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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
第16章 アジアをぶっ壊せ!Uー20アジアカップ
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彼が見ているのはもっと先

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 準々決勝の組み合わせが決まったその日、SNSでは「イラクには絶対負けるな!」「悲劇を繰り返させるな!」等の書き込みが多く見られていた。



 トレンドでも日本VSイラクの関連が上がる程だ。



 カタール、ドーハでイラクとの戦い。



 嫌でも思い出してしまう、94年アメリカワールドカップを逃したドーハの悲劇を。




「あれを見ていた時、私はまだ小学生だったんですよ。テレビにかじりつくように見ていた親父の落胆……今も忘れられないです」



 監督とスタッフの打ち合わせ時、マッテオに富山は当時の事を話していた。



「そうでなくてもイラクには何度か不覚をとっている。あいつらにまで悲劇を味あわせたくないんですよ……!」



 今の若き日本にまで当時の辛い悲劇を繰り返させたくない、イラクには絶対負けられんと富山は熱弁。それにマッテオは耳を傾けていた。



「日本がイラクに対して特に負けられない、その熱量はしかと感じました。勝ちましょう、Uー20ワールドカップの切符を掴む為に」



 富山やスタッフ達と共に勝とうと言い切るマッテオ。そこから再びミーティングは始まり、次のスタメン選出を決めていく。






「たっか!」



 ホテルの食堂にて、佐助が手持ちのスマホで相手となるイラクのプレーを動画で見ていた。


 その時に思わずそんな声が出てしまう。



「190cmの長身からのヘディングは迫力満点やなぁ、加えて跳躍力もあるで」



 厄介そうに同じくスマホで見ている光輝。画面に映し出されていたのはイラクVSウズベキスタンで、イラクの長身FWが高い身体能力を見せて、相手の屈強DFに空中戦で競り勝ち、豪快なヘディングを叩きつけてゴールを決めるシーンだ。



 短髪黒髪で褐色肌、身長が高く足も速いイラクのエースFWアブドラ。此処まで韓国のユンジェイに次いで、得点ランキング2位とかなりゴールを量産していた。



「中東の室って感じかな」



 アブドラのプレーを見た白羽の感想。室と似たようなプレーだなと感じて、中東の彼だと評価する。



「だとしたら厄介だ、この高さ……なるべく楽な体勢でシュートやポストをさせないようにしないと」



 一旦スマホを仕舞うと佐助は難しそうな表情で腕を組む。


 イラクの攻撃を止めるなら、アブドラをなんとしても止めなければならない。




「点を取るのも今回そんな楽じゃ無さそうだぞ、相手のGK結構曲者だ」



 光明が見ているのは相手のGK。アブドラを超える190cmオーバーの長身でウズベキスタンのシュートを抑え続け、シャットアウトに成功したイラクの守護神ダルシン。


 大きな掌を武器として、この大会スーパーセーブ連発で乗りに乗っている。



 彼を中心としたイラクの守備陣は堅い。攻守共に今大会戦ってきた相手の中でもレベルが高かった。


 次の試合は一筋縄では行かないだろう。




「おーい、練習行くよ〜」



 そこに呑気な声で弥一が皆へと練習に行く時間だと伝え、一足先に練習グラウンドへと向かって行く。



「ちょ、弥一!アブドラの居る攻撃陣をどう抑えるか考えないと……!」



 全然話し合いに参加していなかった弥一。それに佐助はアブドラを抑える為にもっと話した方が良いだろうと、弥一の後を追って呼び止める。




「あ、それ僕が止めますから佐助さん達は他お願いしますねー」



 それに弥一は軽い感じで自分が相手エースを引き受けて止めると言い切り、あくまでマイペースな調子を崩さず佐助へと伝えた。



「(おいおい、ワールドカップの切符が手に入る大一番だぞ。しかも相手はイラクで因縁の地……あいつがドーハを知らない訳がないだろうし)」



 リラックスしているのは良い事だが少し気を抜き過ぎなのでは、と弥一を見ていて佐助はそう思った。大事な大一番で取りこぼしが許されない因縁の地で、因縁の相手との一戦。




 皆の心からそういったものを感じて、弥一は強く意識し過ぎだと読めていた。





「セカンドー!拾うの遅いぞー!」



 練習はセカンドボールへの対応を素早く、これを意識した練習が行われる。


 マッテオは次のイラク戦でこれが鍵となって来ると判断し、その強化を狙っていた。



 攻守両方で対応の速さが求められ、その中でやはり抜群に優秀なのは狼騎。瞬発力においては彼が代表No.1だろう。




 練習の休憩時間、佐助は再び弥一へと声をかける。



「なあ弥一、お前がアブドラを止めるって言うけど大丈夫か?いや、信じてない訳じゃないし凄い奴なのは知ってるけどさ……」



 彼が1年の時に立見と琴峰の試合が選手権で行われ、圧倒的身長差のある室を完封したというのは佐助も覚えている。



 だがサッカーに絶対や100%など無い、弥一にも万が一はある。大一番でそれが起きたらと思うと、佐助はまだ話し合った方が良いのではないかと考えていた。





「あれくらい止めないと、もっと強い世界のプレーヤーは止まらないですよ」



「……!」



 迷いの無い目。弥一が佐助の目を見てハッキリと言い切れば、佐助は思わず息を呑む。



 もっと強い世界のプレーヤー。弥一が見ているのは、このアジア予選よりも更にその先。



 Uー20ワールドカップで戦うだろう、天才や化物といった最強を争う者達。弥一が見ているのはその景色だった。



「止められなかったら、情けない奴って笑ってくれれば良いですよー♪」



 あくまでアブドラを自分が封じるつもりの弥一。呑気そうに笑う彼はアジアで争う切符や頂点よりも、更に先を見ている。



「本当に、任せて良いんだな?」



「男に二言はありません♪」



 厄介なエースのマークは弥一に任せる。佐助は番と共に他へと注意を向けて全力で阻止しようと決めれば、番やボランチ達を呼んで守備について話し合う。




 アブドラも強いストライカー、弥一はそれよりもっと厄介な選手を知っている。その姿が一瞬頭を過ぎると、弥一はすぐに現実世界へと戻り、練習を再開。



 練習後、大一番を戦うスタメンが発表される。





 GK藤堂



 DF神明寺 仙道(佐) 青山



 MF三津谷 月城 白羽 影山 天宮



 FW室 酒井




 このメンバーでイラクと、Uー20ワールドカップの切符を争う試合が行われる。



 因縁の地で悲劇の繰り返しか、それとも歓喜に変えて払拭か、日本のサッカーファンのこの試合への注目度は高まるばかりだ。

宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。


サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。

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