最後の抵抗、一撃必殺のカウンター
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
『ご、ゴォォーール!!なんという事だ!?神明寺弥一、レヴィンの強烈なロングキックを撃ち返した!オーストラリアも一度はアルベルのスーパーセーブで止めたが照皇渾身のダイビングヘッドで突っ込み、今大会無失点のゴールマウスをついにこじ開けたぁー!!』
『何であんな事が可能なんですか神明寺君!?信じられません!それに反応して飛び込んだ照皇君にも驚かされますが……!』
カタール、ドーハのスタジアムのボルテージはMAXにまで、到達しようとしている。
それ程衝撃を受けたプレーを弥一はやってのけたのだ。
ゴールを決めた照皇へと弥一や想真が真っ先に駆け付け、抱きついてくれば他の日本選手も続き、アジアの頂点に近づく値千金の先制点で皆が喜びに湧いていた。
「外れて駄目かと思ったー!照さんよく詰めてくれたよー♪」
照皇の背に飛び乗る形で後ろから抱きついていた弥一。レヴィンのクリアボールをゴールへ飛ばしたがアルベルに止められ、決まらないと思ったが照皇が反応して動いてくれたおかげで、貴重なゴールが生まれたのだ。
「お前がオーストラリアのゴールに近づいた時、その姿が見えて何となくあの時と同じ事をするんじゃないかと思った。本当にやってきたのは驚いたがな」
「良い勘してますねー♪」
かつて立見と八重葉の選手権決勝で初めて撃った、弥一のカウンターシュート。それを直に見ていた照皇は上がっていた弥一の姿を見て思った。
彼の思った通り、あの時と同じプレーか飛び出す。その想定が出来たからこそ動けたのだろう。
日本の天才2人によるスーパーゴールだ。
「くそ!何でグラウンダーの方で蹴っちまったんだ……!高く上げていればあんな事には!」
チームの初失点、決勝で日本にリードを奪われた事に悔しさを見せるレヴィン。
自ら蹴ったクリアの蹴り方を強く後悔していた。
「すぐキックオフだ!時間が無い!」
「いや、けど日本が結構長い時間喜んでて再開が……!」
「ああくそ!」
ボールをセンターサークルへと運び、オーストラリアはすぐに試合再開しようとするも、日本がまだゴールに喜びっぱなしだ。
「時間無いからギリギリまで喜んで引き伸ばそう」
「俺ら悪い奴やなぁ〜」
光明と想真が注意されるギリギリまで喜んで時間を引き伸ばそうと企み、喜びに浸り続けていた日本。
弥一が主審の心を読むと、そろそろ来るタイミングを掴み「はい戻ろうー!」と皆にポジションて行くよう促した。
オーストラリアの選手達は早く試合を始めたい時に時間稼ぎをされ、焦りが出て来る。
日本がポジションにつけばすぐにキックオフで試合再開。時間も無いのでシンプルに繋ぎ、パワープレーで強引に前へ突き進もうとしていた。
「(パワーで負けるかよ!)」
海外にも負けない強靭なフィジカルの番。強く体をぶつけてオーストラリアの猛攻を阻止。
強い当たりに向こうはボールキープしきれず、こぼれ球になると光明が拾ってクリア。
前がかりになっていたDFラインの後ろに落ちた、かと思えば前に飛び出して来たGKのアルベルが胸でトラップし、レヴィンへとすぐに足でボールを送った。
オーストラリアはまだ諦めていない。
「(時間が無い、もう守備はいい!)」
捨て身にならなければ日本から点は取れない。勝てないと悟ったレヴィンは中盤へとボールを託した後、自らも前線を目指して走る。
悪魔の右足を日本ゴールに叩き込む為に。
「(レヴィン!行かせるかい……うぶっ!?)」
想真がレヴィンの上がって来る姿に気付き、左からマークに行くがレヴィンの長く太い左腕に阻まれて近づけない。
おまけに腕が想真の顔面に当たってしまうアクシデントが起こり、足が止まっていた。
『オーストラリア、右のケリーに渡り、レヴィン上がって来ている!悪魔の右足を狙っているぞー!!』
上がって来た右のケリーへ繋ぐと、レヴィンの姿がゴール前に居るのが見える。マークに向かった想真は足が止まって追えない。
チャンスと見てレヴィンの右足、その足元へと向けてパスを出した。
これをレヴィンはトラップせずシュートに行く構え、寄せられる前に右足のダイレクトシュートを撃つつもりだ。
狙いは藤堂の守るゴール右上隅。
「此処までだよ、悪魔くん♪」
「!?」
レヴィンのシュートの前にパスをカットする存在があった。
シュートブロックや寄せて密着をする必要は無い、レヴィンに来るパスを取れば良いだけの事。
そんな事を可能にするのは、パスを出したケリーの心を読んだ弥一しかいなかった。
更にそれだけでは終わらず、弥一は取って前を向くとオーストラリアが守備へと、意識が変わるより先に左足でボールを蹴って飛ばす。
