最大の大会に向けて動き出す
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
Uー20ワールドカップ 出場国
ヨーロッパ 開催国スペイン
イタリア、ベルギー、ドイツ、フランス、オランダ
南米
ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ
アフリカ
カメルーン、ナイジェリア、セネガル、コートジボワール
北中米
アメリカ、メキシコ、ドミニカ、ホンジュラス
オセアニア
ニュージーランド、フィジー
アジア
日本、オーストラリア、韓国、サウジアラビア
各国の予選は既に終わり、本戦へと出場する国は出揃った。
その組み合わせ抽選も行われてグループは決定する。
「グループBでオランダ、カメルーン、ドミニカ……一戦目がドミニカのようですね」
Uー20日本代表のコーチ陣やスタッフ陣が集まっており、監督のマッテオはその中心に居た。
「この中でもカメルーンが難敵か。アフリカ予選首位通過で乗っていてエースのレイモン・ボンバが得点王に輝いているしな」
「身体能力と組織力を+した守備も手強いですよ」
グループリーグの中で要注意なのはカメルーンとスタッフ達は見ている。チームのエースFWボンバは188cmの長身に加えて、高いダッシュ力を誇りシュートも正確無比にして強力。
今大会注目ストライカーの1人として紹介されている程だ。
「カメルーンは厄介だけど、当たるのは3戦目……出来る事ならその前にドミニカ、オランダで勝ち点を稼いでおきたい所だな」
「まずは目の前のドミニカですね。しかし此処は男女共にサッカーの調子が良い……野球のイメージ凄く強かったんですが」
カメルーンの前にまずは2戦で勝ち点を積み上げようと、ドミニカについて各自が調べる。
「ふむ、やはり全員アメリカ並に体格良いのが揃ってますね。ぶつかり合いに関しては厳しそうだ」
マッテオがドミニカの選手達の資料を見れば、どの選手も長身で体格良いのが揃っている。この平均身長の高さはアメリカやオーストラリアを思わせた。
違いに関して言えばアメリカのデイブ、オーストラリアのレヴィンとずば抜けた者が不在という事だ。
それでも勝ち上がって本大会出場を決めている辺り、粘り強さが感じられる。侮れない相手だろう。
「後は2戦目のオランダ。トータルフットボールは驚異だが……全盛期程じゃないし決して勝てない相手ではないはず」
「親善試合でもアメリカに負けたりと不調ですからね。前評判でもそんな高くはありませんし」
ヨーロッパの強豪国でトータルフットボールによって、時代を築き上げたオランダ。だが近年では国際試合で負けを重ねており、今回の予選ではプレーオフをなんとか制して土壇場で出場を決めていた。
「いやいや、プレーオフでの土壇場の底力は凄かったぞ。それにあれから月日が結構経ってるんだ。そのままで来る訳が無い」
「同感です、むしろ……私はカメルーンよりオランダの方が厄介と見ています」
「え?」
スタッフ達の話し合いにマッテオが加わると、好調のカメルーンよりも不調のオランダの方が厄介という発言に、会議が行われている室内は一瞬ざわつく。
「とにかくまずは一戦目、ドミニカに勝つ事を第一に考えましょう」
マッテオの言葉に皆が頷くと再びドミニカについて調べ、話し合いが行われる。
「(オランダの予選は私も見たが、彼が出ていなかった。上の世代に引き抜かれたかそれとも……どちらにしても彼が出て来たら、オランダは一番の難敵となってくるかもしれない)」
頭の中に思い浮かぶ1人の選手、それはオランダ人でマッテオの教え子。
最強ミラン、ジョヴァニッシミを支えた1人だ。
「ふ〜、やっぱ此処のパスタは最高だったな」
イタリアのカフェにて、1人の黒髪少年が店自慢のカルボナーラを平らげて満足そうに笑う。
「当然だ、俺オススメの場所だからな」
対面の席に座る金髪の少年は、食後のエスプレッソを香りと共に味わっていた。
この席に座る2人は共に有名人。1人はイタリアが生んだサッカー界の若きスーパースター、ミランで活躍するディーン。
向かって座っているのが、そのチームメイトであるオランダ人のフランツ・グレンメル。ディーンと同じ18歳の若手プレーヤーだ。
170cmにも届かずプロとしては細く、顔立ちも幼い方だがれっきとしたミランの一員。
「しかしまあ、急な開催国の変更があったりお前が参戦したり各国の大きなスポンサーが名乗り出たりして……何か今回のUー20、凄いことになってるよな?」
