強くなり過ぎた高校最強軍団
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
ヨーロッパ、フランスの地にてフランス2部リーグの試合が行われている。
2部とはいえ海外のプロ。強靭なフィジカルを持って相手へとぶつかって行く。
それを一回り程細い日本人選手が華麗なターンを決めて、ドリブルで躱す姿は観客を魅了する。
「マモルー!行け行けー!」
声援に後押しされるように白羽が右サイドを突破し、ゴール前の味方へ右足でクロス。DFはそれを読んで前へ立ち塞がり、クロスボールを阻止に行く。
しかしこれはフェイク。
蹴ると見せかけてDFの横をすり抜け、エリア内へと侵入。キックフェイントで見事に相手を引っかけていた。
ゴール前のDFはFWの動きに意識が向いて、白羽への対応に遅れてしまう。素早くリカバリーしようと向かうが、白羽は一瞬出来た隙を見逃すお人好しではない。
右の角度が厳しい位置から、GKが寄ってきた所に右足を振り抜きシュート。
ボールはGKの左肩を掠めながらも向かい、ゴールネットは揺らされた。
瞬間、白羽は観客からの喝采を浴びると、受け止めるように両腕を広げる。
「(アジア予選で国内組があんな活躍してくれたんだ。海外組としてうかうかしちゃ駄目だよなぁ!)」
Uー20アジアカップで活躍した国内組。これに負けられないと白羽もフランスで躍動。
のんびりしていたら自分のポジションは無いと感じていた。
同じヨーロッパでこちらはオランダ、フィールドで選手達がぶつかり合い、互角の試合展開となっている。
「中央6フリー!」
両チーム含めて唯一の日本人がゴールマウスを守り、中央の混戦を利用して上がって来る選手を見つければ、藤堂が大きく声を上げて伝えていた。
アジアカップではDF陣の活躍もあって、そこまでシュートは飛んで来なかったのでGKの出番は少な目だったが、本戦では遅かれ早かれ出番が必ずやって来る。
日本が失点0でアジアを制してもそれで有頂天にならず、代表キャプテンとして気を引き締めて、今より更に上へと行かなければならない。
藤堂は目の前の攻撃を鋭く見据え、絶えずにコーチングを続ける。
以前よりも声掛けの回数が多くなった所は、小さなDFの影響を受けているのかもしれない。
飛んできた遠距離からのコースを突いたシュートに、藤堂の足が強く地を蹴った。
ゴール左上を捉えたシュートを両手で掴み取れば「マサカツー!」とサポーターから声援が飛ぶ。
「攻めろ!カウンター!!」
藤堂の蹴られたボールは空高く上がり、オランダの上空を舞う。
「へえー、高校サッカーこんな感じか……総体の日程えっぐ」
日本から家族と共に旅立ち、ブラジルへと来て現地のサッカーと触れ合い続けてきた光明。
彼は所属チームの練習中、それが終わった後にスマホで高校サッカーについて調べている。
代表に選ばれる前は全く知る事なく、彼らの事も知らないまま合流していたが、そのサッカーについて触れるようになっていた。
「それ日本の高校サッカーだろ?コウメイも見てたんだな」
「え、日本の見てたの?」
光明がスマホで、高校サッカーの試合を見ている事にチームメイトの1人が気付き、声をかけて来た。
「そりゃそうさ。世界が震撼した伝説のカウンターシュートが生まれてるんだ。コウメイ、日本はいつの間にこんなあり得ない事出来るようになったんだ?」
「俺に聞かれても知らないって」
日本から遠く離れた地、サッカー王国ブラジルにも彼の伝説は届いていた。
「(日本ていうか、こいつが規格外なんだろうけどな。あんな事……なんで出来るんだ?)」
Uー20アジアカップ決勝、オーストラリア戦で見せた弥一のプレー。光明の中で鮮明に残っている。
どんなに練習を積み重ねても、自分が絶好調の状態でも相手のキックを蹴り返して、ゴールを狙うなど不可能に近い神業だ。
弥一に、高校サッカーに興味を持ち始めた光明はそのサッカーを見ていく。
「左左!速いパス来るぞ!」
