメルで止まらず、反撃しようにもルイの決定的なパスをイタリアの守備が許さなかった。
アドルフは数少ないチャンスを物にする事が出来ずに、カテナチオの前に屈してしまう。
「あんな屈辱二度とゴメンだ……!」
何も出来ず完敗。サッカーを始めてから味わった事の無い、惨めな敗北を喫してしまったルイ。思い出すだけで悔しさが煮えくり返る。
投げられたダーツの矢は狙いが狂って、真ん中から程遠い位置へと突き刺さっていた。
「ああ……負けねぇよ今回は」
そう言いながらスマホを弄るアドルフ。彼の目は獲物をねらう獣の目となっている。
弥一、ディーンとかつてのチームメイト達に負けてしまった。
今回はその借りを纏めて返す。彼も今大会に並々ならぬ意欲で臨む。
「うわっ!?」
日本が宿泊するホテルの近辺にある練習グラウンド。そこで各自が練習する中で五郎が弥一の放ったシュートに対して飛びつくも取れず、ゴールネットが揺れていた。
「ちゃんと何時でも来ると思って構えなきゃー、世界はそんな礼儀正しくやってくれないよー?」
「は、はい!」
選手権や総体で幾多の好セーブ連発で大門と高校サッカー界1、2を争う名手だが、妙なタイミングで蹴って来た弥一のFKに対応しきれなかった。
「あいつ、立見でもああいうのやっているのか?」
「1年の時からやってますね、意地悪なタイミングでどんどん蹴って来たもんですよ」
藤堂と大門。同じGK同士が会話する中で、大門は振り返ってみれば当初からあんなキック蹴ってたなぁと思い出す。
厳しいコースだけではない。キックを行うタイミングを色々ずらしたりして、GKの隙を突く。
そんな弥一のシュートを受けて来て、大門のシュートストップ能力は向上していた。あの練習が無ければ、選手権で照皇のシュートや牙裏とのPK戦でのセーブは無かったかもしれない。
「もう1本ー!」
叫びながら右足でゴールへと向けてシュートを放つ弥一。
各国の強豪が続々と優勝を狙いに集う中、彼も狙っている物は当然優勝。
弥一や日本は初戦に向けて調整を進めていた。
まずは初戦のドミニカ戦で勝利する事、それがUー20ワールドカップで日本が最初にするべきミッションだ。
やがてUー20サッカー世界一を決める大会開幕の時を迎える。
成海「良いなぁ、あいつらワールドカップ行けて」
豪山「年齢オーバーだからこっちは五輪の方目指すっきゃねぇよな、選ばれるの滅茶苦茶厳しいけど」
鳥羽「あー、真田選ばれなかったかぁ」
峰山「DFの枠は優秀なの揃ってるからな」
岡田「負けてすぐ帰って来るの無しだぞ日本ー!」
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