「そうだな、挙句の果てには決勝戦はカンプノウでやると来る」
最初は開催国が別の国だったが、様々な事情が重なり開催困難となってしまい、急遽手を上げたのがスペイン。
その国が誇る世界最大規模のスタジアムで、Uー20ワールドカップ決勝戦が行われる事が決定したニュースは、世界のサッカー関係者が驚いた程だ。
各国のスポンサーによる力添えも加わり、例年のUー20で最大規模の大会になると言われている。
「やるからにはそりゃあ決勝戦のでっかい舞台でサッカーやって世界一を取りたいさ、決勝戦……オランダとイタリアでやれるといいな?」
「今から決勝戦なんて余裕だな。グループの組み合わせ見なかったのか?」
「見たよ、カメルーンとドミニカと日本だろ?」
今からオランダとイタリアの決勝を思い浮かべ、楽しげな笑みを見せるグレンメルにディーンはエスプレッソのカップを置いて、軽く息をつく。
「ああ、お前は弥一を高く買ってるんだったよな。練習でガチに張り合ったりしてたし、ディーンとしては戦いたいだろ?日本と」
「……」
何も言わないディーンにグレンメルは席を立つと、財布から互いの食事代を置いた。
「言っとくけどさディーン、俺はオランダ代表として全員に負ける気は無いからな。弥一も、お前も皆食ってやるよ」
グレンメルの目はもうミランのチームメイトとしての目ではない、1人のライバルとして見ている事はディーンに伝わっていた。
「グレン……時間、いいのか?」
「え?あ、ヤバい!何で言ってくれないんだよー!」
「気分良さそうに宣言していたから邪魔したら悪いと思った」
「そんなんいいよー!とりあえず此処俺の奢り!Ciaoー!」
ディーンに時間を聞かれると、グレンメルの顔はサーっと青くなってきた。
慌ただしく店を出て行き、彼はオランダへと一時帰国する。
彼が店を出た後、ディーンはスマホでイタリアの組み合わせ抽選の結果を確認。イタリアはグループAだ。
同じ組にコートジボワール、オーストラリア、アルゼンチン
楽ではない強豪達が出揃い難しいグループとなっている。
だがディーンもイタリア代表として負ける気は全く無い。国を背負うからには負けられないからだ。
そして勝ち進めば当たるかもしれない。ディーンがスマホを操作すれば、日本の高校サッカーが行なわれている動画が流れる。
立見と牙裏の総体決勝戦。牙裏の正二が果敢に右サイドからドリブルで仕掛けに行くが、彼のドリブルコースに先回りしていた弥一がボールをカット。
そこからカウンターが発動し、弥一から明へと渡れば明が個人技で一気に中央突破。
素早いターンで体を入れ替えたりキックフェイントで翻弄したりと、相手守備陣を翻弄する。
左へと右足のスルーパスを出せば、DFの裏へと抜け出した玲音が追いつき、左足でワントラップしてから右足でシュート。
エリア内斜め左から狙った右足シュートは牙裏ゴールの右上へと飛ぶが、これにゴールマウスを守る五郎は、左腕を目一杯伸ばして飛ぶとボールに触れて弾く。
決まってもおかしくないシュートを見事スーパーセーブだ。
だがこれに詰めていた双子の兄弟詩音。牙裏DFより先に右足を振り抜き、トゥーキック気味のシュートがゴールへと向かう。
此処までファインセーブ連発で健闘していた五郎も防いだ直後、飛んできたシュートは止められず、牙裏のゴールネットにボールは吸い込まれていった。
ようやく決まった1点に喜び爆発の立見。その中に弥一も居て共に喜ぶ。
牙裏を1ー0で下し立見が総体2連覇を果たし、更に前回に引き続きまたしても全試合無失点の制覇だ。
「後……1ヶ月か」
ディーンがそう呟くと、弥一の優勝インタビューを待たずに動画の視聴を止めてカフェを後にする。
弥一「総体予選も色々あったよねー」
摩央「支部予選で前川の曲者GK岡田さんと戦ったり、その先の真島の鳥羽さんや峰山さん、桜王の冬夜達東京のトップ勢との激闘……もう昔に思えちまう」
大門「強い人が沢山居たよなぁ、東京予選。特に鳥羽さんのFKは凄かった」
弥一「うん、その鳥羽さんのFKを止めた自分はもっと凄いと言いたいんだね大門♪」
大門「そんなつもりないって!あれホントギリギリだったし!」
優也「あそこで冬夜と再会するどころか同じ代表で戦う、あんな事は入部した時点じゃ全く想像してなかった」
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