相手のみならず、日本の選手達の間を速いスピードで球が突破する。あっという間に混戦を抜け出してオーストラリア陣内に飛べば、ボールは落ちて右サイドに転がる。
「(やっぱり飛んで来たか!)」
誰も予測していなかった弥一のインターセプトからのパス。ただ1人だけ優也が来ると思って、オーストラリアのDFライン裏を抜け出して疾走。
立見や代表で弥一と共に試合を重ね、間近で彼を見てきた優也だけが予測していた。
走って戻りなからフューザーが手を上げて、オフサイドだとアピールするが線審の旗が上がる様子は無い。
「アルベル!!」
ゴールへと戻りながらレヴィンが叫ぶ。
ボールを取ってオーストラリアゴールへと優也は走る。レヴィンは上がっていて不在で目の前にはGKアルベルのみ。
2点目を許すものかと、アルベルが必死の形相を見せながら飛び出す。
この動きが見えていた優也。冷静に右足でボールを浮かせると、前に出て来たアルベルの頭上をふわりと越える弧を描くループ。
優也が得意とする右足のチップキックに、アルベルはバックジャンプ。右手を伸ばすも触る事が出来ず。
彼が地面に倒れた時にはボールが、オーストラリアのゴールマウスへと転がって入った後だった。
2点目となる日本のゴールが決まると、スタジアムは再び大歓声に包まれて優也へと弥一達が駆け寄る。
『ダメ押しー!!日本オーストラリアから2点目!神明寺の矢のような長いスルーパスから歳児が反応していた!立見の超コンビが世界でも躍動だ!!』
『さっきまでレヴィンが上がってて同点のピンチだったはずが、こんな切れ味鋭いカウンター見せられたらもう言葉ありませんよ!』
「お前よくふわっと蹴れたなぁ!豪快にズドンとあの状況は行きたくなるもんだろ!?」
「あんな前に出てたらそっちの方が確実だと思ったんだよ」
「憎いわぁ!クールボーイめぇ!!」
当たり前のようにさらりと言う優也に対して、室と想真が手荒く祝福。
「さっすがぁ、優也ならやってくれると思ったよ♪」
「お前も……あの混戦で流石と言っておく」
弥一が明るく笑えば、優也はその弥一と軽くタッチを交わす。今更多くは語らない。
立見で長く組んで来た2人の連携が可能としたゴール。アジアの頂点を決める一発だ。
オーストラリアはまさかのカウンターに呆然。負けを悟ったか誰もボールを取りに行こうとしない。
ベンチの監督も打つ手無しと頭を抱えるしか無かった。
弥一と優也による一撃必殺のカウンター。これによって決定的となる2点目を決められてしまったのだ。
そして試合終了の笛がドーハのスタジアムで吹かれる。
『Uー20アジアカップ、日本がオーストラリアを2ー0と完封勝利!全試合無失点の完勝でアジアを制しました!!』
『フランスに続いてまたやってくれましたね!これはUー20ワールドカップが楽しみですよ!』
日本の優勝に揺れるスタンド。日本選手達が歓喜の輪を作って、アジアチャンピオンに輝いた事で皆が盛り上がる。
ベンチのスタッフ達も優勝を成し遂げ、戦いが終わった事に握手したり抱き合ったりと喜びを分かち合っていた。
「(負けた……これが日本、これが弥一か……)」
日本勝利の横で負けたオーストラリアは項垂れており、本戦の出場を決めている分大きな絶望は無いが、負けた悔しさは当然あった。
レヴィンは自分達を倒した日本と弥一の姿を遠くから眺める。
DFとして個人でもチームでも負けているつもりは無かったが、今日の試合でどちらの実力が上なのかレヴィンは思い知らされた。
「(このままじゃ終わらない……Uー20ワールドカップで、リベンジだ……!)」
今よりもっと力をつけなければと、本大会でのリベンジを誓う。
それは準優勝の栄冠を受ける中でレヴィンのみならず、他のオーストラリア選手達も同じ思いだ。
日本の方は藤堂が代表してアジアカップ優勝のトロフィーを受け取り、両手で掲げ上げれば盛り上がりは最高潮。
今だけは勝利と優勝をとことん噛み締め、味わうのも良いだろう。
Uー20アジアカップ 優勝 Uー20日本代表
VSマレーシア 10ー0
VSベトナム 6ー0
VSヨルダン 2ー0
VSバーレーン 6ー0
VSイラク 2ー0
VSサウジアラビア 4ー0
VSオーストラリア 2ー0
得点32 失点0
大会得点王 キム・ユンジェイ
大会最優秀選手 神明寺弥一
弥一「あれ、僕がアジアMVP貰ってもいいのー?」
照皇「全試合フル出場の上に相手を抑えて自らゴールやアシストも決めている、むしろお前以外に誰がいるんだ」
狼騎「向こうがてめぇにやるって言ってんだから貰っとけや」
弥一「じゃ、遠慮なくいただきまーす♪」
大門「これで日本へ帰国か……2月だから、まだ寒いかな?」
弥一「凍えそうだなぁ、帰ったら暖かいラーメンとか食べようよー」
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