Uー20アジアカップ予選決勝トーナメント準々決勝 日本VSイラク
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
Uー20アジアカップ決勝トーナメントの準々決勝、これに勝てばベスト4進出。ワールドカップへの出場権を得られる大事な試合とあって、会場は満員の観客で埋まり、早くも盛り上がりを見せている。
日本でも注目の大一番で、イラク戦の勝敗予想が行われたり専門家によるイラクのエースFWアブドラを、こう止めた方が良いというのもあった。
そしてやはりドーハの悲劇については触れられ、その歴史を繰り返させないよう頑張れと、エールを送る者達。
今日戦う日本も悲劇の再現をするつもりは微塵も無い。彼らは此処に切符を取りに来ているのだ。
因縁の地ドーハで因縁の相手イラクとは試合前のアップで対面する。
「(動きは軽快、此処まで上手く消耗抑えて勝ち上がったんだな)」
光明がアップをするイラクの選手を観察すると、動きが重そうな選手はバーレーンの時と違って見当たらない。
特にエースであるアブドラの調子が良く、此処まで得点ランキング2位と好調なコンディションをキープしている。
「弥一、相手のエース調子良さそうだ」
そのアブドラをマークする事が決まっている弥一へ光明は報告。
「それは強そうだねー、骨が折れそうだぁ」
おどけた感じで弥一は答えていた。
普通に聞いてれば弱音を吐くような感じか、ふざけているように見える。
だが光明には弥一がリラックスしていて余裕そうに思えた。
「(40cmぐらい体格差のある相手でキツいと思うけどな、どう止める気だ……?)」
一体どう止める気なのか興味深い。光明は今日がベンチスタートで良かったと、密かにマッテオへと感謝する。
ヨルダン戦で兄弟2人をかき回した小柄なDFが今回何をしてくれるのかじっくり見られるのだから。
『この試合に勝った方がベスト4、Uー20ワールドカップを掴み取る為の最重要ゲームとなります今日の日本対イラク!因縁の地ドーハで因縁の相手イラクになんとしても勝ちたい!』
『イラクも今回好調ですからね、アブドラが得点ランキング2位と得点力が高く守備陣も僅か1失点で勝ち上がっています。今回は日本も骨が折れるかもしれませんよ』
日本とイラクが共にユニフォーム姿でフィールドへと姿を見せ、満員のスタンドからは大歓声。
いくつか日本コールの声もあり、日本サポーターもドーハの地へとわざわざ駆けつけてくれている。
両チームの国歌斉唱が終われば、互いのチームがすれ違いざまにタッチを交わす。
「(デカっ!?)」
その時に室が相手GKダルシンとタッチを交わすと、グローブ越しながら彼の手の大きさに驚く。
身長は室と同じか、それよりも少し低いぐらいだが手の大きさは室に勝っていた。
「なあ、向こうのGKの手デカくなかったか?」
「それ思ったわ、デカ!?て驚きそうになってもうた」
キャプテン同士によるコイントスの間、室はチームメイトに先程タッチがあった出来事について話す。
光輝もダルシンの手の大きさに驚いていたらしい。
向こうのキャプテンはダルシンが務め、こちらも藤堂がキャプテンなので今回はGK同士がキャプテンだ。
「ダルシンはあの通りの手足の長いリーチに加えて大きな掌を持ち、シュートストップが優れたGKだ。将来のアジアNo.1GKって声もあるそうだぞ」
ダルシンについて調べていたのか、春樹が彼の事を語っていく。
将来のアジア最優秀GKと、日本の本大会出場を阻む壁になってきそうだ。
アブドラがゴールを稼ぎダルシンを中心とした守備陣で守り切る。それがこのイラクのスタイルで、日本戦も変わらず実行してくるだろう。
「俺達が先攻だ」
コイントスから戻った藤堂。日本の先攻である事を伝えれば円陣を組む。
「イラクの守備はかなり堅い。攻撃陣は動いて向こうの守備を引っ掻き回して撹乱させてやるんだ」
