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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
第16章 アジアをぶっ壊せ!Uー20アジアカップ
412/658

悪質なプレーに冷酷な笑み

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 日本と同じく2連勝で2試合連続無失点のヨルダン。高い攻撃力を持つ日本に対して引き気味で守っている。



 遠めの位置でFKを得た日本は、光輝がヨルダンゴール前へと放り込む。高いボールに対して室が飛びに行く。



「うお!?」



 だがヨルダンDFにユニフォームを掴まれて引っ張られると、思うように飛ぶ事が出来ず合わない。


 密集地帯でバレない位置から行っていたせいか、笛は吹かれなかった。




 ヨルダンは長身が揃う前線。ショートパスで繋がず、後ろから高いロングボールを縦へと1本放り込んで行く。



『ヨルダン、ロングパスを放り込む!しかし青山通さない!』



 高さなら日本も負けていない。番が飛ぶとしっかり頭で、相手のハイボールを弾き返していた。



 序盤の立ち上がりは特にどちらがゴールを脅かすという事はなく、照皇へのファールがあったぐらいで静かな序盤だ。




「っ!(うじゃうじゃといやがる……でっかいのが!)」



 左サイドの冬夜がボールを持つと、彼の前には何人ものヨルダン選手が行く手を阻む。



 月城と同じくスピードで突破するプレーが得意な冬夜だが、こんな密集していてはそれを活かしづらく、前に中々進めない。



「冬夜!」



 中央の光輝が手を上げて冬夜を呼ぶ。ボールを要求していると、察した冬夜は中央にパス。



 光輝がボールを受ける。ヨルダン選手が彼へと寄せに行くと、球をぴょんと軽くジャンプして飛び越える。


 このボールを光輝はスルーしたのだ。



 ぎょっと驚くヨルダン選手をよそに、流れる球を受けたのは右サイドの辰羅川。結果として冬夜からのサイドチェンジとなっていた。



 ワントラップして足元に収めると、辰羅川は前線の照皇目掛けて、右足のアーリークロスを上げる。



 これに照皇がジャンプ。相手のヨルダンDFも競り合う。




 ゴッ




「ぐぅ!」



 空中戦の最中でヨルダンDFの肘が照皇の顔面へと入り、照皇は顔面を抑えて倒れる。



 これに主審は笛を鳴らす。



『あー!ファール!照皇の顔面に肘が入ってしまった!ヨルダン3番にイエローカード……!』



『今のわざとじゃないですか!?レッドでも良いでしょうに!』



 審判がカードを出すのに対して、ファールをした相手DFは首を横に振り、わざとじゃないとアピールしている。



「照皇さん!大丈夫ですか!?」



「つつ……心配するな、大丈夫だ……!」



 室や他の選手達が心配して照皇の元へと駆け寄ると、彼は立ち上がり大丈夫だと力強く答える。



「あいつら、まさかヴァンを潰したように今度は照皇さんを潰す気かよ!?」



 この大会でベトナムのエースを既に潰しているヨルダン。この試合も照皇を狙っていると見て、番は怒りを見せていた。



「番、頭に血を上らせるな。あいつらの思う壺だぞ」



「はい……!」



 年上の佐助が番を落ち着かせていく。此処で守備が乱れてヨルダンに1点を献上するのだけは、なんとしても避けたい。





「向こうのペースでしょうか、思うような攻撃が出来てないです」



 マッテオとベンチにて試合を見守る富山。何時もと比べて攻撃が組み立てられていないと見て、向こうの荒っぽいプレーが影響しているのかと考えている。



「ワールドカップは試合ではなく戦い……今彼らはそれを感じている時かもしれません」



 真剣な眼差しでマッテオは静観、何時もの試合とは違う大舞台での真剣勝負。



 相手が実力で劣っていても簡単には勝てないアジア。その厳しさを味わっている時だろうと。





「前半終わるまでもうちょいだ!気を抜くなー!」



 この試合で張り切り声を出して、今日の盛り立て役となっている辰羅川。



『ヨルダンのカウンター、っと!辰羅川が素早いプレスで攻撃を遅らせた!』



『この試合よく走って攻守で顔を多く出してますね。現に右から多くクロスが上げられていますから』



 日本は何度か右サイドから突破し、2トップへボールを上げられている。



 相手の厳しいマークやGKのセーブ。精度を欠いて枠を捉えきれない等、ゴールに結びついてはいないが右からチャンスは作れている。



 これも攻守で走り回る辰羅川のおかげだ。




「おい……」



「ああ」



 その辰羅川の姿を見てハサ、カッシムの2人はヒソヒソと話している。何かを企んでいるよう。




「!(あの2人……)」



 心を読める弥一がハサ、カッシムの狙いに気付く。



 それを言おうとするが試合は再開されていた。




「だああ!?」



 冬夜が相手に後ろから引っ張られて転倒、またしてもヨルダンのファール。日本は左サイド際からFKのチャンスを獲得する。



