決戦の地に到着して息抜き
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
日本を経って飛行機でスペインを目指し約20時間。長い時間をかけて空の旅を続けたUー20日本代表は、ようやくマドリードの空港へと降り立つ。
歴史や文化が息づく魅力的な都市、それがスペインの首都マドリード。
世界各国から多くの観光客が訪れるが、Uー20ワールドカップがスペインで開催されるとなって、出場国のサポーター達が数多く来ている。
サポーター同士で肩を組んで陽気に歌ったり、取材で自分達の国が勝つと熱のこもった言葉で答えたりと、開幕前から此処スペインは早くもサッカーによる熱気が増していた。
Uー20だがワールドカップというものは人々を熱狂させ、惹きつけるのだろう
更に今年は例年よりも規模が大きくなっている。何しろ決勝戦があのカンプノウで行われるという事なので、それもあって各国のサッカーファンが此処まで盛り上がっているのかもしれない。
「ひっさびさや〜、このスペインの空気懐かしいわぁー」
空港を出た日本一行、その1人である想真にとっては久しぶりとなるスペイン。
感じる風と空気に懐かしく思えていた。
「ああー、そういえば想真ってスペインで留学してたんだよね?」
「せや、俺にとっては慣れ親しんだ土地。第二の故郷や」
弥一は初めて最神と立見で合宿した時の事を思い出す。想真について彼はスペインに3年ぐらい居たと聞いた覚えがある。
「思い出に浸るのそれくらいにしとけー、移動するぞー」
早く来いと佐助が弥一と想真へ声をかけ、共に代表に用意された専用の移動バスへと乗り込む。
フランス遠征の時と同じように普段日本で見る景色とは違う、海外の風景が窓から見えていた。
「あの銀河系軍団とかバスから何時もこういう景色を見てたんだろうなぁ」
マドリードの景色を飽きる事なく眺められる番。王宮を思わせる建物があったりと、伝統や風格が遠くから見ていて感じられた。
まるで日本から異世界へと来た気分を味わえる。
「パリも凄かったけど、此処マドリードも世界遺産が4つあるからな」
「4つ?サグラダ・ファミリアぐらいしか分かんないよー」
「それはバルセロナですね」
優也がパリを思い出し、スペインも世界遺産が多くあると話せば弥一は1つぐらいしか把握しておらず。五郎は場所違いである事を指摘。
「えー、パエリアとかトルティージャにパタタス・ブラバスやハモン・セラーノとスペインのグルメなら分かるけどなぁー」
「パエリアとかは分かりますけど、後半なんかさっぱり分かりません……」
世界遺産よりも弥一はスペインで食べられる、美味しいグルメの方を流石と言うべきか、しっかりと把握していた。
ちなみにトルティージャはスペイン風オムレツ、パタタス・ブラバスはスパイシーなポテト、ハモン・セラーノはスペイン式の生ハムだ。
「あいつらまたフランスの時のような観光でもするつもりか。大事なワールドカップだというのに……」
スペインの世界遺産やグルメについて、話が盛り上がるのを聞いていた照皇。腕を組んだまま難しい顔を浮かべている。
弥一達のグループは遊ぶつもりなのかというぐらいに、スペインの人気スポット、観光のオススメ場所で会話に花を咲かせていく。
これは良くない、照皇はサッカーの神聖な大舞台で彼らの姿勢は駄目だと感じた。
日本チームを乗せたバスは、大会の間に拠点となる宿泊施設のホテルへ到着。ドーハのホテルも立派だったが建物の外観からして、豪華な気配は伝わって来る。
中へ入れば期待を裏切らない豪華絢爛さ、富裕層や王族が使用してもおかしくない程に良いホテルだ。
各自部屋に向かうと1人1人が個室。広々とした部屋で不自由なく過ごす事が出来るだろう。
「見た見たー?ダーツとかビリヤード台あったよー、ご飯食べた後に遊ばないー?」
「おお、良いねぇ」
何時の間にかホテルを探検して回っていた弥一。皆で遊べそうなダーツとビリヤードを発見して、皆を遊びへと誘えば光明や冬夜と乗ってくる者が続出。
「おい、神明寺。これは大事なワールドカップだぞ?遊び呆けるな、しっかり練習してチーム力を高めた方が……」
きっかけとなっている弥一へと照皇は注意。遊ばず大会に集中して己を高めるのに専念するべきだと。
「20時間かけて日本から移動したばかりなのに、そんな頻繁に練習練習は無理ですよー、まずは遊んで休んで英気を養う方が効率良いでしょ?」
弥一は照皇の方針に反対。着いて早々無理に練習するべきじゃないと、休む方を選ぶ。
「別に今日今すぐ練習しようという訳じゃない。ただ大会前に遊び気分ばかりでは駄目だと言ってるんだ」
「スペインに遊びや観光で来たつもりは無いですって、勿論優勝は狙ってますからー」
真面目な照皇からすれば重要な大会で、そんな気分のまま臨むべきではないと考えている。
弥一の方も遊び気分のつもりはなく、日本の優勝を本気で狙っている事に嘘偽り無かった。
「あ、照さんも今日練習せず休みならダーツやビリヤードいっしょにやりませんー?」
「いや、俺は……」
「照皇先輩、これからプロになるんですからプロの先輩達との付き合いの為にもお洒落な遊びは1つ覚えた方が良いですって」
弥一からの誘いを断わろうとしていた照皇。そこに月城が先輩達との交流を深める練習と思って、やった方が良いと勧めて来る。
「ダーツとビリヤード、集中力がどっちも必要とするから遊びと同時に良い練習にもなるんじゃないか?やってみれば案外奥深いぞ」
遊びに賛成派の光明も照皇に遊びを勧めて、2つの良さを説明。
「むう……そこまで言うのであれば少し付き合おう」
結局弥一達に押される形で照皇も共に息抜きの遊びへと参戦。夕飯を済ませて皆でダーツやビリヤードを楽しむ事となった。
「うおー!五郎ど真ん中!」
「流石投げるの得意なGKだなぁ」
ダーツの真中にある赤い的へと五郎が見事命中させ、周囲が盛り上がる。
「あはは、何か僕結構こういうの上手いみたいです」
サッカーのGK以外で才能を五郎は開花させていた。
「む……!?」
ビリヤードで使われる棒。通称キューと呼ばれる長さ150cm弱の棒を持って、ボールに向かって突こうとしていた照皇。
当然ながらビリヤードの競技は知っているが、やった事は無い。初挑戦の照皇は思うようにボールを動かせなかった。
「照さん、皆そうだからー。僕もそんな感じだったしー」
大丈夫と弥一が声をかけると自分の出番が回り、キューを弥一が構えると鮮やかにショットを決めて、狙い通りポケットと呼ばれる穴へとボールを落としていく。
「そう来るか、やるねぇ」
次の白羽も慣れた感じでキューを構え、ショットを決めて弥一に負けていなかった。
「……」
こうなると自分だけこのザマなのは悔しい。照皇はなんとしてもまともにショットを決めてやろうと、何時の間にか熱中するようになる。
チーム全体でスペイン初日はダーツやビリヤードで遊び、まずは体を休める所から初めていた。
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