日本の東京都内にあるスタジアムにて、熱戦が行われている。東京の総体予選は決勝を迎え、立見と桜王が東京の頂点を争う。
元々は都内最強を誇った桜王。新キャプテンとなった冬夜がチームを引っ張り、此処まで勝ち上がった。
その桜王に対してボールを支配する立見。桜王の左サイドに居る冬夜を徹底的に避けて、執拗なまでに逆サイドから仕掛けて行く。
「うぉわ!?」
左サイドの玲音にボールが渡り、体格で勝る相手が体で止めようとショルダーチャージを仕掛けるが、ぶつかったと思ったらスルッと抜け出されて、左を玲音が突破。
「(クロスか!)」
冬夜は玲音が左からのクロスを得意としている事を把握。それを双子の兄弟詩音が合わせる得意パターンであるのも知っている。
長身の半蔵には長身DFがきっちりマーク。それならと冬夜はマークに走る。
「!」
冬夜が向かって走ったのは桜王ゴール前、ペナルティエリアの外側に居る明を狙った。
自分を徹底的に避けてるなら近い場所に居るであろう、詩音を狙って来る事は考え難い。
玲音から出た左足のクロスはゴール前から少し離れた位置、中央の明を狙ったボール。
冬夜の読み通りかと思われた時、明と冬夜の前でボールは途中で飛び出して来た誰かによってカットされる。
「(弥一!?上がって来てたのかよ!)」
「(あんま守備に専念してる理由が今無いからねー!)」
明へのパスを途中でインターセプトしたのは味方である弥一。冬夜の心を読んで彼がこれを狙っていると知って、飛び込んで行ったのだ。
「(撃たせたら不味い!)」
桜王のDFは弥一が撃ってくると彼に迫って走るが、弥一は撃たずに左足でゴール前へとパスを出した。
ゴール前を固める桜王守備陣の隙間を射抜く、正確無比なキラーパスが通り、ボールを受け取った詩音が前を向いて右足を振り抜きシュート。
ゴールネットが揺れた瞬間スタンドから歓声が湧き起こる。
『此処まで粘っていた桜王から立見、2点目となるゴール!氷神玲音の個人技から神明寺、そのラストパスを受けて氷神詩音と流れるような連携で得点しました!』
「途中でパスを取られた時はビックリしましたよー!」
追加点を喜び合う弥一と氷神兄弟。玲音は弥一へとパスを出した訳ではなかった。
本当に明を狙ったボールだったのだが、弥一に取られてこれには「え?」となってしまう。
「ゴメンー、攻撃参加に走ってたら良いボール来たから取っちゃった♪」
「追加点になったから良いですよねー!極上のパスありがとうございます♪」
本当は心を読んで分かった事だが、弥一は誤魔化して追加点を氷神兄弟と共に喜びに浸る。
立見はその後も攻守で主導権を握り、桜王の反撃を川田や立浪を中心とした守備陣が奮闘。
桜王の反撃をロングシュート1本に抑え、このシュートも大門が止めていた。
攻撃では前半に半蔵、詩音が1点ずつ決めて後半から入った優也も混戦の中でゴールを記録。
「(2年前ぐらいまでは接戦だったのに……)」
試合終了の笛が吹かれ、6月の青空を見上げたまま冬夜は天を仰ぐ。
此処まで来たら悔しさを通り越して、笑えてしまうのが自分でも不思議だと思った。
「(強くなり過ぎだろうが立見ぃ!!)」
心の中で叫ぶ冬夜。流石に二桁得点は許さなかったが、それでもこの決勝は差をつけられていた。
総体予選、立見は鬼神の如く強さと勢いで勝ち抜き東京を今年も制覇する。
立見6ー0桜王
石田1
詩音1
緑山1
歳児1
神代1
二階堂1
弥一「3年の高校生活、色々あったねぇー」
摩央「まだ3年生はこれからだけどな、気が早いから」
弥一「優也と1年達で組んで先輩相手に無双したり間宮先輩達率いるチームと紅白戦でやり合ったりとかねー」
優也「あったな、成海先輩や豪山先輩とは決着つかなかったけど」
大門「うーん、歳を重ねると過去を振り返る事が多くなるって聞くけど本当っぽいなぁ」
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