「(よし、前半あと僅か……1点狙うっきゃないだろ!)」



 辰羅川は敵味方が大勢居るヨルダンのエリア内、密集地帯へと向かう。


 混戦でボールが溢れて拾える確率を上げ、上手く行けば先制出来るだろうと。



 FKを蹴るのは光輝。




「タツさん気をつけて!狙われてるからー!」



 弥一はただ1人狙いに気づいていて、後方から大声で伝える。



 それが伝わったのか分からないまま、日本のFKが始まっていた。


 光輝はゴール前へと右足でハイボールを送る。



 放り込まれるボール。そこに目が行く中で辰羅川を密集の中で、左右から襲いかかるハサとカッシムの兄弟。



「!タツさ……!!」



 これに気付いたのは冬夜だったが、声を出した時には既に遅かった。





「かっ……!」



 前から胸部、後ろから後頭部、それぞれに伝わって来る衝撃。



 辰羅川は混戦の中で倒れてしまう。




「人!倒れてる!出せ!」



 ヨルダンの長身選手が光輝のボールを弾くと、カッシムがボールを出せと指示。



 カウンターに行こうとしていた選手は言われた通り、ボールを外へと蹴り出す。ヨルダンゴール前には倒れてる人物の元へと集まる。



「が……あ……」



「タツさん!タツさん!」



「担架、こっちに!」



 倒れている辰羅川の容態を心配し、特に声を上げる冬夜と番。


 辰羅川は苦悶の表情を浮かべ、立ち上がる事が出来ない。



『日本、右サイドの辰羅川が倒れています!立ち上がれない……大丈夫なのか……!?』



『相当苦しそうですね……これは心配ですよ』



『あーっと、そして審判はこのまま前半終了の笛を無らしましたね。アディショナルタイムに入って時間間近になっていたせいか?』



 主審は此処で前半終了の笛を鳴らしていた。




「(やってくれたね……あっち)」



 ヨルダンのハサ、カッシム。それぞれ辰羅川の容態を心配を装っている。


 弥一に何時もの笑みは無い。流石に彼もこの状況では、笑う気になれないのだろう。



 その引き上げる最中で見えた彼らの顔。厄介な奴を潰せたと、嫌な笑みが弥一から見えていた。







「すぐ病院へ!苦しそうに胸を押さえてる……肋骨が折れているかもしれません!」



 日本ベンチは慌ただしくスタッフ達が動いている。辰羅川の容態が思ったより深刻で、すぐに病院へと緊急搬送の必要があると。




 辰羅川の負傷、ロッカールームへと引き上げて来た選手達の空気は重かった。



「VARとか無かったのかよ!?俺見たんだ、ハサとカッシムの野郎2人がタツさんを挟んで膝蹴りや肘打ちをしていたのを!」



 冬夜が怒りを見せている。辰羅川はアクシデントで負傷したのではなく、故意に負傷させられたのだと。



 あの時ヨルダンのふたりは辰羅川を挟み、混戦の中でラフプレーを仕掛けていた。見つかればレッドカード間違い無しの悪質なプレーだ。


 だがそれを混戦で隠し、ボールへと目が行った隙を突いた上に、その後で気遣うように装っている。



「この試合でそれは導入されていない……向こう、それを分かってやってきたのかもしれないな」



「っ……畜生!!」



 キャプテンとして冷静さを失わない藤堂。反則が証明されず、終わってしまう事を心底悔しく思う冬夜。



 室や番もヨルダンのやり方に腹を立てており、照皇は冷静になれと伝えている。



 彼女との結婚を控え、この試合を見ているであろう彼女に良い所を見せようと、張り切っていた。



 それを聞かされたばかりなので、冬夜は余計にあの兄弟へと腹が立っている。




「……!」



 するとマッテオはある人物の顔を見て目を見開く。その後に富山へとすぐに伝える。



「救急車……もう1台用意しておいてください……!」



「え!?辰羅川の他に怪我人はいないはずでは……?」



「念の為です、急いで!」



 今までで一番必死な様子のマッテオに、富山も慌てて連絡をする。





「冬夜、とりあえず後半頑張ろうよー。タツさんに勝利の報告届ける為にもね♪」



「弥一……けどあいつらこのままじゃまた何か仕掛けそうだぞ!?」



 何時もの明るい調子で弥一は後半勝とうと声をかけていたが、冬夜はあの兄弟がまた何か悪質な事を仕掛けるかもしれないと、怒りが収まっていない様子。



「大丈夫だよー♪」









「あいつら後半死ぬからさ」




「え……」



 何時もの笑みから一瞬見せた冷酷な笑み、それが見えた冬夜は怒りが冷えて固まっていた。




 アジアでこういった体格差に加え、ラフプレーで苦戦や敗北を重ねて来た日本の歴史。



 そのアジアを弥一は粉々に破壊しようと動き出す……。

想真「なんや一瞬……寒い日本に戻ったかと思うくらいの寒気したんやけど気の所為?」


月城「何言ってんだよ、まるで幽霊出るみたいなフリじゃねーかそれ……!か、勘弁してくれよな!」


優也「お前、幽霊の類い駄目なのか」


月城「駄目じゃねぇー!ただあり得ねぇだろって思ってるだけで!」


想真「(苦手やなこいつ)」


優也「(分かりやすいな)」


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