今日は何時もより運動量が求められる攻撃陣。イラクの堅い守備を破るなら、日本の長所であるスピードとテクニックのサッカー。
それを発揮して向こうを翻弄する、藤堂は改めて作戦を伝えていく。
「ま、いっちょイラクにかまして来ますか。GKの手がデカいからってそれにビビってちゃ勝てないし」
白羽は不敵に笑ってイラク相手にやってやろうと、静かに闘志を燃やしていた。
「そんじゃ、いっちょやってやろうー!」
「お前が締めじゃないっての」
最後に弥一が締めようとしたが、キャプテンじゃないから締められないだろと月城からツッコまれ、改めて藤堂が掛け声。それから円陣が解かれて各自ポジションへと向かう。
センターサークルに室と狼騎の2人がボールの前に立ち、キックオフを待つ。
ピィーーー
『運命を決める試合が今キックオフ!酒井が後ろへと戻し、受け取ったのは天宮だ!』
試合が始まると左を走る月城に素早く、1人が彼の走るコースに立ち塞がる。
それだけでなく、白羽の方にもマークがついており、日本のスピードある両サイドが特に厄介なのは、イラクにも伝わっているらしい。
「(だったら中央から!)」
春樹は影山とアイコンタクトを交わすと、影山は動き出す。
体格あるイラク選手の厳しいプレスが迫れば、春樹はその前に光輝へとパス。
日本の司令塔である光輝にも厳しいマークが来る。しかし光輝はスルリと上手く相手と体を入れ替えて前を向いた。
『上手い三津谷!前を向いてドリブルだ!』
そのまま光輝がドリブルでイラクゴールへと迫ると、これにイラクも必死の守備で止めに行く。
前線の室、狼騎にも当然マークはついており、フリーにはさせない。
すると光輝は左のアウトサイドで軽く左へと蹴り出す。
光輝や春樹の動きに釣られ、イラクは日本のシャドウボランチの動き出しにパスが出されるまで、気付いていなかった。
『影山フリーだ!日本チャンスー!』
開始早々の得点チャンスに沸き立つスタジアム。歓声を背に影山はミドルレンジから左足を振り抜く。
日本最初のシュートはゴール左、きっちり枠を捉えていた。
だがそのボールの前に巨大な手が現れる。
イラクGKのダルシンが自慢のビッグハンドで影山のミドルを叩き落とし、抑えてしまったのだ。
『あーっと!影山のシュートをGKダルシンがキャッチ!ファーストシュートのチャンスを物に出来ません!』
『ですが良い感じですよ!この調子でドンドンと行ってほしいです!』
ボールを手の中に収めたダルシン。すると立ち上がりスローイングで大きく前へと出す。
イラクのカウンターだ。
「戻れ戻れ!」
春樹が声を上げて早く戻るよう言うが、イラクは素早く止まらない。
左サイドを走るイラク選手。そこから高いアーリークロスが出れば、待っていたのは190cmのエースFWアブドラ。
彼のヘディングシュートやポストを起点に、攻撃を組み立てるイラク。今回もブレる事なく作戦を決行する。
アブドラが落下地点に来てボールが来れば、それに合わせて跳躍。
だが刹那、狩人が狙っていた事をアブドラは気付いていなかった。
「オゥ!?」
飛ぶ事に集中していたアブドラ、そこに彼の体に強い衝撃が走る。
弥一が下から強く当たって来たせいだ。この見た目でズシンと強い当たりをされて、アブドラは飛ぶタイミングが狂ってしまう。
結局このボールは流れてしまい、タッチラインを出て日本ボール。
アブドラは何なんだ今のはと、戸惑っている様子だ。
「(その好調、此処で狂ってもらうね♪)」
好調なストライカーを仕留める。今日の獲物を前に弥一の目は既に狩人と化していた。
詩音「行け行け神明寺先輩ー♪」
玲音「今日も無失点だ神明寺先輩ー♪」
半蔵「日本の応援というか、主に神明寺先輩の応援だなお前ら」
詩音&玲音「なんか問題ある?」
三笠「迷いなき目だ……!」
立浪「2年になっても変わりそうにないな」
フォルナ「ほあ〜」
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